ロシアのウクライナに対する戦争 -現代のクラウゼヴィッツ戦争の複雑性- ⑭新興技術と破壊的技術は変革をもたらすが、戦争の霧を晴らすことはできない ロシア・セミナー2024

前回の投稿「ロシアのウクライナに対する戦争 -現代のクラウゼヴィッツ戦争の複雑性- ⑬軍事作戦がロシアの政治的到達目標の変化に与える影響 ロシア・セミナー2024」に続いてロシア・セミナー2024の論文集の第13弾(論文の番号は14)を紹介する。この論考は、タイトルの通り「新興技術と破壊的技術は変革をもたらすが、戦争の霧を晴らすことはできない」ことを論じたものである。クラウゼヴィッツのいう「戦争の霧」とは何かを考える一助となると言えるのではないだろうか。長文となっているが一読をお勧めする。(軍治)

ロシアのウクライナに対する戦争 -現代のクラウゼヴィッツ戦争の複雑性-

Russia’s war against Ukraine -Complexity of Contemporary Clausewitzian War-

14_新興技術と破壊的技術は変革をもたらすが、戦争の霧を晴らすことはできない

– ロシアのウクライナ戦争からの証拠 –

14_EMERGING AND DISRUPTIVE TECHNOLOGIES TRANSFORM, BUT DO NOT LIFT, THE FOG OF WAR

– EVIDENCE FROM RUSSIA’S WAR ON UKRAINE

 

ドミニカ・クネルトヴァ(Dominika Kunertova) 、 スティーブン・ヘルツォーク(Stephen Herzog)

ドミニカ・クネルトヴァ(Dominika Kunertova)博士は、スイス連邦工科大学チューリッヒ校安全保障研究センター主任研究員。また、コーネル・ブルックス・スクール・テック・ポリシー研究所の非常駐研究員でもある。以前はブリュッセルのNATO本部およびノーフォークのNATO変革連合軍司令部(NATO ACT)にて勤務。モントリオール大学で博士号を取得。

スティーブン・ヘルツォーク(Stephen Herzog)博士は、スイス連邦工科大学チューリッヒ校安全保障研究センター主任研究員。ハーバード大学ベルファー科学国際問題センターのアソシエイトでもある。2024年夏、モントレーのミドルベリー国際問題研究所を拠点とするジェームズ・マーティン核不拡散研究センターの実務担当教授に就任予定。元米エネルギー省軍備管理官。イェール大学で博士号を取得。

ロシア・セミナー2024におけるドミニカ・クネルトヴァ(Dominika Kunertova)とスティーブン・ヘルツォーク(Stephen Herzog)のプレゼンテーションは、フィンランド国防大学(FNDU)のYouTubeチャンネル(https://youtu.be/P8VA1bT8ADs) 7:39:50からご覧いただける。

要約

この論文では、新しい技術はクラウゼヴィッツ的な戦争の霧(fog of war)にどのような影響を与えたのか?この研究課題を解決するために、ロシアが現在進めているウクライナへの全面侵攻の事例を活用する。その証拠には、核兵器が搭載可能な極超音速兵器のような「ハイテク(high-tech)」システムと、安価な市販ドローンや手頃なオープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)技術のような「ローテク(low-tech)」システムの両方が含まれる。前者の場合、ロシアの脅威とプロパガンダが、軍事的用途が不明確な兵器にまつわる神話を作り出したことがわかる。

後者については、革命的な効果をもたらすことなく戦闘力学(combat dynamics)を変化させるシステムとして、メディアや識者の主張はセンセーショナルだった。どちらのケースも、性能(performance)に対する期待と戦場の現実との間に顕著なギャップがあることを示している。そのため、新型兵器技術は、戦力バランス(balance of forces)と現場の状況を明確にすることができなかった。陸上戦(land warfare)では、新技術が勝敗を左右することはほとんどないことは、歴史が証明している。それに反する主張をすることは、戦争の霧を助長するだけであり、兵器に対する誇張された期待にまつわる誇大広告に対抗する新たな戦略が必要である。

はじめに

フィンランド国防大学の2024年ロシア・セミナーの提案募集を読んだとき、私たちはすぐにある疑問を抱いた。ロシアのウクライナ戦争において、新たな新興技術は戦争の霧(fog of war)を晴らすのに役立ったのか、それとも霧を濃くしてしまったのか?ロシアと新興・破壊的技術(EDT)に焦点を当てることは、今日の戦略的背景を理解する上で不可欠である[1]。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2017年、人工知能(AI)の開発をリードすることで世界を支配するという野心を示した[2]

同様に2018年、プーチンは、AIの軍事的応用と自律プラットフォームの利用の進歩を示唆する「新しいエキゾチックな兵器」を発表した[3]。さらに、核搭載可能な極超音速ミサイルへのクレムリンの投資は、極端な速度で攻撃し、既存のミサイル防衛を克服する能力を提供することを意図していた[4]。ロシアは2022年2月のウクライナへの本格的な侵攻開始以来、実際にこれらの新興・破壊的技術(EDT)をいくつか使用している。しかし、破壊的技術に対するモスクワの関心と投資にもかかわらず、ロシアは戦争に勝利していない。戦争は続いており、クレムリンの戦場での成功でさえ、ロシア兵に大量の死傷者を出している。

理論上、戦況をより明確にするはずの新技術に関する考え方は、ロシア側だけに当てはまるものではない。ウクライナは、紛争でどこにでもあるような小型ドローン(small drones)を製造するために、社会全体の取組み(whole-of-society efforts)にかなりの資源を費やしてきた。このため、戦場に革命をもたらし、ゲームの流れを変えるような効果をもたらし、さらには戦争の本質を根本的に変えるような新しいドローン技術や戦いの方法(ways of warfare)について、多くのメディアやアナリストが主張するようになった[5]。しかし、キーウもまた、この紛争で意味のある勝利に似たものを達成するには程遠い。

この論文では、ロシア・セミナーのクラウゼヴィッツ的枠組みを採用し、新たな新興技術と戦い(warfare)の関係を探る。そのため、クラウゼヴィッツの「戦争の霧(fog of war)」のコンセプトに着想を得ている。戦争における新興・破壊的技術(EDT)の役割に関する多くの証拠を整理した後、新技術の役割を過大評価することは、その性能(performance)と戦場の現実との間の期待ギャップを広げることになると主張する。新興・破壊的技術(EDT)が戦闘結果を明確にするという仮説の世界もあるが、ウクライナではそうではないことが明らかになった。むしろ、このような性能(performance)への期待と戦場の現実とのギャップは、戦争の霧を濃くすることに大きく貢献している。特定の兵器システムの革命的性質に関する誇張された主張は、問題を悪化させるだけである。

不思議なことに、新兵器技術に関する今日の議論は、戦争の霧の晴れを暗示した第一次湾岸戦争(1990~1991年)のナラティブに似ている。当時は、米軍が使用する高度なネットワーク技術と精密誘導兵器の出現に重点が置かれていた。これらのいわゆる「ゲームを変える」兵器は、軍事における革命(RMA)の象徴であり、クラウゼヴィッツの戦争コンセプトの中核的要素である摩擦(friction)と不確実性(uncertainty)を取り除くと考えられていた。

どんな新しい技術も、それだけで戦争に決定的な優位性をもたらすことはできないというのが、学者たちの主な反応であった[6]。しかし、それに反する主張もあった[7]。この後者の陣営の主張が、実は戦争の霧を晴らしているのかもしれない。陸上戦(land warfare)では、勝利の鍵を握るのは、技能と訓練の組み合わせ、軍備の量、そして敵の寛容な防衛力である[8]。別の言い方をすれば、技術だけではウクライナは突破口を開くことができない[9]

