既知の未知ー第3章 (ARMADA International)

第3章では、戦術レベルの電子戦部隊と運用方法を解説する。中国軍は情報支援部隊がスペクトラム管理を担い、各軍種や諸兵科連合旅団が電子戦を実施する体制へ移行した。戦術部隊は通信妨害、レーダー妨害、GNSS妨害、無人機対処などを通じて敵部隊の指揮統制を混乱させる。ウクライナ戦争で示された「発信すれば位置が暴露される」という教訓も重視されており、中国軍は電子戦を一時的な妨害ではなく、戦場全体を支配する持続的活動と考えている。

著者は、中国軍の電子戦能力を過小評価すべきではない一方、その実戦能力については依然として不透明であると結論づけている。中国は情報戦・電子戦を核戦力や通常戦力と並ぶ国家戦略の柱と位置づけ、「電磁的優越・支配(E2S)」の獲得を目指している。しかし、その能力が実際にどこまで有効なのかは、大規模紛争という現実の戦場でしか検証できない。ゆえに中国の電子戦態勢は今なお「既知の未知」であり続けている。(軍治)

既知の未知

KNOWN UNKNOWNS

Thomas Withington

ARMADA International

トーマス・ウィジントン(Thomas Withington)博士は、電子戦、レーダー、軍事通信を専門とする、受賞歴のあるアナリスト兼執筆家。同博士は、これらの分野について、専門誌から一般向け媒体に至るまで幅広く執筆活動を行っている。また、政府機関や民間企業の主要なクライアントに対し、これらの分野におけるコンサルタントやアドバイザーとしても活動している。さらに、世界中の主要メディアに対し、電磁スペクトラムの利用に伴う安全保障や防衛の側面について、定期的に解説を行っている。(https://www.rusi.org/people/withingtonから引用)

第3章-電子戦と戦術的会戦

中国人民解放軍情報支援部隊は、中国軍が作戦・戦術レベルで電子戦を適用するためのドクトリン的枠組みと戦略的能力を提供している。

中国人民解放軍は2015年12月、戦略支援部隊(SSF)を発足させた。同部隊は、戦略的および作戦レベルの電子戦に関する包括的な責任を担っていた。

中国人民解放軍(PLA)は、情報作戦(IO)の遂行を、2015年12月に設立された「戦略支援部隊(SSF)」という正式名称の専任部隊に組み込んだ。戦略支援部隊(SSF)は、中国人民解放軍全体で展開されている一連の広範な組織改革の一環として編成された。それまでは、中国人民解放軍は、電子戦、宇宙戦、サイバー戦能力を有していたものの、それらは別々の部隊に分かれていた。戦略支援部隊(SSF)の目標は、これらの各兵科間の縦割り構造を打破し、連携と相乗効果を高めることにあった[1]。戦略支援部隊(SSF)の設立は、電磁スペクトラムにおける米軍の技術的優位性に対する、より広範な懸念を反映したものであった。

戦略支援部隊は2015年12月に創設されたものの、2024年4月に解散した。その代わりに、新たな情報支援部隊(ISF)が編成され、ネットワーク防衛および通信支援を担当することになった[2]。 この決定は、2022年2月のロシアによる侵攻を受けて、ロシアがウクライナ政府に対して早期かつ決定的な敗北を喫させる試みに失敗したこと、およびウクライナの戦う意志について、習近平氏が示した見解を部分的に反映したものとされている[3]。ある学者は、中国人民解放軍(PLA)指導部による重要な観察点として、ロシア軍が戦略レベルでウクライナの情報環境を支配できず、統合部隊として戦えなかったことを挙げた[4]

習近平氏は、中国共産党(CCP)総書記および人民解放軍最高指揮機関である中央軍事委員会の主席に就任すると、一連の人民解放軍改革に着手した。これらの改革には、人民解放軍を構成する各軍種の統合性の向上、汚職の撲滅、そして中国における軍と民間の連携の深化などが含まれていた。戦略支援部隊(SSF)が廃止された正式な理由については、人民解放軍から説明がなされていない。

