将来の戦いのための原則とスタンド・オフ戦 (AUSA)

原則とは、各種の辞書を紐解くと、一般に共通する法則、あるいは一般に適用されるものとする基本的な考え方と説明される。原則は哲学的な意味合いをも含んでいるようにも考えられる。原則は一般に普遍的なイメージを抱きがちであるが、戦争や戦いにおいてはそこに存在する人間とその人間が使用する道具が時代の流れと共に変化することを前提とすれば、原則も変化する性質のものであろう。MILTERMで2021年9月に紹介した「戦争の原則について:大規模な戦闘作戦のための思考と実践の再組織化」では、陸軍種が好んで使用するJ.F.C.フラーの戦争の原則の進化について述べているように、いわゆる時代の流れと共に変わっていく戦略環境、作戦環境の変化、人間社会の変化に応じて、原則は変化すると云える。

ここで紹介するのは、エイモス・フォックス(Amos Fox)氏の2023年12月紹介の「西側の軍事的思考と近代軍事的思考の四原型からの脱却 (AUSA)」2024年5月紹介の「将来の戦争における課題の神話と原則(AUSA)」と米陸軍協会(AUSA)のHPで論じている「戦争の将来に関する理論」論稿の第3弾の論稿である。エイモス・フォックス(Amos Fox)氏は、戦争(war)と戦い(warfare)について、「戦争(war)とは、武力紛争の戦略的な考慮事項であり、戦い(warfare)とは、作戦的・戦術的な考慮事項、すなわち、実際の戦闘がどこで発生するかということである」とその違いを述べている。彼は、「将来の戦争における課題の神話と原則(AUSA)」で戦争の原則について述べており、紹介する論文では戦いの原則について論じている。論稿では、原則を導き出すときには、考察の対象となる戦いの特徴ある部分にのみ焦点を当てることの戒めなどを述べており、考えさせられることも多い。(軍治)

将来の戦いのための原則とスタンド・オフ戦

THE PRINCIPLES FOR THE FUTURE OF WARFARE AND STAND-OFF WARFARE

April 22, 2024

by LTC Amos C. Fox, USA

Landpower Essay 24-4, April 2024

エイモス・フォックス(Amos Fox)はレディング大学の博士課程在籍中で、フリーライター、紛争学者として米陸軍協会(Association of the United States Army)に寄稿している。戦争と戦いの理論、代理戦争、将来の武力紛争、市街戦、機甲戦、ロシア・ウクライナ戦争などを研究・執筆。ポッドキャスト「軍事分野における革命(Revolution in Military Affairs)」のホストも務める。

写真:デューク・エドワーズ(Duke Edwards)米陸軍2等軍曹

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本稿は、武力紛争の将来を考察するAUSAシリーズの第3弾である。シリーズ第1西側の軍事的思考と近代軍事的思考の四原型からの脱却(Western Military Thinking and Breaking Free from the Tetrarch of Modern Military Thinking)(陸上戦力エッセイ23-6、2023年8月)の原文はこちらから2将来の戦争への挑戦における神話と原則(Myths and Principles in the Challenges of Future War)(陸上戦論文23-7、2023年12月)の原文はこちらからご覧いただける。

前回紹介した戦争の原則(principles of war)と戦争の逆の原則inverse principles of war)を踏まえ、今回は戦いの原則(principles of warfare)と戦いの逆の原則inverse principles of warfare)、そして変化する情勢におけるそれぞれの役割について考察する。

要約

  • 戦争の原則(principles of war)と同様に、戦いの原則(principles of warfare)と戦いの逆の原則(inverse principles of warfare)は、軍隊が武力紛争に従事する際に遵守しなければならない第一義的な原則を表している。これらは、陸上部隊の技術を超越した基本的要件を支える原動力である。
  • 人間中心の戦いの時代から、人工知能、人間と機械を統合(一体化)した編成、そして多数の自律システムが支配する戦いの時代へと移行するにつれ、陸軍のコンセプトとドクトリンは進化しなければならない。陸軍は、戦争(war)と戦い(warfare)がどのように変化するかを予測するために、新しい用語、コンセプト、およびドクトリン上の考えを受け入れながら、新しく挑戦的な認識分野に果敢に取り組んでいかなければならない。
  • コンセプト開発者、ドクトリン開発者、科学・技術専門家、戦力デザイナーは、陸上戦の永続的な課題をないがしろにすることなく、将来技術の重要な側面を統合(一体化)した将来戦力のための現実的な考えとデザインを開発するために協力しなければならない。

はじめに

1949年に戦争の原則について書いた米国の軍事戦略家バーナード・ブロディ(Bernard Brodie)は、「ジョミニ(Jomini)やクラウゼヴィッツ(Clausewitz)が生み出したルールは今でも基本的なものかもしれないが、戦争の準備や闘い方を教えてくれるものではない」と提起した[1]。第二次世界大戦後のブロディ(Brodie)の発言は、その紛争中にあらゆる側が経験した膨大な量の変化を説明することを意味していた。

当時、ブロディ(Brodie)は、J.F.C.フラー(J.F.C. Fuller)が1920年代から1930年代にかけて戦争の原則を公式化して以来、ほとんど変化していなかった戦争の原則が長続きしたのは、3つの要因によるものだと考えていた。第一に、この原則は軍事専門家に「格別の利便性(exceptional convenience)」をもたらし、第二に、現在の形では「教化(indoctrination)」に適していた[2]

第三に、教化(indoctrination)に便利で簡単であるため、既存の戦争の原則は依然として専門的な軍事教育に理想的に適している。軍事教育は短期間であるため、単純な記憶術(mnemonics)や頭字語、その他のヒューリスティクスですぐに学べる軽量な教材が好まれる[3]

ブロディ(Brodie)は基本的に、戦争の原則(principles of war)が変わっていないのは、現代の技術や用兵の方法論(methodologies of warfighting)をより反映した新しい原則を開発するよりも、そのままの原則を維持する方が簡単だからだと主張している。別の言い方をすれば、知的怠慢(intellectual laziness)の結果、新しい技術や一見斬新に見える技術を、既存の言語、分類法、ドクトリンに押し込めてしまうことが多いということである。

近年では、70年ほど前にブロディ(Brodie)が強調したのとよく似た制度的な難点があるにもかかわらず、数少ない先見の明のある思想的指導者たちが、軍事的思考(military thinking)の改革を果敢に推し進めている。この提唱は戦争の原則や戦いの原則に限ったものではなく、軍事技術やデュアル・ユース技術の進歩や一般的な進化に歩調を合わせようとする、あるいは歩調を合わせようとする新しい理論、方法論、用語も奨励している。

例えば、マルチドメイン・タスク部隊(MDTF)や戦域火力コマンド(theater fires command)のような編成や、そこに搭載される新兵器システムの出現は、陸軍が戦場をどのように、そしてなぜそのように編成するのか、そのバランスを見直す必要がある。これは何も新しいことではない。1925年、J.F.C.フラー(J.F.C. Fuller)は「兵器の変更は戦術思想の変更を伴わなければならない」と書いている[4]

本稿は、ブロディ(Brodie)とフラー(Fuller)両氏の責務を果たそうとするものである。前回の論文では、歴史的・理論的観点から戦争の原則を取り上げ、大規模戦闘作戦の考え方を中心とした9つの戦争の原則を提示した[5]。本稿は、このような考え方を基礎としながらも、先行論文「将来の戦争への挑戦における神話と原則」で提示された枠組みも利用している[6]

さらにこの記事では、陸上戦争で軍隊が対処しなければならない永続的な課題に対して、こうした戦いの原則のバランスを取りながら、将来の用兵コンセプト(warfighting concepts)に関するアイデアが、こうした状況でも必要なことを効果的に達成できるかどうかを検証している。

