バーチャルリアリティは、兵士が軍の極超音速兵器のプロトタイプを形作っていくのを手助けする

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最近でも、「現実感が得られなければ、仮想訓練の意味はない・・米陸軍の課題への取り組み」(2019年12月6日)や「米陸軍は実動訓練および仮想訓練での現実性の向上を追求している」(2019年12月10日)で仮想環境(Virtual Environment)の米陸軍での活用状況について紹介してきたところである。米陸軍はこれまでも訓練レベルで、情報通信技術(ICT)をふんだんに活用してきているところである。STEと呼ばれる合成訓練環境(Synthetic Training Environment)は、現在有する統合訓練環境(Integrated Training Environment : ITE)を近年の仮想現実等の技術の進展を取り入れた新たな訓練環境へと移行させるものである。

また、軍事における仮想環境(Virtual Environment)の利用は、シミュレーションとして、新たな作戦コンセプトの開発やそのコンセプトを実現させるための装備品開発においてもなされてきたところである。

知的な強み(インテレクチャル・エッジ):将来の戦争と戦略的競争における競争上の優位性」(2020年3月3日) の冒頭でも述べているとおり、米国が敵対しているとする国の軍隊の最新装備は、米国の技術的優位性を凌ぐものになっているといわれる。そのため、これらに対抗できる装備品を開発しようとする場合、これまでの開発プロセスで開発しようとすると10年近くを要することになり、現場の部隊に提供できる頃には、相手は更に能力を向上させているということになる。

この解決の方法論として、仮想環境(Virtual Environment)の生成技術を駆使して、特に新装備を使用する兵士レベルでのフィードバックを早めることが試みられている。

この最新の状況について触れた米陸軍のサイトの記事を紹介するものである。米陸軍緊急能力及び重要技術部局(Army Rapid Capabilities and Critical Technologies Office)でも、同じ内容が確認できる。また、関連するロッキード・マーチン社の記事もある。(軍治)

バーチャルリアリティは、兵士が軍の極超音速兵器のプロトタイプを形作っていくのを手助けする – Virtual Reality helps Soldiers shape Army hypersonic weapon prototype –

米陸軍緊急能力及び重要技術部局(RCCTO)[1]

ナンシー・ジョーンズ・ボンブレスト

February 12, 2020

 

 兵士達は仮想現実を使用して、陸軍の新しいプロトタイプ長距離極超音速兵器(LRHW)の構成品を珍しそうに見ており、システムのデザイン方法に影響を与えている。

(写真提供:Lockeed Martin)

コロラド州デンバー発:瞬く間に、数トンのトラックとトレーラーは、その下にあるものを明らかにするために、その側に反転させられる。ボルトで固定された装備品は、数時間ではなく数秒で路外に動かされる。鳥瞰図により、最も細い開口部間の答えが明らかになる。

オクラホマ州フォートシルの兵士達は、バーチャルリアリティを使用して、米陸軍の新しいプロトタイプの長距離極超音速兵器(Long Range Hypersonic Weapon:LRHW)の構成品を珍しそうに見て、システムのデザイン方法に影響を与えている。

仮想現実(Virtual Reality)、拡張現実(Augmented Reality)、複合現実(Mixed Reality)技術の組み合わせにより、先月、兵士達は歩き回り、米陸軍の新しいプロトタイプの長距離極超音速兵器(LRHW)システムをインタラクティブで実寸大の3次元モデルとして「触る」ことができた。

協調化人間没入研究所(Collaborative Human Immersive Laboratory:CHIL)として知られる複合現実(Mixed Reality)ラボ内では、兵士達は作戦をよりよく理解し、改善点を提言するために、あらゆる角度から、あらゆる距離から装備品を見て、必要に応じて操作できる。

「我々は「洞窟」と呼ばれる場所の周りにグループで立つことができ、これにより、すべての人が輸送起立発射機(Transporter Erector Launcher)とミサイルを特別な眼鏡を通して3Dで見ることができた」と、フォート・シルの訓練開発とドクトリン総局の作戦訓練部局(Operational Training Division of the Directorate of Training Development and Doctrine[2])の主任である米陸軍中佐アーロン・ブライトは述べた。 「LRHWの一部を手でつかみ、無重力で横に動かして別の部分をよりよく見ることができ、システム全体がどのように機能するかをよりよく理解することができた。クレーンで数時間かかり、さらにツールで数時間かかる複数の種類のことを我々は数秒で自分自身ですることができた」

極超音速はしばしば未来的で複雑な技術と見なされるが、一見ローテクな装備に焦点を当てて受け取った入力は、兵士達の運用上の経験にとって重要である。例えば発電機の配置とそれへの接近、重量を減らすために取り外せる余分な機器、発電機の排気経路など、防護用のスキッド・プレートなどである。

