米海兵隊の「遠征前進基地作戦(EABO)に関する暫定マニュアル」 第4章
「序文」および「第1章 はじめに」、「第2章 作戦上の思考態度」、「第3章 計画策定と組織へのアプローチ」引き続き、第4章を紹介する。第4章は、遠征前進基地作戦(EABO)をインテリジェンス機能の観点から対応すべき事項について記述されている。「Intelligence operations」をここでは「インテリジェンス作戦」と直訳した。この章では、海上ドメイン認識(maritime domain awareness :MDA)が重要なこと、また作戦においては「インテリジェンス主導の作戦(Intelligence-led operation)」が主導性を獲得するための方法であり、効果的な戦闘空間認識(battlespace awareness)を得るためのインテリジェンスの収集や、さらに相手に探知されないためのシグネチャ管理などについて述べられている。(軍治)
第4章 インテリジェンス作戦:CHAPTER 4 Intelligence operations
4.3 インテリジェンス主導の作戦:INTELLIGENCE-LED OPERATIONS
4.4 海軍部隊と統合部隊の一体化:NAVAL AND JOINT FORCE INTEGRATION
4.5 作戦環境:OPERATIONAL ENVIRONMENT
4.5.2 情報環境:The Information Environment
4.5.3 沿岸の環境:The Littoral Environment
4.5.4 システム分析と市民社会の考慮事項:Systems Analysis and Civil considerations (PMESII/ASCOPE)
4.6 一体化された海軍のインテリジェンス・プロセス:INTEGRATED NAVAL INTELLIGENCE PROCESS:
4.6.1 活動を基盤とするインテリジェンス:Activity-Based Intelligence
4.6.2 全事業体の探知活動の支援:Support to the Sensing Enterprise
4.6.3 収集の計画策定:Collections Planning
4.6.4 シグネチャ管理:Signature Management
第4章 インテリジェンス作戦:CHAPTER 4 Intelligence operations
4.1 全般:GENERAL
遠征前進基地作戦(EABO)の海軍的性質から、その実行を支援するために一体化した海軍インテリジェンス作戦が必要となる。遠征前進基地作戦(EABO)へのインテリジェンス支援の基本は、海上の環境を継続的に探知して、競争の連続体(competition continuum)全体における基本条件からの逸脱を特定することによる戦闘空間認識(battlespace awareness)である。
この取組みには、海上ドメインの複雑な本質、競争の連続体(competition continuum)の動的本質、インテリジェンス作戦を実行するための能力と資源の有限性など、いくつかの課題が内在している。海上ドメイン認識(maritime domain awareness :MDA)と作戦環境のベースラインを確立することは、これらの課題を解決するために必要な最初の第一段である。またこれらは、その後のインテリジェンス作戦の計画と実行を助けるビルディング・ブロックの役割も果たす。
海上ドメイン認識(MDA)とは、国家の安全保障、安全、経済、環境に影響を与える可能性のある海上ドメインに関連するあらゆるものを理解することを指す。正確な海上ドメイン認識(MDA)を取得し維持することは、積極的かつレイヤー化された縦深の防御を可能にする重要な要素である。海上ドメイン認識(MDA)は、統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)と下級指揮官による迅速かつ的確な行動を促進し、統合部隊の作戦との効果的な一体化を可能にする[1]。
競争間の日常的な沿岸部隊(littoral force)の活動は、沿岸部隊(littoral force)指揮官の将来の意思決定に情報を提供する作戦上のベースラインを確立する。継続的な探知は、実際のエスカレーションやデエスカレーションとなりうるベースラインの逸脱を認識し、将来の計画策定や実行を容易にする。
遠征前進基地作戦(EABO)を支援するためのインテリジェンス作戦では、海上ドメインの規模と複雑さ、そして競争の連続体(competition continuum)という課題に対応するために、組織、地域、国の情報能力と資源を適切に活用することが必要である。遠征前進基地作戦(EABO)のインテリジェンスの取組みを一体化するためには、より大きなインテリジェンス・コミュニティ(IC)にインテリジェンスを提供し、そこから得られるインテリジェンスを活用する能力も重要である。
沿岸部隊(littoral forces)は、紛争で成功するための条件を整えるために、紛争中に日常的なインテリジェンス作戦を実行しなければならない。本章では、敵対者との激しい戦闘の中で、遠征前進基地作戦(EABO)に効果的なインテリジェンス支援を行うために必要な一体化地点や計画策定上の留意点を概説する。
4.2 目的と範囲: PURPOSE AND SCOPE
遠征前進基地作戦(EABO)へのインテリジェンス支援は、海軍と海兵隊のインテリジェンス・監視・偵察全体事業の継続的な発展段階であり、厳密な実験、訓練、演習、作戦を通じて検証されなければならない。
以下のコンセプトは、海兵隊・海軍のインテリジェンス部門が機能面から提供するものを変更するものではない。その代わりに、競争から紛争に移行する際に、インテリジェンス作戦が沿岸部隊(littoral forces)に認識と対応力を提供する方法を変更することを提案するものである。
4.3 インテリジェンス主導の作戦:INTELLIGENCE-LED OPERATIONS
インテリジェンス収集がインテリジェンス・作戦サイクルの中で最も困難な部分であることは、これまでの紛争における作戦で実証されている。その経験から、「行動可能なインテリジェンス」の追求から、「インテリジェンスを生み出すための行動」の実施に移行する必要があることが明らかになった。インテリジェンスを生み出すための行動は、「インテリジェンス主導の作戦(intelligence-led operations)」と呼ばれる。
情報環境における作戦(OIE)を含む「インテリジェンス主導の作戦(Intelligence-led operation)」は、海上作戦環境(OE)の基本的な状況を把握するのに役立つため、遠征前進基地作戦(EABO)の競争において極めて重要である。このベースラインによって、艦隊は異常を特定し、敵対者の計画に対抗するために先手を打って行動し、武力紛争へのエスカレーションに備えることができる。