さらに、本稿は、将来の戦いのコンセプト(ここではスタンド・オフ戦(stand-off warfare)として簡略化している)を説明するのに役立つ簡単なヒューリスティックを提供し、それがいかに陸上戦の課題に対応するには不十分で、戦いの原則に追いつけないかを示す。

戦いの原則(PRINCIPLES OF WARFARE)

戦いの原則(principles of warfare)は、軍事部隊が武力紛争に関与する際に、どのように活動するかの道しるべ(waypoints)となるべきである。さらに、戦いの原則(principles of warfare)は、軍事部隊の戦略、コンセプト、計画、作戦、ドクトリン、活動において容易に識別できるものでなければならない。

おそらくもっと重要なことは、戦いの逆の原則(inverse principles of warfare)は、戦略、コンセプト、計画、作戦、ドクトリン、活動の中で容易に確認できるものでなければならないということである。識別しやすく、平易な言葉で書かれていることで、戦いの原則(principles of warfare)と戦いの逆の原則(inverse principles of warfare)は、紛争における軍事的・政治的勝利の証明された道筋に沿って軍事部隊を導く助けとなる。

第1原則:移動(MOVEMENT)

移動とは、外部からの支援や補強なしに、作戦上、戦術上、あるいは微小戦術上の距離を移動する能力と定義される。移動は、戦いのあらゆる側面において基本的な構成要素である。部隊は移動能力なしに前進することはできない。部隊は移動能力なしには連携防御を行うことができない。同様に、移動能力なしには機動戦(maneuver warfare)も陣地戦(positional warfare)も行えない。

移動は戦いの基本要素である。移動できない軍事部隊は、攻撃と破壊の絶好の機会である。したがって、部隊が固有の移動能力を有し、(a)移動のための他組織への依存や、(b)移動のための他部隊への依存に縛られないことが最も重要である。実際上、有機的な移動能力を持たない軽部隊は、最も有用な部隊とは言えない。

他の誰かによって戦場に運ばれ、他の誰かによって車両を装備され、あるいは移動能力に依存したままでなければならない。空挺部隊も同様である。独立した作戦を支援するのに十分な揚陸・輸送機を保有しないことで、その有用性は最大化されない。

戦いにおける迅速な移動能力もまた極めて重要である。なぜなら、軍隊はつかの間の好機を利用したり、敵対者に対して有利な状況を自ら作り出したりすることができるからである。

第2原則:実用主義(PRAGMATISM)

戦い(warfare)において、軍事的な問題に対処する方法について単一の考え方に固執することは、非常に危険な提案である。戦いはその本質上、混沌としており、常に変化している。さらに、戦いは現実のルールに従うものであり、それは程度の差こそあれ決定論として現れるものである。

たとえば、第二次世界大戦のイタリア作戦や朝鮮戦争の朝鮮半島作戦で米軍やNATO軍が経験したような、山岳地帯に湖や河川がいくつも混在する戦域の場合、紛争に関与するすべての軍隊は地理的決定論に従う。このような状況では、地形によって軍事部隊は道路網に沿って行動することが最も多い。例外の余地はある。

戦闘員が多数の非車両(すなわち、軽歩兵)要素で構成されている場合、道路網の外で作戦を行い、低速ではあるが徒歩で不整地を移動することで、地理的決定論の影響を緩和することができる。一方、戦闘部隊(fighting elements)が自動車化または機械化されている部隊は、車両が不整地を移動できないため、道路網に沿って行動しなければならない。

このシナリオでは、能力比較では車両編隊の方が強力だが、地形がその能力の優位性をほとんど無効にしている。しかし、低速の下車部隊の方が、道路を走る車両部隊と接近し、荒れた地形の隠れた場所から対車両兵器システムで破壊する能力が高い。同じ比較は、都市部の地形に適用しても有効である。

とはいえ、この例は、闘い方(how to fight)に関する好みや理想主義が、地形の決定論的影響の餌食になることを示している。時間、戦術や作戦の状況、利用可能な兵力、作戦地域内での敵の活動など、その他の要因もすべて、実用主義を必要とするように作用する。

このように、実用主義とは、理想主義的あるいは独断的な処方に縛られることなく、軍事的状況において必要とされることを実行する意志、知識、技能を持つことと定義される。状況を理解するということは、単にドクトリン上の雛形に関連する類似点を探し、制度的な解決策を適用することではない。

むしろ、実用主義は、規定的なドクトリンや考え方(mindset)から軍事部隊を解き放つことを必要とする。その代わり、その軍隊は、遭遇する可能性のあるさまざまな用兵技法(warfighting techniques)や、地形、時間、敵対する軍事活動のすべてがどのように状況の形成に寄与するかを強く理解しなければならない。

軍隊が直面する可能性のある戦場での課題の範囲を理解するだけでなく、敵対者に対して生き残り、勝利するために、状況に応じて適切なことを行うために、状況内で戦う技能、知識、能力を持たなければならない。公理に裏打ちされた理想主義的な戦争の観方(views on war)や戦いの観方(views on warfare)に独断的に固執することは、制度的にも現場においても、軍隊にとって役に立たない。

例えば、クリストファー・G・カボリ(Christopher G. Cavoli)米連合国最高司令官兼米欧州軍司令官は、「精密さは量に勝る(precision beats mass)」と述べたことで知られている[7]。このコメントは、露・ウクライナ戦争におけるウクライナ軍に対するロシアの戦法について述べたものである。

カボリ(Cavoli)は、十分な量の精密弾薬と精密打撃能力があれば、ウクライナは軍事的にロシアを打ち負かすことができるとほのめかしている。この感情の問題点は、それが証明されていないことであり、露・ウクライナ戦争を例にとれば、間違っていることである。カボリ(Cavoli)の発言から12カ月以上が経過したが、ウクライナ軍は「クリミアへの陸橋」であるドンバスからもクリミア半島からもロシア陸上部隊を追放するまでには至っていない[8]

さらに、紛争が始まって以来、米国をはじめとする西側諸国がウクライナに大量の精密打撃能力と精密弾薬を提供してきたにもかかわらず、キーウはクレムリンに紛争終結の交渉を強要するまでには至っていない。どうやらカボリ(Cavoli)は間違っているようだ-量は精度に勝る。

ジェームズ・レイニー(James Rainey)大将も同様の理想主義的発言をしている。レイニー(Rainey)は何度か、米陸軍は「消耗はしない(does not do attrition)」、米陸軍が機動戦(maneuver warfare)のみを用いるのは、戦場での死傷者を1対1で交換できないからだと述べている[9]

レイニー(Rainey)のコメントは、イラクの自由作戦(Operation Iraqi Freedom)の第2次ファルージャの会戦(Second Battle of Fallujah)(2004年11月7日〜12月23日)で大隊長を務めた彼自身の経験を考えれば、皮肉なものだ[10]。ファルージャは消耗の会戦(Battle of attrition)の典型である。米軍の目標は非国家軍事勢力の排除であり、そのための手法は、戦闘員を皆殺しにし、彼らの結束を破壊し、彼らが防御や指揮・統制の場所として使っていた市内のあらゆる建物を破壊しようとする破壊を基盤とする用兵(destruction-based warfighting)だった[11]

現代戦争研究所(Modern War Institute)の報告によると、この戦闘で連合軍の死傷者300人以上、敵戦闘員1,500人、民間人800人が死亡し、市内の建物の60%が損壊、さらに20%が完全に破壊されたという[12]