私たちの論文は、新しい兵器システムが人気を博すと軍事史の中で定期的に復活する、この危険な技術的楽観主義(technological optimism)に対抗するものである。斬新な技術が戦争の不確実性を解決できることが証明されたことはほとんどなく、現在進行中のウクライナ戦争も例外ではない。特に、ドローン、オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)、AI、極超音速(hypersonics)という4つの技術分野がウクライナの戦場を一変させるのに果たした役割について、紛争から得られた証拠を用いてこのことを示す。

特に、新興・破壊的技術(EDT)は戦力バランス(balance of forces)も戦闘結果も明確にしていない。最後に、戦争における人間の役割の継続について注意を喚起し、現在の技術楽観主義的思考(techno-optimist thinking)に固執することのリスクのいくつかを明らかにする。

クラウゼヴィッツ、戦争、技術

「戦争は不確実性の領域であり、戦争における行動の根拠となる要素の4分の3は、多かれ少なかれ不確実性の霧に包まれている。繊細で識別力のある判断力が求められ、真実を嗅ぎ分ける熟練した知性(skilled intelligence to scent out the truth)が必要とされる」[10]

クラウゼヴィッツにとって、戦争の本質は混沌としている。戦争は霧(fog)、摩擦(friction)、偶然性(chance)、複雑性(complexity)によって規定されたルールに従うのみである。よく知られたクラウゼヴィッツの「戦争の霧(fog of war)」という比喩は、軍事作戦で経験する不確実性(uncertainty)の大きさを表している。このような不確実性は、さまざまな要素によってもたらされる。戦場での状況認識の欠如、自らの能力に関する不確実性、敵対者の能力に関する限られた情報、敵の意図に関する最小限の透明性(transparency)などである。その結果、敵対者間の誤解が生じ、戦争の原因や、国家が時に驚くほど協力できないことについて理論化する学者たちによって、重要な著作が生み出された[11]

技術の役割は、国家の軍事力を強化することによって、この摩擦と不確実性を軽減することである。これは、兵器システム、兵站、インテリジェンスの改善によって実現する。クラウゼヴィッツによれば、技術は戦いのための道具(tool for warfare)であり、軍事作戦で生じる多くの問題の万能薬ではない。クラウゼヴィッツの戦い(Clausewitzian warfare)において技術は、敵を物理的・心理的に攻撃するため、また敵対者の脆弱性を利用し、民意を屈服させるために用いられる[12]。技術は戦争を定義するものではなく、戦争の枠内に存在するものである。

我々は、新しい新興・破壊的技術(EDT)が戦場の不確実性を低減し、戦争の霧(fog of war)を晴らすことに貢献できる2つの方法があると仮定する。

第一に、軍事的効果という点では、新技術は任務の有効性と部隊の目標達成能力を向上させることができる。したがって、ある国家の軍事力が新兵器によって集約されれば、戦力バランス(balance of forces)が変化し、ひいては勝敗予測が改善されるはずである。新たな先進兵器システムは、戦闘員がより高い致死性(lethality)、精度(accuracy)、速度(speed)、および/または射程距離(range)で武力を行使できるようにすることで、これを実現することができる。

第二に、戦場における透明性(transparency)という点で、新技術は状況認識を高めることができる。つまり、技術は情報へのアクセスを質的にも量的にも向上させることができる。技術はデータ収集を加速させるだけでなく、その処理と普及を早める。今日の戦場指揮官は、クラウゼヴィッツの時代にはほとんど不可能であったリアルタイムのインテリジェンスに基づいて意思決定を下すことができる。

我々は、新興・破壊的技術(EDT)がこの2つの次元で戦争の霧(fog of war)を晴らすのに役立つかどうかを理解しようとしている。そのためには、新しい兵器技術の能力と、戦場への統合(一体化)に伴うリスクと利益について、「真実を嗅ぎ分ける熟練した知性(skilled intelligence to scent out the truth)」を配備することが重要である。本論文では、ウクライナの戦いに革命をもたらすと頻繁に主張される4つの技術分野を評価する。これらには、核搭載可能な極超音速兵器のような「ハイテク」システムと、安価な市販ドローンや民間企業のニュースペース(NewSpace satellites)衛星のような「ローテク」システムの両方が含まれる。さらに、軍事AIの場合は、ターゲッティングと意思決定プロセスの両方を対象としている。分析の対象としたシステムの多様性から、ウクライナにおける戦争の霧に対する新たな技術とその影響について、予備的な結論を得ることができる。

ドローン

ドローン(搭乗員なしの航空機)はほとんど新しい技術ではない。過去20年間、ドローンは主に対テロ世界戦争(Global War on Terror)の文脈で捉えられてきた。つまり、軍事用ドローンは通常、持続的な監視を確保し、国家が精密な攻撃を実行できるようにする高度な大型空中プラットフォームだった。中高度、長時間の耐久性を持つドローンは遠隔戦(remote warfare)の重要な構成要素であり、リスクを回避する政治指導者がテロと戦いながらも、「地上部隊(boots on the ground)」の派遣を避けることを可能にした。

しかし、ウクライナのドローン戦争と過去数十年のドローン戦争には、対照的な点がある。 ウクライナでは、ドローンにはブーツがある[13]。むしろ、低空から戦場の力学を変えているのだ。この戦争では、両陣営による小型ドローンの前例のない拡散があり、ドローン戦(drone warfare)の技術と戦術の革新的な発展をもたらしている[14]

ウクライナの戦場では、ドローン偵察機、爆撃機、徘徊型弾薬(loitering munitions)、さらには自爆ドローンが至る所に存在している。これらの安価な商用技術は、戦闘における費用対効果(cost-per-effect)を改善し、陸上作戦における垂直性を重視するようになり、戦場における用兵力学(warfighting dynamics)を変えた。ドローンは、リアルタイムのインテリジェンスと砲兵火力(artillery fire)の精度に関しては、個々の兵士に力を与える[15]

小型ドローンは現在、陸上部隊の高烈度戦(high-intensity warfare)に役立っている。これには、技術・ゲリラによって組み立てられたシステムや、インターネットでアマゾン(Amazon)やアリエクスプレス(AliExpress)から注文された趣味のドローンを直接再利用したものも含まれる。これまでドローンは、一方が航空優越(air superiority)を保持している場合に役立つと考えられてきた。兵士たちはウクライナで、スパイ活動や手榴弾をターゲットに投下するために、使い勝手の良い低価格の小型ドローンを何万機(tens of thousandsも配備できるようになった。これらのドローンは心理戦作戦(psychological warfare operations)の役割を果たし、ノン・キネティックな効果をもたらすことができる。そのような顕著な効果の中には、待ち伏せのビデオを録画し、それをソーシャル・メディアのウェブサイトに投稿するようなプロパガンダがある。

重要なのは、本格的な侵攻の初期から、モスクワはウクライナの重要インフラに可能な限りの損害を与えるためにドローンを使用してきたことだ。いわゆる一方向攻撃/自殺/神風ドローンは、ウクライナの送電網、交通網、さらには民間人の避難所までもターゲッティングにする使い捨ての弾薬(disposable ammunition)のように振る舞う。このドローンは、攻撃前にターゲット・ゾーンで待機することができ、明確な攻撃能力を提供する。被害もさることながら、これらのドローンは明らかに恐怖の兵器である。

