ミッション・コマンドを理解する (Military Review)

ミッション・コマンド(Mission Command)という、いわゆる指揮・統制の方法は米海兵隊では先に紹介した「米海兵隊のドクトリンを読む⑦ MCDP 6 Command and Control」のとおり1996年にドクトリン文書化され、その考え方も米海兵隊員に浸透していると聞く。MILTERMでは米陸軍のミッション・コマンドについては、Military Reviewの記事から、「ミッション・コマンドへの道」、「米陸軍のミッション・コマンドへのアプローチを再活性化する(その1)(その2)(その3)」で紹介してきたところである。米陸軍は、2013年に「米陸軍ミッション・コマンド戦略」を策定しているように、ますます複雑化する作戦環境において「分権化された指揮・統制」の考えは必須と考えている。しかしながら、既に哲学として浸透している米海兵隊に比べると、その理解を含めて実効性を発揮するにはまだまだ遠い道のりが続くようである。ここでは、Military Review  July-August 2022に掲載の「Understanding Mission Command」を紹介する。何が課題なのかを含めてその概要を知る機会とされたい。(軍治)

 ミッション・コマンドを理解する

Understanding Mission Command

Lt. Col. Lee Robinson, U.S. Army

Military Review  July-August 2022

著者について

リー・ロビンソン(Lee Robinson)米陸軍中佐は、米陸軍人材管理タスクフォース所属の上級戦略立案・政策プログラム・グッドパスター奨学生である。米陸軍士官学校にて学士号、コーネル大学にて行政学修士(MPA)、ジョージア大学にて行政学博士号を取得。米陸軍飛行士として、イラク北部とバグダッドに派遣されたイラク自由作戦、アフガニスタン南部での不朽の自由作戦、そして最近では第603航空支援大隊の司令官としてアトランティック・リゾルブに参加した。また、2010年から2012年まで、米陸軍士官学校社会科学部の助教授を務めた。

ルイジアナ州フォートポークの統合即応訓練センター(JRTC)での実動演習で、2020年10月27日、目標への接近計画について協議している、第5治安部隊支援旅団第513チームのクリス・カンデラリア(Kris Candelaria)米陸軍大尉(左)と第25歩兵師団第2旅団第27歩兵連隊第1大隊に配属されているインドネシア軍ウィルヘルムス・ラディティア(Wilhelmus Raditya)米陸軍中尉。統合即応訓練センター(JRTC)演習は、自由で開かれたインド太平洋を支援するため、第2旅団が主要な同盟国との相互運用性を構築しながら、世界中に展開するための認証を得るための基盤となる訓練イベントである。

(写真:第28広報分遣隊レイチェル・クリステンセン(Rachel Christensen)米陸軍上等兵)

他人の努力を引き出すには、下に火をつけるのではなく、内に火をつけるのである[1]

—ボブ・ネルソン

2015年、米陸軍は「米陸軍ミッション・コマンド戦略」の目標達成に向けた進捗状況を測定するため、「ミッション・コマンド評価プログラム」を発表した[2]。米陸軍ミッション・コマンド戦略の最初の戦略的目標は、「すべての米陸軍指導者がミッション・コマンドの哲学(mission command philosophy)を理解する」ことである[3]。2019年にミッション・コマンド評価プログラムが終了すると、Military Reviewに掲載された一連の記事は、制度がこの目標を下回っているという説得力のある事例となった[4]

2019年以降、ミッション・コマンドの哲学(mission command philosophy)に対する理解が深まったことは間違いないが、ミッション・コマンドの理解を浸透させることは、時間的に決まったマイルストーンではなく、継続的なプロセスである。

本稿では、米陸軍のリーダーをミッション・コマンドの哲学(mission command philosophy)に基づいて教育・訓練することの難しさについていくつかの見解を述べるとともに、現在のアプローチの欠点に対処するための方法を提案する。信頼と能力・適正(trust and competence)の関係に基づいたツールは、部下を指導し、ミッション・コマンドを実践するための直感的アプローチ(intuitive approach)として、私はそれを説明する。