競争間に遠征前進基地作戦(EABO)を実施する一方で、情報環境における作戦(OIE)やその他の活動は沿岸地域の部隊に沿岸部での収集とベースライン開発の機会を提供する。このベースラインは、既に述べたように、緊要地形、敵対者の存在と活動、地域、構造、能力、組織、人、出来事(ASCOPE)と政治、軍事、経済、社会、インフラ、情報(PMESII)の考慮事項、そして情報環境(IE)における友軍、敵対者、中立の活動などを含む沿岸環境の全範囲に及ぶものでなければならない。競争間のベースライン地域の必要性は、演習、交流及び遠征前進基地作戦(EABO)活動の優先順位付けにおける重要な要素であるべきである。
敵対者の隠しセンサーや接近阻止/領域拒否兵器を発見し、ターゲッティングするには、ネットワーク化されたセンサーで待機・監視する以上の取組みが必要である。遠征前進基地作戦(EABO)任務は、沿岸部隊(littoral forces)に有機的なインテリジェンス・監視・偵察(ISR)と機動要素を活用し、敵対者を隠蔽から引き離し、その戦術を知り、作戦を基本化する機会を提供する。
競争間にベースラインを確立した沿岸部隊(littoral forces)は、敵対者部隊、地元住民、その他の関連する行為主体やターゲットとする聴衆の反応を捕捉するため、収集計画を作成し、作戦環境(OE)と情報環境(IE)内で活動を行うことができる。遠征前進基地作戦(EABO)は、沿岸部隊指揮官(LFC)に「ノイズ・フロア[2]を上げる」機会を与え、敵対者の反応を引き起こす。遠征前進基地作戦(EABO)のインテリジェンス作戦は、こうした敵対者の行動に基づき、適切かつタイムリーなインテリジェンス成果物を収集、分析、配布することを目指すべきである。
つまり、遠征前進基地作戦(EABO)を支援するインテリジェンス主導の作戦(intelligence-led operations)は、沿岸部隊(littoral forces)が競争の連続体(competition continuum)全体の中で将来の任務を計画し、実行するための敵対者の活動を生み出すことを目指すものなのである。以下の段落では、このプロセスに不可欠ないくつかの取組みについて説明する。
4.4 海軍部隊と統合部隊の一体化:NAVAL AND JOINT FORCE INTEGRATION
海軍軍種インテリジェンスの主な目標は、敵と環境の両方について、正確でタイムリーかつ適切な知識を提供することであり[3]、遠征前進基地作戦(EABO)でもそれは変わらない。遠征前進基地作戦(EABO)が実施される大きな統合環境について戦闘空間認識(battlespace awareness)を支援する場合、これらの目標はより広い範囲に及ぶ。これらの主要目標とともに、統合インテリジェンス作戦は敵対者の欺瞞と奇襲に対抗し、友軍の欺瞞の取組みを支援し、作戦の有効性を評価する責任を負っている[4]。
沿岸部隊(littoral force)のインテリジェンス作戦は、有機的なインテリジェンス資源と能力を活用し、統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)の海上センサー・ネットワークを支援・拡張することで、遠征前進基地作戦(EABO)を実現する。海軍部隊の一部として、沿岸部隊(littoral force)のインテリジェンス作戦は沿岸部隊(littoral forces)が効果的に作戦を遂行するために必要な認識を提供するだけでなく、統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)と統合部隊指揮官(JFC)の決定のための統合要件を支援する。
計画策定の初期段階で、統合部隊(joint force)、連合部隊、ホスト国、および国のインテリジェンス組織と緊密に連携することは、プラットフォームとセンサーの運用計画を調整し、統合部隊(joint force)全体のインテリジェンス・監視・偵察(ISR)と関連処理、搾取、および発信システムを最適化するために不可欠である。
海上ドメインでの作戦は複雑であるため、基本的な有機的インテリジェンス収集アセットが必要であり、海上ドメイン認識(MDA)を維持し軍事作戦を成功させるために割り当てられた統合部隊(joint force)と能力によって増強される[5]。
統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)が一丸となって作戦環境(OE)に海上からの視点を提供することは、統合部隊の目標達成にとって極めて重要である。この取組みを支援するため、統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)は他の構成部隊や国家レベルのアセットを活用し、海上作戦に最適な支援を提供するよう提唱する。このように、沿岸部隊(littoral force)が統合作戦にインテリジェンス支援を提供する役割は、限られたインテリジェンス資源を配分し、統合部隊の作戦を計画策定し実行する上で不可欠である。
特殊作戦部隊(SOF)の一体化は、統合部隊一体化の重要な構成要素である。特殊作戦部隊(SOF)は、インテリジェンス作戦への支援を通じて、遠征前進基地作戦(EABO)と沿岸部隊(littoral force)に最大の価値を提供する。協力と競争の初期段階において、特殊作戦部隊(SOF)独自の権限、関係、能力は、優先的な情報要求に答え、作戦環境を明らかにするのに役立つ。
特殊作戦部隊(SOF)は、前方で小さく適合させた足跡(tailored footprint)で作戦し、通常、他の機関、連合、土着のパートナー(indigenous partners)と協力し、軍事活動を他のインテリジェンス・ネットワークに接続する。これらの環境準備(PE)活動は、統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)の取組みと指揮官の意思決定に情報を提供すると同時に、敵対者の意思決定サイクルの中で作戦する。
沿岸部隊(littoral force)が協力や紛争の初期段階で特殊作戦部隊(SOF)の作戦を可能にする一方で、特殊作戦部隊(SOF)の活動や作戦は、有利な条件を設定し、指揮官の意図を満たすように環境を準備し形成することによって、遠征前進基地作戦(EABO)と沿岸部隊(littoral force)を可能にする。海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)の戦略的形成部隊としての価値は、沿岸部隊(littoral force)を米特殊作戦コマンド、インテリジェンス機関、連合部隊、アセット、能力と結びつけることによって、より広範なインテリジェンス収集を支援することになる。
この暫定マニュアルでは、番号のついた艦隊とのインテリジェンスの一体化には、艦隊の情報要件に照らした収集、ターゲッティング・データ、収集タスク、戦闘被害評価(battle-damage assessments)、戦術的実行時のインテリジェンス見積の共有が含まれる。同様に、戦域一体化には、常設の統合情報センターと統合インテリジェンス作戦センターとの調整、および他の軍種構成部隊との統合インテリジェンス調整も含まれる場合がある。
