「戦争の前に戦争に勝つ?」:認知戦に関するフランス人の視点 (War on the Rocks)

MILTERMでは認知戦(cognitive warfare)について、warontherocks.comの二つの記事について、「新しい技術、新しい概念:中国のAIと認知戦争についての計画 (War on the Rocks)」、「中国の「認知戦」の将来:ウクライナ戦争の教訓 (War on the Rocks)」で紹介してきたところである。

ここでは、warontherocks.comに掲載の認知戦(cognitive warfare)についての記事を紹介する。情報戦(information warfare)との違いなどを端的に理解できる良い記事と考える。(軍治)

「戦争の前に戦争に勝つ?」:認知戦に関するフランス人の視点

“WIN THE WAR BEFORE THE WAR?”: A FRENCH PERSPECTIVE ON COGNITIVE WARFARE

DAVID PAPPALARDO

AUGUST 1, 2022

デビッド・パパラルドDavid Pappalardo (@DavPappa)氏は、フランス空軍と宇宙の将校で、現在はワシントンのフランス大使館付空軍武官である。ミラージュF1、そして多用途戦闘機「ラファール」のパイロットであり、2/30戦闘機隊 「ノルマンディー・ニェメン」の元指揮官である。サヘル、アフガニスタン、リビア、レバントでの134回の戦闘任務と2300時間の飛行時間を誇る。フランス空軍士官学校を卒業し、米国空軍指揮幕僚学校を優秀な成績で卒業した。

記載されている見解は著者のものであり、必ずしもフランス空軍、フランス軍事省、またはフランス政府の公式な方針または立場を反映するものではない。

2050年、社会はコミュニティを基盤とする代替現実区域の列島に分かれている。フランス軍は、欺瞞と破壊の行動によって集団の振舞いを大規模に変化させる敵対者に直面し、「現実の確保」を任務を負っている。

これは、SF作家と軍をつなぐ「レッド・チーム(Red Team)」プログラムが昨夏、フランス軍事省に提案したシナリオである。これは単なる想像の産物のように思えるかもしれないが、「認知戦(cognitive warfare)」という概念(notion)は、戦略的思考において勢いを増しているのである。

しかし、このコンセプトは何を意味するのだろうか。それは、新しい戦いの方法を示すものなのだろうか。それとも、心理作戦や影響力作戦、あるいは「情報戦(information warfare)」という古いワインを新しい瓶に詰めただけなのだろうか。

この概念(notion)には有用なものがある。認知戦(cognitive warfare)とは、社会科学と新技術を組み合わせた学際的なアプローチで、敵対者を不安定にしたり麻痺させたりするために、理解や意思決定のメカニズムを直接的に変化させるものである。

言い換えれば、フランス国防省参謀総長ティエリー・ブルカール(Thierry Burkhard)大将の戦略的ビジョンに共鳴し、「戦前の戦争に勝つ」ために人間の脳のヒューリスティックスをハックすることを狙いとしている。

勝つために相手の脳に作用する。古くからある問題:Acting on the Opponent’s Brain to Win: An Old Problem

戦争は常に心(mind)に関わるものであり、カール・フォン・クラウゼヴィッツ(Carl von Clausewitz)は「相手に我々の意志を実現させることを意図した暴力行為」と定義している。同様に、エルヴェ・クトー=ベガリー(Hervé Coutau-Bégarie)は、戦略とは「紛争環境における知性の弁証法」であり、お互いが優位性を獲得するために相手の反応を予測しようとするものであることを思い起こさせる。

確かに、戦争は意志と知性の弁証法以上のものであり、組織や技術も重要である。しかし、軍事史や戦略思想に照らしてみると、「人間の脳が21世紀の戦場になった」というジェームズ・ジョルダーノ(James Giordano)の主張は、戦略弁証法において、脳への作用が常に構造的要素であったため、その意味で議論の余地がある。

見せかけの作戦(operations of simulation)、偽装の作戦(operations of dissimulation)、あるいは欺瞞の作戦(operations of deception)は戦争と同じくらい古くからあり、意図、能力、戦略について敵を欺くために相手の知覚(perceptions)を利用することで成り立っている。ジャン・ヴァンサン・オラインドル(Jean-Vincent Holeindre)は著書『狡猾さと強さ(La Ruse et la Force)』の中で、「狡猾さは戦略の歴史において、偽装や欺瞞に基づく戦術的手順としてだけではなく、戦略の計画策定や不確実な状況への適応を促す知的品質として、その地位を確立した」と説明している。