ミッション・コマンドの混乱:Mission Command Confusion

スティーブン・タウンゼント(Stephen Townsend)米陸軍大将(当時、米陸軍訓練ドクトリン・コマンド司令官)と複数の共著者は、2019年に『Military Review』に掲載された3つの論文で、ミッション・コマンドの共有された理解を生み出す上での米陸軍の苦悩を論じている。彼らは2つの犯人に焦点を当てた。まず、米陸軍のレトリックと行動はミッション・コマンドと一致せず、それは集権型の訓練プロセスによって、部下が主導性(initiative)を発揮する機会が制約されていることからも明らかである[5]

第二に、2012 年版の米陸軍ドクトリン参照出版物(ADRP)6-0 「ミッション・コマンド(Mission Command」は、ミッション・コマンドを明確にするどころか、混乱の元凶となった。「指揮・統制(command and control)」という用語を削除し、ミッション・コマンドに置き換えたことで、哲学(philosophy)としてのミッション・コマンドと用兵機能(warfighting function)としてのミッション・コマンドの間に誤った理解が生じたのである。

2019年夏の大隊指揮官に備えるための事前指揮官課程に出席した際、米陸軍の上級指導者たちは、ミッション・コマンドを理解し日常的に実践するための我々の制度上の苦悩を説明した。彼らは、将来の大隊・旅団指揮官となる私たちの仲間に対して、もっとうまくやるよう懇願した。2019年夏に発表された更新されたドクトリンは、ミッション・コマンドについて部下を指導するためのいくつかのツールを提供してくれた。

改訂された米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-0「ミッション・コマンド:米陸軍部隊の指揮・統制Mission Command: Command and control」は、2012年版の米陸軍ドクトリン参照出版物(ADRP)6-0の欠点を改善したものである。このマニュアルの序文にあるように、「複数のものにミッション・コマンドのラベルを貼ることは、軍事作戦の範囲にわたって米陸軍部隊の指揮・統制に不可欠であるミッション・コマンドの重要性を意図せずして損なった」のである[6]

この更新により、指揮・統制は用兵機能(warfighting function)として復活した。また、ミッション・コマンドとは、状況に応じた部下の意思決定と分権的な作戦遂行を可能にすることを到達目標とした米陸軍の指揮・統制のアプローチであることを明確にした。

ミッション・コマンドに関するドクトリン上の基礎が固まったことで、私は、ミッション・コマンドの実践について部下のリーダーを指導することを優先させた。このテーマに関する私の最初のリーダー育成セッションで、中隊クラスのリーダーたちは、米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-0の改訂にもかかわらず、ミッション・コマンドの実践に懐疑的な見方を示した。私は、ミッション・コマンドについて部下を指導するためには、ドクトリンにあるものよりも優れたリーダー育成ツールが必要であることに気づいたのである。このセッションから、ミッション・コマンドの理解と実践を深めるための2年間の旅が始まった。

タウンゼント(Townsend)が指摘するように、「ミッション・コマンドに対する米陸軍のアプローチの核心は、状況や入手可能な情報があれば、リーダーが適切なレベルと、そして適時に最善の決心を下せるように、適切な統制のレベル(appropriate level of control)を適用すること」である[7]

ミッション・コマンドについて議論した当初、中隊長クラスからは、部下のリーダーを厳しく統制することはミッション・コマンドの精神と相反するものだという意見が出された。その中で、適切な統制のレベル(appropriate level of controlのニュアンスをつかむことが、ミッション・コマンドの本質を解く鍵になると感じた。

マーク・エスパー(Mark Esper)米陸軍長官在任中の義務的訓練の縮小、ドクトリンから「指揮・統制」という用語の削除、無数の報告要求の制度への影響に関する専門誌での議論などの要因が重なり、統制(control)は汚い言葉、ミッション・コマンドと矛盾するものとみなされる状況が生まれたのである[8]