インテリジェンス・コミュニティ(IC)との一体化は、国家インテリジェンス見積を検証し利用すること、リアルタイムのインテリジェンス放送や収集線にアクセスし貢献すること、国家の収集要件を満たすことなどで構成される場合がある。最後に、同盟国やパートナーとの一体化は、現地の雰囲気を収集し、アクセスの仮定を検証し、彼らの収集プラットフォームやデータを活用することからなる。
4.5 作戦環境:OPERATIONAL ENVIRONMENT
作戦環境(OE)とは、「能力の運用(employment of capabilities)に影響を与え、指揮官の意思決定に影響を与える条件、状況、影響の複合体[6]」である。陸上、海上、航空、宇宙、サイバースペースの各ドメインと電磁スペクトラム、情報環境などが含まれる。インテリジェンス作戦は、遠征前進基地作戦(EABO)の計画策定を支援するために、各ドメインの沿岸地域に焦点を合わせる必要がある。
沿岸部の作戦環境(OE)を理解することで、遠征前進基地作戦(EABO)の問題設定、戦闘空間(battlespace)の幾何学的配置の決定、資源不足の特定、重要情報要件の特定、および評価手段(assessment measures)の策定が可能になる。これらの側面はすべて、将来の作戦のための作戦環境(OE)ベースラインを開発するために、競争というレンズを通して理解されなければならない。
作戦環境の統合インテリジェンス準備(joint intelligence preparation of the operational environment :JIPOE)プロセスの原則と各段(step)は、遠征前進基地作戦(EABO)でも他のタイプの作戦と変わりはない。しかし、遠征前進基地作戦(EABO)を効果的に支援するためには、このプロセスで、海上環境全体で作戦を遂行する際の海軍のマルチドメインにわたる配慮を一体化しなければならない。
4.5.1 争われた空間:Contested Space
遠征前進基地作戦(EABO)は、時間と空間によって異なる不確実で敵対的な環境を含む、争奪された海洋環境において実行される。これらの環境が国家または非国家主体によって影響または統制されているかどうかにかかわらず、沿岸部隊(littoral force)は、目標達成能力を制限、中断、劣化、または否定することができる様々な直接的および間接的なマルチドメインの脅威に直面している。
このように争いの絶えない空間は、インテリジェンス作戦にとって多くの課題をもたらすが、中でも遠征前進基地作戦(EABO)の特性を順守することが重要である[7]。また、インテリジェンス収集を容易にするための作戦的活動をどのように計画し、実行するかを理解することも大きな課題である。
敵対者が沿岸部隊(littoral force)の行動の自由(freedom of action)を阻害しようとする紛争環境では、沿岸部隊(littoral force)の活動は敵対者の反応を誘発し、沿岸部隊(littoral force)が将来の競争上または戦闘上の優位性のために利用できる能力または脆弱性を露出させることができる。この「インテリジェンス主導の作戦(intelligence led operations)」という考え方は、以下の4.6節でさらに詳しく説明する。いつものように、インテリジェンス計画担当者と作戦計画担当者の間で、緊密な調整と取組みの同期化が必要である。
沿岸部隊(littoral forces)は、競争状態にあるパートナーや同盟国との協力を促進し、エスカレーションが武力紛争に至った場合に作戦上の柔軟性を生み出すために、インテリジェンス作戦を計画・実行する。作戦環境(OE)のベースラインを確立し、海上ドメイン認識(MDA)を維持するには、作戦環境(OE)の持続的な認識と分析を行い、そこでの行動が競争を超えた意図のエスカレーションを構成するかどうかを判断する必要がある。
沿岸部隊(littoral forces)は、伝統的な物理環境の見方を超えて、情報環境(IE)の認識を含む認識を構築しなければならない。武力紛争以下の競争における敵対者の情報環境(IE)活動を理解することは、沿岸部隊(littoral force)が競争の連続体(competition continuum)全体の中で効果的に作戦する能力に直接影響を与えることができる。
図 4-1. 作戦環境には、すべての物理的ドメイン、サイバースペース、電磁スペクトラムが含まれる。インテリジェンス作戦は、競争の連続体(competition continuum)全体を通じて、友軍、敵、中立的な活動がEABOの取組みにどのような影響を与えるか、沿岸部隊(littoral force)に理解を提供することを目指している。 |
4.5.2 情報環境:The Information Environment
情報環境(IE)とは、情報を収集し、処理し、普及させ、または行動する個人、組織、およびシステムの集合体である[8]。この定義により、作戦環境(OE)に直接的、間接的に影響を与えることができる潜在的な変数の物理的範囲が拡大される。世界中の情報環境(IE)における行動は、沿岸部隊(littoral force)が指定された沿岸作戦環境(OE)において遠征前進基地作戦(EABO)を実施する能力を潜在的に阻害する可能性がある。
情報環境における作戦(OIE)を計画し実行するために、沿岸部隊(littoral forces)は、敵対者、友軍、および中立的な立場から、これらの実際の影響と潜在的な影響を理解する必要がある。一体化された作戦環境の統合インテリジェンス準備(JIPOE)プロセスの一部として、沿岸部隊(littoral forces)は作戦環境(OE)と情報環境(IE)の両方の物理的、人的、情報的側面を分析する必要がある。
物理的側面とは、コミュニケーションを強化または阻害する自然および人工的な環境特性のことである。人間の側面とは、人間同士や環境との相互作用に影響を与える要素である。作戦環境(OE)の情報的側面は、個人、群、およびシステムが情報を伝達し交換する方法を反映する。沿岸地域におけるこれらの側面の相互作用は、遠征前進基地作戦(EABO)の計画策定と実行を複雑化させるが、任務を成功させるためには説明されなければならない。
インテリジェンス作戦は、情報環境(IE)における敵対者の能力を認識させる。電磁スペクトラム、サイバースペース、宇宙空間を利用することは、友軍のネットワークを防護し、敵対者のネットワーク、システム、情報を特定し、攻撃・利用するために不可欠である。インテリジェンス分析はまた、影響力作戦及び欺瞞作戦の計画策定と実行に情報を提供するために、ターゲットとする聴衆、関連する行為主体、主要な影響者及び意思決定者の特定を支援することができる。
4.5.3 沿岸の環境:The Littoral Environment