一部の論評では、戦略支援部隊(SSF)の当初の役割は、軍の宇宙部隊およびサイバー部隊を育成し、それらが独立した司令部として自律的に運営できるようになるまで育て上げることだったのではないかと指摘されている。戦略支援部隊(SSF)内部の汚職も、同部隊が廃止されたもう一つの理由として挙げられている。戦略支援部隊(SSF)に関わった2人の高官のうち、2023年に習近平氏によって国防相の職を解任された李尚福(Li Shangfu)氏は、2016年から2017年にかけて戦略支援部隊(SSF)の副司令官を務めていた。

李尚福(Li Shangfu)国防相は2023年、習近平氏によって解任された。かつて戦略支援部隊(SSF)を指揮した同将軍は、後に汚職の罪で有罪判決を受け、終身刑を言い渡された。

一方、戦略支援部隊(SSF)司令官の巨乾生(Ju Qiansheng)は汚職の疑いをかけられていた[5]。しかし、その理由として考えられるのは、中国人民解放軍の宇宙部隊、サイバー部隊、電子戦部隊のタスクや任務は、時に重複するものの、根本的には異なるという点である[6]

情報支援部隊(ISF)の主要な任務には、軍事ネットワークの管理、サイバー防衛、電磁スペクトラムの割り当てと管理、航法、地図作成、気象観測など、その他の戦場支援任務が含まれると考えられている[7]。このため、情報支援部隊(ISF)は戦略支援部隊がかつて担っていた電子戦(EW)の役割を軽視しているようである。電磁スペクトラムの割り当てと管理は維持されているものの、電子戦能力が欠如していることは、これらの任務が中国人民解放軍(PLA)の各構成部隊に返還されたことを示唆しているようだ。

中国人民解放軍(PLA)は2024年4月、情報支援部隊(ISF)を発足させた。同部隊は、電波スペクトラムの割り当ておよび管理に関する統制権を保持しつつ、電子戦(EW)の実施責任については各軍種へと移管した模様である。

おそらく、中国人民解放軍(PLA)の新たな電子戦(EW)態勢では、各軍種がそれぞれの戦略的、作戦的、戦術的目標を支援するために電子戦を実施し、情報支援部隊(ISF)が周波数帯の割り当てと管理の責任者として、任務の調整役を担うことが重視されているのではないか[8]。中国人民解放軍の通信システムとネットワーク間の相互運用性を深化・向上させることが優先課題とされているようだ。また、サイバー戦能力が戦略支援部隊(SSF)から分離され、独立したサイバー空間部隊として編成された点も示唆に富んでいる[9]

作戦レベルおよび戦略レベルにおいて、指揮官は「システム破壊ドクトリン」の実施方法、およびその付随効果としてのサイバー戦・電子戦について、どの程度まで合理的な裁量権を与えられることになるのだろうか?セン(Sen)博士は、「中国人民解放軍(PLA)の組織的本能は中央集権化にある」と主張し、その特徴として「指揮系統に政治委員が配置されていること、中央軍事委員会(CMC)による徹底した統制、そして下級部隊の自主的な行動に対する歴史的な不信感」を挙げている。セン(Sen)博士は、スペクトラム戦に対する厳格な統制が人民解放軍(PLA)指導部にとって魅力的である理由として、「電子戦はスペクトラム全体に及び、友軍への誤攻撃(フレイトサイド)を起こしやすい性質を持つため、統制システムが厳格に掌握しておきたいと望むまさにその種の能力である」と指摘している。

とはいえ、中国の軍事指導部は「西側のミッション・コマンド(mission command)を綿密に研究し、争奪戦が繰り広げられる電磁環境下では、分散型の自主行動が有利に働くことを理解している。なぜなら、中央集権化に用いる通信手段こそが真っ先に機能しなくなるからだ」。この二律背反は、ドクトリン上の対立を招く恐れがあり、中国人民解放軍(PLA)は「権限委譲による自主行動」を志向する一方で、組織的には依然として「統制」という反射的な傾向が残っている。セン(Sen)博士はさらに、公開されている中国の軍事研究資料によれば、この対立は未だ解決されていないことを示唆していると述べている[10]