改訂された米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-0は、統制(control)がミッション・コマンドと相反するものであるという観点から脱却する道筋を示し、適切な統制のレベル(appropriate level of control)が指揮の術(art of command)の一部であることを強調している[9]。しかし、米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-0の知識を伝授することで、部隊にミッション・コマンドを教育するのでは不十分である。米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-0の知識を実践するための訓練を伴わなければならない。

楽器や絵筆を手にしたことがある人なら、音楽家や画家としての初期の練習が粗い状態であることをよくご存知だろう。同じように、指揮の術(art of command)の初期の実践は粗いものである。他の人よりも早くそれらの技能を使いこなせるようになるアーティストもいるが、練習の基本ツールに関する慣れと訓練は、実験と学習のための土台となるものである。

適切な統制のレベル(appropriate level of control)を決定することが指揮の術(art of command)の一部であるとすれば、おそらく、米陸軍がミッション・コマンドの実践に苦労しているのは、ミッション・コマンドの実践のための基礎を確立するために提供されたツールに一因があるのだろう。私は、統制手段(control measures)やリスク軽減策が自動的に不信のシグナルとなるのではなく、与えられた状況において適切な統制のレベル(appropriate level of control)の適用であることを部下に理解させるためのツールを探した。

米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-0では、リーダーが隷下部隊に対する統制(control)を実施する際の指針として、ミッション変数の使用とその他8つの考慮事項について述べているが、私はミッション・コマンドの行使を可能にするため、より直感的アプローチ(intuitive approach)で成功を収めることができた[10]

能力・適性と信頼の関係:Relationship of Competence and trust

ミッション・コマンドを実践するためのより直感的な指針として私が推奨するのは、信頼と能力・適正(trust and competence)の関係に根ざしたものである。米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-0 は、「ミッション・コマンドには、有能な部隊(competent forcesと、指揮官、参謀、部下の間の相互信頼と共有された理解の環境が必要である」(強調)と述べている[11]

与えられた状況に対して適切な統制のレベル(appropriate level of control)を決定する上で、リーダーが考慮すべき他の変数の重要性を軽視しているわけではないが、信頼と能力・適正(trust and competence)の関係という観点からミッション・コマンドをコンセプト化することは、我々の用兵哲学(warfighting philosophy)を教えるより直感的な方法を提供するものである。

信頼と能力・適正(trust and competence)とはどういう意味か?米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-22「米陸軍のリーダーシップと専門職(Army Leadership and the Profession」では、能力・適性(competence)の基礎は軍事技術的な専門知識であると述べている。信頼とは、「指揮官、部下、パートナーの間で、彼らが与えられた任務を遂行する有能さ(competent)があるという共有された信用」である[12]

有能なリーダーは、卓越性を追求しながら規律と基準を守って職務を遂行し、装備、手順、方法に関する適切な知識を示し、革新的な解決策を認識し生み出す[13]。したがって、能力・適性(competence)は部下の業務遂行能力に根ざしており、信頼はリーダー・部下間の業務遂行能力に対する知覚を中心としている。

つまり、信頼は「共有された自信(shared confidence)」、つまり、リーダーが部下を信頼していても、部下が、リーダーが彼または彼女を信頼していることを知覚していない場合、信頼は最適ではない。

ミッション・コマンドを信頼と能力・適正(trust and competence)の関係として特徴づけることで、この2つのコンセプトを二分法に置くことができる(図参照)。x軸は、部下の能力・適正(competence)を表し、左側が低く、右側が高い。Y軸は、リーダーと部下の間の知覚された信頼(perceived trust)を表し、二分法の下側の信頼が低い環境から、上側の信頼が高い環境までの範囲を示している。

図 ミッション・コマンドを理解する:信頼と能力・適正(trust and competence)の関係

(図は著者による)

