実験を軍事上の優位性へと転換する:ポルトガルの防衛AI (Defense AI Observatory)
MILTERMでは、世界の防衛に関わる人工知能の状況をウォッチして公開しているサイト「DAIO – Defense AI Observatory」に掲載の論稿を紹介してきている。
今回は、DAIO(Defense AI Observatory:防衛AI 監視所)の今年9月に公表された「DAIO_Study26❘36_Turning Experimentation Into Military Advantage-Defense AI in Portugal」というポルトガルにおける防衛AIの現状を知ることのできる論文を紹介する。
この論文が最も強調しているのは、「AIそのもの」ではなく、AIを信頼できる軍事能力へ転換するための実験・検証基盤の重要性である。
ポルトガルは、防衛AIを単独の技術としてではなく、決心の優越(Decision Superiority)、状況認識、ISR、無人システム運用などを支える基盤技術として位置付けており、その能力を実戦で活用するためには、継続的な実験、評価、検証、妥当性確認(Test, Evaluation, Verification and Validation)が不可欠であるとの考えである。
防衛省・自衛隊でAIを取り込んでいく報道がなされているが、参考になればと思うところである。(軍治)
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実験を軍事上の優位性へと転換する:ポルトガルの防衛AI
Turning Experimentation Into Military Advantage: Defense AI in Portugal
João Vicente
DAIO Study 26|36
防衛AI監視所(DAIO)について
ハンブルクのヘルムート・シュミット大学にある防衛AI監視所(DAIO)は、軍隊による人工知能の使用を監視・分析している。 防衛AI監視所(DAIO)は、相互に関連する3つの仕事の流れで構成されている。
▪ 軍事イノベーションの文脈における文化、コンセプト開発、組織変革
▪ 現在および将来の紛争図、紛争ダイナミクス、特に新興技術の使用に関連する作戦経験
▪ 特に新興技術が技術産業エコシステムの性質と特徴に与える影響に焦点を当てた国防産業ダイナミクス
防衛AI監視所(DAIO)はGhostPlayの不可欠な要素であり、速いペースの防衛作戦(defense operations)を支援するためのコンセプト駆動型およびAI強化型防衛意思決定(AI-enhanced defense decision-making)のための能力・技術開発プロジェクトである。GhostPlayはドイツ連邦軍デジタル技術研究センター(dtec.bw)の資金援助を受けている。dtec.bwは欧州連合(EU)の資金援助を受けている。
著者について
ジョアン・ヴィセンテ(João Vicente)少将は、ポルトガル空軍の空軍参謀調整官を務めている。リスボンのノヴァ大学で国際関係の博士号を取得している。本稿は、入手可能な公開情報に基づいて著者が個人的に見解を述べたものであり、国防省、軍、またはその他の機関の立場、政策、あるいは公式見解を表すものではない。
1 まとめ
人工知能(AI)は、軍事力、作戦上の有効性、国家安全保障に多大な影響を及ぼす変革的な技術として急速に台頭している。本研究では、ポルトガルにおける防衛分野のAIの現状を検証し、国家政策、軍事機関、産業界、学界、および国際的なパートナーシップが、AI対応の防衛能力(AI-enabled defense capabilities)の実現に向けた同国の進路をどのように形作っているかを評価する。
ポルトガルにはまだ防衛分野に特化したAI戦略は存在しないものの、本分析によれば、デジタル変革のイニシアティブ、北大西洋条約機構(NATO)および欧州連合(EU)の枠組み、実証プログラム、各軍種レベルの戦略、そしてデュアル・ユースのイノベーション・エコシステムを組み合わせることで、すでに著しい進展が見られていることが示されている。
国家レベルにおいて、ポルトガルのAI政策は、戦略的ビジョンから、より実装志向のアジェンダ(implementation-oriented agendas)へと進化してきた。これらのイニシアティブは防衛分野に特化したものではないが、将来の軍事AI能力を構築するための不可欠な基盤を提供している。その結果、ポルトガルの防衛思想においては、AIは独立した軍事能力というよりも、決心の優越(decision superiority)、作戦上の有効性、レジリエンス、そして技術的主権を支える基盤技術として主に捉えられている。
ポルトガルの「防衛AI」に関する考え方は、信頼性が高く責任あるAIに対するNATOやEUのアプローチから強い影響を受けている。本研究では、「有意義な人間の統制(meaningful human control)」、「説明責任(accountability)」、「透明性(transparency)」、「相互運用性(interoperability)」、「堅牢性(robustness)」、「法令遵守(legal compliance)」といった原則をめぐって、幅広い合意が見られることが明らかになった。特にポルトガルが、NATOのAI戦略の策定や「軍事分野における責任あるAI(Responsible AI in the Military Domain)」プロセスといった国際的なイニシアティブに参加していることから、これらの原則は、軍事のAI導入(military AI adoption)を規律する暗黙の制約としてますます重要な役割を果たしている。
ポルトガルのアプローチを特徴づけるのは、実験が主導的な役割を果たしている点である。ポルトガルは、防衛分野におけるいくつかの主要なイニシアティブを通じて、自律システム、AI対応の決心支援ツール(AI-enabled decision-support tools)、サイバー能力、およびマルチドメイン作戦コンセプトを検証するための重要な実証の場としての地位を確立してきた。その結果、ポルトガルはNATOおよび欧州の防衛イノベーション・エコシステムにおいて、実験と統合の拠点(hub)としてますます認知されるようになっている。
また、この研究では、ポルトガルの防衛イノベーション・エコシステムの成熟度が高まっていることも浮き彫りにされている。AI関連の開発(AI-related development)は、「欧州防衛基金(EDF)」のプロジェクト、NATOのイノベーション・フレームワーク、国の復興・レジリエンス投資、そして産業界、学界、政府機関が連携するパートナーシップが組み合わさることで進められている。
軍内では、AI導入(AI adoption)が分散型かつ連合型のモデルを通じて進められている。ポルトガル国防省(MND)は、セキュアなインフラ、データ・ガバナンス、相互運用性、および計算リソースを中心とした共通のデジタル基盤を構築している一方、統合参謀本部および各軍種は、作戦に重点を置いたAIイニシアティブを推進している。
陸軍と空軍はすでにAIに関する専用の戦略を公表している一方、海軍はAIをより広範な技術変革のイニシアティブに組み込んでいる。すべての軍種に共通するテーマとしては、段階的な実装、任務志向の導入、厳格なガバナンス要件、データ中心のアプローチ、そして効果的な人的監督の維持などが挙げられる。
作戦的には、AI導入(AI adoption)は依然として初期段階にあるものの、将来性は高い。特に注目すべきは、空軍が衛星コンステレーション、AI対応の宇宙監視(AI-enabled space surveillance)、自動化された情報活用(automated intelligence exploitation)など、独自の宇宙能力を急速に開発している点である。同様に、海軍の「シリコン・セーラー」イニシアティブや陸軍の実験活動は、AIが人間の監督下にあるまま、意思決定(decision-making)やデータ分析を支援することで、すでに実用的な運用価値を生み出していることを示している。
これらの応用分野は、ポルトガルが現在進めている防衛分野におけるAI開発活動の中核をなしており、その活動には、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)、状況認識(situational awareness)を高度化するためAIの使用、および無人システムの使用も含まれている。これと並行して、ポルトガルはデジタル・データ・インフラの拡充を進めており、国防省(MND)は、公共部門のデジタル化を推進するために政府が拠出する資金を活用することも可能である。
この研究によると、ポルトガルの防衛分野におけるAIの成熟度は、初期の構想段階から、より正式な関与へと徐々に移行していることが明らかになった。重要なパイロット・プロジェクトやニッチな作戦能力は存在するものの、組織全体での大規模な統合はまだ達成されていない。したがって、主な課題は技術的なものだけにとどまらない。
優秀な人材の採用と定着、財務的投資を作戦能力へと転換すること、各軍種間の技術的な分断を回避すること、そして一貫性のあるガバナンス体制の確立が、将来の成功を左右する重要な要素として浮上している。
2030年を見据えると、ポルトガルの防衛分野におけるAIの進展を形作るであろういくつかの傾向が予想される。これには、防衛分野に特化したAI戦略の策定、防衛分野全体にわたるAIガバナンス体制の構築、主権型コンピューティングおよびデータ・インフラの拡充、宇宙を基盤とするインテリジェンス能力の強化、自律システムのより広範な導入、そしてAIとマルチドメイン作戦とのより深い統合などが含まれる。
ポルトガルの資源制約を考慮すると、今後の成功は、比較優位性を持つニッチ分野に注力すると同時に、NATO、EU、産業界とのパートナーシップを活用して、より広範な技術エコシステムへのアクセスを確保することにかかっていると考えられる。
本研究の中心的な結論は、「防衛AI」分野におけるポルトガルの最大の強みは、現時点では大規模な実戦配備(operational deployment)にあるのではなく、同盟体制の中で信頼される実験・イノベーション・統合の拠点(hub)としての役割を果たす能力にあるということである。今後10年間における決定的な課題は、数多くの有望なイニシアティブを、一貫性のある「防衛AIエコシステム(defense AI ecosystem)」へと転換することになるだろう。
この変革が成功すれば、ますます増加するAI対応の戦略環境(AI-enabled strategic environment)において、持続可能な軍事的優位性を生み出し、国家のレジリエンスを強化し、NATOおよび欧州の安全保障に対するポルトガルの貢献をさらに高める可能性を秘めている。
2 防衛AIについて考える
2.1 国家AI戦略と公共部門の枠組み
ポルトガルにおけるAI政策の変遷は、指針となるビジョンから国家レベルの実行アジェンダ(national execution agenda)への移行を特徴とし、戦略的な成熟度が高まっていく軌跡を示している。
この取り組みは、2019年に公表された「国家AI戦略」、「AIポルトガル2030[1]」に端を発するもので、同戦略では、強力な科学技術力、革新的な産業、そしてAIを活用したより効率的な行政を基盤として、ポルトガルを知識集約型経済として位置づけるという野心が掲げられた。
2024年以降、「国家デジタル戦略[2]」の承認に伴い、AIは同国のデジタル変革における横断的技術と見なされるようになり、経済、社会、行政の近代化において中心的な役割を担うようになった。この統合は、2026年に「国家AIアジェンダ(NAIA)[3]」が承認されたことで確固たるものとなった。同アジェンダは、2019年に定義された戦略的原則を、2030年までの期間における目標、ガバナンスの仕組み、具体的なイニシアティブを盛り込んだ体系的な行動計画へと転換したものであり、ポルトガルを責任ある「AIイノベーションの拠点(AI innovation hub)」とするという明確な野心を掲げている。
「国家AIアジェンダ(NAIA)」は、「インフラとデータ」、「イノベーションと導入」、「人材とスキル」、「責任と倫理」という4つの基本柱に基づいている。この枠組みは、国のコンピューティング能力の強化、企業や公共部門におけるAI導入(AI adoption)の加速、専門スキルの育成、そして欧州の価値観に沿った安全かつ透明性の高い使用の確保という、4つの課題に同時に取り組むことを目指している。
ポルトガルの戦略的進化において最も重要な側面の一つは、AIガバナンスへの注目が高まっている点である。2019年の戦略では、倫理や安全性が主に指針としての観点から扱われていたのに対し、「国家AIアジェンダ(NAIA)」および『行政機関向け責任あるAIガイド[4]』では、新たに整備されつつある欧州の規制枠組みに沿って、監督、アルゴリズムの透明性、リスク評価、および基本権の保護に関する具体的な仕組みが導入されている。
経済分野において、国の政策は、科学研究の活性化、国内技術の開発促進、そして企業、とりわけ中小企業におけるAI導入(AI adoption)の拡大を同時に目指している。
国家戦略ビジョンの一貫性やガバナンス手段の強化にもかかわらず、さまざまな文書は、今後10年間の主な課題として「実行(execution)」を挙げている点で一致している。専門人材の確保、資金を具体的なプロジェクトへと結びつける能力、民間部門や行政によるAIの効果的な導入、そして堅固なモニタリング体制の構築は、国家戦略の成功を左右する決定的な要因である。
要約すると、ポルトガルは現在、欧州の優先事項に沿った首尾一貫したAI政策を有しており、2019年以来一貫して維持されてきた長期的なビジョンに支えられている。戦略的な課題は、もはや方向性を定めることではなく、計画されたイニシアティブが2030年までに生産性、競争力、イノベーション、そして技術的主権の面で具体的な成果をもたらすことを確実にすることにある。
2.2 防衛AIのコンセプト化