戦場での革新は、FPV(First Person View)ドローンの普及につながった。FPVドローンは基本的に、安価に製造された軍事用徘徊型弾薬(loitering munition)の商業版である。これらのシステムは、市販の部品から作られ、地上にいるパイロットが操作する。パイロットは、オペレーターのゴーグルを通したビデオ・フィードのおかげで、ドローンがターゲットに衝突するようにナビゲートする[16]。GPS誘導弾が数十万ドルするのとは対照的に、この人間誘導弾(human-guided munition)は400ドル程度で済む。FPVドローンは、その精度と航行能力によって砲弾(artillery shells)に匹敵する破壊効果を発揮できるため、結果的に砲兵不足による火力のギャップの解消に役立つと考えられている[17]

小型ドローンへの注目は、単にクラウドソーシングによる資金調達の産物ではない。ウクライナは「ドローンの軍隊」の創設を約束し、キーウのデジタル変革担当大臣ミハイロ・フェドロフ(Mykhailo Fedorov)は、政府が100万〜200万機のドローンを製造する意向であることを発表した。そして2024年2月、ヴォロドミル・ゼレンスキー(Volodomyr Zelenskiy)大統領は、ドローン戦(drone warfare)に特化した無人システム軍を創設した[18]。ロシアは以前、軍用ドローンの製造を優先していたが、FPVドローンによる攻撃を行う頻度に関しては、ウクライナにほぼ追いついた[19]

ドローンは現在、安価で小型の商用機となり、普及と運用が容易で、家電製品のような規模で生産されるようになった。このため多くのオブザーバーは、ドローンはゲームを変える効果があると語っている。この技術は、勝敗の予測をより的確にし、インテリジェンスを向上させることで、戦場におけるクラウゼヴィッツ的な戦争の霧(fog of war)を晴らすのに役立つのだろうか?総合的に見れば、答えはどちらでもないように見える。実際、ドローンに関するセンセーショナルな主張は、こうしたプラットフォームを戦い(warfare)に使用する際に伴う問題と対比させると、淡白なものになる。その理由は少なくとも5つある。

第一に、ドローンには自己防衛機能がなく、天候や対策に弱い。ドローンは高速風や豪雨、また寒冷地ではドローンのバッテリーを消耗させ、その結果航続距離が短くなるなど、まるで家電製品のように動作する。これらの問題は、冬季に特に深刻になる。また、一部のFPVドローンには妨害電波対策装置が搭載されているが、この追加装備はドローン1機あたりのコストを大幅に上昇させ、手頃な価格と拡張性に悪影響を及ぼす[20]

第二に、ドローン任務の成功は、人間のオペレーターの技量に大きく左右される。政治的コネクションによって指揮官が任命された新設部隊の場合、命中率は10%から15%が一般的だ。特殊部隊やウクライナのインテリジェンス機関の部隊など、専門的な訓練を受けた部隊では、命中率は70%や80%にもなる。これは大きな違いだ。

第三に、無数のドローンモデルを組み立て生産することは、当然ながら困難を伴う。これには、異種の安全基準、採用の問題、相互運用性のハードル、修理や部品交換の際に発生する問題などが含まれる。これらの障害はすべて、さらなるスケーリングの問題を引き起こす可能性がある[21]

第四に、ドローンがうまく運用されるためには、ほとんど他の技術に依存している。ドローンの効果的な航行と通信には、小型の商業衛星が提供するインターネットへのアクセス、干渉に強い無線機、夜間任務用の赤外線センサーなどが必要になるかもしれない。こうした資源は常に利用できるとは限らず、また営利団体が必ずしも進んで軍に提供するとは限らない。

そして第五に、無人偵察機は領土を奪取したり拠点を破壊したりすることはできない。彼らには、伝統的な地上部隊(boots on the ground)のような火力と持続力が欠けている。別の言い方をすれば、ドローンの軍隊は歩兵や騎兵の代わりにはならない。しかし、ドローンは敵対者の攻勢を遅らせ、インフラを破壊し、防空を挫折させ、敵の軍隊や民間人を威嚇し、戦意を喪失させることができる。したがって、その軍事的効果は戦術的な領域に限られる。ドローンは戦闘コストを下げるため、作戦を実施するための手段を増やすことができる。しかし、その優位性は費用対効果の高い対抗策が運用されるまでしか持続しないため、革命的な効果をもたらすものではない。

ウクライナの戦場における技術的な適応は、ドローンの場合、他の兵器システムの場合よりもはるかに速く起こっている[22]。初期の話題となったドローンは、ウクライナ側の大型で洗練されたトルコ製バイラクタルTB2ドローンと、ロシアが配備したフォアポスト(Forpost)とオリオン(Orion)軍用ドローンだった。しかし、初期の成功の後、これらのドローンは電子戦(electronic warfare)や低高度防空資産の格好の餌食になることがすぐに明らかになった。さらに、どこにでもあるDJI Mavicドローンは、ロシアがAeroScopeドローン探知システムを使用したため、「危険な足かせ(hazardous encumbrance)」となった[23]

OSINT技術

オープン・ソース・インテリジェンス技術は、一般に入手可能な情報源から情報を収集・分析することを可能にする。これには、ソーシャル・メディア、インターネット、テレビからのデータ/メタデータが含まれる。最も注目すべきは、オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)には現在、商業用画像を提供し、リモートセンシング能力(合成開口レーダー、無線周波数など)を提供する小型低軌道(LEO)衛星の大規模なコンステレーションが含まれていることだ。ロシアの軍事プランナーで、何百万台もの個人用データ収集装置を持つ国に攻め入ろうと考えていた者はほとんどいなかった。ウクライナの市民はそれぞれ自分の携帯電話を使って、メッセージ、ビデオ、ジオタグ付き写真の形で偵察データを作成することができる。

ウクライナ側にとって、宇宙は戦争に欠かせないものだった。通信、インテリジェンス、監視、偵察、測位、航法、計時のために、キーウは宇宙を利用した資産(商業ベースのものもある)を利用している。これらの活動の大部分は、衛星の数、画像の解像度、画像の利用可能性を大幅に向上させた民間企業の開発によってもたらされている。例えば、過去10年間に打ち上げられた宇宙船の数は、コストの低下により25倍に増加した[24]。この後の節で詳述するように、アナリストが利用可能なすべてのデータを評価するのに役立つ機械学習にも、現在進行中の大きな技術革新がある。手作業による対象物の特定は、地理空間インテリジェンス(GEOINT)分析においてもはや必要な最初のステップではない。

商業衛星の市場は急速に拡大している。最も有名なのは、米国のスペースX(SpaceX)社のスターリンク衛星がウクライナ軍に高速インターネットアクセスを提供したことだ。何千ものスターリンク端末が、ドローンによる攻撃の誘導を含む軍事通信を可能にした。別の企業、HawkEye 360は、ロシアの地上GPS妨害機を追跡するため、ウクライナ軍に無線周波数監視衛星へのアクセスを提供している。また、Maxar社やICEYE社が提供する合成開口レーダーによる商業衛星画像は、戦略的コミュニケーションや偽情報への対抗に重要な役割を果たしている。実際、軍の指揮官はオープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)を受け入れつつあり、時には秘密のインテリジェンスよりもオープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)を好むことさえある。このため、一部のメディアは、オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)によって 「戦争の霧を突き破ることができる(piercing of the fog of war)」とまで公言している[25]

しかし、商業資産への依存は、軍の能力や作戦に対する拒否権を民間主体に与える可能性がある。開戦以来、ウクライナは主に米国企業が所有する商業資産に依存してきた。商業セクターは技術革新の重要な源泉となっている一方で、民間セクターのパートナーが安全保障上のお荷物となる可能性もある。パートナーシップの本質上、顧客である国家政府や軍の指揮官による監視や管理ができないのだ。