ファルージャは、米国とそのパートナーが9.11以降に戦った残酷な消耗的会戦と消耗的戦争の長い列の中の一つのデータにすぎない。消耗(attrition)とは、敵対する戦闘員の破壊を軍事的目標とする紛争の特徴である。

消耗(attrition)と機動(maneuver)に関するレイニー(Rainey)の主張、あるいは精度と量に関するカボリ(Cavoli)の主張のように、紛争についてどのように考え、どのように装備し、どのように訓練するかについての理想主義的な主張は、軍隊が自分たちの好む戦いのやり方と一致しない状況に遭遇したときに、軍隊を物足りなくさせる。

さらに、カボリ(Cavoli)とレイニー(Rainey)のコメントは、戦争(war)と戦い(warfare)の真の性質から外れている。歴史家のカタル・ノーラン(Cathal Nolan)は、戦争は消耗(attrition)と疲弊(exhaustion)によって勝利するものであり、「偉大な大尉(Great Captains)」や革命的な用兵の方法(methods of warfighting)は、戦争(war)と戦い(warfare)に関する深く広範な研究の中では、ごくわずかな位置を占めるものであることを歴史的記録は示していると警告している[13]

戦争とは、戦略レベルにおいても、軍事作戦や交戦のレベルにおいても、消耗(attrition)と疲弊(exhaustion)を通じて闘い、勝利するものである。したがって、軍隊がどのように闘うか、あるいは闘わないか、あるいは技術が軍事的思考(military thinking)や応用軍事戦略・作戦における長年の真理を克服できるというような理想主義的な宣言は、危険ではないにしても厄介なものである。

このような宣言は、国家が誤った技術に投資し、実績のある用兵システム(warfighting systems)の生産を中止し、不適切な戦力デザイン(force design)を開発し、武力紛争の現実と厳しさに対して誤った教育を行う原因となる。実用主義(pragmatism)は、戦場での思考、訓練、実行の最前線になければならない。

第3原則:予測不可能(UNPREDICTABILITY)

パターンは、潜在的な敵対者より先に考え、行動する最も簡単な方法の一つである。戦略レベルであれ戦術レベルであれ、パターンを作り出すような作戦行動は、観察力があり思慮深い敵対者に多くのことを識別させるので危険である。というのも、観察力があり、思慮深い敵対者は、野戦部隊、補給ノードと配給ポイント、指揮要素、補給と前進の共通ルートなど、多くのものを特定できるからである。

欧米の軍事ドクトリンがこの課題を助長している。たとえば、米軍は非公式に、軍事作戦を計画・実行するための単純な指針として、統合作戦のフェーズに依拠している。戦術レベルでは、西側諸国の軍隊の専門教育は、初級レベルの攻勢作戦と防勢作戦の順序を将校に教えることが多い。

このようなツールを戦場に適用すると、敵対者が対処しなければならない不確実性の度合いが取り除かれるため、問題が生じる。カボリ(Cavoli)やレイニー(Rainey)のような発言は、確実性の問題を助長する。

他方、軍事部隊は、予測不可能な方法や予測不可能な兵器システムで作戦を展開することで、敵に不確実性を作り出すよう努めなければならない。予測不可能な方法で作戦を行うには、統合作戦の局面や攻勢(または防勢)の順序などにこだわらないこと、あるいは「機動戦を行い(doing maneuver warfare)」、精密打撃に頼ることなどが有効である。

さらに、作戦や戦術活動のテンポを加速させたり、逆に作戦のペースを不規則なテンポに引き下げたりと、一見奇妙なタイミングに合わせて作戦を展開することで、予測不可能性を実現することができる。

さらに、応用的な諸兵科連合理論(combined-arms theory)は、作戦・戦術的な用兵(warfighting)において最も重要である。しかし、諸兵科連合理論の傘の下にある兵器の組み合わせと適用は、敵対者から見れば奇妙で予測不可能な軍事活動の図式に見えるように操作することもできる。

さらに言えば、ある戦闘兵器(combat arm)を別の戦闘兵器(combat arm)の代わりに使って、後者の効果を生み出すことも、諸兵科連合理論を操作することで予測不可能性を生み出すことのできるもうひとつの例である。この考え方は、諸兵科連合理論の代用原理と考えることができる。

この考え方は、具体的な例をいくつか挙げないと、かなり頭でっかちになってしまう。したがって、2003年の米国のイラク侵攻の際のイラクの防御や、1995年のグロズヌイでチェチェンがロシア軍をどのように迎えたかを簡単に調べてみるとよくわかる。

2003年の米国によるイラク侵攻に対するイラクの抵抗勢力は、組織化された政府軍と非正規の民兵の両方が、米国の空爆から身を守るために防空システムを使用することの危険性を認識していた。マイケル・ゴードン(Michael Gordon)とバーナード・トレイナー(Bernard Trainor)が回想しているように、イラク人は、防空システムをオンにして米軍と交戦し、空爆を受ければ、米国はすぐにそのシステムをターゲットにすることを理解していた[14]

その結果、イラク側はしばしば、防空システムの代わりに非標準の戦闘兵器(combat arm)を使用し、短距離防空と同じような諸兵科連合の効果を生み出そうとした。

その最も顕著な例は、バグダッドへ向けて米軍が突き進んでいたときのことである。米陸軍第11攻撃ヘリコプター連隊(クウェートからバグダッドまで北上する米第5軍団の先鋒部隊)が、ハスワとイスカンダリヤの双子都市に差し掛かったとき、連隊は両都市が完全にライトアップされていることに気づいた。午前1時、これは奇妙な状況だった。

その直後、イラク軍はS-60(高高度防空兵器)を米軍ヘリコプターに向けて発射した。しかし、イラク側は高高度で発射したのではなく、防空ミサイルを500フィート強、つまり米軍ヘリコプターの飛行高度より少し高い位置で発射したのである[15]

S-60の直接・間接の影響を避けるため、米軍飛行士はヘリコプターをかなり低い高度まで降下させた[16]。高度を下げることは、米軍ヘリコプターをイラク軍の小火器の打撃範囲に入れることになるため、イラク側が米軍飛行士にやらせたかったことだった。

その後、ハスワとイスカンダリヤを守るイラク軍は、小火器と短距離防空の奔流で米軍ヘリコプターに襲いかかった[17]。イラク軍の攻撃はあっという間に連隊を圧倒し、連隊は安全な後方地域に撤退した。

イラク軍が長距離防空と高度なセンサー・通信システムの代用として、信号による短距離防空と小火器を使用したのは、諸兵科連合理論の代用原則の革新的な例である。イラクは、航空戦力と攻撃航空でリードし、騎兵でそれに続き、本体と支援部隊でフォローするという米軍が闘いたいという方法を理解していた。

その点で、米軍、特に陸軍は極めて予測しやすかったため、その不動産セクターを守るイラク人にとっては簡単な挑戦だった。第一次チェチェン戦争のグロズヌイの会戦(Battle of Grozny)は、諸兵科連合理論の代替原理を示すもう一つの例を示している。

ソビエト連邦崩壊後、反乱や離反が高まる中、設立間もないロシア連邦は、周辺地域を無傷で維持するために精力的に動いた。チェチェンをはじめとする北コーカサスの諸民族は、北と西に目をやりながら、他国が自治権を行使するのを観察し、1993年にチェチェンは独立を宣言した。クレムリンはチェチェンの独立に対処するため、圧倒的な部隊と思われるものをすぐに動員した。

クレムリンの計画は、大規模な機械化陸上部隊を展開してグロズヌイを占領し、チェチェンの政治的・軍事的要素を都市内外で破壊することだった。ロシアの軍事戦略家たちは、作戦全体が完了するのに15日しかかからないと想定していた[18]