ポルトガルには、現時点では独立した「防衛AI戦略」は存在しない。ポルトガルにおける防衛分野のAIに関する検討は、2つのレイヤーに基づいて行われている。1つは、「国家デジタル戦略」、「AIポルトガル2030」、および「国家AIアジェンダ(NAIA)」を中心とした国家レベルおよび分野横断的なレイヤーであり、もう1つは防衛分野に特化したレイヤーであるが、こちらは現在も策定が進められている段階である。
ポルトガルの「国家AI戦略」では、AIを、経済の変革、科学研究の強化、公共サービスの近代化を目的とした汎用技術と定義している。同戦略は、データ駆動型のイノベーション、信頼性の高いAI、人間中心の開発に重点を置いているが、より広範なAI政策とは区別される具体的な「防衛AI」のコンセプトについては定義していない。
主に経済競争力と公共部門の変革に焦点を当てつつも、本報告書は防衛分野におけるAIを、より広範な「デジタル主権」という文脈の中に位置づけており、そこではAIが効率性を高め、より良い決心(better decisions)を支援し、国家および欧州のレジリエンス向上に寄与することが期待されている。
とはいえ、AI戦略は、主に実現のための枠組みとして、防衛分野においても意義がある。この戦略は、AI活用におけるスキル、データ、デジタル・インフラ、イノベーション、そして信頼を促進するものであり、これらはすべて防衛分野でのAI導入に不可欠な要素である。したがって、国家AI戦略は、「信頼性の高いデータ」「安全なインフラ」「専門人材」「強固なガバナンス」という4つの行動指針に落とし込まれることで、防衛分野において有用なものとなる。
学術面では、軍事大学研究所のセミナーや研究で広く議論されている、AIや新興・破壊的技術に関するNATOの文書が、AIを「変革をもたらす原動力」であると同時に、敵対者によって利用された場合には「戦略的脆弱性の源」とも位置づけることで、ポルトガルの防衛思想を形成している[5]。
これらの文書は、指揮・統制・通信・コンピュータ・インテリジェンス・監視・偵察(C4ISR)という軍事機能のデジタル変革や意思決定(decision-making)の支援、自律型および半自律型システムの活用拡大、サイバー作戦の複雑化と高速化、宇宙ドメインの状況認識の必要性、さらに、メタバースのような「ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)」コンセプトを含む訓練や計画策定におけるシミュレーションおよび仮想環境への依存度の高まり、そして将来のマルチドメイン作戦(MDO)の中核をなす、実験を多用する新たなコンセプトの開発を支援するための要件などが挙げられる。
要約すると、ポルトガルの「防衛AI」に対するアプローチは、間接的に戦略的なものである。防衛AIの導入(defense AI adoption)はNATOやEUの枠組みに大きく依存しているが、具体的なAIの優先事項、倫理的なレッド・ライン、能力のターゲットを定義した、防衛レベルにおける包括的な単一の文書は依然として存在しない。とはいえ、本研究で示すように、統合レベルおよび各軍種レベルでは、AI対応の能力(AI-enabled capabilities)の管理、開発、実証、規制、運用を狙いとした、AI関連のイニシアティブ(AI-related initiatives)がすでにいくつか行われている。
2.3 原則と懸念事項
「AIポルトガル2030」、「国家AIアジェンダ(NAIA)」、および公共部門向けAIガイドラインを組み合わせることで、防衛分野におけるAIに関する一連の暗黙の原則が導き出される。これらは、AIの倫理的、透明性のある、かつ責任あるガバナンスを提唱し、この技術を公共的価値創造の中心に据えるとともに、説明責任、説明可能性、公平性、人権といった原則を明確にしている。これらの原則は防衛分野に限定されるものではないが、公的機関が運用する軍事用AIシステムにも適用可能である。
ポルトガルには「AIに関する戦争の原則(principles of war for AI)」を明文化した文書は存在しないものの、NATOのドクトリンの遵守や、EUが重視する「人間中心で信頼性の高いAI」という姿勢は、防衛分野におけるAIの利用に対する重要な制約として、兵器に対する有意義な人間の統制の維持、信頼性と堅牢性の確保、同盟間の相互運用性の維持といった事実上の原則を暗示している。
ポルトガルはまた、EUの「信頼できるAIに関する原則[6]」および「AI法[7]」にも拘束されており、これらはいずれも、人間の主体性と監督、技術的な堅牢性と安全性、プライバシーとデータ・ガバナンス、透明性、非差別、説明責任を重視している。
AI法では軍事用途は正式には除外されているものの、ポルトガルの政策文書では、不透明性、バイアス、統制不能といった倫理的・法的な懸念事項が、防衛分野においても関連するAIリスクであり、運用上の監督、監査可能性、指揮責任を通じて適応されるべきであることが明確にされている。
これは、あらゆる防衛用AIアプリケーションが、アルゴリズムの不透明性やバイアスに関する欧州全体の懸念を反映し、透明性、堅牢性、監督、説明責任に関する要件を遵守しなければならないことを意味する。この点と、AIの責任ある利用に関するNATOの取り組み[8]とを併せ考えると、ポルトガルの文脈において、有意義な人間の統制、同盟間の相互運用性、および法令遵守が、防衛用AIにとって暗黙の「戦争の原則(principles of war)」として機能していることが示唆される。
したがって、EUのAI法から防衛分野が除外されていることを踏まえ、ポルトガルは、国家防衛ドクトリン、AI対応の兵器(AI-enabled weapons)に対する法的審査手続き、標準的な調達条項、軍人向けの的を絞った訓練などを通じて、NATOのAI原則を拘束力のある防衛実務へと転換するとともに、NATOのAIガバナンスおよび試験メカニズムに積極的に参加すべきである。なぜなら、そこで策定される技術基準が、同盟国の防衛バリュー・チェーンへの実質的なアクセスを左右することになるからである[9]。
さらに、2026年2月に開催された「軍事分野における責任あるAI(REAIM)」サミット「Pathways to Action(行動への道筋)[10]」では、軍事用AIの管理にあたっては、国際法、責任あるデザイン、人間の監督、法令遵守、および厳格な試験を強く重視しなければならないことが再確認されており、これはポルトガルの防衛近代化計画に直接関連するものである。
ポルトガルは、他の44カ国とともに、「軍事分野における責任あるAI(REAIM)」のこれまでの原則を、軍事用AIの責任あるガバナンスに向けた具体的な措置へと転換するロードマップを承認した。このロードマップでは、軍事用AIが防護、意思決定(decision-making)、および国際法の遵守を向上させ得る一方で、誤算、バイアス、統制不能、エスカレーション、サイバー脅威、操作といったリスクも伴うことが認められている。
国家レベルでは、システムの進化や脅威の変化に応じて、早期に運用担当者を巻き込み、要員の研修を実施し、定期的なリスク評価を行うことを推奨している。また、AI対応の作戦(AI-enabled operations)に向けた明確な指揮系統、指針、手順の確立を奨励しており、さらには「最高AI責任者(Chief Responsible AI Officer)」のような国家レベルの窓口の設置も提唱している。
国際的には、信頼醸成措置、AIの能力に関する共通認識の形成、地域レベルのワークショップや演習、危機時の情報共有体制、および開発途上国向けの能力構築を支援している。また、安全保障、信頼性、およびヒューマン・マシン・インターフェースに関する課題に対処するため、産業界、学界、市民社会とのより強固な連携を呼びかけている。
防衛分野におけるAIに関する現在の懸念は、主権の問題を背景としており、第三国の技術への依存、重要インフラの脆弱性、人間による実質的な統制が失われるリスク、そしてAI対応の意思決定(AI-enabled decision-making)が広く行われる紛争において、新たな形態のエスカレーションや誤算が生じる可能性などが挙げられる。
また、不透明なAIシステムへの過度な依存は、特に致死性や戦略的な文脈において、たとえこうした懸念が「防衛AI(defense AI)」という狭い枠組みではなく、「技術の責任ある使用(responsible use of technology)」というより一般的な枠組みで捉えられているとしても、政治的説明責任や国民の信頼を損なう可能性があるという戦略的な認識もある。
軍事用AIに関する原則や懸念事項を踏まえると、ポルトガル国防省にとっての主な影響は実務的なものである。具体的には、AIガバナンスの必要性の高まり、AIシステムの試験(test)・評価(evaluation)・検証(verification)・妥当性確認(validation)の要件、サイバー・レジリエンス、データ保護、訓練、そしてAI対応のシステム(AI-enabled systems)が運用や調達段階に入るにつれて、指揮責任の明確化が求められることである。
また、これはポルトガルにとって、防衛投資、NATOとの相互運用性、および産業開発を、責任ある軍事用AIに関する国際基準に整合させる機会となる一方で、地域協力や能力構築の形成にも寄与するものである。
2.4 マルチドメイン作戦と将来の戦争の関連
ポルトガルの防衛政策において、AIは主にサイバー防衛、デジタル変革、および指揮・統制(C2)や意思決定(decision-making)への支援という文脈で登場しており、これらはNATOのマルチドメイン作戦(MDO)やデータ中心の戦い(data-centric warfare)というコンセプトと整合している。
このようなマルチドメイン作戦(MDO)コンセプトとの整合性は、海軍打撃・支援部隊(STRIKFORNATO)、NATO通信・情報アカデミー、統合分析・教訓センター、2つの「北大西洋防衛イノベーション・アクセラレーター(DIANA)」センターといった複数のNATOの構造を拠点として受け入れていることや、旗艦的な実験演習の開催、さらにはNATO全体規模の演習への参加などに反映されている。
同盟レベルにおいて、ポルトガルはNATOの「北大西洋防衛イノベーション・アクセラレーター(DIANA)[11]」のホスト国の一つであり、アクセラレーター施設とテスト・センターの両方を設置している。2023年から運用されているこれらのセンターは、AIを含む新興かつ破壊的なデュアル・ユース技術に関する同盟のアジェンダの中核の手段をなすものであり、多国籍の枠組みの中に位置づけられているものの、実際にはポルトガルの「防衛AI」体制の重要な一翼を担っている。さらに、これらの施設は、ポルトガルの企業や研究機関を、AI、自律技術、高度な分析分野におけるデュアル・ユースのイノベーターからなる大西洋横断ネットワークと結びつけている。
ポルトガル沖で毎年実施されている海軍の「海洋無人システムを用いたロボット実験・プロトタイピング(REPMUS)」演習は、無人海洋システムおよびマルチドメイン作戦(MDO)関連技術に関するNATO最大級の実験キャンペーンの一つとして広く認知されており、自律性、ロボット工学、AIが、水上、水中、空中、サイバーの各ドメインにわたる連合作戦をどのように強化できるかを探求するために明確に活用されている[12]。
これは、実環境下で試験された航行、センサー融合、自律行動など、連合軍体制におけるAI対応の無人海洋システム(AI-enabled unmanned maritime systems)の配備・運用におけるポルトガルの役割を示している。ポルトガルとその同盟国は、データ規格、指揮・統制(C2)統合、自律行動に関する交戦規則など、複数国が保有するAI対応の無人システム(AI-enabled unmanned systems)をネットワーク化する際の相互運用性の課題について学びつつあるが、詳細な教訓については依然としてNATOの機密チャンネル内に留められている。
「陸軍技術実験演習(ARTEX)[13]」は、AIの導入(AI-adoption)に貢献するもう一つの最高の手段(flagship instrument)である。2026年の演習では、欧州防衛庁(EDA)の「欧州防衛イノベーション・ハブの運用実験26(HEDI-OPEX26)」キャンペーンを統合することで、欧州的な側面が盛り込まれている。実戦的な条件下で実施されるこの演習では、AI、自律システムおよびロボット工学(robotics)、スマート・センサー、電子戦、強靭な通信、ヒューマン・マシン・チーミング(human-machine teaming)といった新興技術の検証が行われる。
この取り組みは、現実的な軍事環境下でAIシステムの作戦上の有効性を実証し、実験室での実証段階を超えて、意思決定(decision-making)、状況認識(situational awareness)、兵站、および自律作戦の支援における有効性を評価するものであるため、防衛分野におけるAI開発にとって特に重要な意義を持つ。
また、防衛分野のステークホルダーと学術界・産業界を結びつける共同イノベーションの枠組みを強化し、AI対応の能力(AI-enabled capabilities)の開発、試験、成熟化を加速させる。さらに、調達モデルのリスクを低減し、大規模な投資決定を行う前に新たなAIソリューションを評価できるようにする。最後に、欧州およびNATOにおける相互運用性を促進し、AI対応の能力(AI-enabled capabilities)が多国間の枠組みの中で、共通の運用基準に従って開発・試験されることを確実にする。
これらの実験事例により、ポルトガルは、自律型水上・水中・航空システム、ならびに指揮・統制(C2)およびセンサー融合ソリューションの連合運用試験を行う実証実験場となり、そこから得られた知見は将来のマルチドメイン作戦(MDO)に直接活かされることになる。
「陸軍技術実験演習(ARTEX)」と「海洋無人システムを用いたロボット実験・プロトタイピング(REPMUS)」は、単なる技術実証プロジェクトにとどまらない。これらは、AIや新興技術の実戦的な試験、検証、成熟化を可能にする防衛イノベーションの加速装置であり、ポルトガルを欧州における防衛実証の拠点(hub)として位置づけ、AIを有望なコンセプトから信頼できる軍事能力へと変革することを支援している。