企業は通常、資産の利用を統制(control)できる。例えば、企業の幹部は、特定の地理的なエリアでの製品の利用を制限したり(ジオフェンシング)、紛争の反対側でもサービスを利用できるようにしたりすることができる。スペースX社が、クリミア上空でキーウが同社のスターリンク衛星を軍事目的に使用することを許可しなかったケースを思い出してほしい[26]

さらに、営利団体が慈善的な理由で戦争に関与することは通常ない。スペースX(SpaceX)社による衛星インターネット・サービスの最初の寄付の後、ウクライナ政府が請求書を払い続ける余裕がなければ、サービスを利用できないことが明らかになった。NATO諸国の中には、ウクライナが軍事作戦を支援するために衛星を使い続けられるよう、スターリンク社に支払いを行った国もある[27]

しかし、宇宙技術の問題は、戦争の両陣営に影響を及ぼしている。ロシアは、衛星通信システムの不具合だけでなく、そのターゲッティングにおける宇宙を基盤とする資産の接続と統合(一体化)に問題を抱えていると伝えられている。しかし、ウクライナの敵に比べれば、ロシア軍が地上での闘い(fighting on the ground)で宇宙に頼ることは少ないかもしれない[28]

商業衛星画像の「誰がお金を払っているのか」「誰が提供しているのか」というジレンマに加え、誰がデータを処理し、戦場全域で利用できるようにしているのかは、また別の問題である。ソーシャル・メディアやニュース記事に掲載される画像の中には、怪しげな注釈や分析が施されているものもあり、また、ディープ・フェイク(deep fakes)や操作されたジオタグ(manipulated geotagging)が付けられている可能性もある。繰り返しになるが、こうした問題は、(熟練していない)人間の地理空間インテリジェンス(GEOINT)アナリストの重要性を指摘している。技術そのものが戦場を変えているわけではない。

上記の例はすべて、オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)が戦争の霧(fog of war)のベールを突き破るかもしれないという考え方が一般的に間違っていることを示唆している。これとは対照的に、ウクライナではこれらの技術が不確実性を高め、クラウゼヴィッツ的な戦争の霧を晴らすどころか、むしろ濃くしている。

人工知能

ロシア・ウクライナ戦争では、AIを活用したシステムの導入が大きく2つの点で進んでいる。第一に、このようなシステムは作戦と戦術の意思決定レベルでデータ分析に参加している。第二に、攻撃作戦のためのターゲッティング・データの運用化である。

データの可用性と比較的安価なマイクロチップとソフトウェアの融合は、AIを活用した自律性を大規模に習得するための競争のための肥沃な土壌を作り出した。オープン・ソースの個人デバイス、広範な高速インターネット接続、商用地理空間インテリジェンス(GEOINT)によるデータの劇的な増加は、この傾向に拍車をかけている。AIシステムを軍の意思決定プロセスや兵器システムに組み込むことで、アルゴリズム戦(algorithmic warfare)が勃興している[29]。これがウクライナにおける戦争の霧を濃くしているのは間違いないようだ。

意思決定プロセスにおけるAIの活用は、間違いなく戦いのリズムに影響を与えている。AIが最も多用されているのは、大量の衛星画像を分析し、オープン・ソースのデータを位置特定することだ[30]。キーウはこれらの追求において、さまざまな外国のハイテク企業に依存している。例えば、ウクライナ政府は顔認識ソフトウェア(Clearview)を使って侵攻してくるロシア軍とウクライナの協力者を識別し、自然言語処理ソフトウェア(Primer)を使って暗号化されていないロシアの無線通信を分析し、機械学習(Scale AI)を使ってウクライナの衛星画像を評価している。マイクロソフト(Microsoft)、アマゾン(Amazon)、グーグル(Google)のクラウド・サービスとサイバー防護の傘により、ウクライナ政府は重要なデータを転送・保存できるようになった。

ウクライナでは、さまざまなデータ・ポイントやフォーマットの統合(一体化)を容易にし、加速させるデジタル会戦管理ソフトウェア(digital battle management software)が採用されている。これには写真、ビデオ、画像などが含まれ、パターン識別に基づくインテリジェンス・レポートの作成に使用される。作戦レベルではArcGIS Deltaを、戦術レベルではGIS ARTAを使用し、戦争の進展を追跡するのに重要なリアルタイムの戦場地図を作成している。これらのマップによって、キーウはロシア軍の動きを監視し、地上の指揮官とターゲット座標を共有することができる。最も注目すべきは、パランティア(Palantir)のデータと人工知能ソフトウェアが、ウクライナが戦場の全体像を把握するためのデータを収集するのに役立ち、軍事ターゲティングのほとんどを可能にしたことだ。これにより、米国企業は「21世紀のAI武器商人(AI arms dealer of the 21st century)」となった[31]

ウクライナ政府、特にデジタル変革省の野心は、同国を世界の技術革新市場における主要プレーヤーにすることだ。多くの米国やヨーロッパのハイテク企業がキーウにオフィスを構え、ウクライナの首都は急速に軍事技術バレー(Mil-Tech Valley)になりつつある[32]。一見したところ、こうした動きはすべて、AIが戦場における戦争の霧(fog of war)を晴らすのに役立つことを示唆しているのかもしれない。そして、一部の技術的楽観主義者(techno-optimists)はこの推論を採用し、AIこそが戦争に勝つ鍵だと主張している[33]。しかし、より懐疑的な声は、戦場を軍事AI拡張のための遊び場に変えつつある民間ハイテク企業の力の増大に警告を発している[34]

外国の営利企業が提供する能力とサービスは、戦い(warfare)にさらなる複雑さをもたらし、不確実性を減らすどころか、むしろ助長する。企業は、国家安全保障や国家の主権維持以外の関心を持って戦場に参入する。これには、利益を追求する販売奨励策、製品を完成させる取組み、企業の評判を高める機会などが含まれる。こうした欧米企業とはまったく別に、ロシアは外国からの干渉を避け、国家の技術的主権を確保するために、AIシステムに投資し、独自のインターネットを開発している。

しかし、制裁、無数のロシア技術セクターの専門家の流出、リソースの縮小のおかげで、AIの大きなブレークスルーがモスクワから生まれる可能性は低い。2022年8月、クレムリンが国防省内にAI対応の兵器システムを開発する部署を設置することを決定したにもかかわらず、この状況は続いている[35]

兵器自体へのAIの使用に関しては、入手可能な証拠は、自律センサー・ベースのターゲティングが進行中であることを示している。これらの機能には、自律的な物体認識(object recognition)と終末誘導(terminal guidance)が含まれる。通信システム、ナビゲーション、データ・リンクを妨害する電子戦(electronic warfare)に基づくドローン対策により、一部のドローン開発者は自律性を試すようになった。このような能力は、電子妨害(electronic jamming)に対する潜在的に効果的な防御と見なされた。自律型ドローンは、搭載された統合的なデータ収集と分析に基づいて意思決定を行うことができるため、妨害があった場合でもターゲットに到達することができる。

ドローンは、自律的に物体を認識するため、妨害(jamming)を受けながらも攻撃の最終段階を完了することができる。この物体認識はすでに米国製のスイッチブレード300(Switchblade 300)に搭載されている。また、端末誘導はロシアのFVPドローンOvodとウクライナ製のScalpelドローンに搭載されている[36]。ウクライナの機械学習で訓練されたSaker Scoutドローンは、64種類のロシアのターゲットを独自に識別することさえできる[37]。しかし、ウクライナのAI対応ドローンは完全な自律型ではなく、ターゲットを指し示し、その情報を人間が操作するFPV攻撃ドローンに伝え、攻撃を実行する。

