「FM 3-0 Operations」(2022年版)【第7章 海洋環境での陸軍の作戦】

「FM 3-0 Operations」(2022年版)【第6章 武力紛争の間の作戦 第II節から第IV節】に続いて、【第7章 海洋環境での陸軍の作戦】を紹介する。

「はじめに:Introduction」によると、「第7章では、陸軍が海洋環境という特殊な条件の中でどのように作戦するかを説明している」とある。米陸軍が作戦を視野に入れている北極圏についても第7章に記述されている。

陸上自衛隊のHPの「令和4年度日米共同方面隊指揮所演習(日本)(YS-83)の概要について」にあるように、今年度の日米共同方面隊指揮所演習は西部方面隊を中心に行われていると思われる。本演習の今年度の特色で述べられている「従来の領域に宇宙、サイバー及び電磁波といった新領域を加えた自衛隊の領域横断作戦(CDO)と米陸軍のマルチ・ドメイン・オペレーション(MDO)及び米海兵隊の機動展開前進基地作戦(EABO)に係る日米の連携要領を演練」といった内容は、この演習の目的であろう日米両軍のコンセプトの検証内容でもあろう。米陸軍の「FM 3-0 Operations」は、この演習で検証する内容の一部とも考えられる。「第7章」は正にその焦点と言えるのではないだろうか。そう考えると、この第7章は一段と興味深い章となるであろう。(軍治)

第7章 海洋環境での陸軍の作戦:Chapter 7 Army Operations in Maritime environments

第I節-海洋環境の概観:SECTION I – OVERVIEW OF THE MARITIME ENVIRONMENT

海洋環境の物理的特性:PHYSICAL CHARACTERISTICS OF THE MARITIME ENVIRONMENT

海洋環境独特の考慮事項:CONSIDERATIONS UNIQUE TO THE MARITIME ENVIRONMENT

第II節-海洋環境での計画策定と作戦上のフレームワーク:SECTION II – MARITIME ENVIRONMENT PLANNING AND OPERATIONAL FRAMEWORK

海洋環境についての計画策定上の考慮事項:PLANNING CONSIDERATIONS FOR A MARITIME ENVIRONMENT

作戦上のフレームワークの適用:APPLYING THE OPERATIONAL FRAMEWORK

第III節-海洋環境についての作戦上の考慮事項:SECTION III – OPERATIONAL CONSIDERATIONS FOR A MARITIME ENVIRONMENT

指揮・統制の確立:ESTABLISH COMMAND AND CONTROL

緊要地形の防御と統制:DEFEND AND CONTROL KEY TERRAIN

海洋環境での警戒活動:SECURITY OPERATIONS IN MARITIME ENVIRONMENTS

敵の接近阻止と領域拒否の構成要素の撃破と統合攻勢作戦を可能にする:DEFEAT COMPONENTS OF ENEMY ANTIACCESS AND AREA DENIAL AND ENABLE JOINT OFFENSIVE OPERATIONS

戦域防空・ミサイル防衛(AMD)の提供:PROVIDE THEATER AIR AND MISSILE DEFENSE

強行突入作戦:FORCIBLE ENTRY OPERATIONS

水陸両用作戦:AMPHIBIOUS OPERATIONS

海洋環境での大規模戦闘作戦の維持:SUSTAIN LARGE-SCALE COMBAT OPERATIONS IN MARITIME ENVIRONMENTS

防護された「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」の確立:ESTABLISH PROTECTED RECEPTION, STAGING, ONWARD MOVEMENT, AND INTEGRATION

戦域後方支援作戦の遂行:CONDUCT THEATER SUSTAINMENT OPERATIONS

第7章 海洋環境での陸軍の作戦:Chapter 7 Army Operations in Maritime environments

戦争の基本的な目標と原則は、変わることはない。戦争における最終目標は、敵の闘うための能力容量と意志を破壊し、それによって敵に勝者の意志の押しつけを受け入れさせることである。この服従(submission)は、過去には陸と海の各要素から、また第一次、第二次世界大戦中には空からの圧力によって達成されてきた。最適な圧力は、実際の物理的な占領によって得られる絶対的な統制によって発揮される。この最適は、物理的占領を集約・強化し維持することができる陸上でのみ得られる。

チェスター・W・ニミッツ米海軍元帥

本章では、主として海洋環境での陸軍の作戦について説明する。本章は、海域(maritime regions)がもたらす独特な特性と課題についての議論から始まる。続いて、海上での計画に関する考察を行い、最後に海洋環境における潜在的な作戦アプローチについて説明する。

第I節-海洋環境の概観:SECTION I – OVERVIEW OF THE MARITIME ENVIRONMENT

7-1. これまでの紛争で、海洋戦域(maritime theater)における陸上部隊の重要な役割が証明されている。ほとんどすべての場合において、戦闘軍指揮官(combatant commander)にとって海域(maritime area)を重要なものにしているのは陸地である。水域(water)に近い、あるいは水域(water)に囲まれた広大な陸地(land masses)は、海上のチョーク・ポイントを作り、海域(maritime areas)への戦力投射を可能にし、世界の人口の大部分を含んでいる。紛争の最終目標は、通常、広大な開かれた水域を統制することではなく、その水域を統制する土地と人々である。このような環境での作戦に特有の配慮をするための計画策定と訓練は、統合部隊の残余との一体化した計画策定アプローチと同様に、非常に重要である。海洋作戦環境は、通常、陸上の作戦環境で作戦や訓練を行う陸軍の各部隊階層に、調整と同期の必要性をもたらす。陸軍部隊と統合部隊の計画策定には、海域における陸上部隊の脅威と制約の動的本質の理解を反映させなければならない。陸軍の広大な陸地(land masses)間の移動と機動は、ほぼ全面的に統合能力に依存している。海洋作戦環境における統合作戦の後方支援と防護には、重要な広大な陸地(land masses)の統制が不可欠である。この相互依存関係は、歴史的に、海洋戦域(maritime theater)における対等な脅威に対する武力紛争を成功させるために極めて重要であり、予見可能な将来においても重要であり続ける。

海洋環境の物理的特性:PHYSICAL CHARACTERISTICS OF THE MARITIME ENVIRONMENT

7-2. 居住可能な広大な陸地(land masses)は、大きさも地質もさまざまである。オーストラリアのような広大な陸地(land masses)から、ミクロネシアのマリアナ諸島やアラスカのアリューシャン列島のような大きな環礁を構成する小さな島まで、さまざまな島がある。しかし、その大きさにかかわらず、すべての島嶼が外部から水や物資を供給されない限り、長期間の占領に適しているとは限らない。ほとんどの島嶼は地殻変動や火山活動によって形成された自然島が多いが、南シナ海などの一部の地域では、軍事目的やその他の目的などで作られた人工島嶼も見られる。海上の広大な陸地(land masses)には、さまざまな環境条件がある。東南アジアの島嶼は、主としてジャングルやサバンナ地域である。バルト海、北極圏、亜北極圏の島嶼では、極寒の時期が長く続くことがある。山岳地帯は、ジャングル、北極圏、砂漠の島嶼で見ることができる。それぞれの島には、陸軍部隊の資源や部隊運用の方法に影響を与えるような、独特な環境の計画策定の考慮事項が含まれている可能性がある。(寒冷地環境の詳細についてはATP 3-90.97を参照。ジャングル環境での作戦の詳細についてはATP 3-90.98を参照。砂漠環境での作戦の詳細については、ATP 3-90.99を参照)

第二次世界大戦の太平洋戦域は、米海軍と米海兵隊による劇的な戦闘を連想させるが、米陸軍もかなりの戦闘力をこの戦域に提供した。太平洋戦争で活躍した22個師団のほとんどは、飛び石戦役(island-hopping campaign)で100日から300日の連続戦闘に耐えていた。いくつかの部隊は、日本軍との戦いで500日以上を費やした。米国師団は600日以上戦闘に参加した。陸軍部隊の死傷者は、死者、捕虜、負傷者、行方不明者合わせて85,000人を超えている。第77歩兵師団だけでも、208日間の戦闘で9,212人の死傷者を出した。ガダルカナル、ニューギニア、フィリピン、沖縄などの戦いで、陸軍部隊はアラスカからオーストラリアにまたがる複雑な作戦に戦闘力と重要な後方支援の両方を提供した。

7-3. 現在、世界には22カ国が群島国家(archipelagic states)として認められており、これらの独特な海洋国家は、その領土内に複数の文化、宗教、言語、地政学的歴史を含むことができる。地域的な影響、沿岸部の都市化、外部の行為主体、地域の地政学的な視点、地域の経済状況などは、たとえ一つの国を構成する島嶼であっても、島によって変化することがある。指揮官と参謀は、作戦環境の人的・情報的次元において、結果に影響を及ぼすために、これらの複雑な要因を理解しなければならない。軍団、師団、あるいは旅団は、それぞれが独自の文化と歴史を持つ、いくつかの島にまたがる作戦地域(AO)を持つことがある。

7-4. 主として海洋環境では、友軍部隊または敵部隊にとって相対的優位性の物理的位置を占めることができる土地は、すべて緊要地形となり得る。主に海洋ドメインでは、計画策定者は作戦範囲(operational reach)と、前方駐留部隊(forward-stationed forces)や同盟国の増援に空間と時間が与える影響を考慮しなければならない。海域(maritime regions)全体の基地間の距離が離れていると、戦域内の支援する部隊階層からの相互支援作戦や後方支援の妨げになる。遠隔地であることは、敵の特殊作戦部隊による水陸両用の急襲や長距離航空機・ミサイルによる攻撃に対する脆弱性を高め、航空・海軍部隊による物理的孤立のリスクを増大させる。