さらに、ポルトガル軍は、NATOの演習にも参加している。その一例が「連合軍戦士相互運用演習(Coalition Warrior Interoperability eXercise: CWIX)[14]」で、これはデジタル相互運用性に関する最重要イベントであり、指揮・統制(C2)能力や情報技術サービスの試験、検証、改善を行うための同盟最大の場となっている。もう一つの例は、NATOの「ロックド・シールズ(Locked Shields)[15]」である。これは世界最大かつ最も複雑な国際的な実弾サイバー防衛演習であり、デジタル相互運用性、指揮・統制・通信・コンピュータ・インテリジェンス・監視・偵察(C4ISR)システム、およびサイバー防衛ツールを検証するもので、その多くはAIや高度な分析技術に依存している。
こうしたイノベーションや実証実験のイニシアティブへのポルトガルの参加により、要員はAI対応の訓練(AI-enabled training)や作戦環境(AI-enabled operational environments)に触れることになる。これは、自律性、無人システム、およびAI対応の決心支援(AI-enabled decision support)がマルチドメイン作戦(MDO)のあり方を一新するという見方を反映しており、ポルトガルは、大規模な自律型兵器システムにおける先駆者というよりは、実験の拠点(experimentation hub)としての立場を確立しようとしている。
3 防衛AIの開発
ポルトガルの防衛研究・開発(R&D)の優先事項は、EUやNATOの枠組みに大きく影響を受けている。ポルトガルにおける「防衛AI」の開発は、専用の防衛AI研究・開発(R&D)ラインを通じて行われるというよりは、「欧州防衛基金(EDF)」や「欧州のための安全保障行動(SAFE)」の手段、および国内の「AI・デジタル関連のアジェンダ(AI/digital-related agendas)」によって資金提供されている既存の能力構築プログラムにAIを組み込むことを通じて、主に進められている。
ポルトガルは、NATOおよびEUレベルで複数のAIに関連するイニシアティブに参加しており、これらは必ずしも「防衛AI」と称されているわけではないものの、同国のAI開発の方向性に大きな影響を与えている。これらの分野において、AIは主に分野横断的な基盤レイヤーとして扱われており、つまり「防衛AI」と称される独立したプログラムの柱というよりは、各分野にわたるデータ分析、自律性、決心支援(decision support)のための技術として位置づけられている。
その結果、現在の防衛分野におけるAI開発プロジェクトは、主に、状況認識(situational awareness)、データ分析および知識管理(knowledge management)、決心支援(decision support)、無人システムと組み合わせたインテリジェンス・監視・偵察(ISR)、宇宙を基盤とするインテリジェンス・監視・偵察(ISR)、ならびに防空などの特定分野における具体的な応用への支援、および基盤となるデータとデジタル・インフラの強化に重点を置いている。
ポルトガルには、防衛およびデュアル・ユース分野において、かなり活気のある産業・科学エコシステムが存在する。防衛分野におけるAI開発は、多国間のエコシステムに深く根ざしている。このエコシステムは、通信、ミサイル、宇宙、サイバー分野に取り組む防衛大手企業や中小企業、「欧州防衛基金(EDF)」コンソーシアムや「欧州のための安全保障行動(SAFE)」の手段、その他のEUプログラム、および国内のハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)イニシアティブを通じて、AIを具体的なプロジェクトに組み込み始めた研究技術機関や大学、そして防衛と民間技術コミュニティを明確に融合させるイノベーションの枠組みから構成されている。
3.1 欧州防衛基金(EDF)とその他の欧州プログラムを通じての開発
「欧州防衛基金(EDF)」は、AI関連技術を含むポルトガルの防衛イノベーションを牽引する主要な外部要因である。「欧州防衛基金(EDF)」の下で、20のポルトガル機関が11の共同プロジェクト(研究・開発(R&D)および能力開発)に参加している。これらのプロジェクトは、「欧州防衛基金(EDF)2025作業計画」で重点が置かれている重要な能力分野を網羅しており、航空・ミサイル防衛、ドローンおよび対ドローン、指揮・統制・通信・コンピュータ・インテリジェンス・監視・偵察(C4ISR)、サイバーおよびセキュア通信、宇宙能力などが含まれる。これらの分野において、AIは独立した能力分野というよりは、データ処理や自律性を可能にする基盤技術として位置づけられている[16]。
こうしたプロジェクトの一つとして、航空・ミサイル防衛分野における「欧州先進ミサイル・システム技術強化(BEAST)」が挙げられ、これはAI、デジタル化、および高度な分析技術の相互作用を体現している。Critical Software 社[17]は、26の組織と12カ国からなるコンソーシアムにおいて、ポルトガルから唯一参加している企業であり、第5世代・第6世代の航空機、無人航空機、電子戦、巡航ミサイルといった高度な脅威への対応として、ミサイル防衛システムにAIを組み込むことを目指している。
Critical Software社は、ミサイル・システムの中核ソフトウェアへのAIモデルの展開を自動化し、安全性が極めて重要な兵器システム内でのデータ・フロー、モデルの更新、および検証プロセスを管理することを狙いとした、機械学習(ML)運用プラットフォームの開発を担当している。これは、AIが単にターゲットの認識や誘導に用いられるだけでなく、複雑なシステムのデジタル基盤としても活用されていることを浮き彫りにしている。また、これにより、Critical Software社の人工知能(AI)/機械学習(ML)運用プラットフォームが欧州のミサイルの中核ソフトウェアに組み込まれることが明らかになり、プロジェクトが完了すれば、AIは実際の作戦システム内で稼働することになる[18]。
さらに、防衛分野を含むポルトガルの「AIの野心(AI ambitions)」において、高度なコンピューティングおよびデータ・インフラが果たす重要性を強調しておく必要がある。「StartCampus」プロジェクトは、ポルトガルの都市シネシュ(Sines)で進められている数十億ユーロ規模のハイパー・スケール・データ・センター・インフラ開発であり、AI、クラウド・コンピューティング、およびハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)のワークロードをサポートするようにデザインされている[19]。また、ポルトガルはスペインやトルコと共に、「MareNostrum 5」スーパーコンピュータの拡張に「Euro HPC AI Factory」として参画しており、機械学習(ML)、言語モデル、その他のAIアプリケーション向けの処理能力向上に向け、1億2900万ユーロを投資している。
これと並行して、同じく「Euro HPC」の共同資金提供を受けているスーパーコンピュータ「Deucalião」は、AI開発の基盤となるシミュレーション、最適化、データ分析といったタスク(防衛関連のユース・ケースを含む)に適した、国内の高性能計算能力を提供している[20]。
ポルトガルが、AI、クラウド・サービス、高度なコンピューティング分野における大規模なデジタル・インフラ投資の誘致に積極的に取り組んでいることや、「Euro HPC」への参加は、同国を欧州の主要な技術拠点(technology hub)として位置づける一方で、デュアル・ユースの協力や知識の交換に対して高い開放性を示しており、防衛分野が孤立して活動するのではなく、より広範なAIエコシステムにおける進展を活用していることを示唆している。
3.2 国家のレジリエンスト・復興計画を通じた開発
ポルトガルの「レジリエンス・復興計画(RRP)」は、防衛、安全保障、およびデュアル・ユース技術に関連するいくつかの主要プロジェクトにも資金を提供しており、「防衛AI」の開発に直接貢献している。これらのイニシアティブは、AI、サイバー安全保障、ロボット工学、宇宙能力を統合することで、産業の自立性、NATOとの相互運用性、デジタル・レジリエンス、および作戦上の即応性の向上を狙っている。
海洋分野においては、多機能海軍プラットフォーム、作戦センター、海軍ロボット工学研究所、および機密文書の管理に特化した新しいAIアシスタントなどが含まれる。
多目的海軍プラットフォーム
まもなくポルトガル海軍によって運用が開始される「多目的海軍プラットフォーム(Multipurpose Naval Platform)[21]」は、環境モニタリング、海洋監視、漁業検査、資源保護、水路測量および科学研究、ならびに必要に応じた緊急輸送や避難のためにデザインされたデュアル・ユース艦である。さらに、この艦艇は、最先端のロボット技術やセンサー技術の実証を行い、国内の技術開発に貢献することを意図している。また、このプラットフォームには作戦センターが併設され、海洋認識(maritime awareness)と決心支援(decision support)の向上のためのデジタルかつデータ駆動型の作戦レイヤーを追加する[22]。
シリコン・セーラー(Silicon Sailor)
「シリコン・セーラー(Silicon Sailor)[23]」は、ポルトガル初の大規模言語モデル(LLM)である「アマリア(Amália:勇気)[24]」を基盤として構築され、海軍が管理するインフラ内に完全に展開されているAIプラットフォームである。この取り組みは、作戦、技術、兵站、および管理に関する膨大なデータを、意思決定者(decision-makers)が活用できる知識へと変換することを狙いとしている。
すでに実装されているAIの活用事例として、このプロジェクトは、デジタル主権、安全保障、および機密情報の管理を維持しつつ、生成AIを防衛分野にどのように導入できるかを実証している点で、特に重要な意義を持っている。
このソリューションは、外部のクラウド・ベースのサービスに依存するのではなく、ローカルで動作し、既存のアクセス制御を適用することで、ユーザーが閲覧権限をすでに付与されている情報のみにアクセスできるようにする。このプラットフォームは、セマンティック検索、文書要約、知識抽出、情報分析、決心支援(decision support)などの能力をサポートしており、担当者が情報をより効率的に検索、処理、活用できるようにする。
戦略的な観点から見ると、「シリコン・セーラー」イニシアティブは、ポルトガルにおいて、主権と防衛志向の大規模言語モデル(LLM)エコシステムの初期の事例の一つであり、安全保障、レジリエンス、および国家の技術的自立性を維持しつつAIを活用しようとする他の公共部門や防衛機関にとって、参考となるモデルを提供している。
これらのプロジェクトは、実際の任務においてAIが機能するために必要な作戦インフラ、デジタル・インフラ、およびデータ・インフラを構築するものであるため、防衛分野におけるAIの導入に関連している。
海洋作戦センター、海軍ロボット工学研究所、そして機密文書処理用の新しいAIアシスタントは、いずれもAIが状況認識(situational awareness)、知識管理(knowledge management)、そしてより迅速な意思決定(faster decision-making)を支援する防衛モデルを体現している。実際には、海軍プラットフォームと作戦センターが、海軍による海洋データの収集、統合、活用能力を拡大する一方で、ロボット工学研究所と「シリコン・セーラー」は、AI対応の実験(AI-enabled experimentation)、AI対応の分析(AI-enabled analysis)、およびAI対応の安全な文書処理(AI-enabled secure document processing)を追加している。
これらのプロジェクトは、伝統的な海軍の近代化から、自律性、データ・ガバナンス、決心支援(decision support)が海洋安全保障と作戦上の有効性の中心となる、AI対応の防衛エコシステム(AI-enabled defense ecosystem)へと、徐々に移行していることを示している。
海洋分野に加え、「レジリエンス・復興計画(RRP)」は、国内の航空宇宙クラスターを強化するとともに、デュアル・ユース用途[25]を備えた宇宙能力を構築することを目標として、「Aero.Next agenda」および「New Space agendas[26]」に資金を提供している。
「Aero.Next agenda」において、Tekever社はAI分野における専門知識と能力が高く評価されるべきであり、その強みはARX無人航空機システムに反映されることになる[27]。Tekever社は単なるドローンメーカーとしてではなく、無人航空プラットフォーム、高度なセンサー、AI、データ活用、ミッション管理能力を単一の運用フレームワークに統合した、AI対応のインテリジェンス・監視・偵察(AI-enabled ISR)および自律した作戦エコシステムの提供者として捉えるべきである[28]。
リアルタイムの任務監視とAIを活用した分析を組み合わせることで、「Atlas」プラットフォームなどのソリューションは、状況認識(situational awareness)を向上させ、情報処理を加速させ、より早くより良い意思決定(faster, better-informed decision-making)を支援する。
AR3(小型・軽量な固定翼ドローン)やAR5(中高度・長距離飛行の海洋監視ドローン)など、軍がすでに運用している作戦システムに組み込まれ、ARX(群制御可能な次世代無人航空機システム)プロジェクトにおいてさらに拡充されたこれらのAI能力(自動物体検出、ターゲット認識、映像解析、地理空間的相関分析、パターン分析など)は、「戦力増強要因(force multiplier)」として機能し、作戦の有効性を高め、認知的負荷を軽減するとともに、軍による持続的な監視、海洋領域認識(MDA)、およびマルチドメイン作戦(MDO)の実施能力を強化する。