自律型兵器が戦いに革命をもたらす、あるいはそれに近いという見方が流行しているが、現実はもっと複雑かもしれない[38]。AIを搭載した兵器システムを訓練するだけでは不十分である。また、これらのシステムは、信頼性を高めるために、実戦テストと評価を何度も繰り返す必要がある。実際、ロシアは、人間の介入なしに自律的にターゲットを識別し交戦することを約束したランセット3(Lancet-3)徘徊型弾薬(loitering munition)を早々に実戦配備し、「製品回収(product recall)」しなければならなかったようだ[39]。自律性のドメインには問題が山積しており、これらのAI技術が戦力バランス(balance of forces)を変えるにはほど遠いことを示している。

いずれにせよ、アルゴリズム戦(algorithmic warfare)は1990年代のネットワーク中心の戦い(network-centric warfare)の次の段階である。AIは、データ分析のスピードと質を高めることで、情報過多を回避するのに役立つと期待されている。AIを活用したデータ処理システムは、リアルタイムの継続的な戦場データから、情報ノイズの嵐をふるい分けることができると考えられている。しかし、クラウゼヴィッツに言わせれば、「正確な情報は客観的には不可能であり、危険なほど欺瞞に満ちた空想(accurate information is both an objective impossibility and a dangerously deceptive fantasy)」である。なぜなら、「私たちはより多くのことを知っているが、それによって不確実性は減るのではなく、むしろ増すからである(we know more, but this makes us more, not less, uncertain)」[40]。AIアルゴリズムが囮(decoys)や隠蔽によって簡単に騙されたり、不正確な分類につながる不正なデータに惑わされたりすることは想像に難くない。さらに、生成AIシステムは、2022年にウクライナの降伏を呼びかけると称するロシアのゼレンスキーの偽ビデオのように、偽情報やプロパガンダを広めるために使われる可能性もある。

しかし、AIのより深刻な問題は、そのアルゴリズムにある。戦争という本質上、帰納的な論理に基づく判断や予期せぬ状況への適応が求められるが、AIを活用した軍事システムのほとんどにおける機械学習は、帰納的な論理とパターン認識に依存している。学者たちは最近、いくらデータや計算能力を増やしても、指揮のためのAIのこの限られた有用性を修正することはできないと主張している[41]。物体認識と状況認識は根本的に異なるコンセプトである。AIが可能にする紛争は、依然として多くの種類の環境の不確実性に満ちているため、状況に対する人間の判断が必要になる[42]。したがって、AIは優秀な兵士(good soldier)ではあるが、ダメな将軍(bad general)であり、ウクライナにおける戦争の霧を減らす助けにはなっていないようだ。

極超音速兵器

新世代の極超音速兵器‐滑空弾とミサイル‐は、極限のスピード、機動性(maneuverability)、低高度飛行軌道(low-altitude flight trajectory)を兼ね備えている。この技術はまだ成熟していないため、これらの新型兵器はまだ開発途上である。音速の5倍の速度で大気圏内を飛行することは、物理法則(laws of physics)に起因する多くの問題を伴う[43]。さらに、いつか核弾頭を搭載することになるかもしれない極超音速ミサイル運搬車両は、必ずしも新しい新興・破壊的技術(EDT)の能力ではない。弾道ミサイルは、1940年代初頭に初めて開拓された技術であり、極超音速で移動する。

極超音速兵器の実戦配備に伴う困難は、その使用を妨げてはいない。ロシア国防省は2022年3月、ウクライナで極超音速兵器「キンザール(Kinzhal)」を初めて実戦使用すると自信満々に発表した[44]。しかし、この驚異の兵器(alleged wonder weapon)は、地表発射型イスカンデルM(Iskander M)戦術弾道ミサイルを改良した「単なる(mere)」弾道ミサイルであることが判明した。超音速のMiG-31ジェット機から空から発射されることで、弾道ミサイルとしては異例の高度で高速に達することができる。いずれにせよ、ロシアの恐ろしいミサイルはウクライナの高価値のターゲットを攻撃することはできなかった。数カ月後、ウクライナ側は古いパトリオット・ミサイル防衛システムを使って、この「止められない(unstoppable)」ミサイル7発を迎撃した[45]

したがって、ロシアの「キンザール(Kinzhal)」はプロパガンダ兵器なのだ。核兵器は搭載可能だが、通常兵器として武装した極超音速兵器を使用することで、クレムリンが核の敷居を越えようとしているのではないかという懸念が高まるかもしれない[46]。しかし、この空中発射弾道ミサイルの軍事的付加価値は、戦争の霧(fog of war)を濃くする以外には、依然として不明である。「キンザール(Kinzhal)」を新しいクラスの極超音速兵器として指定し、プレスリリースすることで、モスクワは威嚇の心理的効果を生み出している。さらにロシアは、NATO東側のミサイル防衛を克服できると考えられる兵器を保有し、使用する意思があることを西側に示すことになる。

このような誇張された期待は、「キンザール(Kinzhal)」の軍事的有用性とは相容れない。現実には、プーチンが大げさに宣伝している極超音速兵器の運搬車両やその他のエキゾチックなシステムは、戦力バランス(balance of forces)や戦いの力学(dynamics of warfare)を変えることはほとんどない。しかし、ロシアは抑止と制圧を目的とした兵器の象徴的使用については新参者ではない。このようなシステムは、クレムリンが恐れているミサイル防衛やその他の米国やNATOのシステムと交換するための切り札である可能性が高い[47]

戦場での実際の使用というよりは、シグナル伝達を意図とした心理兵器のように見える。一見洗練されたロシアの新兵器システムに対するメディアの知覚(Media perceptions)は、確かに論破する必要がある。ロシアのプロパガンダ・マシンは、このような兵器が革命的で止められないという大げさなナラティブ(narrative)を繰り返す準備ができている、読み物とクリックを熱望するジャーナリストの聴衆を見つけるかもしれない。しかし、よく見てみると、せいぜい目立たない追加攻撃オプションに過ぎず、最悪の場合、安全でない兵器であることがわかる。

総合評価

この論文では、新興・破壊的技術(EDT)が不確実性を減らし、戦争の霧(fog of war)を晴らす2つの可能性について議論した。一方では、新しい兵器技術が軍事的成功の可能性を高め、戦場の透明性(transparency)を高める理論的な方法がある。他方で、ロシアのウクライナ戦争から得た証拠をもとに、新技術が不確実性を増大させることで戦争の霧を濃くする可能性があることを示した。新技術は、より複雑なもの(商業資産や民間の行為者)や、より曖昧なもの(新システムの不明確な能力)を導入することによって、そうなる可能性がある。我々は、新しい新興・破壊的技術戦(EDT warfare)の統合(一体化)が戦争の霧を変えるが、晴らすことはできない4つの方法を特定した。

1. 新たな技術は対応する相手が生み出す新たな脆弱性を作り出す[48]

戦場上空を飛び交う何千機もの小型ドローンは、軍にとって衝突回避(deconfliction)の問題を引き起こす。デジタル戦場は、接続性とリアルタイムの情報ストリームのおかげで軍事的効果が高まるだけでなく、敵のターゲッティングを容易にする望ましくないデジタル・フットプリントをも生み出す。携帯電話は塹壕の新しいタバコである[49]

従来の軍産複合体(military–industrial complex)が支配していた過去数十年とは対照的に、新たな営利団体が目立つようになってきた[50]。民間企業は現在、衛星監視、ドローン開発、AI、ソフトウェア、高度製造への投資の大部分を推進し、精密誘導技術の急速なコスト低下をもたらしている[51]