沿岸地域:LITTORAL REGIONS

7-5. 海洋環境には沿岸地域(littoral regions)が含まれ、海側と陸側の2つの区分に分けられる。海側の区分は外洋から海岸までの地域を含み、陸上での作戦を支援するために統制されなければならない。陸側の区分は、海岸から内陸に位置し、海から直接支援と防衛が可能な地域である。海上沿岸地域(maritime littoral regions)は、5つのカテゴリーに分類される。

・ 閉鎖性海域(enclosed seas)および半閉鎖性海域(semi-enclosed seas)-広大な陸地(land masses)に囲まれた海域で、海峡などの接続水域によって海または他の閉鎖性海域に接続されているもの

・ 島嶼(islands)-水域に囲まれた単一の広大な陸地(land masses)

・ 群島(archipelagoes)-島嶼(islands)のグループ

・ 外洋(open seas)-通常、領土の外にある閉鎖されない水域

・ 縁海(marginal seas)-半島、島嶼、群島などの広大な陸地(land masses)を囲む外洋や海洋の一部

7-6. これらの環境での作戦は、潮汐や風が波高に予期せぬ影響を与えることがあるため、現地の潮汐、平均波高、毎日の風予報に関する情報が必要である。潮の流れや潮流は、小型船や喫水の浅い船舶の運航に影響を与える。潮流の変化は、土手道や工兵の支援がない未整備の橋頭保(beachheads)や作戦を横断する際の車両の移動性にも影響を与える。異常気象と海水の腐食作用は、すでに長い兵站の後方連絡線(logistics lines of communications)の範囲にある装備の整備の即応性を急速に低下させることがある。

北極圏:ARCTIC REGION

7-7. 北極圏は海洋の影響を大きく受ける。北極圏は、3つの異なる地理的戦闘軍、8つの国、およびすべての時間帯の責任地域の一部を包含している。北極圏には、北西航路と北方海航路の2つの主要な航路がある。北極圏は地政学的に競争する地域であり、武力紛争の可能性のある地域である。この地域には様々な国際的なパートナーシップや同盟関係があり、海洋境界に関する国際的な紛争によって複雑な関係が重なり合っている。北極圏は、軍事作戦にとって過酷で厳しい海、陸、空の環境である。極端な気温、長い暗闇と長い日照時間、高緯度、季節ごとに変化する地形、急速に変化する気象パターンが北極の状況を特性づけており、これらはすべて作戦や任務の変数に影響を及ぼしている。物理的な地形と天候の変動は、軍事部隊と能力をより高いレベルのリスクにさらす。

7-8. 北極圏は極寒のためだけの難所ではない。地上での移動性は通常、冬の間が最も有利である。夏場はほとんどの車両が路上を移動する際に大きな困難を伴うが、最も困難な時期は春の雪解けで、広大な領土で地上走行が不可能になる時期である。季節に関係なく、空と海の移動性は軍事作戦にとって重要なイネーブラである。永久凍土の融解は北極圏のインフラに影響を与える。メキシコ湾流による気候緩和効果がないため、北米の北極圏はヨーロッパの北極圏よりもはるかに厳しい環境となる。北極圏の温暖化により、より広い範囲で氷が少なくなる時期が長くなっている。長期的な傾向として、北極圏はより安定して航行できるようになり、武力紛争間の陸軍部隊や脅威部隊の移動性に影響を与える可能性がある。

7-9. 北極圏での作戦は、季節によって道路、海港、飛行場が使用できなくなるため、より複雑なものとなる。海氷の消失や変化により、新たな水路が開かれ、この地域を通過する船舶が増加する可能性がある。このため、米国本土、同盟国、インフラ、あるいは武力紛争間の北方接近経路を確保するために、追加的な部隊、装備能力、インフラ投資が必要となる可能性がある。

海洋環境独特の考慮事項:CONSIDERATIONS UNIQUE TO THE MARITIME ENVIRONMENT

7-10. 海洋戦域(maritime theater)における陸軍部隊への脅威は、他のいかなる種類の戦域における脅威も含む。さらに、指揮官と参謀は、海洋環境での作戦を計画策定と実行する際、固有の統合の行動方針と敵の可能行動を考慮しなければならない。

海洋環境での統合部隊の考慮事項:JOINT FORCE CONSIDERATIONS IN A MARITIME ENVIRONMENT

7-11. 統合作戦の相互依存の本質が強いということは、統合部隊の一部分が撃破されれば、他の部分が重大な危険にさらされることを意味する。陸軍部隊が自軍の戦闘力を維持しながら、緊要地形を保持したり、航空・海軍基地を防護することができなければ、航空優勢と海上優勢を失い、その結果、責任地域(area of responsibility :AOR)全体において、支援を受けていない陸軍部隊が詳細に渡って最終的に撃破されることになりかねないのである。

7-12. 陸軍部隊は、同盟国やパートナーを含む友軍部隊とその作戦について、すべてのドメインで統合共通作戦図(COP)を必要とする。不正確な統合の共通作戦図(COP)またはパートナーの共通作戦図(COP)は、仮定や状況理解(situational understanding)に欠陥を生じさせ、効果的な意思決定を低下させる可能性がある。

7-13. 他の環境と同様に、海洋環境における陸上作戦の計画策定では、友軍および敵の作戦に影響を与える関連因子を扱うべきである。海洋環境の独特な特性を計画し描写するために一般的に収集される成果物およびツールには、河川および沿岸の航海図または潮汐レポートおよび地元の漁村からの観察が含まれる。その他に考慮すべき特性は以下の通りである。

・ 海岸の地形と土壌組成

・ 航行可能な水路に沿った商業と貿易

・ 海域特有のインフラ

・ 航行可能な水域

・ 海岸および可航水路付近の人口密度およびその変動

・ 潮流、波の状態、流れの方向

・ 地形に隣接する自然障害物(砂州、浅瀬、干潟、砂丘を含む)

海洋環境独特の敵の可能行動:ENEMY COURSES OF ACTION UNIQUE TO THE MARITIME ENVIRONMENT

7-14. 敵部隊は海洋環境に特有の複数の行動を取り、統合作戦を阻害する能力を有している。彼らはあらゆるドメインの能力を駆使して、戦略支援地域と前方配置された陸軍部隊との間の後方連絡線(logistics lines of communications)を遮断し、部隊を孤立させ、他の統合部隊要素からの支援距離を超えるリスクにさらす。敵部隊は、陸軍の重装備の大部分を戦域に運ぶ船舶や、すでに戦域に配備されている装備を、包囲・隔離アプローチの一環としてターゲットとしている。陸軍部隊はすでに戦域にある装備を防護するための措置を講じることができるが、輸送中の人、装備、物資の防護については他の軍種に依存することになる。

7-15. 脅威は地域全体で領域拒否(area denial :AD)アプローチを強化するために非対称戦術を用いることがあり、適切な防護がなく孤立した友軍の場所の脆弱性につけ込む。統合部隊の他の要素によって強化されたり、支援されたりすることのできない場所は、特に脆弱である。敵の特殊作戦部隊や海軍部隊による攻撃は、適切な配置と準備なしには、陸軍部隊が探知して対抗することは困難である。ある地域で起こりうる敵の行動パターンを予測し、それが戦域全体の結果を支えることになるなら、友軍は計画策定と準備の優先順位を上げるべきである。

敵部隊が優れた戦闘力を生み出し、宿営地を拡大する前に倒すことが重要である。

7-16. 敵部隊は代理人部隊(proxy forces)を利用して地域のパートナーを不安定にし、陸軍部隊が基地化や後方連絡線(logistics lines of communications)に安全に接近するのをさらに遅らせることがある。代理人部隊(proxy forces)は敵の偵察、監視を容易にし、統合作戦を混乱させることができる。また、輸送のための海路や空港への接近に影響を与え、島の基地の補給を妨げ、基地や基地群を攻撃して前方に配置された友軍部隊を強化する能力を制限することができる。

7-17. 敵の地対地・地対空火力システムは、前方に配置された友軍部隊をわずかな警告で攻撃するために必要なレイヤー化された防御・早期警戒システムとして重要である。これらのシステムは同時に、友軍部隊の増援や支援を阻止する。敵は、強固で一体化された防空・ミサイル防衛、早期警戒監視レーダー、電子戦能力を米統合部隊の各要素に配置し、競争、危機、紛争時にリスクにさらしている。敵の中距離弾道ミサイル、巡航ミサイル、対艦ミサイル、航空・海軍部隊も友軍部隊をリスクにさらしている。陸上部隊は維持、早期警戒、防護のために航空・海上部隊の支援を必要とするため、このようなシステム戦の組み合わせは、陸上部隊を直接ターゲットとしない場合でも、陸上部隊に脅威を与える。

陸軍特有の考慮事項:ARMY-SPECIFIC CONSIDERATIONS

7-18. 指揮官や参謀は、海洋環境での作戦を計画策定し実行する際に、複数の考慮事項を考慮する。陸軍部隊が島で偵察に対抗する場合、奇襲を避けるために360度からのアプローチが必要である。脅威への対応には、敵部隊に対して素早く大量の効果を与える高い移動能力が必要である。脅威はあらゆる方向から奇襲をかけることができるが、水陸両用攻撃や航空攻撃で敵部隊が上陸できる場所には制約があり、航空機が特定の接近を好むような範囲にも制約がある。戦場のインテリジェンス準備には、空と海の接近経路と、特定の広大な陸地(land mass)または広大な陸地(land masses)のグループとの関係を理解することが必要である。

敵の攻撃範囲内にある前方基地の陸軍部隊は、敵の弾道ミサイル、航空機、海軍の攻撃、およびサイバースペース攻撃に対する残存性のために、大幅なハード化を必要としている。前線基地の陸軍部隊は、適切に配置され準備されれば、重要な共同インフラを防衛することができる。