宇宙関連のイニシアティブに関して、空軍は「ニュースペース・アジェンダ[29]」に積極的に貢献しており、「アトランティック・コンステレーション」のワーキング・パッケージ3(WP3)[30]に参加するとともに、ワーキング・パッケージ10(WP10)[31]を主導している。ワーキング・パッケージ10(WP10)は、合成開口レーダー(SAR)衛星を中核とした、ポルトガル独自の全天候型の宇宙を基盤とするインテリジェンス・監視・偵察(ISR)能力の構築を狙った宇宙を基盤とするインテリジェンス・監視・偵察(ISR)プログラムであり、防衛・安全保障活動において特に重要な役割を果たすものである。
ポルトガルは、限界普及率(critical mass)や投資規模の面から、すべての先進的な防衛システムにおいて完全な技術的自立を目指すことはできないため、EUやNATOの枠組みを通じて協力するとともに、無人航空機システムなど、ポルトガルの創造性や産業界が競争力を発揮できるニッチ分野に注力すべきである。その一例として、国際市場で競争力を発揮しているポルトガル企業「Tekever社」が挙げられる[32]。
要約すると、これらのイニシアティブはいずれも、AIが状況認識(situational awareness)、知識管理(knowledge management)、そしてより迅速な意思決定(faster decision-making)を支援する防衛モデルを指向している。
4 防衛AIの組織化
「防衛AI」の統合は、決心の優越(decision superiority)を目的としたより広範なデジタル変革の一環として、制度的・作戦上の近代化を推進する要素として理解されるべきである。この文脈において、AIは最終目的(end)そのものとして扱われるのではなく、決心の優越(decision superiority)、相互運用性、作戦上の有効性、および即応性を強化するようにデザインされた基盤となる能力として位置づけられる。戦略的な前提として、AIは、人間の統制、組織的正当性、および軍事行動に関する倫理的・法的要件に従属したままでありつつ、任務を支援すべきである。
4.1 国防省
ポルトガルの「防衛AI」に対する組織的アプローチは、中央集権的というよりは、主に分散化しかつレイヤー化されたものである。ポルトガル国防省(MND)レベルでは、一貫性のある戦略の実施、体系的な成熟度評価、およびNATOやEUとの完全な整合性を確保するために、正式な「防衛AI戦略」と専用のAIガバナンス構造が不可欠である。しかし、こうしたAIに特化した戦略や構造は、まだ正式に確立されていない。
さらに、データ要件の設定、AI対応のシステム(AI-enabled systems)の倫理的・技術的な認証、および軍隊内における技術ライフサイクルの管理といった包括的な権限を持つ、明確に指定された国家レベルの「防衛AI当局(defense AI authority)」は、依然として存在しない。このような戦略や技術本来の二重構造は、まだ正式には確立されていないものの、将来的な防衛分野全体にわたるAIガバナンスの実践的な青写真となるべきである。
前述の課題はあるものの、ポルトガルの防衛分野におけるAIの統合は、ポルトガル国防省(MND)が構築した共通のデジタル基盤、統合デジタル変革アジェンダ、および各軍種固有の戦略を組み合わせた多層的な枠組みとして具体化しつつある。統合参謀本部がこの進化に向けた戦略的アーキテクチャを策定する一方、各軍種の戦略は、この枠組みを具体的な能力、実施スケジュール、および活用事例へと落とし込んでいる。
ポルトガル国防省(MND)は、AI導入(AI adoption)には信頼できるデータ、安全なインフラ、共通のガバナンス、および組織間の連携が不可欠であるという前提に基づき、ポルトガル国防省事務総長(SGMND)が主導する連邦型モデルを採用している。各軍種が孤立したAIインフラを独自に開発することを許すのではなく、ポルトガル国防省事務総長(SGMND)は、データ・ガバナンス、サイバーセキュリティ、コンピューティング・リソース、相互運用性を一元化しつつ、各軍および統合参謀本部の自律性を維持する共通のデジタル基盤を提供している。
このアプローチの中核[33]をなすのは、「防衛管理向けAIインフラストラクチャ」計画であり、これは統合防衛管理システムを通じて利用可能なデータに基づいて構築された、連合型で相互運用性が高く、かつ安全な環境である。このインフラストラクチャは、防衛分野全体でストレージ、演算能力、およびAIモデリング能力を共有するようにデザインされており、投資の重複を回避し、規模の経済を生み出そうとしている。
同時に、分離された環境により、統合参謀本部および各軍種は、国防総省全体にわたる共通のエコシステムとの接続を維持しつつ、独自のAIアプリケーションを独立して開発・運用することが可能となる。
ポルトガル国防省事務総長(SGMND)は、データの主権、安全保障、相互運用性、およびコンプライアンスの確保を担当する一方、各軍種は、自らの作戦要件に沿った任務特化型のAIアプリケーションの開発責任を引き続き担う。このガバナンス構造により、大規模言語モデル(LLM)、検索強化型生成ソリューション、エンタープライズAIアプリケーションといった共通サービスの開発が可能となる一方で、兵站、人事管理、決心支援(decision support)、予知保全、サイバー防衛などの分野における各軍種固有の能力も同時に支援される。
戦略的な観点から見ると、ポルトガル国防省事務総長(SGMND)モデルは防衛分野におけるAI変革を支える基盤としての役割を果たしている。信頼性の高いデータ、主権が確保され強靭なインフラ、共有された計算リソース、および共通の標準を提供することで、防衛組織全体において大規模なAI導入(AI adoption)に必要な条件を整える。その結果、軍は並行して技術インフラを構築することに注力するのではなく、AIを活用して作戦上の有効性、組織の効率性、および決心の優越(decision superiority)を高めることに重点を移すことができるようになる。
統合レベルにおいて、「デジタル変革行動計画 2025-2030[34]」は、人、プロセス、技術、データを優先事項とし、安全保障、レジリエンス、相互運用性を横断的な原則として位置づけることで、この進化のための構造的条件を確立している。このアーキテクチャの中で、AIは、より広範なデジタル・バックボーンの一部として、またデータ駆動型の意思決定(data-driven decision-making)、統合指揮・統制(C2)、およびマルチドメイン作戦(MDO)を支えるメカニズムとして位置づけられている。
ここで重要な点は、この計画ではAIを独立した技術的レイヤーとしてではなく、成熟したガバナンス、信頼性の高いデータ、そして組織の適応力に依存する能力として位置付けているということである。
4.2 統合参謀本部と各軍種
この文脈において、統合参謀本部は相互運用性とマルチドメイン作戦(MDO)の実現を後押しする役割を果たしている。
第一に、同本部は統合サイバー防衛作戦司令部を統合しており、同司令部は、国家サイバーセキュリティ・センターやNATOの構造と緊密に連携して、ネットワークの監視、インシデントの検知、およびインシデント対応の調整を担当しており、人工知能(AI)や機械学習(ML)を活用したサイバー防衛ソリューションの活用を示唆している[35]。これはまた、AIや高度な分析技術を含む急速な技術的変化が、ポルトガルにおける軍事ネットワークや重要インフラの防護のあり方を変容させていることを浮き彫りにしている。
第二に、共通のネットワークと共有された状況認識(situational awareness)ツールによって可能となった、軍事作戦統合司令部傘下での統合指揮・統制(C2)構造の統合である。
第三に、統合参謀本部イノベーション・変革局を通じて、作戦能力とプロセスを強化するための統合の取り組みを調整することである。
軍種レベルでは、陸軍と空軍はいずれも正式なAI戦略を公表しているが、海軍は依然としてそのような文書を公表していない。
陸軍
陸軍のAI戦略[36]では、AIを、プロセス、作戦運用、およびリーダーシップに統合された、安全で主権が確保され、責任ある能力と定義している。その導入プロセスは明確に段階分けされており、まずリスクの低い生産性向上ツールから始め、次にオンプレミスの主権プラットフォームへと進み、その後、より機密性の高い作戦環境向けにエッジAIへと拡大していく。
このアプローチは、イノベーションと管理のバランスを意図的に図る取り組みを反映しており、陸軍が初期の成果を早期に獲得しつつ、技術的専門知識、データ・ガバナンス、運用上の検証を段階的に組織内に定着させることを可能にしている。また、陸軍は、正式なガバナンス構造、AIの技術中核、モジュール式の訓練、および行政支援、兵站、整備、人事管理、決心支援(decision support)にまたがる優先順位付けされたユース・ケースのポートフォリオを重視している。
空軍
空軍のAI戦略[37]も同様の戦略的論理に基づいているが、航空、宇宙、サイバーの各ドメインにわたる任務遂行をより重視している。ここでは、AIは、決心サイクル(decision cycle)を加速させ、状況認識(situational awareness)を向上させ、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)の活用を強化し、兵站、整備、サイバー防衛を支援する手段として位置づけられている。陸軍と同様、空軍も正式なガバナンス構造と技術的構造を採用しており、移行のための明確なゲート、パフォーマンス指標、組織的成熟度基準を備えた段階的な導入モデルを採用している。
これは、実験そのものは容認されるものの、それが実証済みの能力や測定可能な業務上の価値につながる場合に限り許容されるという、一般的な組織的傾向を示している。
海軍
海軍は、独立したAI戦略として公式に発表してはいないものの、AIの導入を方向づけるいくつかの戦略的指針を定めている[38]。海軍の主な目標は、部隊をデータ駆動型で、技術的に先進的かつ作戦上分散化された組織へと変革することである。AIは、ビッグ・データや自律システムと並んで、海軍の3つの優先技術的柱の一つとして位置づけられており、作戦上の優越(operational superiority)、決心支援(decision support)、およびマルチドメイン作戦(MDO)の向上を狙っている。
このアプローチは、一元化されたストレージ、作戦分析、セキュリティ、そして「シリコン・セーラー」と呼ばれる大規模言語モデル(LLM)ベースのアシスタントを備えた海軍のデータ・アーキテクチャを形式化することで、さらに詳細に説明されている。海軍は、人間と自律システムが、安全かつ相互運用性が高く、強靭な方法で連携するネットワーク化された指揮・統制(C2)構造を、AIが支援することを目指している。
これには、運用および支援機能全般にわたるパターン認識、予測分析、リアルタイム・ダッシュボード、決心支援(decision support)へのAIの活用が含まれる。具体的には、海軍のAI戦略は個別のツールの導入にとどまらず、即応性、決心の速度(speed of decision)、および作戦上の有効性を向上させる統合されたデジタル・エコシステムの構築を目指している。その最終的状態(end state)は、人間の監督や組織的な統制を失うことなくAIを活用できる、より自律的で、強靭で、相互運用性の高い海軍を実現することである。
3つの軍種はいずれも、AIは説明責任、説明可能性、追跡可能性、そして厳格なデータ保護を通じて管理されなければならないことを明確にしている。実際問題として、最大の課題は技術的なものだけでなく、組織的なものにもある。具体的には、一貫性のあるデータの収集、機能分野間の相互運用性の確保、そしてユーザーの間での分析習慣の定着などが挙げられる。
防衛分野全体の枠組みにおいて、いくつかのテーマが驚くほど一貫して繰り返し見られる。
第一に、AIは任務中心の論理に組み込まれており、その導入における主要な基準は技術的な斬新さではなく、作戦上の価値である。
第二に、ガバナンスは後付けの要素ではなく前提条件として扱われ、調整、説明責任、および管理が重視される。
第三に、データは戦略的アセットとして認識されており、その品質、アクセス可能性、およびガバナンスによって、AIが信頼性の高い結果を生み出せるかどうかが決まる。
第四に、リスク管理、信頼の構築、そして導入が作戦上の実情と整合性を保つことを確保する必要性を踏まえ、実装は意図的に段階的に行われる。
最後に、人間の統制は、単なる安全策としてだけでなく、軍事的意思決定(military decision-making)における正当性と有効性を決定づける条件としても、依然として中心的な役割を果たしている。
実質的には、この戦略的枠組みは、国防分野が、ばらばらなイニシアティブから、NATOとの相互運用性、効果的な人的統制、情報セキュリティ、そしてデータを戦略的アセットとして扱うことを基盤とした、規律あるAI導入のモデル(model of AI adoption)へと移行しつつあることを示唆している。
この変化の意義は、単に新興技術の導入にあるのではなく、それらを指揮、決心支援(decision-support)、後方支援(sustainment)、および作戦運用プロセスに持続的に統合し、即応性、効率性、そして組織の信頼性において測定可能な向上をもたらす能力にある。
その意味で、AIは技術的な推進力であると同時に組織変革の触媒ともなり、ガバナンス、ドクトリン、訓練、そして防衛システム全体における責任分担の変化を牽引している。したがって、ポルトガルの事例は、軍事機関にとってより広範な教訓を示している。すなわち、AIの価値は、個別の技術的導入そのものよりも、任務の成果をめぐる人材、プロセス、データ、そしてガバナンスの整合性に大きく依存しているということである。
5 防衛AIの資金
5.1 国による資金提供制度
ポルトガルは予算において「防衛AI」という独立した項目を公表していないものの、いくつかの資金調達メカニズムが「防衛AI」に関連する活動を明確に支えており、AI関連の投資(AI-related investment)が全体的に増加傾向にあることがうかがえる。
