三菱、M100スペースジェット・バージョンの開発を中止
掲載:2020年5月13日
作成:フォーキャストインターナショナル(FI)社
投稿:Raymond Jaworowski FI社アナリスト
(この論評は米国人のアナリストが米国内に向けて出したブログです)
Mitsubishi Suspends Development Work on M100 Space Jet Version
May 13, 2020 by Raymond Jaworowski
三菱重工業株式会社は、リージョナルジェット旅客機のスペースジェットファミリーのM100型の開発を当分の間停止した。
一時停止期間中、同社は76席モデルの開発計画を見直し、再検討する。
未だ飛行していないそのM100型のサービス参入は、2023年に予定されていた。
一方、M90と呼ばれる88席から92席のバージョンのスペースジェットの開発は進んでいる。三菱は今年の初めに、同社の2021会計年度までのM90のサービス参入を早々に延期していた。
三菱の2021会計年度は2021年4月に始まり、2022年3月までとなっている。
M90のサービス参入は、以前に2020年の中頃に予定されていた。
三菱はこれまで、2020年3月に最新のM90飛行試験機5機を飛行させていた。
しかし、COVID-19のパンデミックにより、飛行試験のスケジュールは多少混乱している。
三菱の財政もパンデミックの影響を受けており、同社は、財政の逆風のためにスペースジェットプログラムに適切な予算レベルを設定しているところだと語った。
三菱は、2020会計年度のスペースジェットプログラムの予算を600億円(5億5,900万ドル)に削減する予定だ。
オリジナルとして三菱リージョナルジェット(MRJ)ファミリーとして知られていたものを、三菱は、2019年6月にシリーズをスペースジェットファミリーとしてブランド変更した。
MRJ90はスペースジェットM90に名称変更された。
MRJ70と呼ばれる76人の乗客のモデルが削除され、スペースジェット M100と呼ばれる再設計されたバージョンに置き換えられた。
M100は、特に現在の米国のスコープ条項の制限に準拠するように設計されている。
米国の3つの主要航空会社でのパイロット契約におけるスコープ条項は、地域の航空会社のパートナーが、最大離陸重量が86,000ポンドを超える、又は(1つのマイナーな例外を除いて)乗客が76名を超える航空機の運用を禁止している。
M100は3クラスの座席配置で76人の乗客を運ぶことができる。この構成では、最大離陸重量は86,000ポンドとなる。
M90は76席のレイアウトで構成できるが、それでも86,000ポンドの重量制限を超える。 M90をそのレベル未満の重量で飛行させると、航続距離が大幅に犠牲になる。
したがって、スコープ条項により、米国の大規模市場におけるM90のセールス・ポテンシャルは厳しく制限を受けることになる。
米国の3つのメジャーでのパイロット契約が修正または更新の対象になると、米国のスコープ条項の制限を緩和する機会が生じる。
実際、3つすべての契約は現在修正可能であり、メジャーとパイロットの間の交渉の対象となっている。
ただし、少なくとも重要な重量制限に関しては、この一連の契約更新によってスコープが緩和される可能性は低いと思われる。
そのような自由化は、少なくとも次のラウンドの更新まで待たなければならないかも知れない。更新はおそらく2022年から2023年の時間枠のどこかで行われるものと考える。(黒豆芝)