2020会計年度米国防予算は将来の伸びを調達支出計画の修正で押さえる
掲載:2019年5月6日
作成:フォーキャストインターナショナル(FI)社
投稿:Shaun McDougall FI社アナリスト
(この論評は米国人のアナリストが米国内に向けて出したブログです)
FY20 Budget Leaves Future Topline Growth Largely Unchanged, but Modifies Acquisition Spending Plans
2020会計年度国防予算は将来のトップラインの伸びを調達支出計画の修正で押さえる
国防総省は、2020会計年度に7,183億ドルの裁量的経費を要求したが、これは2019会計年度の規定水準を4.9%上回った。物価変動分を除いた実質成長率は約2.8%である。
ホワイトハウスは2020会計年度に7,014億ドルの国防予算を見積もっていた。それは予算要求が計画より約2.4パーセント大きいことを意味していた。
トップラインは、7,500億ドルの国家安全保障予算要求総額の一部であり、これにはエネルギー省の原子力計画及び国防総省以外の国防関連計画のための資金も含まれている。
政府はもともと7,330億ドルの国家安全保障予算要求を計画しており、ある時点で、増加する赤字についての懸念のために7000億ドルにトップラインを減らす兆しさえ有った。
大統領は、最終的に彼が提案した国防費の削減を元に戻すだけでなく、2020会計年度の国防予算を強化することを納得した。
連邦政府の支出は、予算管理法(BCA)に基づく支出制限の対象となっている。これは、さらに2年間有効である(2020会計年度及び2021会計年度)。
これらの制限を回避するために、政府はBCA支出の上限の対象ではない海外緊急事態対策会計(OCO)に基本予算の優先事項の1000億ドル近くを組み入れた。
Source: DoD FY20 Budget Request Overview Book
国防総省の7,183億ドルの要求には、従って5,445億ドルの基本予算、OCOの1,646億ドル、ハリケーン復興のための緊急資金92億ドル、そして政府の論争の的になっている国境の壁の提案が含まれている。 緊急資金もBCAの制限から免除されている。
大規模なOCOの要求は、さらに基本予算の優先事項が979億ドル、従来のOCO支出の667億ドルに分類される。当然OCO会計はすでに2020会計年度の要求前でさえもスラッシュファンド(注:政治資金)のようなものに増加しているのである。
2020会計年度の667億ドルの伝統的なOCO予算のうち直接的な戦争に必要なものは254億ドルだけである。残りの413億ドルは、軍事作戦が終了した後も継続的に必要な経費として計上されているものである。
これらの継続的に必要なものを基本予算に入れ込む可能性は何年にもわたって議論されてきたが、そうすることはBCAに基づく支出制限の下では非常に困難であった。
もしその会計上の変則的な取り扱いが除外された場合、7,183億ドルのトップラインは、6,838億ドルの基本予算、軍事活動のための254億ドル、そして緊急資金の92億ドルからなる。
OCO会計が国防予算を増やすための抜け穴として用いられたのは、2020年度の要求が初めてといえないものだが、それは確かに最もひどい例だ。
なお予算書によると、政府は2021会計年度もOCOの抜け穴を利用することを計画している。
それが起こるかどうかは、2020会計年度と2021会計年度にBCAの上限を変更するために議会が合意に達するかどうかにかかっている。民主党員は、国防費の増加と同時に国内支出を活気づけるためにそれをする事を望んでいる。.
2020会計年度の急上昇を除けば、国防総省の予算総額の政府の年間成長見通しは、前年度の計画とともに依然として順調に進んでいる。
2020会計年度の要求は、前回の計画の7,140億ドルに対して、国防総省予算が2021年度に7,135億ドルとわずかに減少していることを示している。
その後、トップラインは2020会計年度に7,270億ドル(+ 1.9%)、2023会計年度に7,415億ドル(+2.0%)、そして2024会計年度に7,467億ドル(+0.7%)に増加する。
2022会計年度と2023会計年度の成長率は、2019会計年度の支出計画下において同様である。 2019会計年度の予算見通しは2023年までとなっているため2024年の比較とならない。
Source: Office of Management and Budget
2020会計年度の要求には2,744億ドルの取得に関するものが含まれており、そのうち装備の調達1,431億ドル、研究開発、試験・評価の1,043億ドルが含まれている。
議会が2019年度の国防歳出予算案に追加の調達資金を約46億ドル追加したため、調達予算は実際には前年の要求より13億ドル少なく、2019会計年度の制定水準を59億ドル下回っている。
調達会計は、基本資金で1,199億ドル、OCOで231億ドルに分割されており、後者には、標準OCO予算に97億ドル、予算上限に該当しない基本予算に組み込まれていたであろう基本要求のための135億ドルのOCO資金が含まれている。
総予算には、基本予算調達要求のための1,334億ドルが含まれており、これは前年度の予算見通しで政府が2020年度に予測した額よりも約12億ドル多い。
陸軍(262億ドル)、空軍(501億ドル)、国防総省(57億ドル)の調達予算はすべて、前年要求を下回っている。
海軍だけが2019年度の要求レベルと比較して増加しており、2020年度には26億ドル増加している。 しかし、その傾向は2020年度以降逆転している。
海軍は以前の計画よりも2021会計年度から2023会計年度の間に62億ドルの少ない調達を受ける予定であるが、空軍と陸軍は3年間でそれぞれさらに136億ドルと52億ドルを得るものとみられる。
3年間の空軍への追加資金は、主に弾薬と空軍の「その他の調達」カテゴリーのためのものである。
その他の調達会計には、空軍以外のプログラムのための資金を含む大規模な機密扱いのスラッシュファンドが含まれていることに注目すべきで、これは、この会計の増加の一部または全部がこれらの外部の機密の施策によるものである可能性を意味する。
陸軍は、3年間で追加の資金がほぼ均等に分配されると見ているが、軍の航空機会計は、2021会計年度から2023会計年度の間に前の支出計画と比較して約12億ドルを削減されている。
海軍は、その一方で、以前の計画よりも2021会計年度から2023会計年度の間に航空機のための20億ドルと船舶のための60億ドルを受け取ることになる。
これらの見通しはほとんど決まっておらず、新しいリーダーシップ、新しい要求、予算の制約など、さまざまな理由で変わる可能性がある。
国防総省の1,403億ドルの研究開発予算は、2019会計年度要求に比し119億ドル、2019会計年度の制定水準を83億ドル上回っている。 さらに重要なことに、新しい研究予算は、当初予定されていた2020会計年度よりも144億ドル増加している。
研究開発費の年間支出もまた、以前の計画よりも増加しており、ペンタゴンの概要説明によると、2021会計年度から2023会計年度の間に、2019年度の支出計画よりも296億ドル増加している。
追加の資金は次のように主要な軍の間で分割されている:海軍に118億ドル、陸軍に92億ドル、空軍に75億ドル、そして国防総省全体に11億ドル。研究開発資金の増加は、中国やロシアなどの国々との潜在的な紛争に備えて国防総省側が要求していることによるものであり、極超音速ミサイル、宇宙センサー、航空機、そして高度なネットワークとサイバーセキュリティのような能力のための追加の資金を含む。
(黒豆芝)