「国家AIアジェンダ(NAIA)[39]」は、その経済的な野心について明確な見解を示している。同機関は、AIの急速な普及により、今後10年間で国内総生産(GDP)が180億~220億ユーロ増加し、成長に対する生産性の寄与度が2.7ポイント上昇すると試算しており、AIをポルトガルにとっての「歴史的な好機」と位置付けている。
しかし、このアジェンダでは、資金調達の相当部分が欧州の資金や民間投資に依存することになると強調されている。潜在的なマクロ経済的利益を定量的には示しているものの、「防衛AI」専用の予算枠を設けるものではない。むしろ、公共部門におけるAI導入(AI adoption)、高度なコンピューティングインフラ、AI人材の育成、そして研究・イノベーション・エコシステムの4つの分野において、各国が能力を構築できるよう支援するものである。
したがって、防衛機関はこれらの国家資産を活用して軍事のAI導入(military AI adoption)を加速させることができるが、実戦的な軍事AI能力を実現するには、防衛分野特有の優先順位付け、ガバナンス、セキュリティの枠組み、および投資が依然として必要である。
「国家AIアジェンダ(NAIA)」は、2026年から2030年にかけて、主にEU基金からの4億ユーロを超える投資を見込んでおり、これは予算規律を遵守しつつ、競争力とデジタル主権に重点を置いた戦略的投資として位置づけられている[40]。このアジェンダは、今後立ち上がる「欧州AI Factories」イニシアティブと整合しており、ポルトガルは「MareNostrum 5」を中核とする「EuroHPC AI Factory」を通じて同イニシアティブに参加している[41]。
公的資金に加え、ハイパースケーラーの誘致や、マイクロソフトがポルトガルの都市シネシュ(Sines)のデータ・センター周辺で発表した100億ドルのAIインフラ投資、「StartCampus」による85億ユーロ規模のキャンパスおよび先端チップ・プロジェクトといった大規模な民間AIインフラ投資を促進する国家政策は、国内のAIエコシステムを大幅に強化し、間接的にデュアル・ユースや防衛関連のAIアプリケーションにとって好ましい環境を創出している[42]。
さらに、「レジリエンス・復興計画(RRP)」の資金調達手段は、民間部門に重点を置いているものの、「Aero.Next」や「New Space」といったプロジェクト、あるいは海洋能力やインフラなどにおいて、デュアル・ユースの用途も有している。こうしたデュアル・ユースの基盤技術は、たとえそれ自体が防衛と明示されていなくとも、「防衛AI」プロジェクトを構築するための財政的・技術的な基盤を形成している。
5.2 防衛分野特有の資金調達ルートおよび外部資金調達ルート
NATOは、研究・開発(R&D)費に関する具体的なターゲットを設定していない。しかし、NATOは装備支出目標を通じて技術的近代化への投資を奨励しており、一方、欧州防衛庁(EDA)は、加盟国に対し、防衛支出の2%を防衛研究・技術に総計で充てるよう推奨している。
防衛費全体は増加傾向にあるものの、公開されているデータによると、ポルトガルの研究・開発(R&D)投資は、欧州の主要な同盟国やEUの防衛研究・開発(R&D)への取り組みの平均水準と比較すると、依然として控えめな水準にとどまっている。
ポルトガルは、EUの防衛関連の手段(「欧州防衛基金(EDF)」や「欧州のための安全保障行動(SAFE)」など)の受益国であり、NATO関連のイノベーション枠組み(「北大西洋防衛イノベーション・アクセラレーター(DIANA)」など)にも参加している。これらの枠組みは、たとえ国内文書において「防衛AI」と明記されていなくても、AI関連プロジェクトに対して追加の資源やアクセラレーターサービスを提供している。こうした外部からの支援は、ミサイル、通信、宇宙、サイバー、および訓練の各分野において、AIを多用する能力を拡大する上で極めて重要である。
EUレベルでは、「欧州防衛基金(EDF)」および「欧州のための安全保障行動(SAFE)」は、AIを含む最先端技術への資金提供を今後数年間で拡大するようデザインされており、ポルトガルは現在の事業ポートフォリオを通じて、すでにその恩恵を受けるための良好な立場にある。「欧州防衛基金(EDF)」への参加により、無人システム、情報システム、先進センサーなどの主要分野における研究・開発(R&D)や能力開発に対し、プロジェクト単位の資金提供が引き続き行われており、その中にはAI要素を強く含む技術もいくつか含まれている。
ポルトガルの事業体は、11件のプロジェクトを通じて5,340万ユーロの資金を確保した。これは「欧州防衛基金(EDF)」資金総額の5%に相当し、センサー、指揮・統制・通信・コンピュータ・インテリジェンス・監視・偵察(C4ISR)、ミサイル、宇宙システムにAIを統合するプロジェクトを支援するものである[43]。ポルトガルの経済規模は比較的小さいものの、このことは、AI関連技術を含め、EUの防衛イノベーション資源を惹きつける強力な能力があることを示している。
防衛分野に限定して言えば、ポルトガルは「欧州のための安全保障行動(SAFE)」の手段に基づき、約58億4000万ユーロの長期融資を受ける予定である。これは、無人システム、監視、防空、データ融合、予知保全、決心支援(decision support)といった分野を含む軍事の近代化と産業の高度化を支援するためのものであり、これらの分野ではAIが重要な基盤技術として位置づけられることになる[44]。
さらに、2035年までGDPの5%を防衛費に充てるというNATOの公約に対するポルトガルの関与は、新たな能力の取得を後押しすることになる。これらの能力は、デザイン上すでにAI組込み機能(AI-embedded functionalities)を有しており、例えば、AIがセンサー情報の処理を支援し、複雑な航空脅威の探知、分析、対応を支える防空システムなどが挙げられる。こうした装備の導入は、今後12年間にわたる防衛投資の拡大を規定する2027年の「軍事調達法」に反映されることになる。
6 防衛AIの配備と実際の運用
6.1 一般的なアプローチと得られた初期の知見
ポルトガルのアプローチは、段階的かつ実験重視のものである。同国は、アップグレードやソフトウェア統合を通じて既存システムにAIを組み込み、多国間演習や試験場を活用してAI対応の無人システム(AI-enabled unmanned)や指揮・統制(C2)システムを試験運用するとともに、サイバー指揮構造を活用して、サイバー空間においてAI強化型防衛ツール(AI-enhanced defense tools)を運用している。
このアプローチは、AI導入に伴うリスクを軽減するための実験環境の価値、「防衛AI」を支えるための強固なサイバー・データ・ガバナンスの必要性、そして純粋に防衛専用のAI能力を構築するのではなく、デュアル・ユースのエコシステムを活用することの重要性を浮き彫りにしている。
ポルトガル国防省(MND)および軍は、すでにさまざまな分野にわたる複数のAI関連のプロジェクト(AI-related projects)に関与している。その例としては、決心支援(decision-support)ツール、データ分析システム、状況認識(situational awareness)、および(宇宙を基盤とする)インテリジェンス・監視・偵察(ISR)や、指揮・統制(C2)、兵站、予知保全、インテリジェンスにおける訓練・探索的用途などが挙げられるが、多くのプロジェクトはパイロット段階または運用初期段階にある。
他の著者らは、インテリジェンス処理、決心支援(decision support)、状況認識(situational awareness)、サイバー防衛、自律システム、支援機能など、複数の作戦上の応用分野を挙げている。また、AIは、ドクトリンや能力にどのように統合されるかによって、分析の促進要因、情報の破壊要因、あるいは「戦力増強要因(force multiplier)」として機能し得ると指摘している[45]。
いくつかの軍によるイニシアティブは、軍事作戦におけるロボット工学、自律技術、AI、およびデジタル・エコシステムの実用的な応用例を示している。しかし、その導入レベルを「作戦運用における汎用AI」として提示すべきではない。AIの成熟度は主に「初期段階」と「本格導入段階」の間にあり、各軍種や機能分野にわたって関連するパイロット・プロジェクトが実施されているほか、宇宙分野での作戦運用も拡大しているものの、システムやプロセスへの完全かつ持続的な統合には至っていない。
6.2 海洋ドメイン
海軍は、前の節で詳述した3つの主要イニシアティブ[46]を通じて、デジタル・イノベーションとAI導入(AI adoption)における主導的な存在として台頭している。(1) 多目的海軍プラットフォーム「NRP D. João II」は、EU初のドローン運搬艦であり、自律型航空・水上・水中システムを統合したデジタル・プラットフォームとして構想されている。(2) NATO、産業界、学界を結集し、世界をリードする海洋無人システム実験演習として認知されている「海洋無人システムを用いたロボット実験・プロトタイピング(REPMUS)」;および (3) ポルトガルの大規模言語モデル(LLM)を用いて構築されたAIベースのアシスタント「シリコン・セーラー」プロジェクト。これは海軍のインフラ内で安全に稼働し、知識管理(knowledge management)や意思決定(decision-making)を支援するものであり、現代の軍事組織において極めて重要な「戦力増強要因(force multiplier)」となりつつある分野におけるAIの実用的な応用例を示している。
さらに、「北大西洋防衛イノベーション・アクセラレーター(DIANA)」試験センターも併設されているポルトガルのトロイア(Tróia)半島にある海軍運用実験センターは、自律走行車両、先進センサー、指揮・統制(C2)システムの試験を行うプラットフォームを提供しており、その多くは航法、センサー融合、決心支援(decision support)のためのAIアルゴリズムを組み込んでいる。
6.3 陸上ドメイン
ポルトガル陸軍におけるAIの影響に関する最近の研究でも、AIは機能分野(インテリジェンス、人的資源(HR)、訓練、指揮・統制(C2)、兵站、財務、教育、健康、および軍事的意思決定(military decision-making))にまたがる横断的な課題として位置づけられているが、その内容の多くは分析、提案、あるいは研究であり、すでに制度化された能力の証拠ではない[47]。
しかし、こうした文脈において、AIは単独の技術として扱われるのではなく、陸軍全体の機能を高める「戦力増強要因(force multiplier)」として位置づけられている。具体的には、AIは主に以下の4つの機能に活用されていることが指摘されている。すなわち、より良い観測(better observation)、より迅速な意思決定(faster decision-making)、より強い部隊支援(stronger force support)、そしてより良い資源管理(better resource management)である。
同時に、AIの軍事利用には、人間の監督、サイバーセキュリティ、倫理、データ品質、および組織の適応が必要であることを強調している。したがって、「陸軍AI戦略(Army AI Strategy)」で述べられているように、AIの運用は指揮・統制(C2)、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)、兵站、および予知保全といったユース・ケースと明確に結びつけられている一方で、リスクや状況に応じて適切な程度の人間の監督を行うことが求められている。
多くの事例が、ポルトガル陸軍がAIの探索、実験、および組織的な準備を積極的に進めている一方で、分野によって導入の進捗にばらつきがあることを示している。AIに直接関連する最も具体的な事例は、「都市地形の自動モデリング、識別、および被害評価(AMIDA-UT)」である。これは、ポルトガル陸軍が主導する常設軍事協力枠組み(PESCO)プロジェクトであり、ドローンやセンサー、クラウド・コンピューティング、AIを活用して、3D都市モデリング/デジタル・ツイン、構造物の自動識別、および被害評価を行い、意思決定(decision-making)、ターゲティング、機動、部隊防護、ならびに訓練・シミュレーションを支援するものである[48]。
もう一つの例は実験分野であり、陸軍技術実験演習(ARTEX)シリーズは将来の「防衛AI」ソリューションに向けた有益な知見を提供している。この演習は単なる技術の展示にとどまらず、作戦コンセプトの検証、軍事的有用性の評価、そしてイノベーションを実戦配備可能な能力へと転換するプロセスを加速させるためのプラットフォームとしての役割を果たしている。
例えば、「陸軍技術実験演習25(ARTEX25)」では、約30の産業関連企業が、20の無人航空機システム、5台の無人地上車両、2つの対ドローン・システム、6つの指揮・統制(C2)ソリューション、2つのメンテナンス/積層造形ソリューションを含む、50以上の技術ソリューションを試験した[49]。
前述の通り、欧州防衛庁(EDA)の「欧州防衛イノベーション・ハブの運用実験26(HEDI-OPEX26)」キャンペーンを統合した「陸軍技術実験演習26(ARTEX26)」は、マルチドメイン作戦(MDO)環境下でAIを試験するための現実的な作戦環境を提供することで、軍事技術の実証実験における重要なマイルストーンとなっている。最終的には、実戦的な実験(operational experimentation)が、軍事効果、決心の優越(decision superiority)、および多国間協力を強化しつつ、AIの責任ある導入をいかに加速させ得るかを示している。
パートナーシップのレベルにおいて、2024年のEID社とポルトガル陸軍協定(EID/Army protocol)は、近代化された通信システムにAIと拡張現実(AR)を活用し、兵士の認知負荷管理の改善、サイバーセキュリティの強化、および戦場における地形マッピングとリアルタイム情報共有の高度化を図ることを狙いとしており、これらは戦術レベルでAIが実戦配備される具体的な事例である。これらの取り組みは、NATOの「フェデレーテッド・ミッション・ネットワーキング(FMN)」規格と相互運用可能な、デジタル化されたネットワーク中心の戦闘空間を構築するという、より広範な取り組みの一環として位置づけられている[50]。