統合海上作戦は、ブルー・ウォーター(公海と外洋)、グリーン・ウォーター(沿岸水域、港湾)、ブラウン・ウォーター(航行可能な河川、湖、湾、河口)、沿岸陸域で展開される[9]。各海域には固有の特性があり、インテリジェンスの取組みによって、沿岸部隊指揮官(LFC)が情報に基づいた作戦決定を行うために必要な情報を提供する必要がある。
遠征前進基地作戦(EABO)は海上ドメイン全体に関係するが、沿岸域で発生するように最適化されている。沿岸部隊(littoral forces)は、沿岸域を海域と陸域の2つの区分で定義される1つの連続した地域として認識しなければならない。海域の区分は、外洋から海岸の高水位までの地域を含み、沿岸部隊(littoral forces)は陸上での作戦を支援するためにこれを制圧しなければならない。
陸域セグメントには、沿岸部隊(littoral forces)が海から直接支援・防衛しようとする内陸部が含まれる。沿岸部の作戦環境(OE)に対する作戦環境の統合インテリジェンス準備(JIPOE)は、潜在的な脅威に対応して、敵の部隊がそれぞれの区間でどのように作戦するかを含め、両区間の敵対者の能力と制約を考慮しなければならない。
沿岸地域にはクロス・ドメインの物理的特性があり、世界中の敵対者や同盟国にとって海上の緊要地形(key maritime terrain)を形成している。遠征前進基地作戦(EABO)は、海軍がこれらの地域で効果的に作戦する能力を通じて、海上統制(sea control)と海上拒否(sea denial)を支援するための行動を形成し、事象に影響を与えることを可能にする。沿岸部隊(littoral force)の指揮官は、沿岸地域を友軍部隊と敵対者の部隊にとって緊要地形にしている要素を理解する必要がある。
一体化した作戦環境の統合インテリジェンス準備(JIPOE)プロセスは、沿岸部隊(littoral forces)がさまざまな任務を遂行する沿岸作戦環境(OE)の基本的理解を確立するものである。沿岸環境の独特な物理的特性と影響、およびその環境下での敵対者の能力と行動方針(courses of action)を理解することは、遠征前進基地作戦(EABO)の計画策定を円滑に進めることになる。
図4-2. 沿岸環境は、海域と陸域の物理的領域と、より大きな海洋環境における国際的な法的考察の複雑な組み合わせを含む。 |
4.5.4 システム分析と市民社会の考慮事項:Systems Analysis and Civil considerations (PMESII/ASCOPE)
作戦環境の物理的な側面以外の変数も作戦に影響を与える。遠征前進基地作戦(EABO)は、海上ドメイン特有の外交、情報、軍事、経済、法的側面を理解する必要がある。
沿岸環境は、物理的地形、民間および商業インフラ、国際法および州法、ならびに文化および社会力学が複雑に交錯して構成されている。これらの変数を考慮するため、沿岸部隊(littoral forces)は、沿岸部の作戦環境評価(OE assessment)を支援する一体化した作戦環境の統合インテリジェンス準備(JIPOE)プロセスの一部として、システムおよび文民の考慮事項の分析を行うべきである。
システムの視点は、政治、軍事、経済、社会、インフラ、情報(PMESII)システムとサブシステムを通して地域を捉え、それらのシステムがどのように相互作用し、作戦環境(OE)に影響を与えるかを分析する。沿岸部の作戦環境(OE)に関連するシステムの構成と相互作用を理解することは、沿岸部の部隊が、目標を達成するための条件を設定し、武力紛争に発展する可能性に備えるための最善の方法を決定するのに役立つ。
作戦環境(OE)を正確にシステムとしてとらえるには、統合部隊の参謀が部門横断的に参加し、さまざまなインテリジェンス組織、米政府機関、および非政府の主題専門家と協力することが必要である[10]。この一体化と調整により、指揮の階層(echelons of command)を超えた沿岸部の作戦環境(OE)に対する共通の理解が得られる。計画担当者は、「作戦環境の統合インテリジェンス準備(Joint Intelligence Preparation of the Operational Environment)」JP 2-01.3で、システム分析のより包括的な議論を見ることができる。
沿岸部の作戦環境(OE)における文民的配慮を理解することは、競争における沿岸部隊(littoral force)の効果的な行動に不可欠である。沿岸部隊(littoral forces)の情報環境における作戦(OIE)と競争における行動形成は、行動の自由(freedom of action)を最大化するための条件を設定することを目指す。市民的配慮のフレームワークを構築することは、沿岸部隊(littoral forces)が遠征前進基地作戦(EABO)を実施する可能性が高い沿岸作戦環境(OE)に特有な地域、構造、能力、組織、人、出来事(ASCOPE)の基本認識を確立することになる。
地域、構造、能力、組織、人、出来事(ASCOPE)フレームワークは、将来の遠征前進基地作戦(EABO)任務を可能にするために満たすべき重要な条件の現状を沿岸部隊指揮官(LFC)に理解させるものである。最初の地域、構造、能力、組織、人、出来事評価(ASCOPE assessment)から、沿岸部隊(littoral forces)は情報環境における作戦(OIE)を計画・実行し、遠征前進基地作戦(EABO)の実行を可能にするために条件に影響を与え、環境を形成し続ける必要がある。計画担当者は、地域、構造、能力、組織、人、出来事(ASCOPE)のフレームワークについて、「民軍作戦(Civil-Military Operations)」(JP 3-57)でより詳細に論じることができる。
海兵隊のインテリジェンス・監視・偵察機関(MCISRE)は、競争から紛争への移行に向けた継続的な準備として、ターゲット・システム分析(TSA)と呼ばれる自由なプロセスを通じて、あらゆるソースを融合した情報を活用して、交戦時に沿岸部隊指揮官(LFC)の目標達成に貢献する望ましい効果を生み出す可能性が最も高いターゲットを選択し、そのシステムを分析する。
ターゲット・システム分析(TSA)は、敵対者のターゲット・システムとその構成要素を特定、記述、評価し、その様々な機能、能力、要件、脆弱性を判断するプロセスである。ターゲット・システム分析(TSA)はさらに、敵対者が競争または敵対的な作戦中に成功裏に関与する能力を弱めるターゲット・システムの脆弱性(例えば、実体レベルでのターゲット開発)を利用するために改良される。
このプロセスは、政治、軍事、経済、社会、インフラ、情報(PMESII)システムまたは地域、構造、能力、組織、人、出来事(ASCOPE)フレームワークのサブシステムとコンポーネントのような情報環境(IE)のターゲットを識別するために、競争段階の作戦中に使用するために適応することができる。計画担当者とアナリストは、ターゲット・システム分析のより詳細な議論を統合ターゲッティング学校学生ガイド(Joint targeting School Student Guide)で見つけることができる[11]。