この図は、信頼と能力・適正(trust and competence)の関係を視覚的に表現したもので、リーダーが与えられた状況に対して適切な統制のレベル(appropriate level of control)を理解するのに役立つ。例として、中隊が輸送船団保護プラットフォームの砲術訓練を行うことになった場合を考えてみよう。リーダーは、この訓練の機会を最大限に生かし、成功させるために、リスク管理と統制手段(control measures)について多くの決心を迫られる。この訓練に適切な統制のレベル(appropriate level of control)は、図の各象限が示すように、信頼と能力・適正(trust and competence)の関係にかかっている。

マクロマネジメント(左上の象限)。部下の能力・適性(competence)が低くても、リーダーと部下の信頼関係が高ければ、リーダーはタスクに対して適切な統制を行うことができない可能性がある。砲術の例でいえば、部下の能力レベルに見合わない統制は、リハーサルや実行時の不十分なリーダーの存在感に表れるかもしれない。この場合のリスクは、部下の能力・適性(competence)が低いためにリーダーが適切な統制のレベル(appropriate level of control)を行わず、不適切な監督のレベルによって最適とは言えない結果を招くことである。

野球のリトルリーグのコーチは、彼・彼女の選手による練習を計画することができるが、もちろん、選手に全統制(total control)を委ねるよりも、意図的で監督された練習でチームはずっと改善される。マクロマネジメントは避けるべき象限である。部下の能力・適性が低いレベルに対する無干渉のアプローチは、部下が与えられたタスクの基本を理解するためにコーチを必要とするときにリーダーが不在となり、最適とは言えない結果を招く可能性がある。

マイクロマネジメント(右下象限)。部下の能力・適性(competence)が高くても信頼が低ければ、異なる種類の最適でない結果が生じる可能性がある。マクロマネジメントでは、部下の能力・適性(competence)と不十分な統制(control)がパフォーマンスを制限するのに対し、マイクロマネジメントでは、統制(control)が強すぎることがパフォーマンスを制限する。この象限でのパフォーマンスの限界は、部下の能力・適性(competence)が高い環境でリーダーが過剰な統制(control)を行った場合に、モチベーションに悪影響が出ることに起因している。

組織行動学における状況的リーダーシップの理論に基づくと、委任(delegation)は部下の成熟度合いに応じて増加するはずである[14]。この部下の高い能力・適性(competence)の象限では、部下はリーダーの影響力戦術が自分のニーズと一致していないため、不適切であるとみなす可能性が高い。リーダーの行動と状況のミスマッチにより、部下の満足度や創造性が低下し、最適でない結果がもたらされる。

プラットフォーム砲撃の例に戻ると、マイクロマネジメントは、創造性を発揮する自由度が増しても、能力・適性(competence)が報われない環境につながる。そのため、訓練イベントの可能性は、グループの協力的な力ではなく、リーダーの行動によって制限されることになる。

2020年1月13日、ドイツ・グラーフェンウォールでのコンバインド・リゾルブXIII前の実戦演習での動きを想定した諸兵科連合のリハーサルで、旅団長や旅団参謀に説明を行う第1騎兵師団第2装甲旅団戦闘チームの作戦将校ブレンダン・ベーカー(Brendan Baker)米陸軍中佐。

(写真:ノショバ・デイビス(Noshoba Davis)米陸軍州兵二等軍曹)

コンプライアンス重視(左下の象限)。この象限は、部下の能力・適性と信頼(competence and trust)が低い場合に、リーダーの関与の度合いが高ければ、最良の結果が得られることを示している。コンプライアンス重視のリーダーシップの発揮は、部下の能力・適性(competence)が低く、リーダーと部下の間の信頼の知覚も低い場合に適している。