中国人民解放軍が「砂漠の嵐作戦(Operation Desert Storm)」やバルカン半島上空での一連の空爆作戦を綿密に分析したのと同様に、現在進行中のウクライナ戦争も詳細に研究されている。セン(Sen)博士は、中国人民解放軍にとっての重要な教訓は、電子戦、とりわけ全球測位衛星システム(GNSS) 位置・航法・時刻(PNT)ジャミングが、今や戦術の最前線において至る所で行われていることだと主張している。「電波を発すれば位置が特定され、撃破される」というのが、この過酷な新たなルールである。中国の軍事学界は、「電磁的優越・支配(E2S)」を確立するための電磁機動を、「一時的な妨害ではなく、戦争の持続的かつ構造的な特徴」と捉えている。

ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領と習近平氏の間で公の場では和やかな雰囲気が示されているにもかかわらず、軍と軍との間の実情は、より複雑で、不信感がより強いものかもしれない。モスクワと北京の間で生じた中ソ分裂は、1960年に明確になった。「65年以上も前の出来事であり、ソ連もすでに消滅しているにもかかわらず、この政治的な決裂は、依然として消え去っていない相互の警戒心という後遺症を残している」とセン(Sen)博士は指摘する。「私はこれを、真のドクトリン上の共通点というよりは、同じ紛争から得た知見の収斂と表現したい。つまり、2人の専門家が廊下で情報を交換しているだけで、戦術マニュアルを共有しているわけではないのだ」[11]

同様に、2025年6月に発生したイスラエル・米国とイラン・イスラム共和国との間の12日間にわたる紛争、および2026年2月に再燃した同紛争は、より広範な攻勢的対空(OCA)戦役を支援するための協調的かつ持続的な「敵防空破壊/制圧(D/SEAD)」会戦の戦略的な致死性(strategic lethality)を、中国人民解放軍(PLA)に改めて認識させるものとなった。8ギガヘルツ(GHz)から18ギガヘルツ(GHz)の周波数帯にわたる航空機搭載レーダーや衛星通信を妨害するようにデザインされた、トラック搭載型電子戦システム「コブラ-V8」のようなイランの電子戦能力は、イスラエルおよび米国の空軍力を実質的に弱体化させることはできなかった。こうした観察結果は、中国人民解放軍(PLA)の指導部にも見過ごされていない。これを受けて、同国の統合防空システム(IADS)および地上配備型防空システムを支援するため、人民解放軍(PLA)の電子戦能力の強化がさらに進められることになるだろう。

イランは世界最大級の電子戦部隊を擁しているものの、米国やイスラエルとの近年の紛争におけるその運用実績は期待外れなものだった。写真にある「コブラV8(Cobra-V8)」ジャマーのようなイラン製システムは、電磁波の会戦においてほとんど効果を発揮しなかった。こうした現実は、中国人民解放軍(PLA)によって鋭く注視されることになるだろう。

戦域レベルのスペクトラム作戦

中国人民解放軍(PLA)には、中央、東部、北部、南部、西部の5つの戦区司令部(theatre commands)があり、各戦区には、その管轄下にあるすべての人民解放軍(PLA)戦力を指揮する統合司令部が置かれており、各戦区は中央軍事委員会(CMC)の指揮下にある。戦区司令部は、統合作戦指揮センター(JOCC)として知られている。各統合作戦指揮センター(JOCC)には、当該戦区司令部(theatre command)に配属された中国人民解放軍の各軍種からの参謀将校が配置される。これらの部隊には、戦区司令部に所属する常設部隊に加え、戦時に司令部を補強するために提供される追加部隊が含まれる場合がある。通常、戦区司令部には陸上機動部隊が含まれ、その主力は集団軍(Group Army)の指揮下にある中国人民解放軍の部隊であり、集団軍はこれらの陸上部隊に対する戦区司令部の作戦本部としての役割を果たす。