しかし、進行中の戦争に商業主体(特に外国)が参入することは、私有インフラやサービス提供の管理に関するアクセス問題を引き起こす。もう1つの関連する問題は、デュアル・ユース・ドローン技術の相互運用性と軍事基準である。さらに、戦場におけるAI分析の質は、オープン・ソースから得られるビッグ・データの利用可能性に左右される。従って、データ収集、統合(一体化)、分析、作戦的ターゲッティングの面で、官民のオープン・ソース技術革新のためのより良い枠組みが必要である[52]

2.新兵器システムの奇襲効果は、最終的には対抗手段によって否定される[53]

ウクライナの戦場における小型ドローンは、戦争に勝利するとか、反攻の成功に貢献するといった効果面ではなく、手段面で戦い(warfare)を一変させた。ドローンは精密誘導弾のコストを下げ、比較的安価であることから生産能力の負担を軽減した。このため、防御側は数百万ドルのミサイルを発射して、数百ドルしかしない攻撃型ドローンを無力化するという状況になっている。自国の軍隊、人口、重要なインフラを守ることは、それにかかっているかもしれない。

しかし、この対策と対抗策の適応サイクル(measure–countermeasure adaptation cycle)は、ある種の「テクノ・ミラクル(techno-miracle)」ではない。電子戦(electronic warfare)への投資の拡大は、対ドローン・システムの重要な一部となっている。実際、ロシア軍はウクライナのドローン攻撃を挫折させ、撃退するために、電子戦(electronic warfare)、ミサイル・システム、接続センサーを統合することを学んだ。指向性エネルギー兵器のさらなる発展は、このような低コストのドローンの脅威に対抗するコストを削減することで、紛争における非対称性のバランスを取り戻す可能性がある[54]。また、監視ドローンの普及-そして戦場のライブストリーミング-は、前例のない透明性(transparency)を導入したが、それはすでに、欺瞞(deception)と分散(dispersal)の戦術という形での適応策につながっている。クラウゼヴィッツの戦争の霧(fog of war)は、新興・破壊的技術(EDT)の新時代において変化したが、それはそのまま残っている。

3. 人間はまだまだ重要である。

新興の新技術の大半は、新たな技能と役割を持った人間を必要とする。ロボットや自律システムが兵員数の減少を補うという期待は、ウクライナでは誤りであることが証明された。技術によって、危険で退屈な、あるいは汚れたタスクをする人がいなくなるかもしれないが、オペレーター、技術者、データ分析者、通信専門家、ソフトウェア・エンジニア、部隊防護部隊は、戦場に、あるいはその近くに存在し続ける[55]

ドローンは人間の戦闘員の有機的な延長ではない。ドローンは能力を向上させるが、同時に戦力構造の効率性を低下させる。手榴弾や一方向攻撃弾(one-way attack munitions)で武装したドローンは、高烈度戦(high-intensity warfare)においてその戦術的有用性が証明されている。しかし、先の指摘と同じように、軍隊が勝利するためには、相手の対抗策に対する人間主導の絶え間ない適応能力が必要である。結局のところ、訓練、軍組織の適応、そして学習が、新しい兵器技術を効果的に採用する上で極めて重要であることが証明されている。また、ウクライナでは、ドローンは兵士を支援し、陸上戦(land warfare)に貢献しているのであって、過去の対テロ作戦のように、地上部隊(boots on the ground)に取って代わるものではないことも忘れてはならない。

4. 新たな技術と新興の兵器システムは意思決定に複雑性を加える。

新興・破壊的技術(EDT)は、行為主体が敵対者の兵器に対する知覚(perceptions)を操作しようとする数多くの機会を生み出す。システムの評判は、それ自体が相手を威嚇するための武器となる。それゆえ、クラウゼヴィッツの「真実を嗅ぎ分ける熟練した知性(skilled intelligence to scent out the truth)」という格言は、その能力に関する誇張されたナラティブと並んで、成熟していない兵器からの脅威に対抗する戦略を策定する上で、これまで以上に適切であるように思われる。新兵器技術に関するセンセーショナルな発言は、実際の問題をあいまいにしかねない。例えば、ドローンが戦場に革命を起こすという主張は、前線での砲弾不足から注意をそらす。このような目くらましの誇大宣伝と、ロシア・ウクライナ戦争における両陣営によるドローンの使用は、戦争の霧(fog of war)の不確実性を減少させるためにほとんど行われていないことを意味する。

既存の兵器技術と新しい兵器技術の比較優位性をよりよく理解するには、正確で検証可能な科学的評価が不可欠である。同様に、アナリストは技術を政治的効果に変換する人間の能力に注意を払うことが不可欠である。ドローンは単独で最高の性能を発揮するのではなく、砲兵(artillery)と連動して効果を発揮する。デジタル化された会戦指揮・統制(digitized battle command-and-control)や民軍センサー・ネットワークと組み合わせれば、ドローンはまさに戦場を変革する力の一部となる[56]

結論

ウクライナの戦争の霧(fog of war)は、技術革新スペクトルの高水準と低水準の両端にある新たな兵器技術によって晴らされたわけではない。この論文はさらに、ロシアのウクライナ侵略戦争に関する議論に存在する、現在の2つの技術的楽観主義者(techno-optimist)の誤謬を指摘する。

第一に、技術的優越(technological superiority)は過信を助長する。エキゾチックな兵器システムを開発することで、クレムリン指導部は侵攻を前にして誤った優越感に浸ることができ、その後、ロシア軍は戦場で深刻な劣勢に立たされた[57]。ロシアの新型新興・破壊的技術(EDT)兵器に対する西側の期待が、戦場での現実と一致しなかった理由もここにある。

第二に、新兵器に固執することは、紛争の結果に寄与しうる他の決定的に重要な要因から注意をそらすことになりかねない。勇気や決断力、祖国のために闘うといった人的要因、安全保障同盟、戦略文化、世論といった国内外の政治的要因などである[58]

しかし、新技術の影響力を過大評価することは、ハイテク企業というある種の人間の影響力を過大評価することにつながる。これらの企業のノウハウや戦場関連のイノベーションへの投資は目覚ましく、ウクライナを世界の技術研究開発ラボに変えているが、アプリや趣味で再利用されたドローンでは、ウクライナの領土奪還やロシア占領軍の撃退には役立たない。ある米国防当局者の言葉を借りれば、「シリコン・バレーが手柄を立てようとしても、われわれは今、ウクライナでシリコン・バレーと闘っているわけではない」のだ[59]

商業主導の軍事技術革新は、デジタル戦場におけるアルゴリズム戦(algorithmic warfare)へと向かっている。半自律型ドローンの普及により、ゴーグルを装着した人間のオペレーターは減少し、AIソフトウェアがプラットフォームやドメインをまたいで流れるデータを融合・分析することで、どちらも戦争のゲーム化に貢献している。しかし、こうした動きは、人間や、直感、判断力、士気といった意思決定に影響を与える人間の資質の役割を覆い隠してしまう。これまでのところ、AIを活用した軍事システムには、状況認識(situational awareness)ではなく物体認識(object recognition)がある。明確に定義されたルールと安定した環境のもとで、AIがチェスや囲碁で人間に勝てるからといって、AIアルゴリズムがすべての戦いのパラメーター(parameters of warfare)を根本的に再定義するとは限らない。

歴史のこの時点で、ウクライナでの戦争は、戦争の霧(fog of war)を晴らすのは新しい技術ではないことを示している。むしろ、技術がこの試みで役割を果たすとすれば、それは新興・破壊的技術(EDT)を駆使した軍事システムを操る人間の最高の技術によるものだろう。クラウゼヴィッツにとって、「戦争とは人間の営み(war is a human affair)」であり、機械に任せるにはあまりにも重要なものである。その機械が、戦場の戦力バランス(balance of forces)と状況についてさらなる不確実性を生み出し、「戦争の霧を濃くする(thicken the fog of war)」手助けをしていることに我々は気づかされる。

ノート

[1] Stephen Herzog and Dominika Kunertova: “NATO and Emerging Technologies– The Alliance’s Shifting Approach to Military Innovation,” Naval War College Review (2024). Forthcoming.