4.6 一体化された海軍のインテリジェンス・プロセス:INTEGRATED NAVAL INTELLIGENCE PROCESS:
沿岸部隊(littoral forces)は、沿岸部隊(littoral force)の参謀、沿岸部隊(littoral force)のインテリジェンス実現可能者、さらに上位の指揮の階層(echelons of command)など、あらゆるレベルで海兵隊と海軍のインテリジェンスの取組みを一体化しなければならない。
この一体化は、複数の取組みの目標(lines of effort)にわたって行われる必要がある。
- 一体化したシステムの運用
- システムの相互運用性を確保する
- 機能横断的な熟練度を高めるための沿岸部隊(littoral force)の訓練と演習
- 学際的なインテリジェンスの習熟を確保する
- Synchronizing boards, bureaus, centers, cells, and working groups (B2C2WG) at echelon
- 委員会(boards)、事務局(bureaus)、センター、セル、ワーキング・グループ(B2C2WG)の部隊階層での同期化
機能横断的熟練度は、インテリジェンス作戦を他の用兵機能(warfighting functions)の活動に組み入れることを目指すものである。学際的な熟練度は、作戦の計画策定と実行を支援するために、1種類のインテリジェンスに過度に依存するのを避けるのに役立つ。沿岸部隊(littoral forces)は、海軍と海兵隊の能力と資源を横断するインテリジェンスの取組みの能力を最大化するため、両方の熟練度を追求すべきである。
沿岸部隊(littoral forces)は、連携、協力、協力を通じ、統合・連合環境で作戦する艦隊のアセットとして、海軍の一体化を活用する。沿岸部隊(littoral force)の海兵隊のインテリジェンス・監視・偵察(ISR)能力は、より高い梯団の要求に応えるために使用されることがある。例えば、沿岸部隊(littoral forces)は戦術レベルでのインテリジェンスの取組み(海上共通作戦画像、分析成果物、評価(assessments)、情報環境(IE)実行予測)を融合し、上位の部隊階層や大規模なインテリジェンス・コミュニティ(IC)に作戦環境(OE)認識を提供することが可能である。
大規模な統合環境において、沿岸部隊指揮官(LFC)は海軍と統合の高次のアセットと能力を採用、一体化して、インテリジェンス融合を強化することができる。統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)や戦闘軍J-2の資源や収集プロセスと協力しながら、沿岸部隊(littoral force)は「指揮、統制、通信、コンピュータ、戦闘システム、インテリジェンス・監視・偵察・ターゲッティング(C5ISRT)」をスタンド・イン部隊として拡張する。
沿岸部隊(littoral force)レベル以上のインテリジェンスの一体化は、番号のついた艦隊や海兵遠征部隊(MEF)の司令部レベルのインテリジェンス部署(intelligence sections)で行わなければならない。沿岸部隊(littoral force)が作成したインテリジェンスは、艦隊や中隊の情報と融合され、他の沿岸部隊(littoral forces)や隣接する海軍や海兵隊の部隊に、戦域全体における統合作戦環境(OE)の持続的な認識と幅広い理解を提供する必要がある。このことは、広い地域にわたって作戦意識を提供するインテリジェンス作戦のプッシュ・プルの本質を強調するものである。
4.6.1 活動を基盤とするインテリジェンス:Activity-Based Intelligence
活動ベースのインテリジェンス(Activity-based intelligence :ABI)は、沿岸部隊(littoral forces)が統合部隊が収集した大量のデータを十分に活用するために用いることができる分析手法である。活動ベースのインテリジェンス(ABI)は、関連データを迅速に一体化し、地域ごとの評価や指示・警告を行うことで、遠征前進基地作戦(EABO)を支援することができる。活動ベースのインテリジェンス(ABI)の課題は、海軍のインテリジェンス分析者がこの手法を戦術レベルでどの程度まで実行し、遠征前進基地作戦(EABO)を支援できるかを判断することである。
従来のインテリジェンス分析では、全情報分析官がさまざまなインテリジェンス分野から集めた専門的な報告を組み合わせて、融合されたインテリジェンス成果物や評価結果を作成する。活動ベースのインテリジェンス(ABI)では、収集されたデータは、最初の収集を担当した特定のインテリジェンス分野の専門家が分析する前に一体化される。
活動ベースのインテリジェンス(ABI)は、マルチドメイン・センサーやソースからのビッグ・データ内の力と指標を最大化するようにデザインされている。活動ベースのインテリジェンス(ABI)は、作戦環境(OE)と情報環境(IE)内の活動、出来事、行為主体とシステムの相互作用からのデータと指標を迅速に一体化し、関連するパターンと異常を識別して特性付けることで、指揮官の意思決定に優位性をもたらすことを目指している。
沿岸部隊(littoral forces)は、指揮・統制(C2)劣化訓練環境において活動ベースのインテリジェンス(ABI)を試験・訓練し、この方法を戦術レベルで採用することに伴う制約(constraints)と限界を理解する必要がある。活動ベースのインテリジェンス(ABI)は、作戦環境(OE)に影響を与える作戦上最も重要な要因を理解するために、適切かつタイムリーな報告へのアクセスを必要とする。
これは紛争中の海上環境では実行が困難な場合がある。このような手続き上の制約を理解し、訓練することによって、戦術的インテリジェンス実現者(enablers)の活動ベースのインテリジェンス(ABI)要件と、リーチバック・支援を必要とするものを特定する分析的戦術、技術、手続き(TTP)を生み出すことができる。
活動ベースのインテリジェンス(ABI)は、アーカイブされたデータと最新データの間、および偶発的な収集とターゲットとなる収集のための計画された任務の間のシーケンスに中立的である。地理的に参照されたレポートが特定されると、全体的な全データ分析により、歴史的な文脈を持つマルチソースの成果物が生成される。活動ベースのインテリジェンス(ABI)を活用することで、沿岸部隊(littoral force)はセンサーを動的に操作し、部隊防護(force protection)を提供し、ターゲットとするインテリジェンスを開発し、効果的な戦闘空間認識(battlespace awareness)を獲得・維持する能力を強化することができる。