各集団軍(Group Army)には、機動の主要部隊として機能する約6個の諸兵科連合旅団(CABDE)が配属される。沿岸部の戦区司令部は、水上戦闘艦、潜水艦、水陸両用部隊を含む海上戦力を管轄する。中国人民解放軍海軍(PLAN)の北部艦隊、東部艦隊、南部艦隊は、それぞれの戦区司令部に対応している。戦区司令部の航空戦力には、爆撃機、戦闘機、偵察機、輸送機、支援部隊に加え、当該戦区の管轄区域内にある航空基地が含まれる。

これらの司令部には、地域統合防空システム(local IADS)にサービスを提供する地上配備型防空システム(GBAD)も配備される。地域統合防空システム(local IADS)は、連携して把握した航空状況を、中国人民解放軍(PLA)の国家統合防空システム(IADS)に報告する。国家統合防空システム(IADS)は、中華人民共和国および同国への航空進入経路に対して戦略的な防空任務を担う。中国人民解放軍空軍(PLARF)の指揮下にある戦区司令部に配備された通常弾頭および核弾頭の弾道ミサイルも、当該戦区司令部の指揮下にある。情報支援部隊(ISF)は、戦区司令部の電子戦(EW)アセットが可能な限り効率的かつ効果的に運用されるよう、同司令部に対して電磁波管理および衝突回避措置を提供する。

諸兵科連合旅団は、中国人民解放軍における主要な戦術機動要素部隊である。各旅団は、3個の電子戦小隊から成る固有の電子戦中隊を擁している。

作戦レベルにおいて、陸上部隊は電子・ネットワーク戦群(ENWG)を中心に電子戦(EW)体制を構築している。この電子・ネットワーク戦群(ENWG)は、電子戦部隊および要員とネットワーク戦部隊を統合したものである。電子・ネットワーク戦群(ENWG)は、敵の指揮・統制(C2)ネットワークを検知、識別、位置特定し、攻撃するために、包括的に機能するよう最適化されている。その意図は、敵の「神経系」を攻撃することで、敵部隊の戦力を混乱させることにある。このレベルでは、サイバー戦能力と電子戦能力が緊密に統合され、信号情報(SIGINT)の収集や、電子戦および/またはサイバー戦の手法を用いたネットワーク攻撃の実施が行われる。また、電子・ネットワーク戦群(ENWG)は、友軍の作戦レベルのネットワークの保護も担っている[12]

電子・ネットワーク戦群(ENWG)は、作戦レベルにおいてすべてのキネティックな能力、電子的能力、サイバー戦能力を統合する「火力調整群(Firepower Coordination Group)」(別名「火力調整センター」)と緊密に連携している。キネティックな能力には、砲兵、地対地ミサイル、近接航空支援、戦場遮断などが含まれる。

戦術的電磁的優越・支配(E2S)

諸兵科連合旅団(CABDE)は、中国人民解放軍陸軍における陸上作戦の主要な機動編成である。電子戦(EW)は、敵の無線機やそのネットワーク、レーダー、全球測位衛星システム(GNSS) 位置・航法・時刻(PNT)受信機に対して電子攻撃を行うことで、戦術情報作戦を支援する。特に後者のタスクは、航法に全球測位衛星システム(GNSS) 位置・航法・時刻(PNT)信号に依存する精密誘導兵器(PGM)や無人航空機(UAV)の活動を妨害する上で極めて重要である。

中国人民解放軍(PLA)は、作戦および戦術レベルにおいて多数の電子戦システムを配備しており、その大部分は装輪車両に搭載されている。

米国陸軍の公式文書にもあるように、諸兵科連合旅団(CABDE)電子戦は、指揮・統制(C2)を混乱させることを狙いとして、敵の無線通信ネットワークをターゲットとしている。その他のターゲットには、地対地、空対地/地対空、および空対空の通信リンクが含まれる。中国人民解放軍(PLA)は、指揮・統制(C2)の混乱によって、相手の機動部隊の致死性を低下させ、場合によっては戦術的に無力化できることを期待している[13]