7-19. 敵の長距離火力の範囲内にある既存の基地に配置された陸軍部隊は、空軍基地や港湾に防空・ミサイル防衛(AMD)や地域の安全を提供しながら、自分たちのために第一および代替の残存性ある場所を確立している。また、水陸両用攻撃や、特定の陸上地域を支配したり重要なインフラを破壊しようとする敵部隊による空挺作戦または航空攻撃作戦から防衛することが求められることもある。インフラや資源が乏しい島嶼で活動する陸軍部隊は、持久戦(prolonged operations)の間、多大な後方支援を必要とする。

7-20. 戦略上または作戦上重要な地域に大規模な軍事力を収容できる陸地は、海洋環境では乏しく、利用できるものはすでに敵の計画策定者にとって既知のポイントである。このため、友軍の活動の監視が単純になり、奇襲や奇襲を避ける能力に影響を与える。また、敵の観察、情報収集、その後のターゲッティングをより速く、より効果的にする。友軍部隊の隠蔽と防護に関しても、その意味は大きい。

7-21. マレー半島での英国の敗北(defeat)は、作戦・戦術の両レベルで防衛がうまく機能しなかった歴史的な例である。また、対等な脅威が複数のドメインにわたって優れた計画策定、リーダーシップ、積極的な行動をとり、防衛軍に対する数的劣勢を克服した例でもある。

思い込みの強さ-マレー半島の複数のドメインでの撃破

1941年12月8日、日本軍はフランス領インドシナの拠点からマレー半島への侵攻を開始した。日本側のインテリジェンスでは、山下奉文陸軍大将の7万人の部隊は2対1近い劣勢であり、積極的でよく訓練された軍隊による大胆で迅速な攻撃のみが勝利をもたらすと判断されたのである。大英帝国は、北アフリカ、大西洋の戦い、本国の島嶼の防衛に決定的な役割を果たした。

シンガポールには陸海空軍を追加配備したが、時間と距離、そして他の戦域での需要が重なり、これ以上の増援は望めなかった。敵対行為の開始前に到着した部隊は、慣れない環境で未知の相手に対する作戦のために訓練や準備をする時間がほとんどなかった。

連合軍のマレー半島防衛は、いくつかの誤った前提の上に成り立っていた。第一に、連合軍は攻撃の十分な警告があり、それによって十分な航空・海軍の増援が得られると想定していた。数少ない海軍の増援(戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルス)は撃沈され、航空機は質的に優れた日本軍の航空部隊を相手に急速に失われていった。連合国は、ジャングルの密集した地形が敵の地上移動を妨げ、半島の防衛を単純化すると想定していたが、実際には日本軍以上に防衛側の妨げとなった。

彼らは、敵の主たる取組みは海であり、それは防衛の最も厳しい部分であると考えた。しかし、そうではなかった。航空戦力は日本軍より優れていると考えていた。しかし、そうではなかった。また、イギリスと英連邦の軍隊は、日本軍よりも訓練されていると思い込んでいた。そうではなかった。これらの思い込みは連合国軍に損害を与え、日本軍に好機をもたらした。

日本軍はマレー半島北岸で夜間水陸両用攻撃を成功させ、東岸を南下した。また、マレー半島国境の北にあるタイにも同時に上陸し、内陸部や西海岸を南下する部隊を送り込んだ。連合軍は道路沿いの陣地と橋の破壊で日本軍の進撃を遅らせようとしたが、日本軍は道路を離れて水陸両用で上陸し、陣地を迂回または包囲することを繰り返した。12月10日、日本は最後の主要な連合国海軍部隊を撃沈し、航空優勢を達成した。

1942年1月27日までに、連合軍は海峡を渡ってシンガポール島に撤退した。その後、日本は2月7日にシンガポールに侵攻し、15日に征服を完了した。わずか2ヶ月余りで、7万人の山下奉文軍は14万人以上の防衛軍を1万人弱の死傷者を出しながら、決定的な勝利を収めたのである。山下はスピード、機動、奇襲を駆使し、侵攻作戦のテンポを決定づけた。山下は日本軍の航空・海軍部隊から与えられた機会をうまく利用しながら、地上での積極的な機動によって自らも機会を作り出した。空、海、陸の各ドメインで複数のジレンマが同時に発生し、史上最大の英軍の降伏につながったのである。(マレー半島での作戦地図は図 7-1 を参照)。

 

図7-1. マレー半島での作戦

第II節-海洋環境での計画策定と作戦上のフレームワーク:SECTION II – MARITIME ENVIRONMENT PLANNING AND OPERATIONAL FRAMEWORK

水陸両用戦(amphibious warfare)は、計画策定と実行の両面において、すべての戦闘軍種による実際上最も緊密な協力と、作戦の全段階を通じて主要な決定の責任を明確に割り当てる指揮組織を必要とする…。

ヘンリー・K・ヒューイット提督

7-22. 海洋環境での作戦のための計画策定には、指揮官と参謀が作戦環境を慎重に検討することが必要である。指揮官と参謀は、海洋環境での作戦フレームワークの適用は、陸上作戦への適用と大きく異なることを考慮する必要がある。

海洋環境についての計画策定上の考慮事項:PLANNING CONSIDERATIONS FOR A MARITIME ENVIRONMENT

7-23. 海洋環境における陸上作戦の計画には、航空および陸上手段による部隊、装備、物資の移動と上陸を調整するための高度で複雑な詳細が必要である。陸軍の海洋環境における作戦の成功は、統合司令部および下位の部隊階層との取組みの統一(unity of effort)と、一体化された協力的な計画策定に大きく左右される。

7-24. 主要な海上作戦のための統合部隊指揮官(joint force commander :JFC)は、通常、海軍の上級将校である。統合部隊指揮官(JFC)は、統合部隊全体の取組みの統一(unity of effort)を図り、陸軍のタスクと目的が、全体的な統合作戦コンセプトと合致するようにする。陸上作戦によくある物理的な距離と相対的な孤立にもかかわらず、大部分は海洋環境での作戦であり、陸軍指揮官は、自分たちの作戦や活動が他の作戦や部隊に悪影響を与えないよう、統合協同を通じて状況理解(situational understanding)を維持しなければならない。これには移動中の状況認識(situational awareness)の維持も含まれ、海兵隊、海軍、空軍の部隊の指揮・統制(C2)ノードに陸軍要員が直接かつ継続的に一体化される必要がある。これには、多国籍の水陸両用または海上部隊との一体化も含まれる場合がある。

7-25. 統合部隊指揮官(JFC)を支援または報告する陸軍の軍団、師団、および旅団は、陸軍のプロセスを使用して下位の部隊階層と並行して計画策定する場合でも、統合計画策定プロセスを理解し、それに貢献する必要がある。これは、長距離でネットワーク接続が散発的な戦場において、部隊の状況認識(situational awareness)と同期化に影響を与える、拡大した戦場での作戦遂行を成功させることに直接的に寄与するものである。(統合計画策定プロセスの計画策定と実行に関する追加情報については、JP 5-0を参照)。

7-26. 海洋環境での作戦計画には、陸軍部隊と統合部隊司令部の他の関連構成部隊との協力、および各部隊階層における用兵機能と統合機能の横断的一体化が必要である。理想的には、指揮官とその参謀が同じ場所で計画策定を行うべきであるが、場合によっては艦内や空中で行うこともある。これが現実的でない場合、連絡将校の交換により、計画策定機能を促進することができる。計画策定の取組みは、特に危機的状況において、関係する部隊階層と各軍種の間で並行して協力的に実施される。これは、海上の長距離を移動する強襲作戦(assault operation)においては、極めて重要である。一体化した計画策定は、機能分野の計画策定者を中心に、下位および支援司令部の連絡担当者を含む作戦計画策定チームを編成することで、促進される。陸軍の用兵機能セル(warfighting function cells)と統合機能を連携させることで、一体化した計画策定が可能になる。

作戦上のフレームワークの適用:APPLYING THE OPERATIONAL FRAMEWORK

7-27. この作戦フレームワークを海洋環境に適用する場合、指揮官と参謀は海洋表層部の影響と海洋部隊との一体化を考慮する必要がある。また、何が縦深作戦、近接作戦、後方作戦を構成しているのか、相互の関係で異なる認識を持つ必要がある。水域による部隊の物理的分離は、多くの作戦が非連続の作戦地域(AO)を含む可能性が高いため、相互支援に関する考察に影響を与える。陸軍の各部隊階層は、海上の情報収集や、他の軍種を支援するための海上および沿岸地域(littoral regions)への火力を担当することがある。陸軍部隊は、敵の水陸両用襲撃に対する防御を求められることがあり、海軍および海兵隊部隊との戦術的な調整が必要となる。陸軍部隊はまた、統合作戦を支援するため、水上で水陸両用上陸作戦または空挺・空襲作戦を実施することもある。強行突入のような、従来は近接していると考えられていた作戦は、島嶼や海上基地間の距離に基づいて、深い地域まで拡大することができる。戦術支援地域は、距離が離れていることもあり、戦術レベルの後方支援や戦術機動部隊を支援するために、水上艦やその他の共同能力を使用して、海上の後方連絡線(logistics lines of communications)を確保する必要がある。

責任地域内での統合作戦地域の割り当て:ASSIGNING A JOINT OPERATIONS AREA WITHIN AN AREA OF RESPONSIBILITY