その意味で、戦略とは何よりも「他者の科学」であり、敵対者の脳にアクセスし、それを操作することが狙いである。ドイツの宰相ビスマルクがナポレオン3世をおびき寄せて無謀な戦争をさせたエムズ電報のエピソード(the Ems telegram episode)が示すように、認知は常に重要な問題であった。

ビスマルクは、ヴィルヘルム1世からの電報を公表する際、ドイツがスペイン王位につくことを撤回するなどの軟化した表現を自ら削除し、普仏戦争を引き起こし、最終的に第二次フランス帝国を崩壊させた。

相手より優位性を獲得するように偽りの情報を使うことは、戦略の歴史上、何も新しいことではない。例えば、チャーチルはスターリンにこう言ったと言われている。「戦時においては、真実は非常に貴重であるため、常に嘘のボディガードを付けておくべきだ」。情報作戦(information operations)は長い間、伝統的な軍事作戦に組み込まれて、伝統的な用兵のドメイン全体で効果を生み出してきた。

例えば、イギリスのミンスミート作戦(Operation Mincemeat)は、映画『過去のない男(The Man Who Never Was)』で劇的に描かれたように、連合国がシチリア島ではなくバルカン半島とサルディニア島に侵攻すると枢軸国上層部に信じ込ませるために成功した軍事欺瞞であった。

1944 年、ヒトラーは連合軍が最終的にノルマンディーに上陸することを正しく推測していたようだが、フォーティテュード作戦(Operation Fortitude)も同様に、パ・ド・カレー(Pas de Calais)での再攻撃が可能であるとドイツ第15軍に思わせることが狙いであった。同じ意味で、冷戦時代には破壊工作(subversion)も東西の弁証法の中心であった。

戦争は常に意志と知性の弁証法を意味し、戦略は「他者の科学(a science of the other)」であり、情報は戦略的優位性を提供する兵器である、というこれら3つの見解は、戦略的思考に対する認知戦(cognitive warfare)的アプローチに活かされている。

デジタルと社会の変革によって増幅された新たな競争:Renewed Competition Amplified by Digital and Social Transformation

認知戦(cognitive warfare)への新たな機運は、戦いにおける現在のデジタルおよび社会的変容を認識し、従来の情報作戦の大きさおよび聴衆の範囲を拡大するものである。

ターゲットはもはや政治的、軍事的意思決定者に限定されるものではなく、より広い範囲の人々も大規模な操作の対象となり、国家的決心に影響を与えるために利用される可能性がある。デジタル革命は、多対多のコミュニケーションを可能にし、データの流れを飛躍的に増大させることによって、情報ドメインにおける競争を悪化させた。

さらに、情報化時代は、経験的なものを犠牲にして、壮大なものに価値を与えている。哲学者のブルーノ・パティーノ(Bruno Patino)の言葉を借りれば、「真実はもっともらしく、反射作用は反射に取って代わられる」。現実のバルカン化を助長し、その結果、悪意のある競争相手に操作と影響の温床(breeding ground)を提供することになる。

このような動きに対して、デイヴィッド・ロンフェルト(David Ronfeldt)とジョン・アーキージャ(John Arquilla)は最近、「デジタル情報革命が可能にした知性の集合体」である人間の生活圏(noosphere)の出現をよりよく考慮するために、米国におけるより包括的な情報戦略を支持すると主張している。

これらの著者によれば、米国の戦略の本質は、今や「心の領域(in the realm of the mind)」で勝つための重要な決定的要因として、「兵器化されたナラティブ」を強調すべきであるという。結局のところ、ナラティブは、与えられた文脈を「意味づける」ために、脳が情報を処理し、整理し、意味を生み出すために用いられるヒューリスティックなものである。そのため、それらは認知の中心である。

また、紛争性(conflictuality)そのものも深く進化していることは注目に値する。中国の戦略家は長い間、情報戦あるいは心理戦を重視してきたが、今では認知戦(cognitive warfare)を「大国間の軍事的対決の究極のドメイン」と考えている。