米陸軍による中国人民解放軍(PLA)の電子戦(EW)ドクトリンの分析では、電子攻撃は敵対的な無線周波数(RF)アセットに対して、的確かつ選別的な方法で用いられるべきであると明示されている。中国人民解放軍陸軍(PLAA)の電子戦要員が、この電磁気的に粗雑な手段が成果をもたらすことを期待して、多数の周波数や波形に対して無差別に集中ジャミング(barrage jamming)を行うことは想定されていない。中国人民解放軍陸軍(PLAA)は、そのようなアプローチが友軍側にも影響を及ぼし、ひいては指揮・統制(C2)およびそれに関連する戦闘効果にも悪影響を与える可能性が高いことを、間違いなく十分に認識している。

その代わりに、敵の無線機や通信網、レーダー、全球測位衛星システム(GNSS) 位置・航法・時刻(PNT)信号受信機については、中国人民解放軍(PLA)の関連信号情報(SIGINT)部隊によって処理されることになる。重要度が高く、かつ/または時間的制約のある電波発信源は、精密にターゲットとされる。こうした分類に該当しないその他の電波発信源については、ターゲティング基準を満たすと判断される時点までは無視される可能性がある。米陸軍の評価が指摘するように、このターゲティング・プロセスにより、「敵が電子戦攻撃を検知し、これに対応する前に、その攻撃が中国人民解放軍陸軍(PLAA)の指揮官にとって最大の価値を発揮できるようになる」のである[14]

陸上戦術部隊の電子戦(EW)アセットは、諸兵科連合旅団(CABDE)の作戦支援大隊に所属する電子戦中隊に配備されている。各電子戦中隊は、通常、ゼロライン上またはその付近に配備される妨害・測位小隊(jamming and direction-finding platoon)で構成される。この小隊の主なターゲットは、敵の超短波・超高周波(V/UHF:30メガヘルツ(MHz)~3ギガヘルツ(GHz))無線機およびそのネットワークである。第2小隊は、妨害のみに専念している。

中国人民解放軍(PLA)の下車歩兵部隊は、分隊レベルで戦術的電子戦(EW)能力を発揮するため、背負い式電子戦システムを運用している。

この編成の主なターゲットには、精密誘導弾(PGM)に搭載された全球測位衛星システム(GNSS) 位置・航法・時刻(PNT)受信機、およびこの兵器で使用される可能性のあるあらゆる無線周波数(RF)作動式信管、さらに無人航空機(UAV)に搭載された全球測位衛星システム(GNSS) 位置・航法・時刻(PNT)受信機が含まれる。また、射程内にある、これらの精密誘導弾(PGM)や無人航空機(UAV)の射撃管制および/または航法を支援する航空機搭載型および/または地上/海上レーダーも、この妨害小隊(jamming platoon)のターゲットとなる。精密誘導弾(PGM)や無人航空機(UAV)と、それらの発射プラットフォームやパイロットとの間の通信に使用される無線周波数(RF)データ・リンクも、同様にこの妨害小隊(jamming platoon)によって脅威にさらされることになる。

電子戦(EW)中隊の3つ目の要素部隊は、煙などの戦場用遮蔽剤を用いて敵のオプトロニクス機器の機能を妨害し、射程内にある敵のレーダーを妨害することをタスクとする妨害・マスキング小隊である。米陸軍の文書によれば、電子戦(EW)中隊は、任務の要請に応じて、諸兵科連合旅団(CABDE)に常設されていない電子戦アセットで補強することが可能である。同様に、電子戦(EW)中隊のアセットもこのように再配置することができる[15]