7-28. 統合軍(Unified Command)計画は、責任地域(AOR)を指定する。その責任地域(AOR)内で、より大きな海洋環境は、指揮・統制(C2)と資源の優先順位付けを容易にするために、いくつかの統合作戦区域を持つかもしれない。例えば、米国インド太平洋軍は、南シナ海での作戦のための統合作戦地域(JOA)と、韓国での作戦のための統合作戦地域(JOA)を指定することができる。両統合作戦地域(JOA)とも、独自の指揮・統制(C2)、移動と機動、後方支援、インテリジェンス、火力、防護の計画策定と資源を必要とする。これには、統合作戦地域(JOA)とその中の特定の陸軍作戦に特化した一体化を促進するための、適切な陸上構成部隊司令部と参謀の指定も含まれる。統合作戦地域(JOA)は、責任地域(AOR)内の作戦で、その範囲や期間が特殊または限定されている場合に設定され、統合部隊指揮官(JFC)は統合任務部隊(JTF)として軍事作戦を指揮する。

統合警戒地域の指定:DESIGNATING A JOINT SECURITY AREA

7-29. 統合作戦地域(JOA)内では、統合部隊指揮官(JFC)は多数の統合警戒地域(JSA)を指定する。海洋環境では、統合警戒地域(JSA)はかなりの距離で区切られることがあり、それらはおそらく活発に戦闘で交戦が行われている地域ではない。戦域軍司令部または戦域後方支援コマンド(TSC)は、任務の要求に応じて、指定された単一の統合警戒地域(JSA)から、または複数の場所から戦域後方支援作戦を行うことが求められる場合がある。また、陸軍部隊は、統合警戒地域(JSA)と重要な中間準備基地を確保するために指定されることもある。(統合警戒地域(JSA)における作戦の計画策定と実行に関する追加情報については、JP 3-10を参照。)

作戦地域の割当て:ASSIGNING AN AREA OF OPERATIONS

7-30. 作戦地域(AO)とは、陸上および海上部隊の指揮官が定義する作戦上の地域のことである。統合部隊指揮官(JFC)は陸上作戦地域を指定する。海洋環境では、下位の作戦地域(AO)を指定することで、行動の自由を確保し、テンポを維持し、利用可能な戦闘力を最大化することができる。より大きな島の広大な陸地(land masses)は、陸軍部隊に、部隊の境界線が直接隣接しているため、連続した作戦地域(AO)で作戦を行うことを可能にする。小規模な群島であれば、作戦地域(AO)は非連続であり、作戦上の要求と脅威によっては、指定された作戦地域(AO)内に友軍部隊が全くいない島嶼もありうる。図7-2は、重要な海域を持つ軍団の作戦地域を想定したものである。

図7-2.海域を含む想定される軍団の作戦地域

海洋環境での縦深作戦:Deep Operations in Maritime environments

7-31. 海洋環境における縦深作戦は、情報収集、特殊作戦部隊、および火力を使用して、敵の接近阻止(A2)および領域拒否(AD)能力を撃破し、統合攻撃作戦のための条件を整えることに重点を置くことができる。また、同じ能力を用いて、統合防衛作戦を支援するための偵察と警戒活動に重点を置くこともある。いずれの場合でも、陸軍のインテリジェンス能力は、拡張された縦深地域での作戦を支援し、統合部隊指揮官(JFC)が作戦環境を理解・視覚化して、その後の作戦で火力または機動部隊を編成することを可能にする。陸軍の火力アセットは、島嶼に拠点を置く敵部隊を航空攻撃するために敵の防空を抑圧したり、敵の海軍部隊を撃破するために水上火力を行って、他の構成部隊コマンドを支援する役割に指定されることもある。陸軍部隊の水陸両用上陸を含む統合強行突入作戦は、特定の統合作戦地域(JOA)における敵の接近阻止(A2)または領域拒否(AD)アプローチの崩壊を開始または利用するために、緊要地形を奪取することができる。

海洋環境での近接作戦:Close Operations in Maritime environments

7-32. 海洋環境での近接作戦は、第6章で述べた伝統的な陸上を基盤とするアプローチとほぼ同じに見えるかもしれない。緊要地形を確保するためには、陸軍部隊は攻撃作戦を行う必要があり、これには空挺、空襲、水陸両用襲撃が含まれることがある。近接作戦には、飛行場や港湾など、統合作戦を促進する島嶼や島を基地化したノードの防御も含まれる。統合作戦の成功に不可欠な前方展開陸軍部隊の一部が孤立した本質を考えると、これらの部隊は追加部隊が到着するまでの長期間、防衛作戦を実施することが求められる場合がある。後方支援計画策定では、数週間以上の孤立を想定する必要がある。

緊要地形の確保や防衛は、地対地または地対空火力能力を配置し、他の構成部隊コマンドを有効にするために必要な場合がある。

海洋環境での後方作戦:Rear Operations in Maritime environments

7-33. 海洋環境での後方作戦は、戦域を設定・維持し、統合部隊の戦闘作戦を促進するために必要な活動を含む。これらの作戦には、防護された「受入れ(reception)、準備(staging)、前方移動(onward movement)、一体化(integration)(RSOI)」の実施と、戦域後方支援の実施が含まれる。「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」は、部隊が戦闘に従事する場所から数千マイル離れた場所で行われることもある。このような作戦では、重要な統合資源の優先順位を確保し、脆弱で延長された空と海の後方連絡線(logistics lines of communications)に対するリスクを軽減するため、計画策定プロセスで統合一体化を強化する必要がある。

7-34. 後方支援作戦と防護作戦は支援地域と関連しており、戦闘力の構築と維持を可能にする。広大な陸地(land masses)に配置された部隊は独自の支援地域を持つが、広大な水域は様々な部隊階層化された支援地域間の人員と装備の準備と移動のために水上または航空輸送を必要とする場合がある。支援地域は海上にある場合もあれば、陸上の島嶼にあり、海や空の後方連絡線(logistics lines of communications)で結ばれている場合もある。これらの戦略的・戦術的支援地域は、敵の攻撃に対して脆弱な重要なアセットであり、通常、対潜水艦や戦域防空・ミサイル防衛(AMD)などの警戒上の考慮を高めることを必要とする。

第III節-海洋環境についての作戦上の考慮事項:SECTION III – OPERATIONAL CONSIDERATIONS FOR A MARITIME ENVIRONMENT

敵対する部隊を前にしての外国海岸への上陸は、常に戦争の最も困難な作戦の一つであった。

バジル・H・リデル・ハート英陸軍大尉

7-35. 主として海洋統合作戦地域(JOA)では、海軍構成部隊と航空構成部隊が統合部隊指揮官(JFC)の作戦アプローチの主要な構成部隊であるのが通例である。陸軍部隊は、統合部隊指揮官(JFC)の計画を反映し、それを支援する入れ子式の作戦アプローチを開発する。本節では、陸軍部隊が作戦アプローチを統合部隊とうまく連携させるために考慮すべきことを詳述する。(作戦アプローチ策定に関する陸軍の推奨事項に関するより詳細な議論については、ATP 5-0.1を参照されたい。統合作戦計画策定プロセスのより詳細な議論については、JP 5-0を参照されたい)。

指揮・統制の確立:ESTABLISH COMMAND AND CONTROL

7-36. ほとんどの海洋環境では、責任地域(AOR)の大きさと陸地間の距離を考えると、複数のアクティブな統合作戦地域(JOA)が存在し、それぞれが別の司令部を持つ可能性がある。海洋環境は、戦域軍の通信アーキテクチャおよび後方支援アーキテクチャに大きな課題を突きつける。下位のARFORは、これらの課題を克服するために、海上能力および宇宙能力に依存している。

緊要地形の防御と統制:DEFEND AND CONTROL KEY TERRAIN

7-37. 友軍部隊は海洋戦域(maritime theater)の分散した前方位置に駐留または配置され、海洋戦域(maritime theater)全体の統合作戦を促進するために、しばしば数十年間もそこにいることがある。その位置は通常、重要な、あるいは決定的な地形であり、陸軍部隊はその地形を防衛し統制する能力も必要である。その能力は、能動的・受動的な防衛手段、重要な兵器システムの強化、指揮所の硬化と偽装、重要な指揮・統制(C2)ネットワークの確保、持続性、および防護指向の陸上部隊の採用によって決まる残存性の機能である。早期警戒を含む能動的・受動的な防空・ミサイル防衛(AMD)を提供することで、敵の長距離火力や攻撃の有効性を低下させることができる。前方配置部隊(Forward-positioned forces)は、必要な限り、数で劣り、露出した地形、特に島から闘う準備をしなければならない。このため、責任地域(AOR)全体の警戒と前方展開の後方支援能力の必要性が高まる。陸軍部隊は、自陣の残存性を継続的に向上させることにより、移動性の低い自軍のアセットの防護を強化する。

7-38. 敵部隊の相対的優位性を失わせるという統合部隊指揮官(JFC)の目標を成功させるためには、対偵察や警戒活動を含む効果的な防衛によって、重要な島の地形を維持することが不可欠である。重要な広大な陸地(land masses)を維持することで、空と海のドメインでの作戦のための統合の行動の自由を可能にし、よって陸上を基盤とする能力は永久的な物理的プレゼンスを維持できるため、航空部隊と海軍部隊の接近経路を安全にするための要求を軽減することができる。敵の指揮・統制(C2)システムの撃破は、レイヤー化されたスタンドオフ、接近阻止(A2)兵器、早期警戒、敵の偵察・監視能力を撃破するための鍵となる。接近や警戒のために緊要地形を維持する能力により、統合部隊指揮官(JFC)は重要な長距離火力および防護能力を使用することができる。これにより、武力紛争間に、海上航行の自由と制空権の確保に重要な地域への接近が可能になる。緊要地形を占拠して、限られた地形、海路、空域、サイバースペースへの敵の接近を拒否することは、優位性を生み出すために極めて重要である。露出した島の基地からの脱出や、敵の射程外の位置への機動は容易ではないため、基地の物理的強化は、陸軍部隊が統合部隊を成功させるために不可欠となる場合がある。

