米国上院は、2020会計年度国防権限法を可決

掲載:2019年6月29日
作成:フォーキャストインターナショナル(FI)社
投稿:Shaun McDougall FI社アナリスト
(この論評は米国人のアナリストが米国内に向けて出したブログです)

Senate Passes FY20 Defense Authorization Bill  June 28, 2019 – by Shaun McDougall
米国上院は、22020会計年度国防権限法を可決


米国上院は、6月27日に2020会計年度の国家安全保障に関する権限法案を超党派の投票を得て86-8で可決した。
上院議会が可決した権限法案は、国防総省のプログラムやエネルギー省の国家安全保障活動を含む国防プログラムのために合計7,500億ドルを支持している。
国家安全保障関連予算総額の数字は、大統領の2020会計年度予算要求に一致する。
下院案の2020会計年度国防権限法案は7,330億ドルで、大統領が要求を7,500億ドルに引き上げる前にホワイトハウスによって当初計画されていたレベルである。

下院軍事委員会の委員であるマック・ソーンベリー(共和党-テキサス選出)は、 7,500億ドルの予算総額に達するために170億ドルの追加資金を投入するという修正案を提案したが、この修正案は委員会によって採択されなかった。
下院と上院の法案の相違は、両院協議会の合意で修正される必要がある。

同様の戦いは実際にペンタゴンが定められた年度に支払うことができる金額を決定する予算プロセスの歳出面[1]でも起こってくる。

法律は現在予算管理法の支出制限を超えているという事実にもかかわらず、下院はすでに2020会計年度の国防予算の歳出法案を可決した。
上院の歳出委員会は、国防予算の歳出法案の上院案を発表していないが、立法は、議会の承認法案と同様に7,500億ドルの上限に達すると予想されている。
繰り返しになるが、歳出法案の間の170億ドルの相違は、会議で解決する必要がある。

上院軍事委員会は、国防権限法案の委員会案に関する以下のハイライトを発表した。

法案は:

・10年間で最大215万人の制服軍人に対して3.1%の昇給を用意
・軍の家族の生活品質向上のため軍用住宅民営化イニシアチブを改革
・米軍の戦闘力のアドバンテージ維持のために戦闘艦、戦闘機、その他の装備への重要な投資を承認。
・安全で、信頼性ある核抑止を維持
・戦略的競争への対応のための米国の同盟国やパートナー国への支援
・空軍の下に米国宇宙軍の創設
・AI、極超高速兵器等米国の軍事技術及び戦力の近代化
・国防総省のサイバーサイバーセキュリティ戦略の推進及び米国のサイバー戦闘能力への積極的取り組み

今週の上院では、93の超党派的な修正を含む代替修正が採択された。
これらの修正には以下が含まれている。:

・情報に関する権限法
・連邦海事局権限法案
・フェンタニル[2]制裁法、これは合成オピオイドの往来を故意に促進し参加する中国および金融機関からの製薬会社に対する制裁措置を追加し、外国のオピオイド往来に対抗するための追加の資金と資金を承認するもの。
・1983年の海兵隊兵舎の被爆者の家族への現在クリアストリーム(注:国際決済機関)が保有しているイランの資金で16.8億ドルにアクセスすることを認める修正[3]
・既存の契約を除く、特定の国営企業からの鉄道車両およびバスの購入を禁止する修正
・ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質(PFAS)に関連するリスクと課題に対処するための修正
・米軍の自衛権を保護する修正
・トルコがロシアからS-400防空システムの供給を受けるべきではないという議会意思表明の修正
・北朝鮮の核および弾道ミサイル計画を停止するために制裁を使用すべきであるという議会の意思を表明する2019年の北朝鮮法を含むOtto Warmbier[4]銀行規制
・プルトニウムピット生産能力の拡大を支援する修正
・香港当局に対し、香港の離脱法案の撤回を要請し、香港における人権を侵害する者に対する金融制裁を認める修正
・悲惨な怪我、または死亡した軍人の配偶者が施設および車両のリースを解約することを認める軍の民事救済法の改正
・アメリカとロシアの間の軍事協力の制限を拡大する修正
・航空労働力開発を改善するための修正
・ロシアと中国の悪意のある影響に対抗するために最新の戦略を要求するための修正
・炭素利用と直接空気回収研究を支持する革新的技術による大量排出の利用法(USE IT法)
・米国のレアアースミネラルの海外供給源への依存を減らすことを支援するための修正
・電磁パルスおよび地磁気擾乱のための準備、対応及び回復への対処に関する修正
・他の連邦機関が、退役軍人が職業訓練につくSkillbridgeプログラムに参加することを承認する修正
・軍隊のメンバーが海外での不在者投票を支援する2件の修正
・米国の防衛サプライチェーンの安全性を確保するために国防生産法を強化する2件の修正

(黒豆芝)


[1]米国の予算は、裁量的経費(discretionary spending)と義務的経費(mandatory spending)に分かれており、裁量的経費は、議会によって毎年可決される歳出法案(appropriation bill)の中でその金額が決められており、2010年度は12本の歳出法案として纏められ、先日下院を通過している。これに対して義務的経費は、毎年の支出法案の審議でその金額が決められるものでは無く、現存する権限法(authorization act)によってその金額が決められている。更に歳出については、歳出権限(budget authority)によって多年度に亘る予算の各年度の歳出限度が決められており、議会の予算審議の対象として審議される。
[2] 鎮痛、疼痛緩和の目的で使用される合成オピオイド
[3]本事件は、イランとシリアに支援されて最終的にヒズボラが画策したとされ、2016年4月、米国最高裁判所は、米国で保有しているイラン中央銀行の凍結資産を被害者の家族に補償金の支払いに使用することができると判決している。
[4] 北朝鮮に拘束されて帰国直後に死亡した米大学生、オットー・ワームビアさんの名を冠している。