妨害・測位小隊(jamming and direction-finding platoon)は通常、ゼロラインから2~4キロメートル(1.1~2.2マイル)後方に展開する。精密誘導弾(PGM)、無人航空機(UAV)、およびそれらを支援するアセットをターゲティングする妨害小隊(jamming platoon)は、ゼロラインから4~10キロメートル(2.5~6.2マイル)の地点に展開する。最後に、妨害・遮蔽小隊(jamming and obscurant platoon)は、このラインから10キロメートルから15km(9.3マイル)の間に配置される。

機動計画(Scheme of manoeuvre)

電子戦(EW)は、歩兵、装甲部隊、砲兵と連携し、前線攻撃群(frontline attack group)による敵の前線防衛線の初期突破を支援するために活用される。前線攻撃群(frontline attack group)の最優先任務は、火力チームによる支援を受けた突撃チームを用いて、敵の前方陣地を確保することである。中国人民解放軍(PLA)の戦術ドクトリンでは、圧倒的な火力を比較的狭い地点に集中させることが求められている。装甲部隊が最初の突破口を開き、その後、火力チームに支援された歩兵攻撃チームがその突破口を拡大する[16]。突破口が開かれた後、前線攻撃群(frontline attack group)は防御陣地を構築する。

人民解放軍陸軍(PLAA)の縦深攻撃群(depth attack group)は、前線攻撃群(frontline attack group)が開き、確保した突破口を通って進軍する。ここでも、電子戦部隊は、諸兵科連合旅団(CABDE)の地上配備型防空システム(GBAD)、工兵、対戦車、および核・化学・生物防衛部隊と連携し、縦深攻撃群(depth attack group)の装甲部隊および機械化歩兵を支援する。縦深攻撃群(depth attack group)は、これらの部隊を消耗させないよう、段階的に突破口を活用して進軍する。縦深攻撃群(depth attack group)は、前線攻撃群によって切り開かれた突破口をさらに活用して敵地(enemy territory)の奥深くへと進出し、突進機動群(thrust manoeuvring group)のためのさらなる空間を確保する[17]

突進機動群(thrust manoeuvring group)は、機械化歩兵や装甲部隊、あるいは空挺部隊を支援する電子戦(EW)部隊で構成され、砲兵、工兵、地上配備型防空システム(GBAD)、対戦車部隊の支援を受けて、敵領内において縦深会戦を展開する。突進機動群(thrust manoeuvring group)のターゲットには、指揮・統制(C2)拠点、補給地域、兵員・物資の集結地および兵站拠点、ならびに重要地形などが含まれる。

また、可能であれば、この部隊は敵の退路を断ち、敵部隊の集結地を包囲・殲滅する任務も担う。突進機動部隊、縦深攻撃部隊、正面攻撃部隊はいずれも、戦闘予備部隊によって支援される。これらの部隊は、必要に応じて攻撃中にこれらすべての部隊を支援するとともに、敵の反撃を撃退するタスクを負っている[18]

防御において、中国人民解放軍陸軍(PLAA)の部隊は、攻撃から友軍、ネットワーク、および要衝を保護する。戦術・作戦の双方のレベルにおいて、同軍のドクトリンは放射統制(EMCON)を重視している。人民解放軍(PLA)は、敵対者が自軍に対して、その電子戦(EW)能力やより広範な情報戦能力を全面的に行使してくると正しく認識している。その結果、同軍の部隊は、放射統制(EMCON)や通信遮断(communications blackout)の条件下での訓練に加え、必要に応じて無線周波数(RF)リンクに代わる通信手段を使用する訓練を日常的に行っている[19]

留意すべき重要な点は、戦場における電子戦(EW)やサイバー戦の運用に関して、戦術レベルの指揮官が一般に考えられているよりも比較的大きな裁量権を有している可能性があるということである。西側諸国の軍事的な見方では、中華人民共和国(PRC)やロシアのような権威主義体制下の軍隊は、指揮官による戦術的・作戦的な主導的行動を抑制する傾向があると捉えられることがある。