[2] Russia Today, “‘Whoever Leads in AI Will Rule the World’: Putin to Russian Children on Knowledge Day,” Russia Today, September 1, 2017, https://www.rt.com/news/401731-ai-rule-world-putin.

[3] Neil MacFarquhar and David E. Sanger: “Putin’s ‘Invincible’ Missile Is Aimed at U.S. Vulnerabilities,” New York Times, March 1, 2018, https://www.nytimes.com/2018/03/01/world/europe/russia-putin-speech.html.

[4] Justin Williamson and James J. Wirtz: “Hypersonic Or Just Hype? Assessing the Russian Hypersonic Weapons Program,” Comparative Strategy 40, no. 5 (2021): 468–481.

[5] Yaroslav Trofimov: “Drones Everywhere: How the Technological Revolution on Ukraine Battlefields Is Reshaping Modern Warfare,” Wall Street Journal, September 28, 2023, https://www.wsj.com/world/drones-everywhere-how-the-technological-revolution-on-ukraine-battlefields-is-reshaping-modern-warfare-bf5d531b ; Kriste D. Thompson: “How the Drone War in Ukraine Is Transforming Conflict,” Council on Foreign Relations, January 16, 2024, https://www.cfr.org/article/how-drone-war-ukraine-transforming-conflict ; and Max Hunder: “Insight: Inside Ukraine’s Scramble for ‘Game-Changer’ Drone Fleet,” Reuters, March 24, 2023, https://www.reuters.com/world/europe/inside-ukraines-scramble-game-changer-drone-fleet-2023-03-24.

[6] See, e.g., Lawrence Freedman: The Revolution in Strategic Affairs, Adelphi Papers, no. 318 (Oxford: Oxford University Press for the International Institute for Strategic Studies, 1998): 70.

[7] Bill Owens: Lifting the Fog of War, Baltimore, Johns Hopkins University Press, 2001.

[8] Stephen Biddle: Military Power: Explaining Victory and Defeat in Modern Battle (Princeton NJ: Princeton University Press, 2004).

[9] Stephen Biddle: “How Russia Stopped Ukraine’s Momentum: A Deep Defense is Hard to Beat,” Foreign Affairs, January 29, 2024, https://www.foreignaffairs.com/ukraine/how-russia-stopped-ukraines-momentum.

[10] Carl von Clausewitz: On War, ed. and trans. Michael Howard and Peter Paret, (Princeton NJ: Princeton University Press, 1976 [1832]): 101.

[11] Robert Jervis: “Cooperation Under the Security Dilemma,” World Politics 30, no. 2 (1978): 167–214; and James D. Fearon: “Rationalist Explanations for War,” International Organization 49, no. 3 (1995): 379–414.

[12] Colin S. Gray: Weapons Don’t Make War: Policy, Strategy, and Military Technology (Lawrence, Kans.: University Press of Kansas, 1993): 7. See also: Kier A. Lieber: War and the Engineers: The Primacy of Politics over Technology (Ithaca, NY: Cornell University Press, 2005).

[13] Dominika Kunertova: “Drones Have Boots: Learning from Russia’s War in Ukraine,” Contemporary Security Policy 44, no. 4 (2023): 576–591.

[14] Kerry Chávez and Ori Swed: “Emulating Underdogs: Tactical Drones in the Russia–Ukraine War,” Contemporary Security Policy 44, no. 4 (2023): 592–605.

[15] Dominika Kunertova: “The War in Ukraine Shows the Game-Changing Effect of Drones Depends on the Game,” Bulletin of the Atomic Scientists 79, no. 2 (2024): 95–102.

[16] Mykola Tkach, Dmytro Drynyov, Igor Kulinich, and Nataliia Mykytiuk: “Trends in the Global Arms Market, Development of the Combat Drone Market: Impact and Consequences for Ukraine,” Political Science and Security Studies Journal 4, no. 3 (2023): 48.

[17] David Hambling: “Could Small Drones Really Replace Artillery?,” Forbes, August 23, 2023, https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2023/08/16/could-small-drones-really-replace-artillery.

[18] Reuters, “Ukraine’s Zelenskiy Orders Creation of Separate Military Force for Drones”, February 6, 2024, https://www.reuters.com/world/europe/ukraines-zelenskiy-orders-creation-separate-military-force-drones-2024-02-06.

[19] Roman Vysochanskyy: “Redefining the Battlefield: Drone Warfare Tactics in Ukraine,” Project Ploughshares, February 27, 2024, https://www.ploughshares.ca/publications/redefining-the-battlefield-drone-war-fare-tactics-in-ukraine.

[20] Stacie Pettyjohn: “Evolution Not Revolution: Drone Warfare in Russia’s 2022 Invasion of Ukraine,” Center for a New American Security, February 2024, https://s3.us-east-1.amazonaws.com/files.cnas.org/docu-ments/CNAS-Report-Defense-Ukraine-Drones-Final.pdf.

[21] Seth G. Jones, Riley McCabe, and Alexander Palmer: “Ukrainian Innovation in a War of Attrition,” Center for Strategic and International Studies, February 2023, https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/2023-02/230227_Jones_Ukranian_Innovation.pdf?Ver-sionId=Vap.5tI65sIt0kH10bxSSgN5q1G0cDhS.

[22] Marc R. DeVore: “No End of a Lesson: Observations from the First High-Intensity Drone War, Defense & Security Analysis 39, no. 2 (2023): 263–266.

[23] Radio Free Europe, “Drone Wars: Ukraine’s Homegrown Response to Deadly Chinese Detection Tech,”

July 14, 2022, https://www.rferl.org/a/drone-detection-war-ukraine-china-russia/31943191.html.

[24] United Nations Office for Outer Space Affairs, “Online Index of Objects Launched into Outer Space,” accessed March 3, 2024, https://www.unoosa.org/oosa/osoindex/index.jspx?lf_id=.

[25] The Economist, “Open-Source Intelligence Is Piercing the Fog of War in Ukraine,” January 13, 2023, https://www.economist.com/interactive/international/2023/01/13/open-source-intelligence-is-piercing-the-fog-of-war-in-ukraine.

[26] Joey Roulette: “SpaceX Curbed Ukraine’s Use of Starlink Internet for Drones -Company President,” Reuters, February 9, 2023, https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/spacex-curbed-ukraines-use-starlink-internet-drones-company-president-2023-02-09.

[27] Micah Maidenberg and Matthew Luxmoore: “Pentagon Agrees to Pay SpaceX for Satellite Internet in Ukraine,” Wall Street Journal, June 1, 2023, https://www.wsj.com/articles/pentagon-agrees-to-pay-spacex-for-satellite-internet-in-ukraine-2bdf3bf4.

[28] Amanda Miller: “Boxed Into a Corner,” Russia Could Be a Counterspace Wild Card,” Air & Space Forces Magazine, March 24, 2022, https://www.airandspaceforces.com/boxed-into-a-corner-russia-could-be-a-coun-terspace-wild-card.

[29] Ingvild Bode, Hendrik Huelss, Anna Nadibaidze, Guangyu Qiao-Franco, and Tom F. A. Watts: “Algorithmic Warfare: Taking Stock of a Research Programme,” Global Society 38, no. 1 (2024): 1–23.

[30] Robin Fontes and Jorrit Kamminga: “Ukraine A Living Lab for AI Warfare,” National Defense Magazine, March 24, 2023, https://www.nationaldefensemagazine.org/articles/2023/3/24/ukraine-a-living-lab-for-ai-warfare.