6.4 空中ドメインと宇宙ドメイン
技術集約型の組織である空軍は、計画的かつ段階的、そして優先順位を明確にした形でAIを導入しており、まずはリスクが低く、価値を引き出せる分野に重点を置いている[51]。当然のことながら、AIは突然の断絶ではなく、継続的な技術進化における新たな一歩と見なされている。
また、限界普及率(critical mass)が縮小したことを受け、空軍は実験的な取り組みを追求するのではなく、専門性の高い国内の国防技術・産業基盤(DTIB)企業との提携を活用しつつ、実戦的な能力の配備に重点を置き、信頼性の高い任務成果の創出を狙っている。
こうした状況において、空軍は、戦略的ビジョンがいかにして本質的にデジタルな新たな作戦能力を迅速に生み出すことができるかを示す明確な事例として挙げられている[52]。特に、現在、空軍が第5の作戦ドメインである宇宙へと任務を拡大していることは、作戦上のAI対応の能力(operational AI-enabled capabilities)を導入する機会を生み出している。
その真の戦略的価値は、合成開口レーダー(SAR)衛星と光学衛星、クラウド・ベースの戦闘ネットワーク、そしてAI対応の分析(AI-enabled analytics)を組み合わせることで、有人・無人双方の軍事アセットに対して、継続的な監視、ターゲット識別、決心支援(decision support)、および誘導を提供することにある。複数の航空・宇宙センサー、AI、そして航空戦闘クラウドを組み合わせたことが、こうしたイニシアティブをポルトガルの防衛にとって変革をもたらす可能性を秘めたものにしている。
国防技術・産業基盤(DTIB)の主要なパートナーシップとしては、宇宙監視・状況認識(SSA)/宇宙監視・追跡(SST)分野および宇宙交通管理向けの人工知能(AI)/機械学習(ML)分野におけるNeuraspace社、衛星運用および宇宙インテリジェンス・監視・偵察(ISR)データ融合分野におけるIceye社とGeosat社、山火事および海洋監視用無人航空機システム分野におけるUAVision社とTekever社、そして人事、兵站、整備向けのデジタル・システム分野におけるOutSystemsなどが挙げられる。
現在、2026年初頭に打ち上げられた2機のIceye社製 合成開口レーダー(SAR)衛星を運用している空軍は、今年10月にさらに2機の合成開口レーダー(SAR)衛星を追加して衛星群を拡充し、2027年初頭にはさらに2機の超高解像度衛星を追加する予定である。最後に、2028年/2029年には4機の合成開口レーダー(SAR)衛星を打ち上げ、観測範囲と再観測頻度の拡大を図る。
ポルトガル空軍の国営衛星の急速な拡充により、大西洋および同国の排他的経済水域において、宇宙を基盤とするインテリジェンスを迅速に収集・活用するポルトガルの能力が大幅に向上するとともに、その他の国内および国際的な防衛・安全保障任務への貢献も促進される[53]。
2024年に設立された空軍宇宙作戦センターは、クラウド接続システムとAIエージェントを活用してAI対応の衛星作戦(AI-enabled satellite operations)を行い、常時の人手による監視の必要性を低減している。さらに、AIツールは衛星画像の分析にも活用されており、高解像度の画像を処理して実用的な情報を抽出したり、変化を検知したり、物体や特徴を特定したり、国境・地域の監視、海洋監視、災害対応を支援したりしている。
同センターはまた、国家および同盟国の衛星や宇宙サービスに影響を及ぼす可能性のある宇宙天気をはじめ、宇宙活動を監視するためのさまざまな能力を活用し、宇宙ドメイン認識(SDA)を担う責任も負っている。
宇宙監視・状況認識(SSA)/宇宙監視・追跡(SST)機能を含む宇宙ドメイン認識(SDA)能力に関しては、ポルトガルの有力な宇宙開発企業であるNeuraspace社[54]との提携について言及しておく価値がある。この提携による最初の運用成果として、2024年にポルトガルのベージャ(Beja)の第11空軍基地にNeuraspace社の光学望遠鏡が設置され、運用が開始された。この望遠鏡は、宇宙監視および複雑なデータを防衛・市民防護に役立つ知見へと変換するための、人工知能(AI)/機械学習(ML)ベースのプラットフォームと連携している[55]。
実用化されている運用アプリケーションに関して言えば、Neuraspace DEF[56]は、AI、地上および軌道上のセンサー、自動化されたデータ分析を組み合わせ、脅威の検知、衛星の追跡、自律的な意思決定(autonomous decision-making)の支援を行うことで、宇宙インフラを防護するようにデザインされた AI 搭載の宇宙防衛プラットフォームである。具体的には、このシステムは宇宙監視データを、軍事的意思決定(military decision-making)に活用できる実用的なインテリジェンス(actionable intelligence)へと変換する。
また、宇宙環境の継続的かつ予測的な監視を可能にし、リスクの早期予測を支援するとともに、重要インフラの防護や作戦計画策定の策定を支える。このAIツールの開発、試験、検証に早期から参画することで、宇宙作戦センターは宇宙監視・状況認識(SSA)/宇宙監視・追跡(SST)に関する責務を果たすだけでなく、AIツールの機能向上に向けたさらなる作戦上の貢献を行うことが可能となる。
また、Neuraspace社は、欧州の宇宙状況認識(SSA)を強化するための「欧州軍事統合宇宙状況認識・識別能力(EMISSARY)」プロジェクト(総額1億6,000万ユーロのコンソーシアム)において、国内コーディネーターとしての役割も担っており、衛星コンステレーションにおける衝突や異常などのリスクを検知・特定するためのAIベースのソリューションを提供している[57]。
こうした状況下で、AIを活用した分析技術が大量の軌道データの処理に活用されており、軍事衛星の防護や、衛星サービスに依存する作戦の支援において、明らかな意義をもたらしている。
運用導入が最終段階にあるその他のAI対応のアプリケーション(AI-enabled applications)としては、Geosat社が開発した「LYNCE OS[58]」が挙げられる。これは、防衛、治安、行政、および商業分野における状況認識(situational awareness)を強化するようにデザインされた、革新的なデュアル・ユース型デジタル・プラットフォームを作り出すことを狙ったものである。同プラットフォームは、空軍と連携して、機密扱いのシナリオを含む軍事用途および民間用途の両方について、パイロット環境下で検証が行われる予定である。
このプラットフォームは、衛星データとその他の情報源を統合し、宇宙、航空、地上、サイバーの各ドメインにわたる状況認識(situational awareness)を提供するとともに、拡張現実(AR)を活用した3Dモデルの可視化を実現する。また、AIベースのツールを用いたシナリオ分析の生成や、物体検出、変化検出、経路分析などのタスクに向けた自動分析アルゴリズムを活用する。その結果、運用ニーズに合わせた製品が提供され、より使いやすく、迅速かつ効率的なインターフェースが実現される。
さらに、世界最大の商用合成開口レーダー(SAR)衛星コンステレーション運用事業者であり、宇宙からの主権的インテリジェンスで欧州をリードするIceye社との提携により、空軍は宇宙インテリジェンス・監視・偵察(ISR)におけるAI対応の能力(AI-enabled capability)を強化することができた[59]。
Iceye社のAIエコシステムは、衛星画像を単なる収集能力から、継続的なインテリジェンスおよび決心支援(decision-support)の能力へと変革する。オペレーターは、単に合成開口レーダー(SAR)画像を受信するだけでなく、自動検出、分類、異常の特定、マルチセンサー融合、予測分析、およびアラート生成へのアクセスを獲得する。
これは、宇宙作戦センターが単なる監視センターから、運用型の宇宙情報ハブへと進化することを直接的に後押しするものである。空軍にとって、Iceye社のAIツールが重要なのは、合成開口レーダー(SAR)画像を生成するからではなく、継続的な宇宙を基盤とするセンシングを自動化されたインテリジェンスに変換し、非識別船舶の迅速な検知、多源データの統合、そして国家およびNATOの作戦に対するほぼリアルタイムの決心支援(decision support)を可能にするからである。
さらに、Iceye社と空軍との提携は、ポルトガルにおける先進的な宇宙技術の構築に向けた長期的な関与の一環として、またリスボンを主権的な宇宙能力を拡大するための卓越した拠点とするため、同社が最近「Iceye Portugal」を設立するという決定を後押しするものだった[60]。
空軍のその他の宇宙関連イニシアティブは地上セグメントに重点を置いており、大西洋コンステレーションの運用を支える重要なデータ保存インフラによって補完され、データや情報の収集、処理、配信、保存におけるセキュリティを確保している。さらに、2026年末までに、ポルトガルのアルヴェルカ(Alverca)に新設される空軍の衛星組立拠点が稼働を開始する予定である。
宇宙エコシステムのバリュー・チェーンを完結させるため、空軍はポルトガルのアゾレス(Azores)諸島に宇宙基地を開設する。これにより、宇宙への安全なアクセスが可能となり、欧州が現在抱えている外部の打ち上げ能力への依存を解消することに寄与する。
これらのイニシアティブは、防衛AIにとって戦略的に重要な意義を持つ。なぜなら、これらは国防、安全保障、環境監視、災害対応の任務を支援すると同時に、国家の決心の優越(decision superiority)、状況認識(situational awareness)、および作戦上の自律性(operational autonomy)を強化するからである。
空軍にとって、これはデータ駆動型かつ宇宙を活用した部隊へと変貌するための大きな一歩であり、持続的なインテリジェンス・監視・偵察(ISR)能力、再観測頻度の向上、ならびに状況認識能力と対応力の強化をもたらすものである。より広く見れば、これによりポルトガルは、作戦上の必要性として独自の宇宙インテリジェンス(sovereign space intelligence)への投資を進める欧州諸国の増加するグループの一員としての地位を確立し、国家のレジリエンス、NATOとの相互運用性、そして将来的なAI対応の宇宙由来データの活用(AI-enabled exploitation of space-derived data)に向けた基盤を強化することになる。
6.5 将来の課題
AI関連への投資(AI-related investment)が大幅に増加しているにもかかわらず、「人」「プロセス」「技術」の各次元において、依然としていくつかの課題が残っている[61]。
何よりも第一に、高度な専門能力を持つ人材の採用と定着である。軍は、AI、データ・サイエンス、サイバーセキュリティ、あるいはソフトウェア・エンジニアリングの専門知識を持つ人材を惹きつけ、育成し、定着させることに苦慮している。
第二に、膨大な資金を効率的かつ期限内に作戦能力へと転換する能力である。
第三に、「技術の断片化」という課題である。各軍種が独自に発展しているため、デジタル・サイロ化のリスクが生じている。
ここ数年、ポルトガル軍において、デジタル変革は戦略的な目標から、作戦上の現実へと進化を遂げてきた[62]。現在、NATOおよびEUとの戦略的な連携が強く、かつてないほどの財政的資源が確保されており、すべての軍種においてデジタル能力の具体的な導入が進められている。
しかし、成功の決定的な要因はもはや資金や技術ではない。重要な課題は、一貫性のあるガバナンスの枠組み、共通のデータ・アーキテクチャ、相互運用可能なデジタル・エコシステム、そして2030年までに各軍種レベルでの数々の成功事例を、一貫性があり、相互運用可能で、データ中心かつマルチドメインな戦力へと変革できる、全軍を網羅するデジタル変革/AI戦略を構築することである。
ポルトガルの防衛分野におけるAIは、まだ初期段階にあるが、戦略的な計画策定とガバナンスを伴えば、拡大可能な具体的な活用事例、パイロット・プロジェクト、およびニッチな作戦能力が存在する。孤立した実験から、NATOやEUの枠組みに沿った一貫性のある「防衛AI」能力のポートフォリオへの移行を通じて、さらなる進化が実現できる。
7 防衛AIの訓練
7.1 公共部門の訓練とより広範なエコシステム
ポルトガルのAI戦略とデジタル・スキル育成プログラムは、AIリテラシーのための幅広い基盤を築くものであり、2030年までに200万人の国民に基礎的および高度なデジタル・スキルを習得させることを狙いとしている。AI関連のスキル(AI-related skills)は重点分野として明確に挙げられており、AIツールを効果的に活用し、スキル・ギャップを回避するためには、安全保障や防衛を含むあらゆる分野にわたる人材育成が重要であると強調されている[63]。
このように、こうしたプログラムは、軍、防衛産業、サイバー関連機関がAIシステムを扱える人材を採用できるより広範な人材プールを生み出し、学術界、企業、公共部門の三者間の連携を強化するものである。
7.2 ポルトガル軍におけるスキルと文化
ポルトガル政府および軍の上層部は、革新的な技術、とりわけAIの導入の重要性を認識している。防衛分野におけるAIに関しては、これは、AI対応の指揮・統制・通信・コンピュータ・インテリジェンス・監視・偵察(AI-enabled C4ISR)やAI対応のサイバー・ツール(AI-enabled cyber tools)からの出力を管理・解釈し、自律型および半自律型システムを運用・監督し、さらにソフトウェア・エンジニア、データ・サイエンティスト、軍事オペレーターなどが参加する学際的なチームの一員として活動できる人材への需要が高まっていることを意味する。
防衛分野においては、軍人および文民職員を対象とした、完全に公開された詳細な「AIリテラシー」プログラムは存在しないが、AIやデータ駆動型のトピックは、イノベーションのイニシアティブ、作戦能力、高度な訓練、および多国籍演習に組み込まれており、これはポルトガル軍がすでに同盟レベルでAI対応の訓練と試験環境(AI-enabled training and testing environments)に触れていることを示している。