プロトタイプが作られることで、この初期の兵士からのフィードバックは、応急処置の欠陥を特定し、運用能力を改善する方法を提供することに役立つ。この長距離極超音速兵器(LRHW)システムは、ミサイルと砲列運用センター(BOC)を備えた40フィートの輸送起立発射機(TEL)で構成されている。トラックとトレーラーを組み合わせたもの、および砲列運用センター(BOC)は、すべて既存の米陸軍在庫から取得され、そして、これまでこの方法で使用されたことのない新しい装備品を作成するために修正中である。

「米陸軍やその他の構成部署が持つほぼすべてのコンセプトに仮想現実(Virtual Reality)と拡張現実(Augmented Reality)を適用し、死活的なフィードバックを得ることができる」と、フォート・シルの火力高等研究所の第434野戦砲兵旅団第1-31野戦砲兵大隊のマイケル・ウィーバー曹長は言った。「開発プロセスの早い段階で潜在的な問題を特定することは、生産よりもコンセプト段階でデザインを調整する方が簡単で安価であるため非常に重要である」

米陸軍緊急能力及び重要技術部局(RCCTO)は、2023年度までにプロトタイプ長距離極超音速兵器(LRHW)を第一線の野戦砲列に提供する責任を負っている。長距離極超音速兵器(LRHW)は、移動式地上プラットフォームから発射する新しいクラスの超高速で機動可能な長距離ミサイルを導入する。プロトタイプには、共通極超音速滑空体(Common Hypersonic Glide Body:CHGB)、輸送起立発射機(TEL)、および砲列運用センター(BOC)を備えた極超音速ミサイルが含まれている。

この積極的なプロトタイプ化のスケジュールは、米陸軍が2年後にの最初の極超音速機能の提供をするもので、ハードウェアが兵士達のフィードバック用に修正および一体化されるまで待つことができない。仮想現実(Virtual Relity)は、兵士達の接触操作確認を早期かつ定期的に有効にすることで、その空間を埋めるものである。

「長距離極超音速兵器(LRHW)のスケジュールは非常にタイトである」と、米陸軍緊急能力及び重要技術部局(RCCTO)の陸軍極超音速プロジェクト部局の一体化プロジェクト責任者であるイアン・ハンフリー米陸軍大佐は述べている。「我々はそれを安全にしなければならず、非常に厳しい要件を満たさなければならない。長距離極超音速兵器(LRHW)はプロトタイプであるが、ここで得られる兵士のフィードバックは、プロセスの早い段階で運用上の情報を提供するものである。これは長距離極超音速兵器(LRHW)に通知するだけでなく、米陸軍の極超音速予算化事業の開発をも援助するものである」

協調化人間没入研究所(CHIL)の複合現実(Mixed Reality)は、仮想現実ヘッドセット(virtual reality headset)、3Dメガネ、ホログラム、ハンドヘルドコントローラーなどの機器を介したリアルタイムコラボレーションを可能にする。この施設は、ミサイル・スタック(missile stack)、共通極超音速滑空体(Common Hypersonic Glide Body:CHGB)、ミサイル収納筒を含む、ミサイル本体と収納筒(All Up Round plus Canister :AUR + C)を提供する契約下にあるロッキードマーティンの所有施設である。同社は長距離極超音速兵器(LRHW)プロトタイプのシステムインテグレーターとも務めている。

兵士達はプロセス全体に関与し、より一体化され修正されたハードウェアが利用可能になり、実際のシステムの周りを歩き回る機会が得られる。また、リモートサイトがシミュレーションを利用し、複数の場所からリアルタイムで対話できる協調化人間没入研究ネットワーク(CHILNET)を作成する計画も進行中である。

ノート

[1] 【訳者註】米陸軍緊急能力部局(Army Rapid Capabilities Office)は戦闘軍司令官の要求を満足する戦闘員の緊要な戦闘装備品能力の部隊装備化を促進するために2016年8月に設立された。2018年の12月にはその任務が拡大され米陸軍緊急能力及び重要技術部局(Army Rapid Capabilities and Critical Technologies Office)に名称が変更された。この部局はアラバマ州レッドストーン兵器敞に本部を置く。(https://rapidcapabilitiesoffice.army.mil/about/ を参照)

[2] 【訳者註】訓練開発とドクトリン総局(Directorate of Training Development and Doctrine)は米陸軍の米陸軍訓練ドクトリン司令部隷下の火力高等研究部署(Fires Center of Excellence)内の総局である。https://sill-www.army.mil/dotd/index.htmlを参照