マイクロマネジメントの下で期待されることとは対照的に、この象限に属するリーダーのコーチングや影響力戦術は、部下のニーズに合致しているため、特にリーダーが信頼と能力・適正(trust and competence)を築くための統制手段(control measures)であると説明した場合には、部下に好意的に受け入れられる可能性が高い。プラットフォーム砲撃の例では、意図に基づくミッション・オーダー(intent-based mission orders)に頼るよりも、綿密な計画策定とバックブリーフィングやリハーサルを活用する方が、肯定的な結果につながる。

ミッション・コマンド(右上の象限)。この象限は、高い信頼と高い能力・適性(competence)を備えた理想的な状態(ideal state)のミッション・コマンドを表している。このような環境では、指揮官の明確な意図と部下の創造性を重視したミッション・オーダーが、潜在的な成果を最大化することになる。プラットフォーム砲術の例に戻ると、この象限は、部下が経験と創造性を発揮し、指揮官の意図の範囲内で訓練イベントの成果を最大化する可能性が最も高いシナリオである。

図の濃淡が示すように、リーダーはミッション・コマンドの理想的な状態(ideal state)の象限内で活動するよう努めるべきであるが、状況によってはコンプライアンス・ベースのリーダーシップが適切であることを理解すべきである。これらの象限では、リーダーは、与えられた部下の信頼と能力・適正(trust and competence)のレベルに応じて適切な統制を適用する。この図は、リーダーが与えられた状況に対して適切な統制のレベル(appropriate level of control)を決定するための直感的アプローチ(intuitive approach)を提供し、場合によってはコンプライアンス重視のリーダーシップが望ましいことを伝えている。

コンプライアンス重視からミッション・コマンドの理想的な状態へ:Moving from Compliance-Focused to the Ideal State of Mission Command

この四分円の動きを考えるのに、適切な例えは、騎手と馬の関係である。騎手と馬の信頼関係が薄く、不慣れな状況では、騎手は手綱を強く握っている。信頼関係が深まり、反復練習で能力・適性(competence)がついてくると、手綱を緩めるようになる。よく訓練された馬は、慣れ親しんだ乗り物を騎手から促されることなく完走することができる。騎手が手綱を離すことはほとんどないが、状況の変化により騎手が手綱を締めたり緩めたりすることがある。

リーダーシップとは、その時々の状況に応じて正しい統制のレベル(right level of control)を行うことを到達目標とし、常に手綱を調整するプロセスである。新しいリーダーや不慣れな状況などの変動要因は、信頼と能力・適正(trust and competence)の知覚に影響を与えることがある。そのような場合、馬が緊張していないのに騎手が緊張しているように、リーダーは警戒心から手綱を締め、統制のレベル(level of control)を好ましくない象限にまで上げてしまうことがある。

図が示すように、ミッション・コマンドの理想的な状態(ideal state)に移行するための方法は、リーダーの育成である。リーダー育成を訓練管理とリスク管理に組み込むことが、コンプライアンス重視のミッション・コマンドから理想的な状態(ideal state)に近づくための2つの方法である。

訓練管理とは、リーダーが訓練の優先順位をつけ、計画し、リソースを確保し、実行するプロセスである。ミッション・コマンドは能力・適性(competence)に依存するため、リーダーは部下がミッションに不可欠なタスクの能力・適性(competence)を身につけるために十分な反復練習を行う必要がある。部下がタスクを習得した段階で、リーダーは曖昧さや複雑さを導入し、部下に決心させ、そこから学ばせるようにする。

指揮・統制システムを取り入れることは、部下とリーダーが共有された理解から作戦できるように訓練するための訓練管理の重要な側面である。能力・適性と信頼(competence and trust)が高まるにつれ、訓練管理は、指揮官がリーダー育成の機会を提供し、詳細ベースのミッション・オーダーから意図ベースのミッション・オーダーへと移行させるためのプロセスである。

米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-0は、リスク管理の実践が、コンプライアンス重視のリーダーシップからミッション・コマンドの理想的な状態(ideal state)へと組織を移行させるのに役立つという観点を提供している。その中で、リスク管理の方法として、「部下に割り当てるタスクの数を管理すること」と 「それらのタスクを達成するための適切なリソースを提供すること」の2つを説明している[15]