活動ベースのインテリジェンス(ABI)を完全に活用するためには、沿岸部隊(littoral forces)は、番号のついた艦隊および海兵遠征部隊(MEF)のインテリジェンス部署から支援を受ける必要がある。この支援は、利用可能なデータへの最大限のアクセスを確保し、劣化した通信環境での作戦の潜在的影響を軽減するために必要である。
前方部隊と後方支援部隊の一体化をこのレベルで達成するには、両者の間に深い親密さが必要である。活動ベースのインテリジェンス(ABI)の方法論と前方部隊とリーチバック支援の効果的な一体化は、紛争中の海上環境で作戦する際の習熟度を確保するため、あらゆる機会で練習・演習する必要がある。
活動ベースのインテリジェンス(ABI)の実行が成功するかどうかは、遠征前進基地作戦(EABO)を支援するために以下のような配慮が必要である(ただし、これらに限定されるものではない)。
- 戦闘空間認識(battlespace awareness):沿岸部の陸域と海域を常時監視し、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)の収集、オープン・ソースのインテリジェンス、気象・海洋情報など、あらゆる情報源を活用すること。
- 敵対者の意図と能力に関する知識を習得し、敵対者がいつ、どこで、どのように作戦するかを理解する。
- 指揮官の要求を満たすために、あらゆる用兵ドメイン(warfighting domains)におけるインテリジェンス、対インテリジェンス、偵察の複合的な作戦を計画、指揮する
- インテリジェンス資源を配分し、インテリジェンス部署、作戦部署、その他の参謀部署間の計画策定・指示を一体化する。
- 沿岸地域(littoral area)の偵察・監視を行う。
- 収集した情報を、さらなる分析と行動に適した形に変換する。
- 海上での争奪戦において、独自に収集した情報および統合インテリジェンスの技術的処理と活用を行う。
- 異常な活動パターンと正常な活動パターンを区別する
- 即座に発見することが可能なマルチドメイン、ジオリファレンスデータの一体化
- 人工知能や機械学習の開発・活用による関連データ処理の支援
4.6.2 全事業体の探知活動の支援:Support to the Sensing Enterprise
遠征前進基地作戦(EABO)は本来、海軍のセンサー・ネットワークを拡張するものである。エンタープライズ・サービスとしての探知は、海軍のインテリジェンス・監視・偵察(ISR)作戦のためのコンセプト的なビジョンである。このアプローチは、探知のパラダイムを特定の作戦に特化したものから、多くの独立したユーザーの同時ニーズを支援し、より包括的な状況把握と戦闘空間認識(battlespace awareness)を提供する、より広範なサービスへと移行することを目指す。
センサーとマルチユーザー情報サービス(ユーザー・ソフトウェア・インターフェース)を組み合わせることで、サービスとしての探知は海軍と統合部隊の意思決定の優位性を高める。遠征前進基地作戦(EABO)期間中の海兵隊の収集プラットフォームの使用は、エンタープライズ・探知・ネットワークを拡張する上で重要な役割を果たす。
海軍は、一体化された海上インテリジェンスの標準、プロセス、センサー・アーキテクチャを活用し、インテリジェンス・監視・偵察(ISR)の能力と資源を、従来の組織や地理的制約にとらわれず、最も必要とされる場所に柔軟かつダイナミックに、そして迅速に適用しようと努めている。理想的には、海軍全体の人材、システム、データ、ネットワーク、サービスの広範なネットワークが、任務に応じて拡大し、他の海軍、統合部隊(joint force)、連合パートナー、インテリジェンス・コミュニティ(IC)、その他の政府機関や組織からの要素を取り込むことが必要である。
全部隊の探知への支援が成功するかどうかは、遠征前進基地作戦(EABO)を支援するために以下の点を考慮する必要があるが、これらに限定されるものではない。
- 海軍の共通インテリジェンス図に貢献する
- マルチドメイン・プラットフォーム間の協力的な交戦を可能にする共通の戦術的作戦図と戦術的インテリジェンス図の共有
- 海軍のインテリジェンス・監視・偵察(ISR)全体事業の一環として、船上および陸上でインテリジェンス・監視・偵察(ISR)任務の計画策定を立案し、争いのある環境下で実施すること
- 海軍および統合インテリジェンス組織に対する命令、要請、または任務の遂行
- 艦隊センサーとの一体化、人工知能の活用により、収集要件と収集作戦を管理
- 非インテリジェンス、統合、および連合センサーからのデータ取り込み
- 冗長な通信経路を介し、シグネチャ管理要件に従って何層ものインテリジェンス収集データを計画し、配布する。
- 作戦環境(OE)の地表、上空、下空、および電磁スペクトラムにおける受動的および能動的な戦闘空間(battlespace)探知を支援する。
- 船上および陸上で、有機的、統合的、および複合的なセンサーデータから表示と警告を提供する。
- 沿岸部隊(littoral force)の火力アーキテクチャおよび海軍作戦アーキテクチャ(NOA)と一体化し、センサーとシューターをリンクさせ、瞬時の検知-決心-行動サイクルを実現することで、キル・チェーンのタイムラインを短縮し、動的で応答性の高いターゲッティングとリアル・タイム評価(real- time assessments)により艦隊の致死性を向上させる。
- 沿岸部隊(littoral force)および指定された複合戦指揮官のために、有機センサー、海軍センサー、統合センサーを使用して、海兵隊有機火器の最大有効射程を超えて敵対者の海軍および代理軍を探知し、識別し、ターゲットとする品質の位置データを導き出すこと。
4.6.3 収集の計画策定:Collections Planning
収集には、作戦環境(OE)と情報環境(IE)ベースライン開発の確立、海上ドメイン認識(MDA)と情報環境(IE)戦闘空間認識(battlespace awareness)の獲得と維持、シグネチャ管理と部隊防護(force protection)への情報提供、評価の支援など、計画策定と作戦上の取組みを支援する特定の情報要件を満たすために必要なデータの取得に関する活動が含まれる[12]。
日々の沿岸部隊(littoral force)の収集活動は、上位部隊階層の収集要件を支援し、遠征前進基地作戦(EABO)を実行するための条件を設定する必要がある。戦域全体の部隊の海上ドメイン認識(MDA)を維持することは、持続的な要件である。戦域の収集要件への支援とともに、沿岸部隊(littoral forces)は、武力紛争への潜在的なエスカレーションに備えるため、競争間の敵対者と中立国の活動に関する海上作戦環境(OE)ベースラインを継続的に開発する必要がある。