中国人民解放軍(PLA)については、必ずしもそうとは言えないかもしれない。「システム破壊」というドクトリンは包括的であり、ある意味では規範的な性質を帯びているが、この点において北大西洋条約機構(NATO)や同盟国の軍事思想とそれほど大きな違いがあるのだろうか。ヌルキン(Nurkin)氏は、「全体として見れば、戦略レベルにおける電子戦(EW)の意思決定は極めて中央集権的であり、紛争の端緒や遂行に重大な影響を及ぼし得る」と論じている。その一方で、「戦術・作戦レベルの指揮官には、電子戦の遂行に関してより大きな柔軟性が認められる可能性もある」とも指摘している[20]

結論

中華人民共和国(PRC)は、情報作戦や情報戦を、核兵器、通常戦力、政治・経済力と並ぶ国家の大戦略(grand strategy)の不可欠な要素と位置づけている。中国人民解放軍にとって、「システム破壊」というドクトリンは、情報作戦および情報戦の戦略を戦術・作戦レベルで具現化したものである。このシステム破壊のアプローチにおいて、電子戦(EW)は主要な構成要素を成している。また、中華人民共和国(PRC)の情報作戦戦略は、有益な抑止効果をもたらすとともに、通常兵器による軍事作戦や、さらには核紛争といった事態を回避しつつ、決定的な成果をもたらし得る能力を人民解放軍に提供するものでもある。

中国の軍事思想を研究するある米国人学者が指摘したように、「適切なターゲットを狙った電子攻撃は、大陸間弾道ミサイルによる被害に匹敵するほど、国家経済に壊滅的な打撃を与え得る」ものである[21]。さらに、情報作戦(information operations)や情報戦(information warfare)には、平時・有事を問わず実施可能であることに加え、民生・軍事双方の技術的イノベーションの恩恵を絶えず享受できるという利点がある。

「システム破壊戦(systems destruction warfare)」に関する中国人民解放軍の主張は、単なる虚勢や誇張に過ぎないのだろうか。それを断言することは不可能である。電磁スペクトラム領域で優位に立ち、「電磁的優越・支配(E2S)」を確保して勝利を収めようとする人民解放軍の意図が本物であることは疑いようがない。しかし残念ながら、その意図が現実のものとなり得るかどうかは、紛争という極限の試練の場においてのみ、現実的に検証できることなのである。

中国人民解放軍(PLA)の軍事展示は、電子戦システムを含め、一般市民に向けて印象的な能力を定期的に披露している。こうした公開展示は、中国の軍事力を誇示することで潜在的な敵対者に心理的効果を与えることを意図しており、「パレードでシステムを公開することは、それが成熟しているかどうかにかかわらず、抑止力として機能する」とセン(Sen)博士は論じている[22]。結局のところ、本補論の序論で論じたように、人民解放軍(PLA)の電子戦態勢(electronic warfare posture)は、依然として謎めいた「既知の未知(known unknown)」であり続けている。

ノート

[1] Mei, S.

[2] Withnow, J, ‘A New Step in China’s Military Reform’, 17th April 2025 https://ndupress.ndu.edu/Media/News/News-Article-View/Article/4157257/a-new-step-in-chinas-military-reform/, consulted 8th June 2026.

[3] Ibid.

[4] Ibid.

[5] Ibid.

[6] Ibid.

[7] Ibid.

[8] 軍の電子戦(EW)態勢とは、電磁的機動を支援し、かつ「電磁的優越・支配(E2S)」を確保・維持するための電子戦を遂行する上で、部隊が必要とするドクトリン、人員、装備、指揮・統制(C2)、および能力といったあらゆる要素を指すものと定義できる。

[9] Withnow, J.

[10] Written interview with Dr. Gaurav Sen.

[11] Ibid.

[12] Wade, NM, page 3-10.

[13] ‘CA BDE Electronic Warfare Operations’.

[14] Ibid.

[15] Ibid.

[16] Wade, NM, page 3-10.

[17] Ibid.

[18] Wade, NM, page 3-11.

[19] Ibid, page 6-4.

[20] Interview with Tate Nurkin.

[21] Thomas, TL, ‘China’s Electronic Strategies’.

[22] Written interview with Dr. Gaurav Sen.