部下の能力・適性(competence)が高まるにつれ、指揮官はリスクを適切に管理しながらリーダーの育成を進めるため、作戦に複雑性を持たせる機会が増える。この複雑さには、米陸軍ドクトリン出版物(ADP)6-0で説明されているように、情報、部隊、資材、時間などの様々な資源が含まれることがある。

ミッション・コマンドの旅路:The Mission Command Journey

ミッション・コマンドを理解するまでの道のりは、ミッション・コマンドの教え方、実践の仕方を通して、紆余曲折があったようである。ミッション・コマンドを実践する能力は、この哲学(philosophy)を部下が容易に理解できるような形で伝える努力によって向上する。信頼と能力・適正(trust and competence)の関係を理解することは、米陸軍指導者がミッション・コマンドをより強固に把握するための有用な道筋を提供するものである。

この記事で紹介されているツールは、ミッション・コマンドについて部下のリーダーを指導するのに役立つと思った。訓練管理とリスク管理の実践において、建設的な対話が生まれた。また、部下がコンプライアンス重視のリーダーシップを適切なときに使うことに罪悪を感じなくなることにもつながった。

ノート

[1] Bob Nelson, 1001 Ways to Reward Employees, 2nd ed. (New York: Workman Publishing, 2005), 48.

[2] “U.S. Army Mission Command Strategy, FY 13-19” (Washington, DC: Headquarters, Department of the Army, June 2013), accessed 22 December 2021, https://api.army.mil/e2/c/downloads/312724.pdf; “U.S. Army Mission Command Assessment Plan FY 15-19” (Washington, DC: Headquarters, Department of the Army, 19 June 2015), accessed 17 October 2021, https://usacac.army.mil/sites/default/files/documents/mccoe/AMCAP%2022%20Jun%2015.pdf.

[3] “U.S. Army Mission Command Strategy, FY 13-19,” 1.

[4] Stephen J. Townsend, Douglas Crissman, and Kelly McCoy, “Reinvigorating the Army’s Approach to Mission Command: It’s Okay to Run with Scissors (Part 1),” Military Review 99, no. 3 (May-June 2019): 4–9; Stephen J. Townsend et al., “Reinvigorating the Army’s Approach to Mission Command: Leading by Mission Command (Part 2),” Military Review 99, no. 4 (July-August 2019): 6–12; Stephen J. Townsend et al., “Reinvigorating the Army’s Approach to Mission Command: Training for Mission Command (Part 3),” Military Review 99, no. 5 (September-October 2019): 6–15.

[5] Donald E. Vandegriff, Adopting Mission Command: Developing Leaders for a Superior Command Culture (Annapolis, MD: Naval Institute Press, 2019).

[6] Army Doctrine Publication (ADP) 6-0, Mission Command: Command and Control of Army Forces (Washington, DC: U.S. Government Publishing Office [GPO], 2019), vii.

[7] Townsend, Crissman, and McCoy, “Reinvigorating the Army’s Approach to Mission Command (Part 1),” 7.

[8] Leonard Wong and Stephen J. Gerras, Lying to Ourselves: Dishonesty in the Army Profession (Carlisle, PA: U.S. Army War College Press, 2015).

[9] ADP 6-0, Mission Command, 1-5.

[10] Ibid., 1-6.

[11] Ibid.

[12] Ibid., 1-7.

[13] ADP 6-22, Army Leadership and the Profession (Washington, DC: U.S. GPO, 2019), 5-14.

[14] Paul Hersey and Kenneth H. Blanchard, Management of Organizational Behavior: Utilizing Human Resources, 3rd ed. (Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall, 1977); Claude L. Graeff, “Evolution of Situational Leadership Theory: A Critical Review,” The Leadership Quarterly 8, no. 2 (1997): 153–70.

[15] ADP 6-0, Mission Command, 1-5.