一体化された作戦環境の統合インテリジェンス準備(JIPOE)プロセスから引き出された重要な要素によって、沿岸部隊(littoral force)の参謀や指揮官は、沿岸部隊(littoral force)の作戦環境(OE)内の緊要地形、敵対者の配置と能力、関連する行為主体、ターゲットとする聴衆、主要な意思決定者を見極め、それに対して収集取組みを集中させることができる。
インテリジェンス収集は、戦争のすべてのレベル、そして競争の連続体(competition continuum)全体における評価を支援するために不可欠である。戦略的評価(strategic assessment)および作戦的評価(operational assessment)の取組みは、広範なタスク、効果、目標、および特定の最終状態(end states)への進展に集中する[13]。沿岸部隊(littoral force)の情報収集プラットフォームは、このアプローチで、潜在的な遠征前進基地作戦(EABO)を支援する海洋環境形成の取組みの成否を評価する必要がある。
収集計画の計画策定と実行が成功するかどうかは、遠征前進基地作戦(EABO)を支援するために以下の点を考慮する必要がある(ただし、これらに限定されるものではない)。
- 特定された要件を満たすために、すべてのドメインのあらゆるインテリジェンス分野からインテリジェンス・データおよび情報を収集する。
- 時間帯や天候に左右されない永続的かつ復元的なセンサー作戦の実現
- 作戦のインテリジェンス指向型および非インテリジェンス型センサーの運用範囲を可視化し、マルチドメイン・センサーを重ね、収集のギャップを埋める。
- 遠征前進基地(EAB)の部隊が部隊防護(force protection)とターゲッティング・データを受け取ることができるように、複数の通信経路で収集データを普及させるとともに、統合ターゲティングの取組みを支援する。
- 沿岸部隊(littoral force)の関心地域(area of interest)における沿岸および海軍のターゲットについて、迅速かつ正確な戦闘評価(combat assessments)を実施する。
- 戦闘被害評価(battle damage assessment)の実施
4.6.4 シグネチャ管理:Signature Management
シグネチャ管理は、敵対者の兵器交戦ゾーン(WEZ)内で遠征前進基地作戦(EABO)任務を遂行する海兵隊員の残存性に不可欠である。観測・測定可能なシグネチャを変更・制限する能力は、遠征前進基地作戦(EABO)を支援する要員とシステムの識別とターゲットをより困難にすることで、その能力と熟練度を維持・拡大することができる。
敵対者は友軍の位置、目的、人員、システムの特定を支援するために、様々な収集と探知のプラットフォームを使用する。シグネチャ管理に対するインテリジェンス支援は、これらの敵対者の収集とターゲッティング・アセットに重点を置くべきである。
その狙いは、沿岸部隊(littoral force)の計画担当者が、敵対者の収集と搾取に対して最も脆弱なシグネチャは何かを判断できるような、全体的な脅威像を開発することである。この分析には、センサーの種類と利用可能性、センサーから意思決定者への経路に焦点を当てた導管分析(conduit analysis)、友軍の活動分野に焦点を当てた敵対者の収集アセットの特定の種類、特定の任務を遂行する友軍の能力に対する敵対者の理解などが含まれるべきである。
収集とターゲッティングの能力が特定されると、インテリジェンス計画担当者と作戦計画担当者は協力して、敵対者の情報と意思決定のプロセスを理解する必要がある。
導管分析(Conduit analysis)および放出分析(emulative analysis)は、分析すべき収集およびターゲッティング・アセットを決定した後に実施されなければならない。沿岸部隊(littoral forces)の課題は、戦術的インテリジェンス分析者が友軍シグネチャ管理の分析を支援するために、どの程度の詳細さと理解を得ることができるかを決定するために必要なテストと実験である。
指揮・統制(C2)が劣化または拒否された環境での遠征前進基地作戦(EABO)に備えるため、沿岸部隊(littoral forces)は前方の海洋環境における戦術レベルでの制約(constraints)と限界について、理解を深め、テストする必要がある。このような分析の取組みには、番号のついた艦隊や海兵遠征部隊(MEF)のインテリジェンス部署へのリーチバック支援が必要かもしれないが、シグネチャ管理作業を支援するために、関連するインテリジェンス分析を前方部隊に配布するという課題にも対応しなければならない。
導管分析(Conduit analysis)は、作戦保全と欺瞞計画策定の重要な支援活動である。これは、センサーから意思決定者までの情報やインテリジェンスの経路をマッピングするシステム・アプローチで、クロスキュー、ノード間の送信時間、フィルターの効果、インテリジェンスの融合と発信の時間などが含まれる。
放出分析(Emulative analysis)とは、敵対者の意思決定者のバイアス、知覚()、素因を心理学的、社会学的に理解し、敵対者が入手可能な情報に基づいてどのように行動するかを特定するためのものである。
敵対者のターゲッティング活動に導管分析(conduit analysis)を適用すると、キル・チェーン分析につながる。キル・チェーンとは、部隊が目標を発見、固定、追跡、ターゲット、交戦、評価(F2T2EA)するプロセスを記述するものである。この分析は、残存性のための効果的なシグネチャ管理を計画策定するのに重要である。沿岸部隊(littoral forces)は、敵対者がどのように友軍の行動を観察し、友軍の能力をターゲットとするかを理解しなければならない。
敵対者のプロセスを理解することで、沿岸部隊(littoral forces)は、敵対者のプロセスにとって見えない、あるいは重要でないシグネチャを管理するために、時間と資源を浪費することを避けることができる。このような依存的活動の連鎖は、攻勢的行動だけでなく、能動的・受動的な防御的手段によっても、混乱、破壊、または敗北の機会をもたらす。シグネチャ管理への全体的なアプローチを通じて、インテリジェンス作戦は沿岸部隊(littoral force)の対インテリジェンス・監視・偵察(counter-ISR)および欺瞞の取組みを支援することができる。
シグネチャ管理作戦に対するインテリジェンス支援の計画策定と実行が成功するかどうかは、遠征前進基地作戦(EABO)の以下の検討事項に依存するが、これに限定されるものではない。
- 情報環境(IE)での防護活動支援
- 自軍の電磁シグネチャを測定・監視し、その管理を可能にするとともに、作戦中の検知を回避する。
- 化学、生物、放射線、核、爆発物のシグネチャを探知する
- センサー・トゥ・シューター、キル・チェーン(=F2T2EA)解析の実施
- 友軍による後方支援作戦に関連するマルチドメイン・インジケータとシグネチャを決定する。
- 敵対者による友軍の監視を検知し、ターゲティング・データの電子的な対策を提供する。