グロズヌイ守備軍は、おそらく諸兵科連合理論を理解していたと思われるが、ロシア軍に対して航空戦力や間接火力を本格的に使用することはなかったが、航空戦力や間接火力の不足を補うために知的戦術(intelligent tactics)を駆使した。

チェチェン軍はロシア陸上部隊を市内に誘い込み、地上や高層ビルから対装甲兵器システムで攻撃することで、空からの攻撃や野戦砲、ミサイル、ロケット弾などの間接火力の効果を演出した[19]

さらに、チェチェンは、ロシア軍が自分たちに対して諸兵科連合を適用する能力を否定する方法を見つければ、ロシアの数と兵力における優位に打ち勝つチャンスがあるかもしれないと理解していた[20]

チェチェンは、ソ連、そしてロシアとの正式な同盟関係を考慮し、ロシアがチェチェンおよびチェチェンに対する作戦をどのように構成するかを理解していたと思われる。その意味で、ロシアは予測可能な敵であり、その強みを説明し相殺する必要があるが、不屈の敵には程遠い。

これに対し、チェチェン軍はロシアの陸上部隊に近接して、あるいは「抱きついて(hugged)」行動した[21]。チェチェン軍はこの技法が効果的で、ロシア軍は自軍への打撃を恐れて、チェチェン軍に対して野戦砲や航空兵力を使わない傾向があった[22]

さらに、チェチェン軍はロシア軍としばしば接近していたため、戦車や歩兵戦闘車の乗組員は、下車したターゲットを交戦できるほど砲を低くすることができず、主砲システムを使用することができなかった[23]

グロズヌイでの会戦が終結するまでに、チェチェンの戦闘員たちはロシア軍の参加に大きな犠牲を払った。ロシアの第131自動車化ライフル旅団(MRB)は全滅した。第131自動車化ライフル旅団(MRB)は、26両の戦車のうち20両、120両の装甲兵員輸送車のうち102両、すべての対空砲を失った[24]。旅団の司令官イヴァン・サヴィン(Ivan Savin)大佐とその参謀の大半も会戦の間に戦死した[25]

ロシアの第131自動車化ライフル旅団(MRB)だけではなかった。グロズヌイで第131自動車化ライフル旅団(MRB)を支援する主要部隊の1つだったロシアの第506自動車化ライフル連隊(MRR)は、兵力の4分の1以上を失った[26]。第506自動車化ライフル連隊(MRR)は、チェチェンの戦闘員が採用したのと同じ革新的な戦術に遭遇し、チェチェンは異なる技術や兵器システムを使用して、他の方法では達成できないような諸兵科連合の効果を生み出した。最初の1ヵ月が終わるころには、ロシア軍の戦闘損失は5,000人を超えた[27]

諸兵科連合理論の代替原理におけるこれら2つの教訓のポイントは、予測不可能性が交戦(engagements)、会戦(battles)、戦役(campaigns)の結果に及ぼす力を強調することである。予測不可能な軍事作戦は、軍事部隊を有利な立場に置くことができ、それが戦略的な軍事的勝利をもたらすこともある。

第4原則:転移(TRANSITIONS)

転移(Transitions)とは、軍事作戦において局面の変化が生じる要所(hinge points)である。戦いにおいて転移を円滑に実行することで、戦闘員は敵戦闘員に対する絶え間ない徹底的な圧力を維持し、敵戦闘員を疲弊(exhaustion)へと加速させることができる。あるいは、戦闘員は敵戦闘員自身に対する絶え間ない徹底的な圧力を妨害または拒否し、敵戦闘員が資源を疲弊(exhaustion)して絶頂に達するのを防ぐことができる。

この考えを単純化して表現するならば、攻勢作戦から防勢作戦への転移を考えることで得られるかもしれない。適切に準備されていれば、つまり、転移が適切に識別され、管理されていれば、軍事部隊は攻勢作戦の実施から、戦争の原則(principles of war)と戦いの原則(principles of warfare)を有意義な形で説明する防御へと円滑に移行することができる。

この転移が不適切に計画され、適切に熟慮されず、あるいは見過ごされた場合、軍事部隊は相転移(phase change)の過程で破滅(ruin)に直面する可能性がある。この場合の破滅(ruin)とは、人員や装備、その他戦争や戦いに必要なものを消耗させる破壊志向の交戦や戦闘を繰り返し行うことで、戦闘員が資源を使い果たし、絶頂に向かって加速する産物である。

ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte)は、戦争(war)と戦い(warfare)の両方における転移の重要性について、重要な見解を示している[28]。「戦争の秘訣は、約60km(twelve leagues)を行軍し、会戦を闘い、追撃のためにさらに約60kmを行軍することである」。明言はされていないが、ボナパルト(Bonaparte)のコメントは、戦いの遂行(conduct of warfare)における転移の真実性を証明している。

※ 【訳者註】twelve leaguesは距離を表す。1 league=3 milesであり、twelve leaguesは36milesであり、約60Kmとした。

ボナパルト(Bonaparte)の発言の行間を読むと、敵の戦闘員に対して破壊的かつ腐食的な作戦を執拗に適用することで、物理的、精神的、後方支援的な疲弊(exhaustion)の影響が増幅され、その結果、敵対者がそうでない場合よりも早く結末に向かうようになることがわかる。

破壊的作戦(destructive operations)とは、敵対者の人員や資源を破壊する作戦である。腐食性作戦(corrosive operations)とは、資源は破壊しないが、敵対者に最適とはいえない影響を与える作戦である。

円滑な転移を予測し、準備し、実施することで、戦闘員は敵に対して破壊的かつ腐食的な作戦をほぼ常に維持することができ、紛争が発生するレベルに関係なく、紛争にとどまるために必要な資源を敵の戦闘員から奪うことができる。

ボナパルト(Bonaparte)によれば、戦争の極意とは、これらの要素の一つを実施してやめることではない。むしろ、戦争の極意とは、これらの各要素を実施する必要性を予測し、それらを互いに連動させて実施し、敵戦闘員に対する絶え間ない徹底的な圧力を維持し、それが自分にとって有利な時間や場所で頂点に達するようにすることである。

戦役、会戦、交戦の遂行に要所(hinge points)が存在することを受け入れることは、この戦いの原則(principle of warfare)を軍事作戦の過程に組み込むための重要な第一歩である。蝶番(hinges)とは、点であったり局面であったりするが、転移が起こるメカニズムである。

さらに、蝶番は状況に依存した条件から生まれる。例えば、ボナパルト(Bonaparte)の例で言えば、約60kmを行軍することと会戦を行うことの分岐点は、戦いのある要素から別の要素への転移が起こる要所(hinge points)である。

さらに、行軍から闘いへの転移は、(a)特定され、(b)その戦闘員の部下に伝えられ、(c)成功するために達成される一連の条件を必要とする。会戦への移動、移動から会戦へ、会戦から移動への転移、会戦から搾取への認知的移行というボナパルト(Bonaparte)の発言の各要素において、ボナパルト(Bonaparte)は、転移と戦争における「秘密(secret)」との関係を強調している。

さらに、ボナパルト(Bonaparte)の発言は、漸進的な転移による勢いと、サブシステムやシステムの崩壊を引き起こす雪だるま式効果を生み出すことの関係を肯定している。皮肉なことに、統合レベルや戦術レベルでは作戦の段階や順序が予測可能であるため、転移は既知の未知数になりがちである。行為主体は作戦に必要な転移を認識していることが多いが、通常、それがいつ、どこで起こるかはわからない。