[31] Vera Bergengruen: “How Tech Giants Turned Ukraine Into an AI War Lab,” Time, February 8, 2024, https://time.com/6691662/ai-ukraine-war-palantir.

[32] Bergengruen: “How Tech Giants Turned Ukraine Into an AI War Lab.”

[33] See, e.g., Olga Tokariuk: “Ukraine’s Secret Weapon – Artificial Intelligence,” Center for European Policy Analysis, November 20, 2023, https://cepa.org/article/ukraines-secret-weapon-artificial-intelligence.

[34] Jonathan Horowitz: “One Click from Conflict: Some Legal Considerations Related to Technology Companies Providing Digital Services in Situations of Armed Conflict,” Chicago Journal of International Law 24, no. 2 (2024): 305–337; Ingvild Bode and Tom Watts: “Loitering Munitions and Unpredictability: Autonomy in Weapon Systems and Challenges to Human Control,” University of Southern Denmark, AutoNorms Project, June 7, 2023, https://www.autonorms.eu/loitering-munitions-and-unpredictability-autonomy-in-weapon-systems-and-challenges-to-human-control ;Comfort Ero, “Tech Companies Are Fighting for Ukraine. But Will They Help Save Lives in Other Global Conflicts?,” International Crisis Group, June 9, 2023, https://www.crisisgroup.org/europe-ukraine-tech-companies-are-fighting-ukraine-will-they-help-save-lives-other-global-conflicts.

[35] Catherine Buchaniec: “Russian Military to Develop Weapons Using Artificial Intelligence,” C4ISRnet, August 17, 2022, https://www.c4isrnet.com/artificial-intelligence/2022/08/17/russia-military-to-develop-weapons-using-artificial-intelligence/.

[36] The Economist, “How Cheap Drones Are Transforming Warfare in Ukraine,” February 5, 2024. https://www.economist.com/interactive/science-and-technology/2024/02/05/cheap-racing-drones-offer-precision-warfare-at-scale.

[37] David Hambling: “Ukraine’s AI Drones Seek and Attack Russian Forces Without Human Oversight, Forbes, October 17, 2023, https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2023/10/17/ukraines-ai-drones-seek-and-attack-russian-forces-without-human-oversight.

[38] See, e.g., Paul Sharre: “The Perilous Coming Age of AI Warfare,” Foreign Affairs, February 29, 2024, https://www.foreignaffairs.com/ukraine/perilous-coming-age-ai-warfare.

[39] Sydney J. Freedberg Jr.: “The Revolution That Wasn’t: How AI Drones Have Fizzled in Ukraine (So Far),” Breaking Defense, February 20, 2024, https://breakingdefense.com/2024/02/the-revolution-that-wasnt-how-ai-drones-have-fizzled-in-ukraine-so-far.

[40] Thomas Waldman: “‘Shadows of Uncertainty’: Clausewitz’s Timeless Analysis of Chance in War,” Defence Studies 10, no. 3 (2010): 349–350.

[41] Cameron Hunter and Bleddyn E. Bowen: “We’ll Never Have a Model of An AI Major-General: Artificial Intelligence, Command Decisions, and Kitsch Visions of War,” Journal of Strategic Studies (2023), forthcoming, https://doi.org/10.1080/01402390.2023.2241648.

[42] Avi Goldfarb and Jon R. Lindsay: “Prediction and Judgment: Why Artificial Intelligence Increases the Importance of Humans in War,” International Security 46, no. 3 (2021–2022): 7–50.

[43] Dominika Kunertova: “Hypersonic Weapons: Fast, Furious…and Futile?,” RUSI Newsbrief 41, No. 8 (2021), https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/rusi-newsbrief/hypersonic-weapons-fast-furiousand-futile.

[44] Paul Kirby: “Russia Claims First Use of Hypersonic Kinzhal Missile in Ukraine,” BBC, March 19, 2022, https://www.bbc.com/news/world-europe-60806151.

[45] Luke Harding and Dan Sabbagh: “Russia’s Most Potent Hypersonic Weapon Neutralised, Says Ukraine,” The Guardian, May 16, 2023, https://www.theguardian.com/world/2023/may/16/ukraine-russia-targets-kyiv-with-massive-overnight-airstrike.

[46] Rebecca Davis Gibbons and Stephen Herzog: “Nuclear Disarmament and Russia’s War on Ukraine: The Ascendance and Uncertain Future of the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons,” in Rebecca Davis Gibbons, Stephen Herzog, Wilfred Wan, and Doreen Horschig: The Altered Nuclear Order in the Wake of the Russia–Ukraine War (Cambridge, Mass.: American Academy of Arts and Sciences, 2023), 1–36.

[47] Alexander K. Bollfrass and Stephen Herzog: “The War in Ukraine and Global Nuclear Order,” Survival 64, no. 4 (2022): 7–32.

[48] See, e.g., Colin S. Gray: War, Peace, and Victory: Strategy and Statecraft for the Next Century (New York: Simon & Schuster, 1990)

[49] Alex Horton: “Two Years of War in Ukraine: What the Pentagon Has Learned, Washington Post, February 22, 2024, https://www.washingtonpost.com/national-security/2024/02/22/ukraine-war-pentagon-lessons-learned.

[50] Herzog and Kunertova: “NATO and Emerging Technologies.”

[51] T. X. Hammes: “Game-Changers: Implications of the Russo–Ukraine War for the Future of Ground Warfare, Atlantic Council, Issue Brief, April 2023, https://www.atlanticcouncil.org/wp-content/uploads/2023/04/Game-Changers-or-Little-Change-Lessons-for-Land-War-in-Ukraine-.pdf.

[52] Audrey Kurth Cronin: “Open Source Technology and Public-Private Innovation Are the Key to Ukraine’s Strategic Resilience,” August 23, 2023, https://warontherocks.com/2023/08/open-source-technology-and-public-private-innovation-are-the-key-to-ukraines-strategic-resilience.

[53] See, e.g., Brendan Rittenhouse Green and Austin Long: “Conceal or Reveal? Managing Clandestine Military Capabilities in Peacetime Competition,” International Security 44, no. 3 (2019): 48–83; and David M. Allison, Stephen Herzog, Brendan Rittenhouse Green, and Austin Long: “Correspondence: Clandestine Capabilities and Technological Diffusion Risks,” International Security 45, no. 2 (2020): 194–198.

[54] Stuart Dee and James Black: “Directed Energy Dilemmas: Industrial Implications of a Military-Technological Revolution,” RAND Corporation, TheRANDBlog, February 20, 2024, https://www.rand.org/pubs/commentary/2024/02/directed-energy-dilemmas-industrial-implications-of.html.

[55] Jack Watling: “Automation Does Not Lead To Leaner Land Forces,” War On The Rocks, February 7, 2024, https://warontherocks.com/2024/02/automation-does-not-lead-to-leaner-land-forces/.

[56] Clint Hinote and Mick Ryan: “Empowering the Edge: Uncrewed Systems and the Transformation of U.S. Warfighting Capacity,” Special Competitive Studies Project, February 2024, https://www.scsp.ai/wp-content/uploads/2024/02/SCSP-Drone-Paper-Hinote-Ryan.pdf.

[57] Marina Favaro and Heather Williams: “False Sense of Supremacy: Emerging Technologies, the War in Ukraine, and the Risk of Nuclear Escalation,” Journal for Peace and Nuclear Disarmament 6, no. 1 (2023): 28–46.

[58] Waldman, “‘Shadows of Uncertainty,’” 336–368.

[59] Vera Bergengruen, “How Tech Giants Turned Ukraine Into an AI War Lab.”