- 重要技術防護を支援する対インテリジェンス活動の実施
第4章 挿話:Vignette
ショルダー・トゥ・ショルダー演習-203x年 EXERCISE SHOULDER-TO-SHOULDER—203X インテリジェンス主導の作戦を実践する Practicing Intelligence-led Operations 203X演習「ショルダー・トゥ・ショルダー」では、インテリジェンス主導の作戦を「実践(practice)」することが大きな焦点となった。「実践(practice)」という言葉が引用されているのは、2021年に暫定マニュアルが発表されて以来、ほとんどの海兵隊員が、ショルダー・トゥ・ショルダーのような演習は単なる訓練や「実践(practice)」以上のものであり、環境ベースラインの確立に貢献するものだと認識していたからである。それ以来、コンタクト層における訓練と作戦の境界線が曖昧になっていた。 演習では、射撃小隊とセンサー部隊が、ダコタ(Dakota)海兵隊の部隊と一緒に残存性の高い変位をリハーサルした。これには、デコイの使用、シグネチャの測定と管理、商用通信網を可能な限り使用する練習も含まれていた。もちろん、海兵隊はいくつかの訓練と準備の基準を満たすように取組んだ。さらに、急速補給の訓練も行った。 もうひとつは、この演習によって環境が刺激され、進化する偵察・反偵察の戦いを観察することが可能になったことである。この演習のインテリジェンス担当上級将校であったドレイク少佐は、演習後の報告会で次のような感想を述べている。 注意点として、この演習は作戦環境での反応を引き起こすために行った部分もある。転置訓練は、射撃小隊とセンサー小隊にとって良い訓練となり、ダック海兵隊の戦域安全保障協力(TSC)は成功した。しかし、それと同じくらい、長い目で見ればもっと価値があるのは、この演習が「環境を刺激」することである。誰がどのように我々を捕まえようとしているのか、明らかにすることができた。指揮官への事後報告をまとめるにあたって、強調したいことがいくつかある。 まず、ダコタ(Dakota)ビルの町付近の地元住民の中に、我々の活動を報告するためにお金をもらっている人がいるのではないかと疑ってみた。発砲小隊を町の郊外に追いやったときにわかったことを、1枚のスライドと1ページのナレーションで説明できるようにしよう。すべてをデータベースに入れて、自動化されたツールがHET(Human Intelligence Exploitation Team)レポート、SIGINTヒット、ソーシャル・メディア・スクレイプなどの間に何か相関関係を見つけられるかどうか見てみよう。 また、観測者を探し、その行動をデータベースの出力と照合するために、任意のフル・モーション・ビデオ(FMV)が含まれていることを確認する必要がある。最後に、小型無人機が使用する周波数について収集したものと、フル・モーション・ビデオ(FMV)の関連付けも行おう。海兵隊が演習中に小型・超小型無人航空機(UAV)の上空通過を数回報告したのは知っているので、それらも追跡する必要がある。 さて、これで近接の闘いは大丈夫だと思う。次は長距離センサーのスライドである。電磁スペクトラム(EMS)から始めよう。パッシブ・センサーはレーダーを拾ったか?帯域を示し、商業、海上、航行、天候、捜索などの種類を推定する必要がある。そして、これらのセンサーがどのように反応したかを示す必要がある。また、演習部隊が放出統制(EMCON)を出たり入ったりして電磁スペクトラム(EMS)プロファイルを変更したとき、あるいは地元の携帯電話ネットワークに移行したときに反応があったかどうかを知る必要がある。 最後に、演習前に提出したすべての収集依頼のアウトプットを引き出して一体化してみよう。我々が収集したセントラリア民主共和国(DRC)側からの移転に伴う反応について、指揮官(CO)のためにマルチドメインの画像を作成したいと思う。特に「浅堆域ジョン(John’s Bank)」のセントラリア民主共和国(DRC)漁船に関心があった。我々が移動したとき、彼らは場所を変えたり、信号を発したりしたのだろうか。補給訓練で我々の信号が増えたらどうなったか?などなど。 よし、何か質問は?仕事に取り掛かろう。 |
ノート
[1] JCS, Joint Maritime Operations, JP 3-32, III-8.
[2] 【訳者註】信号理論におけるノイズ゙発生の尺度
[3] Headquarters, US Marine Corps, Intelligence, MCDP 2 (Washington, DC: US Marine Corps, 2018), 1-5.
[4] Joint Chiefs of Staff, Joint Intelligence, JP 2-0 (Washington, DC: US Department of Defense, 2013), I-3.
[5] JCS, Joint Maritime Operations, JP 3-32, II-9.
[6] Joint Chiefs of Staff, DOD Dictionary of Military and Associated Terms (Washington, DC: US Department of Defense, 2020), 160.
[7] EABO characteristics include stand-in engagement, low signature, etc. Refer to subsection 1.6, “Characteristics of Expeditionary Advanced Base Operations” for the complete list.
[8] JCS, DOD Dictionary, 104.
[9] JCS, Joint Maritime Operations, JP 3-32, I-7.
[10] Joint Chiefs of Staff, Joint Intelligence Preparation of the Operational Environment, JP 2-01.3 (Washington, DC: US Department of Defense, 2014), II-44.
[11] Joint Targeting School, “Joint Targeting School Student Guide” (student guide, 1 March 2017), https://www.jcs.mil/Portals/36/Documents/Doctrine/training/jts/jts_studentguide.pdf?ver=2017-12-29-171316-067.
[12] JCS, Joint Intelligence, JP 2-0, I-15.
[13] JCS, Joint Intelligence, JP 2-0, IV-12.