とはいえ、転移と予備に関しては、綿密な計画策定が多くのことを説明できる。転移の開始や予備のコミットメントは、計画策定中に策定された意思決定ポイントに結びついていなければならない。これらの決定点に対する答えを見つけることは、システムのフィードバック・ループ・プロセスと連動していなければならない。一つの組織や一つの能力だけの責任であってはならない。

ほとんどの作戦には5つの基本的な転移が伴う。(1)移動から攻撃または防御への転移、(2)攻撃から防御への転移、(3)防御から攻撃への転移、(4)既存の戦いの形態から追撃への転移、(5)ある戦いの形態から逆行または撤退への転移である[29]。これらは、行為主体自身の利益のためにも、相手をより効果的に妨害するためにも、計画の優先事項に加えられるべきである。

予備は、転移にとって重要な能力である。予備の起用は、一般に次の3つの選択肢のいずれかと結びついている。(1)戦術上または作戦上の成功を利用する、(2)任務達成や目標達成に向けた初期の失敗を克服する、(3)事前に特定された転移を開始する[30]

5つの基本的な転移と同様に、これら3つの予備の計画策定の考慮事項を計画策定の優先事項に加えることは、計画策定チームが予備の採用と転移との統合(一体化)を考慮する上で助けとなる。

運動麻痺(paresis)とは、転移の逆の原則である。運動麻痺(paresis)は理論的には麻痺(paralysis)と似ているが、麻痺(paralysis)では実体が動く物理的能力を持たないという点で異なる。一方、運動麻痺(paresis)の場合、実体は動くことができるが、それは最適な状態ではない。

運動麻痺(paresis)という用語は、転移の逆の原則として使われるが、これは現実主義者が、敵対者の能力や身体的能力を完全に奪うことはほぼ不可能であると受け入れているからである。別の言い方をすれば、紛争現実主義者は、身体的であれ精神的であれ、麻痺(paralysis)を引き起こすことはほぼ不可能であることを理解している。

しかし、すでに述べたように、敵の戦闘員が移動できない状況を作り出すことは、一方の行為主体が武力によって敵対する戦闘員に課すことのできる状態である。ある戦闘員が敵対者の移動能力を阻止することで、その敵対者が転移を行うのを阻止することもできる。

その結果、敵対者の軍事作戦を停滞させ、敵の静止編成を識別と破壊の対象とし、一般的に敵のコストを増大させることになり、敵対者は絶頂と疲弊(exhaustion)に一歩近づくことになる。

第5原則:情報(INFORMATION)

情報(Information)は戦いの最終原則である。情報とは、システムを作動させるために必要なデータである。軍事部隊の場合、このシステムは国家の軍事部隊の用兵システム(warfighting system)と呼ぶことができる。情報がなければ、軍事部隊は戦場をやみくもに動き回ることしかできず、上級の軍事指導者や政策立案者からの情報がないために、自分たちの最善の意図と思われることを行うために失態を犯すことになる。

データは、その情報を報告する個人または団体に関連して、良いもの、または真実のものとなる。優れたデータは優れた情報を生み出し、ネットワーク化された用兵システム(warfighting system)が戦場で繁栄するために必要なものである。したがって、優れたデータを生成し維持することは、あらゆる軍事部隊と、その軍事部隊を戦場に投入する国家の主要な到達目標である。

データは悪いものである可能性がある。悪いデータとは、データを報告する個人や組織が、十分に正確な画像を作成するための十分な視点にアクセスできないために、穴だらけの事実のことである。悪い情報が用兵システム(warfighting system)を通過することは、しばしば最適でない作戦と不完全な戦場での結果につながるため、悪いデータを避けることは軍事部隊とその国家にとって最も重要である。

データは腐敗することがある。腐敗したデータは、敵対者が戦闘員の用兵システム(warfighting system)に妄信的なデータを注入して相手を惑わそうとした結果であることが多い。不良データと同様に、腐敗データも最適な作戦を遂行できず、不完全な戦果をもたらす可能性があるが、腐敗データはまた、不正確な、あるいは必要のない軍事活動を行うほど戦闘員を惑わすこともある。

データは否定されることがある。システム思考(systems thinking)における重要な思想的指導者であるドネラ・メドウズ(Donella Meadows)は、「情報の流れが欠落することは、システムの機能不全の最も一般的な原因の一つである」と書いている[31]。自己志向的で防衛的な立場からすれば、データの拒否とは、敵対者が観察された部隊の行動、意図、能力を描写できないように、戦闘員がデータの公開を阻止したり、作戦の観察を阻止したりすることを意味する。

データ拒否は、脅威に焦点を当てた攻勢活動でもある。戦闘員は、物理的な部隊であれ、センサーやネットワークであれ、敵対者の情報収集能力をターゲットにし、敵対者へのデータ提供を拒否することができる。

データは中断されることもある。拒否されたデータはターゲットへの到達を断たれるが、中断されたデータは意図された受信者に到達する。中断されたデータは、予測可能な決定を下したり、新しい状況に対処したりするのに十分なデータの流れを持っていない状況に敵対者を追い込むことができるため、有用である。

最後に、データには時間的なものと、時間の影響を受けるものがある。時間的な範疇では、データの動きは非常に速く、データの意味を理解しようとする個人または団体を圧倒し、データ分析が不完全になり、戦闘員のシステムに不完全な情報が送り込まれることになる。さらに、時間的な範疇では、データの動きが非常に遅いため、適切なデータが提供されず、無益な情報が用兵システム(warfighting system)に入力されることがある。

無知は情報の逆の原則である。情報が用兵(warfighting)を可能にするのであれば、情報がないこと、つまり無知であることは用兵(warfighting)を妨害する。情報を入手し、維持し、防護することが行為主体にとって極めて重要であるならば、敵対者に情報を与えないことも同様に極めて重要である。従って、情報の逆の到達目標は、敵対者に状況的、戦略的に無知であることを維持させる一方、自らにそのようなことが起こらないようあらゆる取組みを行うことである。

表1は、戦いの原則(principles of warfare)と戦いの逆の原則(inverse principles of warfare)を凝縮したリストである。

表1:戦いの原則(principles of warfare)と戦いの逆の原則(inverse principles of warfare)
原則 逆の原則
実用主義(Pragmatism) 理想主義(Idealism)
予測不可能性(Unpredictability) 予測可能性(Predictability)
移動(Movement) 不動(Immobility)
転移(Transitions) 運動麻痺(Paresis)
情報(Information) 無知(Ignorance)

戦争の原則(principles of war)と同様に、戦いの原則(principles of warfare)と戦いの逆の原則(inverse principles of warfare)も単なるバラバラの言葉の集まりではなく、武力紛争に従事する際に軍隊が遵守しなければならない第一順位の原則に対する基本的な声明を縮小したものである。

武力紛争においては、戦闘員は常に精神的に柔軟であり続けなければならず、戦場特有の状況に対処できるよう、広く深い教養と経験を備えていなければならない(実用主義)。軍事作戦や活動を行う際、戦闘員は予測可能な形式、方法、タイミングに陥ってはならない。むしろ、とらえどころがなく、識別、ターゲット化、破壊が困難になるよう最大限の努力を払わなければならない(予測不可能性)。

さらに、移動する能力によって、軍事部隊は軍事作戦を実施し、作戦地域全体で部隊を再配置し、作戦的・戦術的に部隊を維持し、戦場で変化する市民の状況に対応することができる(移動)。

移動ができないということは、戦場における軍事部隊の有用性をほとんど奪うことになる。転移とは、現実的な軍事部隊が予測不可能な行動をとり、作戦上および/または戦術上の改善のために、現場の政治的・軍事的状況に利己的に反応するメカニズムである(転移)。