防御の防護支援:PROTECTION SUPPORT TO THE DEFENSE

7-39. 海洋戦域(maritime theater)では、前方に配置された部隊が相対的に孤立し、ほとんど兆候や警告なしに発動される脅威の能力にさらされるため、他の軍種の安全を防護・増強する能力が極めて重要である。以下のタスクは、戦域設定を直接支援し、統合海上作戦の成功に不可欠である。

・ 防空・ミサイル防衛(AMD)、対無人航空機システム(UAS)を含む。

・ 沿岸防衛

・ 地域警戒(基地・基地群防衛)。

・ 化学、生物、放射線、核(CBRN)防衛。

・ 爆発物処理(EOD)支援

・ 一般・戦闘・地理空間工兵支援

7-40. 地上を基盤とする戦域レベルの防空・ミサイル防衛(AMD)アセットは、通常、統合作戦地域(JOA)の陸軍防空ミサイル防衛コマンド(AAMDC)に作戦統制(OPCON)される。陸軍防空ミサイル防衛コマンド(AAMDC)は戦域軍に配属され、一般に地域防空指揮官を支援する位置にある。陸軍短距離防空(SHORAD)部隊は、戦域、軍団、または師団司令部に配属または所属し、これらの部隊階層の防空砲兵(air defense artillery :ADA)指揮官に作戦統制(OPCON)される。陸軍部隊は、防衛アセット・リストの一部として短距離防空(SHORAD)アセットを警戒計画に組み込むことを含め、指定された高優先度アセットの警戒を提供する。統合部隊指揮官(JFC)は通常、防空指揮官として、航空およびミサイルの脅威に対する交戦の権限を統合部隊航空構成部隊指揮官に委譲する。統合部隊指揮官(JFC)が統合部隊を編成する場合、統合部隊航空構成部隊指揮官に加え、統合部隊指揮官(JFC)は通常、防御的対空のための地域防空指揮官と統合空域統制のための空域統制官を指定する。通常、統合部隊指揮官(JFC)は航空構成部隊指揮官を地域防空指揮官および空域統制権者に任命するが、これは3つの機能が互いに不可欠であるためである。また、重要な統合基地の防空・ミサイル防衛(AMD)の役割を果たす統合海上構成部隊指揮官の水上戦闘員との調整と一体化も必要である。地域防空指揮官は、構成部隊指揮官の支援を得て、統合部隊指揮官(JFC)承認の統合地域防空計画を作成し、一体化し、配布する。(防空・ミサイル防衛(AMD)の計画策定と一体化に関する詳細な情報は、FM 3-01またはATP 3-01.15を参照)。

7-41. 戦域および戦術的防空砲兵(ADA)部隊は、センサーを使用して空とミサイルの脅威を探知し、防空警告を米軍部隊、同盟部隊・パートナー部隊、および民間人に伝達することによって早期警戒を提供する。指揮・統制(C2)要素は様々な通信ネットワークやノードを通じて防空早期警報を発信し、ネットワークへの脅威の到来や解除メッセージの送信を含む。(防空・ミサイル防衛(AMD)作戦に関連する早期警戒タスクの詳細については、FM 3-01を参照)。

7-42. 海洋環境にある陸軍部隊は、陸上作戦が敵に監視されていることを想定し、特に長距離や広大な水域によって隔てられている場合は、防空・ミサイル防衛(AMD)の防護が作戦地域(AO)まで及ぶと想定すべきではない。友軍空間に侵入する大型の航空脅威は早期に発見し、航空部隊の統合部隊指揮官(JFC)に対する役割と責任の一部として、識別、処理、撃退することが可能である。海軍や商業船舶、その他の広大な陸地(land masses)から発射される可能性のある無人航空システム(UAS)を発見(探知、識別、撃破準備を含む)する要求は依然として残っている。長距離・短距離レーダー、光学装置、無線、可聴警報システムなどのセンサーは、影響を軽減するのに十分な距離で小型の戦術的無人航空システム(UAS)を探知することに課題を抱えている。(対無人航空システム(UAS)計画策定と実行の詳細については、ATP 3-01.81を参照)。

7-43. 統合部隊指揮官(JFC)は通常、統合警戒地域(JSA)を指定し、基地、基地群、および後方連絡線(logistics lines of communications)の安全を提供する部隊を指定する。専従の陸軍部隊、連合軍パートナー、ホスト国軍など、さまざまなタイプの警戒部隊が統合警戒地域(JSA)と後方連絡線(logistics lines of communications)を確保することができる。基地と基地群は、比較的小さな島であっても互いに非連続であることがあり、また、長距離や広大な水域によって隔てられていることもある。

7-44. 陸軍指揮官は、地域指揮官、基地群指揮官、基地指揮官などの役割を与えられるが、これらはすべて陸軍および他の軍種部隊を支援する基地防衛を促進するものである。基地の脅威には、特殊作戦部隊、艦砲火力、長距離地対地火力、有人・無人の航空機などがある。警戒部隊は、間接・統合火力支援のための調整が可能で、高度な戦術的移動性を持ち、指揮・統制(C2)が合理的な範囲にあることが必要である。(基地防衛と後方連絡線(logistics lines of communication)の警戒に関する統合要求の詳細については、JP 3-10を参照。基地の設置と警戒の技術についてはATP 3-37.10を参照のこと)。

7-45. 脅威による化学、生物、放射線、核(CBRN)兵器の使用は、除染が完了するまで、あるいは陸上構成部隊指揮官が汚染された環境で作戦するリスクを負うまで、友軍部隊あるいは敵部隊の港、飛行場、あるいは中継地などの緊要地形への接近を不能にすることができる。陸軍部隊は脅威の意図、兵器の能力、兵器の効果を理解する必要がある。脅威は、野戦砲やロケット弾から戦域用弾道ミサイルに至るまで、多岐にわたる。運搬戦術には、公然または秘密の手段(例えば、特殊作戦部隊)、国家が支援するテロリズム、その他の非対称的な方法が含まれる可能性がある。汚染緩和は、統合作戦地域(JOA)の全体的な汚染緩和計画の一環として、要員と任務上不可欠な機器を任務遂行可能な状態に戻すのに必要な時間を最小限に抑えるものである。(警戒活動中の化学、生物、放射線、核(CBRN)と汚染の軽減技術に関するより詳細な情報については、ATP 3-11.32を参照)。

7-46. 爆発物処理(EOD)部隊は、大量破壊兵器を含む爆発物の探知、識別、現場での評価、警戒、利用、廃棄、その他の処分を行う。また、即席爆発装置やその他の爆発危険物に対する脅威について、最も効果的な撃退方法を含めて指揮官に助言を行う。また、港湾、飛行場、その他の重要なインフラの使用を危険にさらす爆発性危険物を安全にするための要求も直接的に支援する。爆発物処理(EOD)部隊は、航空機の離発着港や海港の施設、海港を支援する他の施設への接近を確保する地域の修復を支援することができる。(兵器に関する統合一体化と陸軍の役割についてのより詳細な議論については、JP 3-42を参照。爆発物処理(EOD)の技術に関する詳細な情報については、ATP 4-32を参照)。

7-47. 作戦上緊要地形として特定された島嶼は、飛行場、港湾、残存性ある場所などの統合部隊指揮官(JFC)の要求を満たすため、既存の重要インフラを固めるか、新しいインフラを建設するための追加の技術支援を必要とするのが一般的である。建設機械、人員、および物資は、空路または海路で移動するための重要なアセットとして、特定の輸送の調整と優先順位付けを必要とすることが多い。工兵の支援が得られない遠隔地では、現地調達または契約による建設能力か、残存性対策の一環として敵の観測から可能な限り隠蔽された人力による残存性陣地の建設が必要となる。(一般工兵及び戦闘工兵の能力の採用に関する基礎及び計画策定上の考慮事項についてはFM 3-34を参照せよ。防護陣地、偽装、残存性向上に関する具体的な技法や考察はATP 3-37.34を参照)

海洋環境での警戒活動:SECURITY OPERATIONS IN MARITIME ENVIRONMENTS

7-48. 統合部隊指揮官(JFC)は基地と後方連絡線(logistics lines of communication)の警戒を担当する地域指揮官を指名するが、警戒タスクの大部分は通常、陸上部隊指揮官の責任である。基地警戒を行う陸上部隊と海の後方連絡線(logistics lines of communications)の警戒を行う海・空軍との共同の計画策定と一体化は、戦闘作戦のための航行の自由を維持するために極めて重要である。陸軍部隊は、指定された統合作戦地域(JOA)内のすべての基地に警戒支援を提供する。旅団戦闘チーム(BCT)、憲兵旅団、および機動強化旅団は、この機能に適している。この責任には、多国籍連合軍や他の統合の軍種など、地域指揮官の部隊に属さない組織が指揮する基地も含まれる。統合部隊指揮官(JFC)は、責任地域(AOR)内のすべての司令部や基地に標準的な部隊防護方針を制定し、取組みの統一(unity of effort)を確保することができる。

7-49. 統合部隊陸上構成部隊指揮官(JFLCC)は、統合作戦地域(JOA)の警戒計画を支援するため、他の統一行動パートナー部隊とともに、統合部隊指揮官(JFC)によって統合警戒調整官に指定されることがある。統合警戒調整官は、統合部隊指揮官(JFC)の指示と優先順位に従って、統合警戒地域の全体的な防護を調整する。これは、必要条件と優先順位が、地域の防空指揮官と調整されることを保証する。統合警戒調整官は通常、統合警戒調整センターを設置する。このセンターの参謀は、統合部隊陸上構成部隊指揮官(JFLCC)本部の一部である場合もあれば、下位の部隊に委任される場合もあり、通常、統合警戒地域(JSA)内で活動するすべての部隊からの代表者を含み、統合警戒要求の達成を支援する。

