日本、新しい装甲兵員輸送車の候補者揃う

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掲載:2019年9月24日
作成:フォーキャストインターナショナル(FI)社
投稿:Thomas Dolzall FI社アナリスト
(この論評は米国人のアナリストが米国内に向けて出したブログです)

Japan Lines Up Contenders for Its New Armored Personnel Carrier  September 24, 2019 by Thomas Dolzall
日本、新しい装甲兵員輸送車の候補揃う

GDLS Light Armored Vehicle (LAV) 6.0.  Image: General Dynamics Land Systems-Canada
GDLS軽装甲車両(LAV)6.0。画像:General Dynamics Land Systems-Canada

9月10日、日本の防衛省の防衛装備庁(ATLA)は、国産の老朽化した96式8×8装輪装甲車(APC)全車両の後継の最終候補に3社を選定したと発表した。

公表されたところによると、日本政府は来年中に、フィンランドの国防産業のパトリア社から提供される装甲モジュラー車XP(AMVXP)、ゼネラルダイナミクス・ランドシステムズ(GDLS)社の軽装甲車6.0(LAV)、三菱重工業の国内で設計および製造し、詳細が明らかになっていない8×8 APCモデルの取得のフィジビリティ評価に進むとしている。
その新しい発表は、自衛隊の装輪装甲車・APC調達の取り組みの事情に新たな光をあてることとなった。-それは、2018年初頭に国内開発の車輪付き装甲車(改良型)が予期しない中止の後、ほぼ休眠状態に後退していた。-日本の機械化された部隊構造の将来の構成に重要な意味をもたらすものである。

何十年もの間、陸上自衛隊は、自国の防衛産業が設計および製造した地上車両にほぼ排他的に依存してきた。
第二次世界大戦の終結後の数年間、新しい日本政府は、国家主導の産業投資と輸入代替政策の実施を通じて、国の製造基盤を再構築し、経済的な自主性を達成しようとした。
日本の1947年の憲法の規定は、戦後の軍隊の役割を領土自衛の1つに厳密に制限し、その後の法律も同様に、国が国際的な武器輸出を追求することを事実上禁止した。
にもかかわらず、国防産業基盤の再構築は、戦略的な理由から日本政府による価値ある投資と判断され、同様に国内企業に堅牢な工業製造基盤を育成し、将来的に高度なシステムとテクノロジーを開発するために必要な専門知識の基礎を生成する機会を提供する手段とされた。

多くの初期設計は、より以前の世代の米国車両プラットフォームから重要な設計のインスピレーションを引き出す傾向にあったが、1980年代までに日本の防衛産業は、欧米と同等な技術的に洗練された国産の地上車両システムを生産し、陸上自衛隊は、圧倒的に国内のプラットフォームで構成される機械化された部隊構造を展開してきた。

1996年、陸上自衛隊は96式 8×8装輪APCを実用車両として導入した。
小松製作所が設計・製造した96式は、冷戦後期および直後における設計哲学と戦術上の優先事項を反映していた。
これらの教義のもとで装輪装甲車両に割り当てられた主要な運用機能は、軍隊輸送の機能であり、より堅牢に装備された画期的な部隊をサポートする歩兵部隊の行動に迅速な機動性と展開能力を提供することである。

しかしながら、1990年代後半のいわゆる新しい戦争の非正規な戦闘環境への展開や、その後の9/11テロ攻撃に続く年のアフガニスタンとイラクの戦場での各国の軍隊によって集められた経験は、現在の時代の装輪装甲車の設計に成功するために必要な仕様を幅広く再評価するための強力な推進力となった。
安価ではあるが致死性の高い即製爆弾(IED)と対戦車誘導ミサイル(ATGM)の出現と普及により、より伝統的なAPC設計が現代の戦場で受け入れられない事が多くなってきた。
非戦闘作戦という形での日本軍の限られた海外でのコミットメントは、96式の明確な生存性の不足を早期に修正する必要を沈静化させた。

しかし、2010年代に防衛省は代替品を探す時期が来たと結論付け、2014年に装輪式装甲車(改良型)プログラムを開始した。
このプログラムの下での開発は、小松製作所によって再び主導され、防衛装備庁と緊密に連携した。
その新しいプラットフォームは、96式の設計と同じ従来の戦闘任務プロファイルを中心としたものだったが、従来の物よりも遥かに広範囲な運用環境と形態での大幅な生存性の改善とモジュール型の可能性を統合する態勢が整っていた。
防衛省の仕様は、このプログラムがゼネラルダイナミクスヨーロッパのランドシステム社のピラニア Vシリーズなどの成功した同等のプラットフォームからデザインの影響を受けたことを示している。

2017年1月、装輪装甲車(改良型)の最初のプロトタイプが公開された。
新しいプラットフォームは、その年の残りの期間にわたって、重大な開発上の厄介な問題無しに、試作および試験プロセスの初期段階を順調に進めているように見えた。
しかし、4月に、防衛装備庁は、枢動弾道試験における車両の一貫した性能不足のために、プラットフォームの着手日程を少なくとも1年遅らせる必要があることを明らかにした。