転移が正しく実行されれば、成功した攻撃から巧みな追撃へ、あるいは堅固な防御作戦から粉砕するような反撃へと素早く移行するために、現状の状況を利用することで、戦術的あるいは作戦的な軍事活動にかかる高価な「立ち上げ(start-up)」コストを回避することができる。

しかし、いずれも情報なしには成り立たない。情報こそが軍事作戦を活性化させる生命線だからだ。したがって、データと情報を追求し、入手し、維持し、防護することは、移動に次いで、戦いの最も重要な側面(情報)である。情報のための作戦、情報を維持するための作戦、情報を防護するための作戦は、それが国家であろうと非国家であろうと、あるいは他の形態の非正規・非国家主体であろうと、すべての軍事部隊にとって最優先事項である。

さらに、武力紛争において軍事部隊が何をしなければならないか、また何から守らなければならないかをよりよく理解するためには、戦争の逆の原則(inverse principles of war)を全体的に見ることが重要である。

武力紛争において、軍事部隊はあらゆる種類の戦い、兵器システム、その他独断的な信念が関連付けられうるあらゆるものについて理想主義に走ることを控えなければならない。理想主義は、戦いにおける現実に対する軍事部隊の心を曇らせ、それはしばしば用兵(warfighting)に関する独断的信念の範囲を超える。

このような場合、軍事部隊は戦場においてより効果的であるどころか、より効果的でなくなる。同様に、理想主義的な敵対者は、非同盟の軍事部隊にとって好ましい。なぜなら、理想主義的な戦闘員はしばしば予測可能だからである。

予測可能な敵(predictable foe)は、不完全な情報や私的な情報の問題を単純化する。予測可能な敵は、どのようなシナリオでも単純に1つか2つの方法で行動するだけであり、したがって予測不可能な敵対者(予測可能性)よりもはるかに経済的に解決できる問題である。したがって軍事部隊は、予測可能であり続けるという自らの問題を意識しつつ、敵対者を予測可能にするために最善を尽くさなければならない。

移動は、軍事部隊を現実的かつ予測不可能に活動させる、一方、移動能力がないと、軍隊は無気力で、容易に識別できるパターンで行動することになる(不動)。

さらに、移動能力を欠く軍事部隊は、識別、追跡、ターゲティング、破壊を受けやすい。敵戦闘員の資源を疲弊させ、排除することが戦争に勝利する方法であることを考えれば、敵部隊を動けなくすることは、戦場での成功に向けた触媒的な出来事である。

同様に、このコンセプトを自国の軍事部隊に適用することにも注意を払わなければならない。移動能力を欠く部隊は、軍司令官や政治指導者にとって有用性が限られる。戦力デザイン(force design)を検討する際、戦力デザイナーは、自軍の十分な移動能力を考慮しないよう注意しなければならない。

さらに、軍事部隊は自己完結的で、自ら移動できるものでなければならない。一例として、陸上部隊は、作戦地域内、地域全体、あるいは地域横断的な移動において、航空部隊や海軍部隊に依存すべきではない。

転移は、戦術と作戦の流動性を中心に構築された実用的な作戦の中心的要素であるならば、そのように作戦を展開する能力を守ることが第一の原則である、しかし同時に、敵対者に逆の効果をもたらすことも同様に重要である。

認知的麻痺(cognitive paralysis)を引き起こすという考えは、コメントの間では一般的であるが、その考えは、そうなるために起こらなければならないことの大きさを見落としている。しかし、より定量的なアプローチ-転移を防ぐ-は、より少ないコストで同等の影響を与えることができる。

そのため、戦闘員は自軍の転移遂行能力を守る一方で、敵対者の軍事作戦に部分最適化を注入するよう積極的に働きかけなくてはならない(運動麻痺(paresis))。

最後に、敵対者から状況や環境の文脈を絶えず奪い、敵対者の通信能力を否定することで、戦闘員は予測可能な行動を取らざるを得なくなり、特定し、ターゲットを定め、破壊することがはるかに容易になる(無知(ignorance))。

同時に、部隊は無知になることを許してはならない。しかしこの場合、無知を防ぐことは戦場を超える。無知を防ぐためには、部隊は多様性と包摂を受け入れなければならない。そうでなければ、理想主義的で、予測可能で、認知的に動かなくなるリスクがある。

表2は、本稿と本シリーズの前稿から収集した、戦争(war)と戦い(warfare)の原則と逆の原則の統合リストである。

表2: 戦争と戦いの原則と逆の原則の統合
原則 逆の原則
戦争 勝利(Winning) 損失(Loss)
残存性(Survival) 消滅(Extinction)
秩序(Order) 無秩序(Disorder)
耐久性(Durability) 脆化(Embrittlement)
力(Power) 窮乏(Starvation)
戦い 実用主義(Pragmatism) 理想主義(Idealism)
予測不可能性(Unpredictability) 予測可能性(Predictability)
移動(Movement) 不動(Immobility)
転移(Transitions) 運動麻痺(Paresis)
情報(Information) 無知(Ignorance)

結論

ブロディ(Brodie)は、軍事思想にほとんど変化が起きない理由のひとつは、保守主義や戦術・戦略コンセプトが資材の開発に遅れていることではなく、むしろ「科学的思考の習慣(habit of scientific thinking)がないこと」だと指摘する[32]

ブロディ(Brodie)の評価は少し厳しいかもしれないが、ある程度は正しいのかもしれない。陸軍の戦争の原則(principles of war)が100年近くも比較的不変のままであることは、その時代性を反映しているのではなく、むしろ利益共同体(community of interests)が有意義な方法でこの資料に関与しようとしないことを反映しているのだ。

特に、人間中心の戦いの時代から、人工知能、人間と機械を統合(一体化)した編成、そして多数の自律システムが支配する戦いの時代へと転移しつつあることを考えれば、この怠慢は憂慮すべきことである。

従って、陸軍のコンセプトとドクトリンを進化させる上で、新奇な情報化時代の技術を、将来の紛争のために陸軍がどのように活動し、組織し、装備するかを統合(一体化)し続ける際に、一握りの考慮事項が役に立つかもしれない。

第一に、ここで概説した原則と逆の原則は、これらの技術が提示する課題に正しく対処していない可能性がある。また、これらの原則は、システム理論やネットワーク化されたデータ中心の戦いが陸軍や統合作戦に影響を与えるすべての方法を必ずしもサポートするものではない。

にもかかわらず、我々は手をこまねいて、戦争(war)と戦い(warfare)の現代的かつ将来的な原則を定義するために、100年前の考え方に頼り続けてはならない。コンセプト開発者、ドクトリン開発者、軍事思想指導者、陸軍指導者は、戦争(war)と戦い(warfare)の将来がどのように変化するかを予測するために、新しく挑戦的な認知的分野に果敢に挑戦しなければならない。

しかし、その際、適切な場合には新しい言葉を使い、既存の用語やコンセプト、ドクトリン上の考えを、制度的なバイアスにまだ染まっていない将来の考え方の空間(idea space)に押し込めないようにしなければならない。そうすることで、思考が明瞭になり、願わくば、エアランド・バトル(AirLand Battle)をほじくり返すだけでなく、原因メカニズム、フィードバック・ループ、ネットワーク経路を明確に特定し、首尾一貫した用兵のアプローチとなるような作戦コンセプトや作戦ドクトリンを明確化することができる。

第二に、未来学者や「マッド・サイエンティスト(mad scientists)」を強調することは、その効用を終えた。9.11以降の戦争は、ドローンやサイバーの熱狂的なファンを刺激した、特に、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争でアゼルバイジャンがドローンを巧みに使用した後だ。