7.3 専門性を促進するためのAI強化型訓練
軍事教育
陸軍士官学校での初期の技術教育を基盤として、陸軍大学研究所は、AIやマルチドメイン作戦(MDO)に重点を置きつつ、新興技術をめぐる法学、倫理学、指揮、訓練、および博士課程の研究を結びつけるエコシステムを構築する、いくつかの教育・訓練イニシアティブを推進している。
これらのイニシアティブは、伝統的ドクトリンの枠を超え、現代の作戦の現実を踏まえた形で、専門的な軍事教育を変革している。当研究所は、AI、武力紛争法、および指揮・統制(C2)のテーマを結びつけることで、技術が意思決定(decision-making)、法令遵守、および作戦上の有効性にどのような影響を与えるかについて、将校たちが考察できるよう支援している。
さらに、これらは階級や軍種を越えた共通の知的枠組みを構築するものである。「上級将校昇進課程」や「統合参謀課程」などの課程に組み込まれたセミナーを通じて、AIがニッチなテーマとして扱われることなく、軍事のリーダーシップや計画策定における中核的な能力として位置づけられるようになっている。博士課程レベルでは、「軍事科学」の課程において、この取り組みが研究、ドクトリン、および組織的な学習を強化している。
このような枠組みは、将校や研究者がAIを単なる技術的な問題ではなく、戦力開発上の課題として検討するよう促すものであり、これにより、軍はマルチドメイン作戦(MDO)や倫理的制約、将来の指揮上の課題に備えることができる。全体として、専門的な軍事教育におけるその価値は、新興技術を法的・倫理的・作戦上の判断と統合できる指導者を育成することにある。この組み合わせは、技術的に信頼性が高く、かつドクトリン的にも確固たる部隊を整備するために不可欠である。
マルチドメイン作戦(MDO)の観点から見ると、最大のリスクはAI技術の不足ではなく、訓練の断片化である。軍種レベルでのイノベーションはスピードを生み出す一方で、組織的に統合されなければ断片化を招く恐れもある。したがって、今後5年間におけるポルトガルの防衛変革における最重要課題の一つは、共通のマルチドメイン決心環境においてAIと連携して行動できるよう、全軍種の指揮官および参謀を育成することである。
7.4 軍種レベルのAI訓練
陸軍のAI戦略では、人的資本の育成に向けて、「能力(competencies)」と「文化(culture)」という2つの目標を掲げている。同戦略では、AIおよびデータに関するモジュール式の研修プログラムの導入、基礎・上級訓練および昇進課程へのAI、倫理、デジタル変革に関する内容の組み込み、作戦および行政の場面におけるAIの価値を実証するための啓発活動、ワークショップ、演習、ゲームの実施、ならびに主要部隊や局におけるAI担当者の選定を通じて、活用事例やベスト・プラクティスの普及を推進することを想定している。
これらの措置は、部隊全体に「共知能(co-intelligence)」の文化を醸成することを狙いとしている。そこでは、指揮官や参謀がAIに何ができるか、何ができないかを理解し、技術専門家が過酷な環境下でAIシステムをデザイン・運用・保守するスキルを備えている。
空軍の訓練計画は、AIリテラシーを備えた部隊、AI対応の指導者(AI-enabled leaders)、そして組織全体でAIソリューションを安全に運用・監督・開発できるAI専門家を育成することを狙いとしている。この計画は3つのレベルで構成されている。全要員を対象とした基礎的なAIリテラシー研修では、AIの能力、限界、リスク、倫理、および責任ある利用に関する理解を深める。
オペレーターおよび管理職を対象とした機能別訓練で、決心支援(decision support)、管理、兵站、インテリジェンス、作戦におけるAIツールの実践的な活用に焦点を当てている。また、専門家や指導者を対象とした上級研修では、AIガバナンス、データ活用、高度な分析、機械学習(ML)、およびマルチドメイン作戦(MDO)へのAI統合について取り上げる。
また、この戦略では、AIを指揮・参謀、計画策定、リーダーシップに関する課程に組み込むこと、AI能力に関する内部認定制度の導入、各部隊におけるAIイノベーション推進担当者の配置、ならびに実験、演習、学術界、産業界との連携、および教訓の活用を通じた継続的な学習も想定されている。
その到達目標は、すべての航空要員がAIを責任を持って活用できるようになり、すべての指導者がAIを活用してより良い決心を行えるようになり、そして中核となる専門家グループが、航空・宇宙作戦のためのAI対応の能力(AI-enabled capabilities)を構築・管理できるようにすることである。
海軍の戦略目標では、デジタル変革と技術的イノベーションを加速させる必要性を優先課題として位置付けており、特にAIや無人システムに重点を置いている。
基礎的な訓練プログラムに加え、海軍は、「海洋無人システムを用いたロボット実験・プロトタイピング(REPMUS)」や「シリコン・セーラー」プロジェクトといった主要なAI実験および能力開発イニシアティブから生じる訓練要件に重点を置く。これらの要件は、多目的海軍プラットフォームやイタリア製のFREMM EVOフリゲート艦など、現在進行中の先進的な海軍兵器システムの導入によって、さらに強化されている。
これらのプロジェクトにはAI要素が大幅に組み込まれていることから、AI関連の教育(AI-related education)、AI関連の研修(AI-related training)、およびAI関連の労働力開発(AI-related workforce development)の取り組みを加速させる重要な原動力となることが期待されている。
高度な軍事能力の導入は、AIの訓練を強化する。なぜなら、それによって専門的なスキルの開発を促進する実際の作戦上の要件が生まれると同時に、訓練、実験、検証のための実戦的な環境が提供されるため、AIを単なる一般的な技術的課題から、任務遂行に不可欠な軍事的能力へと変革するからである。
軍種レベルにおいては、海軍が主導する「海洋無人システムを用いたロボット実験・プロトタイピング(REPMUS)」および「北大西洋防衛イノベーション・アクセラレーター(DIANA)」の試験では、乗組員やオペレーターに対し、自律型およびAI対応のシステム(AI-enabled systems)の計画策定、展開、監督に関する訓練が求められている一方、陸軍の「陸軍技術実験演習(ARTEX)」演習では、AI強化型のソリューション(AI-enhanced solutions)を理解し運用するための習熟訓練が行われている。
さらに、空軍の宇宙作戦能力においては、AI対応の宇宙作戦(AI-enabled space operations)という新たなパラダイムに備えるため、要員に対する専門的なAI訓練が必要とされている。将来の運用担当者は、衛星ミッション管理、宇宙ドメイン認識(SDA)、合成開口レーダー(SAR)データの活用、マルチモーダル・データ融合、予測分析、およびAIに支援されたインテリジェンスの成果物に関する専門知識を必要とするだろう。
そのためには、技術的な熟練度だけでなく、AIシステムを監督し、その限界に挑戦し、効果的に連携する能力を養う、段階的な研修体制が求められる。そうすることで、作戦上の意思決定(operational decision-making)において人間の判断が中心的な役割を果たし続けることが保証される。
さらに、ポルトガルにはすでに、特に空軍(F-16およびKC-390の戦術飛行シミュレータ)、陸軍のシミュレーションセンター、および防衛産業において、信頼性の高いシミュレーションおよび合成訓練のエコシステムが整備されている。現在、活動の大部分は「ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)」訓練、モデリングおよびシミュレーション、デジタル・ツイン、没入型技術(仮想現実および拡張現実)、ならびに実験に集中しており、AIは独立した訓練領域というよりも、むしろ基盤となるレイヤーとしてますます認識されるようになっている。
しかし、従来型のシミュレーションからAI対応のシミュレーション・ベースの訓練(AI-enabled simulation-based training)への移行は、依然として初期段階にある。ポルトガルの比較優位性は、現時点ではAIそのものではなく、AIを活用した軍事訓練の基盤となり得る、シミュレーション、実験、デジタル・ツイン、宇宙能力、および「ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)」環境からなる、成長を続けるエコシステムにある。
7.5 防衛分野におけるAIが訓練要件に与える影響
AIが真に付加価値をもたらし得る分野、例えば大量のデータの分析などにおいては、しばしば懐疑的な見方がされる一方で、AIが本質的に脆弱なままである分野、すなわち複雑な道徳的、倫理的、あるいは法的な意思決定(decision-making)においては、過度な信頼が寄せられている。このパラドックスは、技術的な訓練と同様に極めて重要な、批判的かつ倫理的な教育の重要性を浮き彫りにしている。
防衛分野におけるAIの導入により、データ分析、サイバー防衛、自律システムの作戦のスキルを持った人材に対する需要が大幅に高まっている。さらに、AI強化型のシミュレーション(AI-enhanced simulations)、適応型学習プラットフォーム(adaptive learning platforms)、より現実的な「ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)」環境など、新たな形態の訓練が可能になる。こうした進化に伴い、技術的なスキルだけでなく、こうした複合領域においてどのように作戦し、どのように闘うかに関するドクトリンや倫理に関する訓練も必要となるだろう。
軍向けの具体的な「AIへの信頼(trust in AI)」に関する訓練プログラムは公表されていないものの、信頼性の高いAIに関する広範なEUやNATOのイニシアティブに加え、「北大西洋防衛イノベーション・アクセラレーター(DIANA)」や「AI Factories」におけるポルトガルの役割を通じて、AIシステムには説明可能性とガバナンスが不可欠であるという原則が定着しており、これが間接的に、訓練やドクトリンにおけるヒューマン・マシン・チーミングへの取り組み方に影響を与えている。
さらに、軍事大学研究所によるいくつかの研究やセミナーでは、責任ある利用、国際法および同盟の価値観の尊重、ならびに作戦環境におけるAIの行動に関する検証可能な基準の必要性が強調されている[64]。
ポルトガルは、強固な規範的・倫理的基盤と活発な学術的議論を有している。しかし、これらの原則を、軍事作戦、兵器システム、指揮・統制(C2)、および軍事データ管理におけるAIの利用を規定する具体的な指針へと落とし込むことのできる公式のドクトリン文書は、依然として欠如している。
ポルトガルの防衛分野におけるAIへのアプローチは、NATOおよびEU加盟国の中でも独特なモデルを反映している。すなわち、中央政府による大規模な資金提供を伴うAI近代化プログラムを推進するのではなく、デジタル変革、多国間協力、実戦的な実験(operational experimentation)、および各軍種レベルでのイノベーションを通じて、AIを段階的に統合してきた。
その結果、「防衛AI」のエコシステムが形成されつつあり、その成熟度はまだ初期段階にあるものの、ポルトガルが同盟国の防衛イノベーションにおいて重要な役割を果たす立場にあることを示すいくつかの特徴がすでに現れている。
本研究は、ポルトガルにはまだ包括的な「防衛AI戦略」が存在しないことを示している。とはいえ、単一の包括的な文書が存在しないからといって、進展がないと誤解してはならない。ポルトガル国防省(MND)、統合参謀本部、および3つの軍種全体において、ガバナンスの枠組み、実験活動、作戦能力、産業界との連携、および訓練プログラムの各分野で、AI関連のイニシアティブ(AI-related initiatives)がますます顕著になってきている。
陸軍、空軍、海軍は、責任あるAI、相互運用性、および人間の監督に関するNATOやEUの広範な原則に沿いながらも、それぞれの作戦上の実情に合わせたアプローチを採用している。
ポルトガルの経験からは、いくつかの重要な教訓が導き出される。
第一に、防衛分野におけるAIは、技術的な課題となる以前に、根本的にはガバナンスとデータに関する課題である。本研究を通じて、AI導入(AI adoption)を成功させるには、信頼性の高いデータ、安全なインフラ、相互運用可能なアーキテクチャ、サイバー・レジリエンス、そして明確な説明責任の仕組みが常に不可欠であることが明らかになった。
第二に、実験はポルトガルの主要な戦略的優位性となっている。「海洋無人システムを用いたロボット実験・プロトタイピング(REPMUS)」、「陸軍技術実験演習(ARTEX)」、「北大西洋防衛イノベーション・アクセラレーター(DIANA)」、「連合軍戦士相互運用演習(CWIX)」といったイニシアティブは、運用試験環境がいかにして学習を加速させ、技術的リスクを低減し、新興技術を軍事能力へと転換するための道筋を築くかを示している。
第三に、AIの最も差し迫った軍事的価値は、自律型兵器システムではなく、決心の優越(decision superiority)にある。ポルトガルで最も成熟している活用事例としては、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)情報の活用、知識管理(knowledge management)、サイバー防衛、予知保全、宇宙作戦、そして人間の意思決定(human decision-making)のスピードと質を向上させる決心支援システム(decision-support systems)などが挙げられる。
また、この研究では、防衛用AIの「デュアル・ユース」的な本質がますます強まっていることも明らかになっている。ポルトガルの軍事AIの発展を牽引している技術の多くは、デジタル・インフラ、スーパーコンピューティング、クラウド・サービス、宇宙技術、大規模言語モデル(LLM)などに対する、より広範な国家レベルの投資に端を発している。