同様に、ヴァレリー・ゲラシモフ(Valery Gerasimov)大将の造語である「新世代戦(New Generation Warfare)」は、平和と危機の連続体における境界線を曖昧にし、その区分がもはや意味をなさなくなるまで、グレーゾーン(gray-zone)の活動に重点を置くものである。フランス国防参謀総長の戦略的ビジョンの中核をなす、競争、論争、対立(competition-dispute-confrontationという新しい三項対立によって強調されるように、今後、デイ・ゼロは毎日になるのである。

そう考えると、競争は「戦争の前(before the war)」の戦争の一形態であり、そこでは戦略的威嚇(strategic intimidation)、サイバー作戦、ナラティブ戦が主要な役割を果たす。フランス軍事省の2021年1月の戦略アップデートでも、敵対者が実施するハイブリッド戦略の重要な要素として、影響力、麻痺、混乱を目的とした一種の破壊工作(subversion)につながる情報操作が提示されている。

これに呼応するように、2021年10月20日、パリで行われたコンピューターによる影響力統制の軍事ドクトリンの発表に際して、フローレンス・パーリー(Florence Parly)軍事大臣は、虚偽、操作、または破壊されたナラティブは、賢く使用すれば、競争相手に闘うことなく勝てる兵器であると断言した。

まとめると、デジタル革命によって増幅された新たな戦略的競争に直面し、兵器化されたナラティブや認知的攻撃との闘いがこれまで以上に不可欠になっている。そのためには、社会科学とあらゆるドメインの新技術を組み合わせ、情報、ナラティブ、人間の脳のレベルで同時に作戦する、より広範なアプローチである認知戦(cognitive warfare)が必要である。

競争する脳機能の活用による認知戦:Cognitive Warfare Through the Exploitation of Competing Brain Functions

認知とは、我々が世界を理解し、その内部表現を形成し、最終的にその中で行動することを可能にする、推論、感情、感覚体験を支配するメカニズムである。認知は、意思決定プロセスの主要な要素であり、このプロセスにおいて脳はさまざまな機能を発揮する。直感的なヒューリスティックは素早く動かせるが、バイアスの影響を受けやすく、論理的な戦略は時間がかかり、エネルギーの面でのコストも高くなる。

これは、心理学者ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)が著書『Thinking, Fast and Slow』の中でシステム1(ヒューリスティック)とシステム2(推論)と呼んでいるものである。ノーベル賞受賞者である彼は、最近いくつかの誤りを認めたが、彼の理論は意思決定を記述する上で依然として有用であり、価値がある。カーネマンによれば、意思決定には、これらの競合する機能の間の仲裁が必要であり、そのためには、我々のバイアスに陥らないように直感を抑制することが必要であるという。

オリビエ・ハウデ(Olivier Houdé)は、我々の脳のこの抑制と実行制御のメカニズムをシステム3、つまり「注意と抑制の間で適応する能力」として考え出された知性の回路で分断分布(vicariance)を可能にするメカニズムとして説明している。

認知ドメインにおける紛争性(conflictuality)は、これらの競合する機能と、異なる行為主体の合理性を制限する認知バイアスを戦略的に利用し、表現の歪みを引き起こし、意思決定を変化させ、その結果、最適下限の戦略的機動を引き起こすことを狙いとしている。その望ましい効果は、情報の統制にとどまらず、脳の実行・仲裁機能そのものの統制にまで及ぶ。

この意味で、このフレームワークは情報戦(information warfare)の分野を超えている。情報上での行動は、あくまでも認知のためのデータに働きかけるものであるが、認知戦(cognitive warfare)は、認知のプロセスそのものに働きかけるものである。その目標は、個人が何を考えるかだけでなく、その考え方にまで作用し、その行動様式を条件付けることである。

フランス国立認知科学高等研究院(École Nationale Supérieure de Cognitique)は、フランス軍およびNATOの支援を受けて実施した最近の研究において、認知戦(cognitive warfare)の決定要因について考察しています。純粋科学(hard sciences)と社会科学(social sciences)を組み合わせたこの研究は、神経科学(neuroscience)がこの分野を前進させる鍵であることを強調している。

ベルナール・クラベリ(Bernard Claverie)、フランソワ・デュ・クルゼル(François du Cluzel)によれば、認知戦(cognitive warfare)は攻撃的サイバー戦、情報戦、心理作戦の相乗効果を高めるべきであり、次のようにコンセプト化することができる。