7-50. 全ての基地のある島は、その規模にかかわらず、紛争開始時に直ちに援軍が得られない場合に十分な防御を確保するために、同程度の包括的な計画策定を必要とする。陸軍部隊は、小部隊や特殊作戦地上部隊による敵の直接攻撃、攻撃機、間接火力を想定しておく必要がある。指揮官は、危機や紛争のかなり前に、小規模な部隊の活動(レベル1またはレベル2の脅威を含む)を探知し、撃退するために、基地防衛対策が十分であることを確認しなければならない。分散は長距離火力や攻撃機の影響を軽減するが、小さな島嶼での分散は常に可能とは限らない。この脆弱性を補うには、建設、増援、物資の備蓄が第一の選択肢となるが、脅威の能力の範囲内であれば、どこでも必要である。

7-51. 緊要地形やインフラの警戒が成功するかどうかは、専門の警戒部隊と即応性のある後方支援部隊と防護部隊(衛生、防空砲兵(ADA)、工兵を含む)からなる一体的かつ積極的な計画によって決まる。戦域軍は基地警戒計画を同期化し、統合部隊指揮官(JFC)全体の意図に一体化し、戦闘作戦に必要な後方支援ノードや指揮所、緊要地形、重要インフラを確保するために追加部隊を割り当てる。遠隔の島の基地にも同じ警戒の計画策定の考慮事項があるが、環境に応じてその戦術的適用が異なる。これらの検討事項には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない。

・ 敵の特殊作戦部隊や海軍の火力など、海上からの攻撃に対する防御

・ 沿岸部の間接火力システムの一体化と適用、および火力支援計画策定

・ 前方給弾・給油地点の移動と防護を含む航空支援に関する一体化した計画策定

・ 沿岸・港湾の警戒支援と敵国または現地の警戒部隊の一体化

・ 沿岸防壁システム、海上障害物、海上または港湾地雷の一体化

(統合警戒調整指揮所の詳細については、JP 3-10を参照。防護と防護の計画策定の基礎に関するより多くの情報は、ADP 3-37を参照)。

敵の接近阻止と領域拒否の構成要素の撃破と統合攻勢作戦を可能にする:DEFEAT COMPONENTS OF ENEMY ANTIACCESS AND AREA DENIAL AND ENABLE JOINT OFFENSIVE OPERATIONS

7-52. 陸軍部隊は、敵の統合防空、火力・打撃複合体、監視・偵察、一体化した指揮・統制(C2)ネットワークの統合撃破を支援し、統合作戦中の成功を可能にする。陸軍の重要な貢献は、防空・ミサイル防衛(AMD)と火力支援であり、陸・海・空の各軍が作戦環境の様々な地域への接近を維持できるようにすることである。

戦域防空・ミサイル防衛(AMD)の提供:PROVIDE THEATER AIR AND MISSILE DEFENSE

7-53. 友軍の防空砲兵(ADA)部隊は、戦闘力と戦域後方支援の流れを可能にするため、航路や港湾などの海上接近ポイントを防護することができる。海洋環境における防空・ミサイル防衛(AMD)活動において、防空砲兵(ADA)能力を使用する際の考慮点は以下の通りである。

・ 中距離・短距離・近距離弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人航空システム(UAS)、ロケット砲、野戦砲、迫撃砲、戦術空対地ミサイル、固定翼・回転翼機など、戦略・戦術作戦で遭遇する敵航空・ミサイル脅威を撃退する。

・ 統合作戦地域(JOA)内で防空・ミサイル防衛(AMD)作戦を行う他の軍種および多国籍軍、兵器システム、センサー、エフェクター、各部隊階層における指揮・統制(C2)ノードとの戦術的データリンクを一体化し、維持する。

・ 航空・ミサイル攻撃の早期警戒と攻撃警報を伝達する。

・ 空域の広域監視を行い、困難な地形や悪天候の中、地上付近から高高度までの空中物体を探知、捕捉、追跡、分類、識別、特定する。

・ 統合作戦地域(JOA)空域の陸軍アセットを特定、調整、一体化、紛争解除することにより、空域管理・統制機能に貢献する。

7-54. 多数の島嶼における重要なアセットの数と分散は、利用可能な防空砲兵(ADA)部隊の空とミサイルの脅威に対する防御能力を超える可能性がある。特に離島では、十分な能動的防空砲兵(ADA)能力や遠隔の島嶼からの増援が得られないため、戦術的な編成による受動的防空・ミサイル防衛(AMD)手段の採用が残存性に不可欠である。OTH通信と冗長通信を備えた早期警報ネットワークへの接近は、反応時間を延ばし、主に受動的防御手段を用いている遠隔地のリスクをさらに軽減させる。(防空・ミサイル防衛(AMD)作戦に関連する計画策定の考慮事項に関するより詳細な情報は、FM 3-01を参照)。

強行突入作戦:FORCIBLE ENTRY OPERATIONS

7-55. 海洋環境では、陸軍部隊は空挺または航空攻撃と水陸両用上陸という、2つの複雑な形態の強行突入作戦を行う可能性がある。強行突入作戦は、武装した敵に対抗して宿営地を占領・保持し、後続作戦のための条件を整えるものである。強行突入作戦を成功させるために有利な条件を設定するために、指揮官と参謀は以下のことを行わなければならない。

・ 突入場所を可視化し、他のドメインが強行突入作戦に及ぼす影響を把握する。

・ 空域(air areas)と海域(maritime areas)を統制し、部隊を防護するとともに、突入に至るまでの後方連絡線(logistics lines of communications)を確保する。

・ 突入時の敵の影響を遮断する。

・ 宿営地を敵部隊の増援から隔離する。

・ 作戦期間中、宿営地への接近を維持し、戦闘力を強化・維持する。

・ 宿営地を管理し、他の支援作戦を一体化する。

・ 突入作戦の間、奇襲を行うために主導権を握り、維持する。

7-56. 統合部隊指揮官(JFC)は、強行突入作戦を同時の作戦として行うか、一体化した作戦として行うかを決定する。同時強行突入作戦は、水陸両用攻撃、空挺、航空、または地上強襲強行作戦の組み合わせが同時に行われるが、別々の作戦地域(AO)と目的を持つ別個の作戦として行われる場合である。一体化した強行突入作戦は、水陸両用攻撃、空挺攻撃、航空攻撃、地上強行突入が、同じ作戦地域内で、相互に支援する目標に対して同時に実施される場合に起こる。大きな島の広大な陸地(land masses)では、米海兵隊と同盟部隊またはパートナー部隊を含む一体化した強行突入が必要になる場合がある。小規模な群島では、警戒活動や、より大きな目標に対する後続の主たる取組みと支援する取組みを可能にするため、同時に強行突入を行う必要が生じる可能性がある。

7-57. 地上、海上、または航空による強行突入作戦は、調整と同期化を促進するため、すべて同じフェーズモデルを使用する。これらの段階は、準備と展開、襲撃、宿営地の安定化、後続部隊の導入、そして終了または移行作戦である。強行突入のための計画策定には、以下の計画策定も含まれる。

・ 水上の後方連絡線(logistics lines of communications)の拡張による移動計画策定

・ レイヤー化され一体化された早期警報による敵に対する情報収集

・ 後方連絡線(logistics lines of communications)やネットワークが水上に延長された場合の移行管理

・ 特殊作戦部隊の投入

・ 共同上陸地点における制空権の確保

・ 初期突撃及び主たる突撃のための初期及び増援部隊の調整

・ 潜在的中間準備基地の設置及び運用

・ 海岸から島内への宿営地の確保、組織、拡張

(陸軍部隊の役割、責任、および統合強行突入作戦の計画策定に関するより詳細な議論と情報については、JP 3-18を参照されたい)。

水陸両用作戦:AMPHIBIOUS OPERATIONS

7-58. 水陸両用作戦の計画策定は継続的であり、すべての参加部隊による共同、並行、および詳細な計画策定が必要である。水陸両用作戦の組織は、作戦の各段階において計画された目標を達成し、予期せぬ展開を考慮できるよう、十分に柔軟であるべきである。健全な計画策定では、指揮の統一、集権化した計画策定と指示、および実行の分散化により、取組みの統一(unity of effort)を図ることができる。統合部隊指揮官(JFC)は、計画策定を一体化し、統合部隊指揮官(JFC)の統制範囲を狭めるために、機能的な部隊司令部を設立することを決定することができる。これにより、情報の流れ、兵器システムの管理、各構成部隊の相互作用、取組みの統一(unity of effort)、または機動の計画(scheme of maneuver)の統制の効率が改善される。どのようなアプローチであっても、統合部隊指揮官(JFC)は水陸両用任務部隊(amphibious task force)と上陸部隊の指揮官の指揮関係を指定する。水陸両用部隊指揮官の支援と支援の役割の指定は、主たる取組みと支援の取組みを確立し、資源に優先順位を確立するため重要である。

7-59. 海洋環境における敵地上陸は、最も困難で危険な軍事作戦の1つであるため、奇襲の要素は利用可能なすべての手段によって追求されるべきである。奇襲の要素を脅かす露骨な活動は最小限にとどめ、統合作戦地域(JOA)に統合火力支援アセットが到着するのと現実的に近い時期に実施すべきである。欺瞞作戦は、敵が予想する行動方針や計画とは異なる実行スケジュールを描写すれば、奇襲を容易にすることができる。防衛された海岸堡を攻撃する際、欺瞞作戦は必要不可欠である。大きなレーンでは、突撃前に多数の兵器と複数の航空機が通過してゾーンを確保する必要がある。このため、代替レーンにも火力を加えなければ、上陸部隊の注意を引くことができる。