いくつかの主要な国防技術・産業基盤(DTIB)企業との提携は、将来の軍事能力が、国のイノベーション・エコシステムの活力と密接に結びついていることを示している。この意味で、ポルトガルのアプローチは、軍事的優位性がもはや伝統的な防衛構造内だけで生み出されるものではなく、防衛機関、学術界、産業界、そして多国間の枠組み間の相互作用からますます生み出されるようになっていることを暗に認めている。
今後、ポルトガルの「防衛AI」の進化を形作る要因として、いくつかの展開が考えられる。中でも最も重要なのは、現在分散しているイニシアティブを一貫性のある枠組みに統合できる「国家防衛AI戦略」が最終的に策定されることだろう。
このような戦略により、共通の優先事項、ガバナンスの仕組み、倫理基準、能力目標、および実施のマイルストーンを確立することができる。これと密接に関連するのが、軍全体にわたる認証、検証、リスク管理、および責任ある利用を監督できる、国防総省全体を網羅する専用のAIガバナンス構造の必要性である。
作戦面において、ポルトガルは、すでに比較優位性を有している分野において、AI対応の能力(AI-enabled capabilities)を拡大する上で有利な立場にあるようだ。自国の衛星能力とAIを活用した分析技術に支えられた宇宙ベースのインテリジェンス・監視・偵察(ISR)は、戦略的に最も重要な分野の一つとなる可能性がある。
同様に、自律システム、海洋実験、サイバー防衛、およびマルチドメイン指揮・統制(C2)アーキテクチャへの継続的な投資は、同盟国における実験と統合の拠点としてのポルトガルの役割をさらに強化するものと見られる。
ポルトガルは、包括的なAIエコシステムの開発において大国と競うよりも、ニッチな能力、実戦的な実験(operational experimentation)、相互運用性、そして新興技術を連合作戦に迅速に統合することに注力することで、より大きな戦略的意義を発揮できるかもしれない。
こうした進展にもかかわらず、いくつかの重要な課題は依然として未解決のままである。
第一はガバナンスに関する課題である。「防衛AI」に関する専用の戦略が存在しない場合、基準、監督メカニズム、および認証プロセスの策定は、どの機関が担当すべきだろうか?
第二は、作戦上の運用に関する課題である。さまざまな種類のAI対応のシステム(AI-enabled systems)において、どのように有意義な人間の管理を実施すべきか、また、そうしたシステムが運用に十分な信頼性を備えているかどうかを判断する基準はどのようなものであるべきか、という点が挙げられる。
第三は、相互運用性と統合に関する課題である。すなわち、軍は、各軍種レベルでのイノベーションに必要な柔軟性を維持しつつ、技術の分断をどのように回避できるか、ということである。
人的資本もまた、大きな課題の一つである。AI、データ・サイエンス、サイバーセキュリティ、ソフトウェア・エンジニアリングの各分野における専門家を採用し、育成し、定着させる能力の有無が、現在の投資を作戦能力へと結びつけられるかどうかを左右することになる。
同様に重要なのは、AIの持つ可能性と限界の両方を理解できる軍事指導者を育成することである。将来の指揮官には、技術的な知識だけでなく、法的・倫理的・戦略的な判断力を維持しつつ、AI対応のシステム(AI-enabled systems)をドクトリン、作戦、意思決定(decision-making)に統合する能力が求められるだろう。
最後に、技術的主権と同盟体制への統合という課題は、今後もポルトガルの選択を左右し続けるだろう。ポルトガルがAIのあらゆる分野において自律性を達成することは、現実的には不可能である。したがって、戦略的な課題は、どの能力を主権的な管理下に置くべきか、またどの能力をNATOやEU、さらにはより広範な防衛イノベーション・エコシステム内でのパートナーシップを通じて開発できるかを特定することにある。最先端技術へのアクセスと、レジリエンス、安全保障、国家の自律性とのバランスをどう取るかは、今後10年間を通じて決定的な課題であり続けるだろう。
結局のところ、ポルトガルの事例は、防衛分野におけるAIの価値が、個別の技術的ブレークスルーよりも、人、プロセス、ガバナンス、データ、そして作戦上の目標をうまく整合させることにかかっていることを示している。
今日のポルトガルの最大の強みは、AI対応の軍事システム(AI-enabled military systems)の大規模な配備ではなく、NATOやEU内で信頼される実験・統合・イノベーションの拠点(hub)としての役割が拡大している点にある。したがって、今後数年間における決定的な課題は、ポルトガルがAIを導入するかどうかではなく、2030年以降に向けて、多様な有望なイニシアティブを、持続可能な軍事的優位性を生み出し、国家のレジリエンスを強化し、同盟国の安全保障に有意義に貢献できる、首尾一貫した「防衛AI」エコシステムへと変革できるかどうかにある。
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[16] Marcela, “Domestic companies to get 5% of European defence fund spending”; “European Defence Fund: 2025 Work Programme.”
[17] For more, see: https://criticalsoftware.com/en (last accessed14 August 2026).
[18] “Portugal: Domestic AI to be used in European missile system.”
[19] For more, see: https://www.startcampus.pt/, (last accessed 14 August 2026).
[20] “Supercomputador europeu otimizado para inteligência artificial com envolvimento português.”
[21] Schepen, “Damen’s construction of Portuguese drone carrier progresses.”
[22] “Navy inaugurates projects within the scope of the Recovery and Resilience Plan.”
[23] Marcela, “Marinha usa IA Amália e investe cerca de ummilhão em Marinheiro de Silício.”
[24] For more, see: http://ia.gov.pt/amalia (last accessed 14 August 2026).
[25] “Portugal vai conceber e construer o primeiro avião e sete satélites, avança Castro Almeida.”
[26] “As Agendas Mobilizadoras contratualizadas para o Cluster AED.”
[27] For more, see: https://arx.tekever.com (last accessed 14 August 2026).
[28] For more, see: https://www.tekever.com/ (last accessed 14 August 2026).
[29] For more, see: https://www.newspaceportugal.org/en (last accessed 14 August 2026).
[30] “WP3 Atlantic Constellation.”
[31] Batalha, “WP10.”
[32] Fernandes, “Inteligência artificial redefine indústria de defesa portuguesa.”
[33] Francisco, “Inteligência Artificial na Defesa Nacional – Componente Gestão.”
[34] Plano de Ação para a Transformação Digital no Estado-Maior-General das Forças Armadas 2025-2030.
[35] Defesa Nacional, “Enquadramento da Ciberdefesa.”
[36] Estratégia para a Inteligência Artificial no Exército. Período 2026-2029.
[37] “Portuguese Air Force: ”Estratégia para a integração da Inteligência Artificial na Força Aérea Portuguesa 2026-2030.
[38] Diretiva 07/CEMA/2024, “Tecnologias Emergentes Disruptivas;” Diretiva 16/CEMA/2024, “Diretiva de Dados da Marinha.”
[39] National Artificial Intelligence Agenda.
[40] “Portugal invests €400,000 in AI.”
[41] “Portugal contributes to €129 million European Union investment in strengthening AI supercomputing with MareNostrum 5.”
[42] “Portugal participates in one of Europe’s first Artificial Intelligence factories”; Carvalho, “Microsoft to invest more than $10 billion in AI infrastructure in Portugal.”
[43] Marcela, “Domestic companies to get 5% of European defence fund spending.”
[44] “Defence investment programme will have an autonomous oversight structure.
[45] Esteves, (Coord.), Inteligência Artificial: Estudos Pioneiros em Contexto Militar.
[46] Correia, “A transformação digital nas Forças Armadas Portuguesas: Revisão em 2026.”
[47] Monteiro, As áreas funcionais do Exército 2025.
[48] “Automated Modelling, Identification and Damage Assessment of Urban Terrain.”
[49] “Chega ao fim o ARTEX 25.”
[50] “EID and Portuguese Army sign cooperation protocol to future-proof communications systems.”
[51] Fernandes, “Inteligência artificial redefine indústria de defesa portuguesa.”
[52] Correia, “A transformação digital nas Forças Armadas Portuguesas: Revisão em 2026.”
[53] “Portugal acquires two additional ICEYE SAR satellites to scale sovereign intelligence from space.”
[54] For more, see: https://www.neuraspace.com/ (last accessed 14 August 2026).
[55] “Neuraspace inaugurates its first fully operational optical telescope.”
[56] “NeuraspaceDEF.”
[57] “Neuraspace strengthens Europe’s space situational awareness (SSA) with EMISSARY project participation.”
[58] “Projetos PRR – LynceOS-Dual.”
[59] “Dark Vessels in Northern Europe – and how ICEYE’s satellites find them.”
[60] “ICEYE establishes ICEYE Portugal and Lisbon center of excellence to scale sovereign space capability.”
[61] Correia, “A transformação digital nas Forças Armadas Portuguesas: Revisão em 2026.”
[62] Correia, “A transformação digital nas Forças Armadas Portuguesas: Revisão em 2026.”
[63] Pacto de Competências Digitais.
[64] Esteves, Inteligência Artificial: Estudos Pioneiros em Contexto Militar.