しかし、真の紛争学者にとって、ナゴルノ・カラバフを過度に強調することは、自分が提示したいデータを表現するために紛争を選別することであり、学問的にも一般的にも非倫理的な行為である。

したがって、将来の武力紛争では、人工知能、人間と機械の統合(一体化)編成、自律システムの利用が増加し、戦場で物理的に闘う人間の兵士の役割が減少することは間違いない、だからといって、会戦そのものや陸上戦固有の課題が将来的に減少するわけではない。

米陸軍、そして米軍全体は基本的に遠征軍であるため、常に紛争地帯に展開し、そこに入らなければならない。一旦その地帯に入れば、陸上部隊の7つの基本要件を実施しながら、自らを確保しなければならない。これらの要件は技術を超越しており、以下に列挙する。

・ 陸軍は領土を奪回する能力がなければならない。

・ 陸軍は特定の領土から敵軍を排除する能力を有しなければならない。

・ 陸軍は領土を保持する能力がなければならない。

– 陸軍は、領土を奪取または奪還する際に頂点に達してはならない。

– 陸軍は、領土を奪取または奪還する際に、戦闘力を浪費して反撃を受けやすくしてはならない。

・ 陸軍は住民を守る能力がなければならない。

・ 陸軍は敵対する部隊を包囲する能力がなければならない。

・ 陸軍は敵対する部隊をその場に保持(固定)する能力がなければならない。

・ 陸軍は、境界線を封鎖する能力がなければならない。

これらの要件が超越論的であることを考えれば、コンセプト開発者、ドクトリン開発者、科学・技術の専門家、戦力デザイナー(force designers)が協力して、人工知能、人間と機械の統合(一体化)編成、自律システムなど、将来技術の重要な側面を統合(一体化)する将来の部隊に関する実用的な考え方とデザインを開発することが不可欠である。それは、陸上戦の多様性を排除するものではなく、将来の陸軍部隊が達成すべき能力の中核に位置づけるものである。

戦いの原則(principles of warfare)と戦いの逆の原則(inverse principles of warfare)もまた、この議論の中心に置かれなければならない。なぜなら、これらの原則と逆の原則は、これら7つの基本要件それぞれを支える原動力だからである。

最後に、武力紛争の将来について考えるとき、陸軍部隊は他のタイプの用兵に対して「やらない(do not do)」と高慢になるべきではない。本稿の原則と逆の原則が示唆するように、陸軍部隊、指導者、および編隊は、適応的で、現実的で、反射的に、生き残り、勝利し、優位性を獲得し維持することを念頭に置いて作戦すべきである。

陸軍は「消耗をしない(do not do attrition)」というような主張は、戦争や戦いの現実、ニュアンス、条件、状況主義について十分な教育を受けていない人々の聴衆にはよく響くかもしれないが、正確とは言い難い。

コバニ包囲戦(Siege of Kobani)(2014~2015年)、モスルの会戦(Battle of Mosul)(2016~2017年)、マラウィの会戦(Battle of Marawi)(2016年)、ラッカの会戦(Battle of Raqqa)(2016年)、カシャムの会戦(Battle of Khasham)(2018年)などの血まみれの残忍な会戦や、ウクライナがロシアと生き残りをかけて闘っている際の陸軍の支援は、陸軍部隊の戦いのアプローチ方法の中心に、消耗、つまり破壊志向の用兵があることを明確に示唆している。

さらに、陸軍が戦闘を第三者に委託することで、陸軍部隊を戦闘から遠ざけようとする考え方が増え続けている。イラクでは、イスラム国に対してイラクの治安部隊が第三者となった。シリアでは、イスラム国に対してシリア民主軍が第三者となった。ウクライナの対ロシア戦では、ウクライナの武装勢力が第三者となった。これらは多くの例のうちの3つにすぎない。

米軍は非同盟の取り決めのほとんどに「パートナー」という言葉を使いたがるが、定義上、こうした第三者による紛争は代理戦争(proxy wars)である[33]。代理戦争は本質的に、非代理戦争よりもはるかに消耗的である。というのも、今日のほとんどの国家は、波状攻撃において伝統的な軍事部隊を使用する傾向が少ないからである[34]

しかし、ジャック・ワトリング(Jack Watling)とニック・レイノルズ(Nick Reynolds)は、ロシアがウクライナにおいて、正規軍とワグネル・グループのような契約代理部隊の両方で、彼らが「肉弾戦術(meat tactics)」と表現するようなこの戦術を多用してきたと指摘している[35]

さらに、近接戦闘陸上部隊をマルチドメイン・タスク部隊(MDTF)や戦域火力コマンド(theater fires command)のような長距離打撃部隊に置き換えようとする動きが強まっているのも、戦術的・作戦的移動性の重要性が低下し、戦術的・作戦的間接火力(カノン砲火力、ロケット火力、ミサイル火力など)の重要性が高まっていることを反映している。

このような状況-移動性重視の低下と長距離打撃(間接火力)の重視の増加-は、消耗が発展するだけでなく、戦争の本格的な分類へと成熟する胎動である。第一次世界大戦は、このダイナミクスの好例である。西部戦線では移動性が低下し、間接火力が増加したため、戦線は石灰化し、消耗が紛争を支配するようになった[36]

ウクライナでもよく似た状況が展開されている。ロシアは、2022年の早い時期にロシアが奪った領土の奪還を目指したウクライナの反攻を妨害した。そうすることで、前線の移動性が低下した。移動性が低下したため、双方は長距離打撃やその他の間接火力を重視するようになった。この点で、ウクライナは米軍から多大な支援を受けた。

とはいえ、双方が固定戦線に沿って火力を駆使し、相手から領土を奪ったり奪回したりしないようにしたため、消耗-すでに紛争は高まり-は激しいままだった。この考え方は「スタンド・オフ戦(stand-off warfare)」に分類される。

さらに、スタンド・オフ戦(stand-off warfare)は単純なヒューリスティックで描くことができ、そのダイナミクスを素早く説明するのに役立つ。「↓M」を移動性の低下、「↑F」を長距離打撃(つまり間接火力)の増加、「↑A」を消耗の増加とすると、スタンド・オフ戦は次のようになる。「↓M+↑F=↑A」である。

スタンド・オフ戦の問題点、それは、陸軍が長距離精密打撃に重点を置き、復元性があり、打たれ強く、気骨のある陸上部隊を犠牲にしている方向性であり、戦いの原則(principles of warfare)と戦いの逆の原則(inverse principles of warfare)とすぐにずれてしまうことである。

陸軍の再編指針(ARSTRUC)は、今後数年間にわたり、多くの部隊の中でも、騎兵部隊と工兵部隊を大幅に削減することで、陸上部隊を淘汰するとしている[37]。しかし、騎兵と工兵は、陸上部隊が陸上戦の7つの課題を達成するために不可欠であり、さらに、部隊が現実主義、予測不可能性、移動、転移、情報に関連する潜在能力を引き出すのに役立つ。

さらに、これらの編成は敵の作戦を予測しやすくする重要な要因であり、敵の不動性と運動麻痺(paresis)を増加させ、敵が自軍の作戦について比較的無知であるか、少なくとも情報が少ない状態を維持する。

戦戦争(war)と戦い(warfare)の将来について考え続けるとき、新技術の呪物崇拝(fetishism)にとらわれてはならない。新技術が戦争(war)と戦い(warfare)の原則をどのように変えるのか、そして戦争(war)と戦い(warfare)の性質にプラスにもマイナスにもどのような影響を与えるのかを考えなければならない。

そこから、陸上戦における軍隊の永続的な要件と新技術がどのように相互作用するかを見なければならない。他の軍隊と闘う陸軍は、その軍隊が国家であるか非国家であるかにかかわらず、常に領土を奪取しなければならない。陸軍は常に、敵対する部隊を領土から排除しなければならない。陸軍は常に住民を防護しなければならない。