プログラムの開発コストが当初の予測を大きく上回り始め、防衛省が当初設定した2020年の目標をはるかに超えたて新プラットフォームの連続生産の着手日程が予想されたため、そのわずか数か月後、装輪装甲車(改良型)プログラムを完全にキャンセルするという決定が下された。
96式の運用ライフサイクルをさらに延長する手段を見つけるか、国外設計のAPCの大規模な調達またはライセンス生産のオプションを調査するかのいずれかの見通しに直面して、日本の防衛省は最後に、国内の装輪APCの戦闘能力の近代化に対する迫り来る機微な時間的要求を考慮して、調査することを選択した。

2019年初頭、コマツ製作所は、高い開発コスト、わずかな利益率、および装甲車両の(改善)プログラムの失敗を取り巻く種々の状況を理由に、既存の契約の履行以外の装甲車両ビジネスへの参加を中止すると発表した。

陸上自衛隊は近年、主に部隊構造内の特殊な機能を果たすために、特性の量の外国製の装甲の多くの調達を選択することを追求してきた。

このタイプの調達には、新編された特殊任務部隊の基礎を形成することを目的としたAAV7A1水陸両用車の調達、およびこれまでにはないセキュリティ環境での平和維持活動への展開のための8両のブッシュマスター防護機動車の調達が含まれる。
それにも関わらず、装輪装甲車(改良型)プログラムの失敗に起因する独特な課題の状況は、長年に渡る最初の大規模な非国産陸上車両プラットフォーム調達への扉(注:自衛隊による排他的な陸上車両プラットフォームへの)を不用意に開いてしまった可能性がある。
防衛省によって最終選考された3種の車両は、陸上自衛隊の緊急の戦略的要求をタイムリーに満たそうとするのと同時に、予算制限と国内での生産製品に関する制度的優先度の調整する政策立案者のための妥協点を提示している。

小松プログラムの失敗後の初期の報道は、防衛省がARTEC社のボクサープログラムへの参加に関心を示していたとしていたが、ボクサープログラムが最終コンペに参加していないことから、その車両の高単価や戦闘重量(30トンを超える)が日本の要求に適さないと判断された可能性がある。
そのコンペが、MHIの提供するもの以外のオプションを選択した場合、日本の防衛省がどの調達モデルを選択するかについては未定の状態であり、オプションは、完成品輸入からライセンス生産、または両方のオプションの組み合わせが考えられる。

Armored Modular Vehicle XP (AMVXP). Image: Patria
装甲モジュラー車両XP(AMVXP)。画像:パトリア

AMVXPのコンペに関するパトリア社の声明で、同社は、車両の選択時に現地生産ラインと技術移転の取り決めを確立する意志を強調した。

パトリア社のAMV車両は、同様のライセンス生産契約の結果として、近年かなりの市場での成功を収めており、さまざまな国際的な顧客への運用形態および企業の要求に合わせて特別に調整された幅広いプラットフォームの派生型を生産している。
最も注目すべき例として、ポーランドと南アフリカがあり、それぞれKTO社の ロソマク装輪装甲車とデネルランドシステムズ社のバジャー(Badger)シリーズの装甲車両のベースとしてAMVプラットフォームを使用していた。

GDLS社のLAVシリーズとその多くの派生型は、過去15年間にわたって同様に強力な市場での地位を獲得しており、とりわけ、カナダ(LAV III)や米国(ストライカー)などの主要な先進国の機械化された部隊構造で広く普及している。

MHIがコンペのために提供するオプションに関しては、比較的少ないことが知られている。 そのオプションは、2014年に同社がユーロサトリの防衛展で発表した8×8 APCより成熟したバージョンである可能性がある。MHIは、陸上自衛隊の8×8型16式機動戦闘車も製造しているが、APCの設計は明らかにこれに基づいている。

コスト超過が装輪装甲車(改良型)のキャンセルの原因の1つであることを考えると、ライセンス生産ラインを確立するか、現地生産を追求するオプションは、日本政府にそれぞれの独自の課題を提示する可能性があるだろう。

陸上自衛隊は、通常、年間に数量の新造装甲車しか調達せず、例えば、優先順位の高い16式の機動戦闘車両(MCV)を年間約24両しか受領しない。
特に、期間的要求が増加する事に関しては、96式の後継車両の新しい低レート生産ラインを確立する潜在的なコストの非効率性が、日本の政策立案者の間で競合の原因になる可能性がある

それにもかかわらず、このオプションは、自衛隊に受け入れ可能で現場で実証済みの車両設計を提供すると同時に、日本国内の産業を保護・支援する上で、利用可能な最善の妥協案と判断される可能性があり、これは、三菱F-2戦闘機などの以前の日本の防衛プログラムの下で追求された産業政策にやや類似している。
現地報道によると、オプション車のテスト段階は2019年まで継続され、評価期間の終了後に21年度に予定されている日本の要求仕様に適合したプラットフォームの派生型の開発が続くことが指摘されている。(黒豆芝)