「人間のターゲットの認知を変えるために技術を使うこと。ほとんどの場合、本人が知らないうちに、また望ましい効果を回避、最小化、制御する担当者が知らないうちに、あるいは可能な制御が時代遅れか手遅れになってしまうような技術」。

しかし、アプローチは技術的なものだけではない。デジタル技術(AI、ビッグデータ解析など)の精度とスピードを生かしながら、人間の知性の敏捷性と創造性を10倍にすることを可能にする「ヒューマンオートノミー・チーミング」という新しい要件を満たしているのである。

紛争の認知的次元に適応した指揮構造に向けて:Towards Command Structures Adapted to the Cognitive Dimension of Conflict

認知戦(cognitive warfare)は、本質的には、決心の優越を可能にする作戦の指揮・統制に関わるものであるが、それだけに限定されるものではない。これを達成するために、3つの取組みの目標(lines of effortを特定することが可能である。

第一の取組みの目標(line of effortは、個人的・集団的な認知機能不全を予防することである。そのためには、我々の心的パターンの前提となっている認知的偏向を可能な限り知り、識別することが必要である。フランスの哲学者ジャン・ドルメソン(Jean d’Ormesson)の美しい言葉によれば、「考えることは、まず自分自身に対して考えること」である。

故ロバート・ジャービス(Robert Jervis)も「意思決定者は、入ってきた情報を自分の既存の理論やイメージに当てはめる傾向がある」と説明している。敵対者の考えや価値観を誤って理解すること、敵対者が我々を見るように我々を見るだろうという思い込み、そしてより一般的には他者への侮蔑は、すべて紛争関係を不安定にする強力な要因である。

個人だけではない。官僚組織は、特に、グループのメンバーが似たような背景を持ち、外部の意見から隔離されている場合、心理学者のアーヴィング・ジャニス(Irving Janis)が「集団思考(Groupthink)」と呼んだものに対して脆弱である。集団思考(Groupthink)は、代替案を無視し、他の集団を非人間的に扱い、最終的には「精神的効率、現実の検証、道徳的判断」の劣化につながる。

したがって、教育や訓練は、我々個人や集団の「認知の虫(cognitive bugs)」に対するヘッジとして重要であり、紛争性(conflictuality)に対する社会的・心理的アプローチに支えられた、自分自身に対する絶え間ない問いかけ(permanent questioning)と交差検証(cross-examination)が必要なのである。

さらに、技術だけで戦場を完全に把握するというユートピア的な理想から自らを解放する必要がある。実際、技術的手段が常に戦争の霧(fog of war)を払拭してくれるとは限らない。それどころか、データの可用性が高まれば高まるほど、情報の流れをうまく使いこなせなければ、「より多くの霧(fog of more)」を生み出し、軍事的効率の犠牲に複雑さを付加することになりかねない。

さらに、未来を予測するためのアルゴリズムやデータベースにもバイアスが見られることがある。それは、認知的不協和の形態(form of cognitive dissonance)をもたらすかもしれない。したがって、情報の実践において技術的な解決策よりも優先されるべきは、組織の質であるとジョン・R・リンゼイ(Jon R. Lindsay)は説明している。

軍隊にとって、指揮・統制の本質的な質は、複雑な戦いの中で明瞭さを保つために、人間とシステムのバランスの取れた一体化にこそあるのである。フランスの作家ブルーノ・パティーノ(Bruno Patino)の言葉を借りれば、デジタル信号のために哲学的な光を消してはならないのだ。

第二の取組みの目標(lines of effortは、永続的な情報侵略と、敵対者が我々の認知バイアスを好機的に利用し、我々の意思決定プロセスを制約または歪めて我々を麻痺させることに対する防御に関するものである。我々の主要な競争者は、我々の軍隊が属している社会の脆弱性を理解している。

2021年4月に行われた議会での公聴会で、米国の研究者ハーバート・リン(Herbert Lin)は、3つの課題を強調した。1つ目は、行為主体の合理性の限界に関するものである。我々は矛盾したセンセーショナルなナラティブ、すなわち「認知的御馳走(cognitive treats)」を好み、また体系的な疑いを抱く性質があるため、注意が散漫になり判断が鈍るのである。

もうひとつは、我々の社会と結びついていることである。「アイデアの自由市場(free marketplace of ideas)」には、技術によって悪化した真実後(post-truth)の世界における極悪非道なオルタナティブ・ファクトやフェイク・ニュースがつきものである。さらに問題なのは、競争者が、制度上と海外との情報上の国境の隙を突いて、悪意のあるナラティブを意図的に広めることができることである。