陸軍は常に領土を保持しなければならない。陸軍は常に他の軍隊を包囲しなければならない。陸軍は常に他の軍隊を固定しなければならず、陸軍は常に国境を封鎖しなければならない。ロボット、人間と機械が統合(一体化)された編成、自律システム、ドローンは、これらのタスクの一部で陸軍を支援することはできるが、最終的には、将来の戦場で最も貴重なアセットとして、戦いの原則(principles of warfare)と戦いの逆の原則(inverse principles of warfare)を念頭に置いて作戦する人間の兵士や人間が支配する編隊に取って代わることはできない。

最後に、長距離精密打撃は、将来の戦場で敵のターゲット地点を正確に当てることができるようになるだろう。しかし、戦争の第一原則は残存性であるため、敵はわれわれの打撃の致命的効果を逃れる方法を見つけることによって、精密打撃に素早く適応するだろう。その結果、米陸軍は、戦場で生き残り勝利を得ようとする適応力のある敵の問題に対処するため、復元性に富み、打たれ強く、気骨のある陸上部隊を再び必要とすることになる。

将来の陸軍部隊-戦いの原則(principles of warfare)を満たし、陸上戦の課題に関連する到達目標を達成することができる部隊-の戦力デザイン(force design)を考えるとき、我々は小型で軽量な部隊に目を向けるべきではない。この種の部隊は、より展開しやすいかもしれないが、すぐに識別され、簡単に包囲され、陸上戦の7つの課題のどれも達成できず、断片的に破壊される可能性が高い。

したがって、我々は-復元性があり、打たれ強く、骨太であることを考え-より大きな編成を開発することに目を向けるべきである。これらの編成は装甲化され、局地防空、対ドローン、サイバーなどに防護されるべきである。戦車や装甲戦闘車両がより展開しやすくなるように、装甲は重くするのではなく、軽くすべきである。

小型で軽量な部隊ではなく、より大型で復元性の高い部隊を編成することで、陸軍部隊は、現代および将来の武力紛争に関する議論で見過ごされているいくつかのことを達成することができる。第一に、復元性の高い大規模な部隊は、戦闘に参加するためだけに限られた戦闘力を大幅に使い果たした可能性が高い小規模で軽量な部隊よりも、将来の紛争に臨む準備が整っている。

第二に、大規模で復元性のある部隊は、小規模な軽部隊に比べ、軍事目標に到達しない、あるいは到達する可能性が低い。統合部隊に対する陸軍の最大の貢献は、防空やミサイル防衛でも持続性でもなく、国防総省(Pentagon)中を駆け巡るその他の一般的な話題の数々でもない。

むしろ、統合部隊に対する陸軍の最大の貢献は、軍事目標で頂点に達することではなく、敵対者に直接的な軍事的圧力を維持することで、作戦上の勝利直後の状況を利用し、米軍および政治指導者にさらなる機会を作り出す能力容量、体力、規律、集中力を有することである。

スリム化(lean)は、いかに魅力的に聞こえるかもしれないが、軍事紛争において陸軍が米軍および政治指導者に提供できる機会を大幅に制限することになる。

ノート

[1] Bernard Brodie, “Strategy as a Science,” World Politics 1, no. 4 (1949): 471.

[2] Brodie, “Strategy as a Science,” 471.

[3] Brodie, “Strategy as a Science,” 471.

[4] J.F.C. Fuller, “Progress in the Mechanization of Modern Armies,” RUSI Journal 70, no. 477 (1925): 75.

[5] See Amos Fox, On the Principles of War: Reorganizing Thought and Practice for Large-Scale Combat Operations, Association of the United States Army, Land Warfare Paper 138, June 2021.

[6] Amos Fox, Myths and Principles in the Challenges of Future War, Association of the United States Army, Land Warfare Paper 23-7, December 2023.

[7] Michael Peck, “Losses in Ukraine Are ‘Out of Proportion’ to What NATO Has Been Planning For, the Alliance’s Top General Says,” Business Insider, 5 February 2023.

[8] Angelica Evans, Kateryna Stepanenko, Nicole Wolkov, Riley Bailey, George Barros and Frederick W. Kagan, “Russian Offensive Campaign Assessment,” Institute for the Study of War, 27 December 2023.

[9]AUSA Coffee Series—GEN James Rainey—U.S. Army Futures Command,” Association of the United States Army, 14 December 2023, video.

[10]Interview with Lieutenant Colonel James Rainey,” DVIDS, 16 November 2004, video.

[11] John Spencer, Liam Collins and Jayson Geroux, “Case Study #7—Fallujah II,” Modern War Institute, 25 July 2023.

[12] Spencer, Collins and Geroux, “Case Study #7.”

[13] Cathal J. Nolan, The Allure of Battle: The History of How Wars Have Been Won and Lost (Oxford: Oxford University Press, 2017), 573.

[14] Michael Gordon and Bernard Trainor, Cobra II: The Inside Story of the Invasion and Occupation of Iraq (New York: Vintage Books, 2007), 309.

[15] Gordon and Trainor, Cobra II, 309.

[16] Gordon and Trainor, Cobra II, 309–10.

[17] Gordon and Trainor, Cobra II, 311.

[18] Olga Oliker, Russia’s Chechen Wars 1994–2000: Lessons from Urban Combat (Monterey, CA: RAND, 2001), 9–10.

[19] Stasys Knezys and Romanas Sedickas, The War in Chechnya (College Station: Texas A&M University Press, 1999), 99.

[20] Dodge Billingsley and Lester Grau, Fangs of the Lone Wolf: Chechen Tactics in the Russian-Chechen Wars, 1994–2009 (Fort Leavenworth, KS: Foreign Military Studies Offices, 2012), 171.

[21] Billingsley and Grau, Fangs of the Lone Wolf, 171.

[22] Oliker, Russia’s Chechen Wars, 19.

[23] Oliker, Russia’s Chechen Wars, 19.

[24] Knezys and Sedickas, The War in Chechnya, 99.

[25] Knezys and Sedickas, The War in Chechnya, 101.

[26] Knezys and Sedickas, The War in Chechnya, 101.

[27] Arkady Babchenko, “The Savagery of War: A Soldier Looks Back at Chechnya,” Independent, 10 November 2007.

[28] Alan Schom, Napoleon Bonaparte: A Life (New York: HarperCollins, 1997), 275.

[29] Amos Fox, “On the Employment of Cavalry,” ARMOR 123, no. 1 (Winter 2020), 37.

[30] Fox, “On the Employment of Cavalry,” 36–37.

[31] Donella Meadows, Thinking in Systems: A Primer (White River Junction, VT: Chelsea Green, 2008), 157.

[32] Brodie, “Strategy as a Science,” 473.

[33] Amos Fox, “Confronting Proxies,” in Routledge Handbook of Proxy Wars, ed. Assaf Moghadam, Vladimir Rauta and Michel Wyss (London: Routledge, 2023), 258–59.

[34] Amos Fox, “Comparative Proxy Strategies in the Russo-Ukrainian War,” Comparative Strategy 42, no. 5 (2023): 605.

[35] Jack Watling and Nick Reynolds, Meatgrinder: Russian Tactics in the Second Year of Its Invasion of Ukraine (London: Royal United Services Institute, 2023), 3–8.

[36] Jeremy Black, The Age of Total War, 1860–1945 (Westport, CT: Praeger Publishers, 2006), 115.

[37]Army Force Structure Transformation,” white paper, Department of the Army, 27 February 2024.