7-60. 上陸部隊は通常、機動部隊、防護部隊、戦術的部隊階層の後方支援部隊から構成される。統合部隊指揮官(JFC)は上陸部隊の指揮官を指名する。陸軍部隊が上陸部隊の一部である場合、上陸部隊を支援するための適切な戦闘能力および後方支援能力を備えたタスク編成でなければならない。陸軍部隊はまた、上陸用舟艇、荷役、兵站、交通管制、工兵などの戦域内の艦船から陸上への輸送能力を提供する。

注:統合部隊指揮官(JFC)が機能別に計画策定を編成する場合、機能別戦闘軍指揮官は通常、親軍種の部隊に対して作戦統制(OPCON)を行使し、タスク化のために配属または利用される他軍種の部隊に対して戦術統制(TACON)を行使する。

7-61. 水陸両用作戦の実行前に条件を設定することは重要である。条件を整えるための作戦には、支援作戦と上陸前作戦がある。これらの作戦には、すべての部隊階層における詳細な一体化と、陸軍および統合能力の高度な同期化が必要であり、これにより、増援や支援が容易に得られない状況下で、成功を補強し、上陸部隊の残存性を確保することができる。強行突入の計画策定には、以下の計画策定も含まれる。

・ 大規模な統合欺瞞作戦の一環としての部隊隠蔽

・ 輸送路、上陸用砂浜、陸上後方支援ノード付近の機雷除去

・ 上陸地点や海上突入路の海上偵察

・ 気象・潮汐の正確な予測

・ 航空衛生搬送や攻撃航空などの支援航空資源の接岸

・ 地雷を含む上陸障害物の突撃排除と海岸掃討

・ 上陸部隊の隠蔽と民間人の犠牲を防止するための民間人・住民の居住地域の状況

7-62. 上陸前作戦は、行動段階の開始(水陸両用部隊が作戦地域に到着)から艦から陸への移動の間に行われる。支援活動と上陸前作戦の間に明確な移行があることはまれであり、これは計画され、実行前に各部隊階層に明確に伝えられなければならない。この段階での計画策定の検討事項には、次のようなものがある。

・ 障害物除去(周辺及び主要障壁地雷原、上陸部隊の運河となる工兵及び海岸障壁を含む)及び後続部隊のために使用可能な海及び海岸の水路を示すこと。

・ 海軍の火力支援の一体化

・ 上陸部隊と水陸両用任務部隊(amphibious task force)の間の電磁戦および空域を含む航空支援の一体化

・ 上陸地点における火力の掃討

・ 上陸前の弾薬及び燃料の消費

・ 上陸前の装備の損失と回復

・ 上陸前の人員損失及び死傷者の回復

・ 水陸両用部隊の補給と再武装のスケジュール

・ 上陸突撃前後の他部隊の支援に必要な上陸部隊の要求

・ 予備役の編成と配置は強襲部隊と同様

7-63. 水陸両用作戦の間、指定された上陸地点以外の補助上陸は通常、主上陸を支援するために水陸両用任務部隊(amphibious task force)の要素によって行われる。副次的上陸は、主上陸と同じ精度で指揮官が計画し、実行されるべきである。後続の作戦のための水陸両用再上陸には、特殊部隊または他の軍種部隊からの追加支援と、紛失または破損した装備や消耗した物資を交換するための追加後方支援が必要な場合がある。戦術的部隊階層にとって、戦闘用ゴムボート襲撃艇(combat rubber raiding craft)は、偵察目標や補助上陸地点への移動、海岸から水路に沿って内陸への部隊の移動、または支援船への死傷者の回収など、水陸両用作戦に柔軟性を与えることが可能である。さらに、陸軍の計画策定では、死傷者と患者の継続的な衛生処置、化学、生物、放射線、核(CBRN)除染の可能性、遺体の輸送または霊安室サービスの要求、敵の抑留者の輸送と移送、陸上の基本的な栄養を支えるための後方支援を考慮する必要がある。(統合水陸両用作戦の計画策定と実行の基本に関するより多くの情報については、JP 3-02を参照のこと。水陸両用乗船に関するより詳細な情報と考察についてはMCTP 13-10Mを参照。船から海岸への移動と海岸および水際作業班(beach parties)の指揮・統制(C2)に関する戦術的考察は、ATP 3-17.2を参照のこと)。

海洋環境での大規模戦闘作戦の維持:SUSTAIN LARGE-SCALE COMBAT OPERATIONS IN MARITIME ENVIRONMENTS

7-64. 海洋戦域(maritime theater)の設定と維持には、人員と装備の「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」と、戦域防空・ミサイル防衛(AMD)、飛行場、港、シーレーンなどの主要戦略アセットの警戒に重要な前方配置部隊(Forward-positioned forces)の防護が含まれる。陸軍の水上艦艇(Army watercraft)は、特に戦闘力と後方支援の戦域内移動に関連する任務を遂行するよう設計されているため、海洋環境における後方支援に不可欠である。陸軍の水上艦艇(Army watercraft)は、戦略的距離を展開できるものの、戦略的揚陸プラットフォームではないが、戦略的揚陸と陸上指向の戦術的移動の間の重要なリンクである。陸軍と海軍の工学アセットは、港湾施設の設立と維持に不可欠である。

防護された「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」の確立:ESTABLISH PROTECTED RECEPTION, STAGING, ONWARD MOVEMENT, AND INTEGRATION

7-65. 海洋作戦環境での武力紛争中、戦域開設と「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」は、統合部隊指揮官(JFC)の任務要求を満たすために変化する。戦域工兵コマンドは、「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」とその後の作戦を支援するために必要なインフラ(港や道路を含む)の整備と維持に責任を負う。複数の島嶼が複数の港を必要とする場合、それらを建設、開発、維持、運用するための専門の工兵編成と後方支援編成の要求が高まる。

7-66. 一体化された場所から効率性を得るよりも、戦域軍は複数の統合警戒地域(JSA)と「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」サイトを支援することが求められるかもしれない。複数の「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」拠点を使用することは、戦域の全体的な通信(signal)、後方支援、防護、および機動の要求を増加させる。「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」の要素としてよく見落とされるのが、実施しなければならない必須の戦闘訓練である。戦域後方支援コマンド(TSC)の職員はこの訓練を行わないので、機動部隊がその人員を提供しなければならない。「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」の場所が増えれば、より多くのトレーナーが必要になる。

7-67. 複数の統合警戒地域(JSA)と統合作戦地域(JOA)は、作戦を支援するために必要な指揮・統制(C2)アーキテクチャを開発するため、戦域軍は戦域信号旅団を支援するための信号アセットを追加要求する必要があると思われる。戦略信号旅団と戦術信号旅団は、戦域と統合作戦地域(JOA)の通信ネットワークを支援するために、大幅な増強が必要になる。陸軍部隊は、長期の展開時間を考慮しながら、沿岸、港湾、内陸水路の防衛を維持する。また、重要な防護、火力、移動性アセットが、責任地域(AOR)および統合作戦地域(JOA)内の多数の島嶼に分散している場合があり、乗船前の詳細な調整と積荷の再構成が必要となる。

注:陸軍部隊が作戦する様々な島嶼の本質や海洋環境を考えると、「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」が統合作戦地域(JOA)外で行われるシナリオも多く、島への強行突入作戦の直前に陸軍部隊の前方移動が行われる場合もある。これも敵の状況により、島によって変化する可能性がある。

7-68. 海洋環境では、統合作戦地域(JOA)に移動する前に、「受入れ、準備、一体化」の活動が必要になることがある。部隊の基本的な積荷の確保とアップロード、要員の生命維持への対応、または航路の再構成のプロセスは、戦闘に直接乗り出す前に行われなければならない。残存性に不可欠な物資(クラスIV:建築資材とクラスV:弾薬類)の整備や積み替えを含め、準備に広範な支援を必要とする部隊は、出発地点に進む前に統合作戦地域(JOA)外で中間準備基地を必要とする場合がある。さらに、部隊は「受入れ、準備、一体化」の順番に関係なく、前方移動を実行することができる。部隊は、乗船中または統合作戦地域(JOA)外の中間基地での再構成中に、一体化を行う必要がある場合がある。

7-69. 「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」は海上基地から行われることもある。海上基地化(Seabasingとは、作戦地域内の陸上基地に依存することなく、海上から統合力を展開、集結、指揮、投射、後方支援、再構成、再使用することである(JP 3-02)。海上を基地化すること(seabasing)は陸軍部隊に、陸上のインフラに依存することなく海上で一定の機能とタスクを遂行する能力を与え、また、陸上での備蓄の必要性を最小限に抑えながら、統合部隊を即座に活用できるようにすることができる。海上の基地化は、統合部隊間の詳細な共同の計画策定を必要とするが、指揮・統制(C2)能力を備えた安全な作戦基地を提供でき、任務を支援するための最初の港と飛行場の陸上での必要性を最小限に抑えることができる。(海上基地を利用した段階的作戦の計画策定と実行に関する検討事項の詳細については、JP 3-02を参照。)

戦域後方支援作戦の遂行:CONDUCT THEATER SUSTAINMENT OPERATIONS

7-70. 海洋環境における戦域後方支援は、非常に協力的なプロセスである。他の軍種を含む共通の後方支援機能を管理するよう指示された場合、戦域後方支援コマンド(TSC)は統合後方支援計画策定委員会を主導する。陸軍部隊は、戦略範囲(strategic reach)および作戦範囲(operational reach)を維持するため、統合部隊に戦域機能および開港機能を提供する。戦域後方支援計画では、以下を考慮する必要がある。