これら3つの課題は、社会と軍事の双方に関わるものである。したがって、認知戦(cognitive warfare)には、グローバルでマルチドメインかつ政府全体のアプローチが必要であり、サイバー・ドメインと情報ドメイン間のより良い一体化を促進し、最も重要なアセットの1つである情報を守ることができる。

厳密に軍事的なレベルで言えば、我々の指揮・統制アーキテクチャは、自動化の難問(automation conundrum)と認知的不協和(cognitive dissonances)をできる限り抑えながら、新しい技術の優位性を取るに十分な復元性を維持しなければならない。

認知ドメインにおける攻撃的な戦いは、たとえそれが回避されてはならない倫理的な問題を提起するとしても、第3の取組みの軸を構成している。ハーバート・リン(Herbert Lin)は公聴会で、国防総省が課す倫理的制約が、「テロリストを殺す許可を得るのは、彼らに嘘をつくより簡単だ」というパラドックスにつながったと面白おかしく発言している。

真の攻撃的認知戦(offensive cognitive warfare)の遂行は、慎重な倫理的配慮から自由であってはならないが、戦略的一貫性でなければならない。そのため、認知戦(cognitive warfare)の課題の一つは、まず敵対者の認知を曖昧にすることで、戦略における狡猾さと奇襲性を復活させることである。

その結果、指揮・統制機構の組織は、サイバーと情報を含むすべてのドメインにおける効果のより良い一体化を促進するように進化しなければならない。例えば、米陸軍のマルチドメイン・タスク・フォースは、防空・戦略火力と並んで、I2CEWS(インテリジェンス、情報、サイバー、電子戦、宇宙)大隊を含んでおり、注目に値する。

新たな用兵ドメインに向けて:Towards a New Warfighting Domain?

認知戦(cognitive warfare)は革命ではない。勝つために相手の意思決定に影響を与え、混乱を引き起こし、最終的に相手の行動を麻痺させることで成り立っているのである。同様に、これだけで戦略的優位性を達成する銀の弾丸(silver bullet)ではないことは、この問題における「ロシアのウクライナでの予想以下の働きであること劣勢(Russia’s underperformance in Ukraine)」が証明している。

しかし、それは単に古いワインを新しい瓶に詰めただけでなく、情報戦、攻撃的なサイバー作戦、心理作戦を融合させることを狙いとしている。技術的な躍進(technological breakthroughs)と戦略的競争の更新の両方を認識し、「戦争の前(before the war)」であっても敵対者を強制するための威嚇、影響力、操作に重点を置いているのである。

これは、新しい用兵ドメインを作り出す必要があるということを意味するか?必ずしもそうではない。むしろ、高木耕一郎が最近主張したように、認知戦(cognitive warfare)を陸、海、空、宇宙およびサイバー作戦にうまく一体化することに主眼を置くべきである。別の言い方をすれば、同盟国は、確かにこのテーマをさらに探求し続けるべきであるが、現在の統合の全ドメインの枠組みの中で、より効果的に検討することである。

認知戦(cognitive warfare)は、利用可能な効果の大きさにおける質的な変化の恩恵を受けており、敵対者に戦略的効果をもたらすために複数の聴衆を同時にターゲットにすることができるようになった。これは、現在より効果的に対処しなければならない課題である。このため、フランス国防革新庁(French Defense Innovation Agency)は最近、認知戦(cognitive warfare)に関連する新技術を探索する「MYRIADE」というプロジェクトを立ち上げた。

戦略レベルでは、意思決定を確保し、十分なレベルの集団的「認知的安全保障(cognitive security)」を達成するために政府全体の取り組みが必要であり、これは、兵器化されたナラティブやその他の認知的攻撃(cognitive attacks)から自らを守ることができる、より良い教育を受け、準備された人々の必要性を意味する。軍事的なレベルでは、「戦前の戦争に勝つ(win the war before the war)」ために、認知的な攻撃(cognitive aggression)から防御し、相手の脳に順番に作用できるようにして反撃する準備が必要である。

具体的には、人間の判断力とデジタル技術を調和させ、奇襲されることなく奇襲できるよう、指揮・統制をマルチドメイン戦の認知的次元(cognitive dimension of multidomain warfare)にうまく適合させる必要がある。