・ 陸軍事前配置在庫(Army pre-positioned stocks :APS)の海上移動

・ 陸上での統合輸送(JLOTS)

・ 統合アセットによる域内輸送

・ 「受入れ、準備、前方移動、一体化(RSOI)」の期間中及び終了後の要員の域内輸送

・ 補給物資のクラスと現地サービスへの接近

・ 遠隔地における現場整備及び後方支援整備

・ 交付

・ 作戦上の契約支援

・ 一般的な工兵活動(港湾、飛行場)。

・ 限られた島のインフラを維持し、その影響を軽減する。

・ 霊安室業務

7-71. 陸軍事前配置在庫(APS)を上陸させるには、戦域後方支援コマンド(TSC)と陸軍野戦支援大隊の移動統制・後方支援計画策定委員会の一部として、詳細な計画策定が必要である。陸軍事前配置在庫(APS)は戦略的に配置され、特定の部隊に指定されることはない。洋上在庫(Floating stocks)は武力紛争を支援するために放出されることがあり、初期の詳細な計画策定が必要である。海洋環境では、陸軍事前配置在庫(APS)卸下活動の後方支援要求と整備地積は、小さな島の港の能力をすぐに超えてしまうかもしれない。陸軍事前配置在庫(APS)の卸下には、適切な喫水の港湾施設とインフラ、支援機器、港湾接近に対するホスト国や連合の承認、保守要員、詳細な部隊防護とセキュリティ計画などの重要な考慮事項がある。整備・支援要員や警戒部隊の需要は大きく、さらなる後方支援計画策定が必要となる。陸軍事前配置在庫(APS)卸下活動は通常、戦域後方支援コマンド(TSC)または師団レベルの指揮・統制(C2)ノードと、敵の攻撃に対する脆弱性を軽減するための追加防護アセットを必要とする。(戦闘作戦における陸軍事前配置在庫(APS)在庫の計画策定に関するより多くの情報は、ATP 3-35.1を参照)。

7-72. 陸上での統合輸送(JLOTS)は、海洋環境における戦闘作戦を可能にする重要な要素である。これは通常、戦域後方支援コマンド(TSC)によって調整、統制される。陸上での統合輸送(JLOTS)は、さまざまな小規模環礁など、近代的な深海港がない場合や、戦闘被害や輸送量によって港が利用できない場合に、重戦力を船から海岸に移動させることを可能にする。陸上での統合輸送(JLOTS)が提供する戦略的柔軟性は、紛争が発生する前に、海軍と陸軍の戦技として、詳細な調整と頻繁な訓練を必要とする。このシステム・ファミリーには、必要な物資の船から陸への移動と、陸上での統合輸送(JLOTS)を支援する人員の管理を容易にする脆弱なアセットが含まれている。陸上での統合輸送(JLOTS)の使用に関連するオフショア石油流通システム、高架土手道システム、桟橋システム、ロール・オン/ロール・オフ荷揚げ施設、および管理アーキテクチャは、非常に脆弱で、防護または早期警報システムを欠き、敵の攻撃時には迅速に移すことができない。統合部隊指揮官(JFC)が陸上での統合輸送(JLOTS)の使用を検討している場合、コマンドはその脆弱性を軽減するための措置を講じるべきである。(陸上での統合輸送(JLOTS)に関するより詳細な情報は、JP 4-01.6を参照されたい。)

7-73. 海洋作戦環境では地上移動に制約があるため、戦域後方支援コマンド(TSC)が統合部隊指揮官(JFC)の輸送委員会と作業部会に一体化され、武力紛争間の輸送作戦に優先順位をつけ、実行することが重要である。この委員会と作業部会は、形式上の輸送作戦(modal operations)、複合一貫輸送作戦(intermodal operations)、移動統制、および戦域配給の計画策定と調整を指示する。陸上輸送は通常、海岸線での物資や人員の移動のために、水上船から自動車輸送への事前計画された移行が必要である。海兵隊は、港湾が貧弱、損傷、または存在しない場合、陸上部隊に不可欠な航路、海上輸送、および陸上輸送の支援を提供する。海軍は、陸軍部隊に引き渡すために、船舶から物資を卸下し、港湾業務に引き渡す役割を担うこともある。指揮官は、陸軍部隊に、船やボートからの装備品や物資の卸下や積載を支援するタスクを与えることができる。海軍の建設能力は、倉庫や備蓄施設などの港湾建設や、港や水路沿いの機雷を探知して処理する爆発物処理などを提供する。

7-74. 陸軍の水上艦艇(Army watercraft)は、島嶼間輸送支援の一環として、統合部隊指揮官(JFC)と統合部隊陸上構成部隊指揮官(JFLCC)に追加の海上輸送と後方支援能力を提供する。これらの重要なアセットの利用可能性は限られており、そのほとんどが敵の対艦システムからの攻撃に対して非常に脆弱であることから、陸軍の装備や部隊の一部は、責任地域(AOR)への輸送やその周辺において他の軍種の装備や部隊よりも優先順位が低くなることがある。陸軍の水上艦艇(Army watercraft)作戦は、機動部隊と後続の後方支援を可能にするため、ホスト国の接近とインフラ整備に依存している。海洋環境に配属された陸軍部隊は、戦術的戦闘用ゴム強襲艇(tactical combat rubber raiding craft)を備え、島内および場合によっては島間での補給の戦術的手段を提供することも可能である。これは作戦アセットの負担を軽減し、制限の多い沿岸地形への接近を向上させ、ターゲッティングのシグネチャを減らし、作戦・戦術指揮官に柔軟性を与えることが可能である。(陸軍の輸送計画策定、指揮官との関係、および統合部隊に対する全体的な能力に関する詳細は、FM 4-01を参照。陸軍の水上艦艇(Army watercraft)の計画策定と運用の技術についてのより詳細な議論については、ATP 4-15を参照)。

7-75. 商業船舶組織は移動アセットを提供することができるが、有機的な防護システムがないため、計画策定および支援を強化する必要がある。海洋環境における戦闘作戦間の輸送に対する戦域軍の貢献は、はしけ運搬(Lighterage)作戦の防護であろう。はしけ運搬(Lighterageとは、飛行艇、上陸用舟艇、荷下ろしはしけ(discharge lighters)、土手道(causeways)、バージなどを使って、小型船で船から陸上へ貨物や人員を輸送することである(JP 4-01.6)。また、艦船間や艦内輸送のための装備や人員の移動も可能である。はしけ運搬(Lighterage)には、上陸用舟艇やフェリーなどのモジュラー式土手道システム(modular causeway systems)が含まれる。陸軍部隊は、統合中間準備基地での港湾作業を容易にするため、港湾・外洋タグ、プッシャータグ、浮きクレーン、バージ、浮き土手道、ロール・オン/ロール・オフ荷揚げ施設などの浮き実用水上船を提供し、運用している。特定の戦術作戦を支援するために一旦、後方支援アセットが配置されると、優先順位が変わったときにそれを再配置するのは困難であり、時間がかかる。

7-76. 固定翼機による域内・域外航空輸送作戦では、戦域後方支援コマンド(TSC)は航空補給要求の集約、優先順位付け、処理に責任を負う。師団または軍団の航空将校は、指揮官の優先順位に基づいて回転翼の移動の集約・強化と同期化を決定する。統合作戦地域(JOA)における回転翼の域内移動には、甲板着陸と水上飛行の訓練を受け、装備された航空機乗務員が必要である。

7-77. 陸軍部隊は統合部隊に作戦上の衛生支援を行う。衛生部隊(medical forces)は武力紛争法の下で直接ターゲットにされないよう防護されているが、戦闘部隊や緊要地形に近接している島嶼部隊への衛生支援に伴う地理的制約と、長距離火力の影響により、衛生部隊(medical forces)や施設に対するリスクは増大している。小さな島や離島のような無防備な場所にある衛生施設を堅牢にすることは、病院の存続に不可欠である。さらに、非国家主体による衛生施設や能力への脅威は、防護対策を強化する必要があるかもしれない。初期活動期間中、部隊は船舶の衛生施設に依存する必要がある場合があり、これには統合計画策定と調整が必要である。また、高次衛生施設では、輸送が困難であったり、冷蔵などの特別な保管条件があったり、遠隔の島の場所での積み下ろしが困難だったりと、特定の種類の物資の需要が増える。(陸軍の統合部隊に対する作戦衛生支援の詳細については、FM 4-0を参照されたい。)

7-78. 大規模戦闘作戦の致死性は、紛争発生前から建設アセットが限られている小さな島嶼の社会構造と経済的存続の両方を荒廃させる可能性がある。基地の安全性を早期に確立し、統治を維持できるかどうかは、重要な港湾や飛行場のインフラを修復できるかどうかに大きく依存する場合がある。統合任務部隊(JTF)の指揮官は、戦闘作戦間に施設を修理する(あるいは戦闘作戦前にその残存性を向上させる)ために、作戦契約支援または軍事工兵を要求することができる。

7-79. 北極圏では、インフラ基盤材料に高い熱効率、長期耐久性、繰り返しの凍結融解サイクルに対する耐性、永久凍土劣化への耐性が求められている。多くの極寒の地のインフラは、極端な環境要因によって既に劣化している。また、道路、海港、飛行場が氷、雪、季節的な融解、凍結のサイクルによって操作不能に陥る可能性もあり、部隊後方支援作戦を複雑化させることもある。北極圏で使用するクラスIVの建設資材の補給には、長いリードタイムがかかる場合がある。したがって、北極圏に展開する軍事部隊が使用するインフラは、劣化や不適切なシステムを特定するために、できるだけ早く点検されるべきである。