現代戦における人工知能:戦略、作戦、意思決定の変革(Armada International)

AIを軍事に活用することの検討は数えきれないほどされていることだろうと類推する。ここで紹介するのは、「見えない力:ウクライナにおけるロシアの監視、攻勢作戦、防衛作戦における電磁スペクトラムの役割 (Armada International)」の著者が検証した「軍事作戦支援における人工知能(AI)ベースのアプローチの導入に伴う課題」についての論稿である。(軍治)

現代戦における人工知能:戦略、作戦、意思決定の変革

Artificial Intelligence in Modern Warfare: Transforming Strategy, Operations, and Decision-Making

パスクアーレ・イオリロ(Pasquale Iorillo)

カラン・ペーパーズ – 第2号

August 5, 2025

Armada International

ArmadaのCurran Papers記事は、電磁スペクトラムの専門家と実務家によって執筆されている。このシリーズは、第二次世界大戦中にチャフ対レーダー探知機の開発で先駆的な業績を残したウェールズ出身の物理学者、ジョーン・カラン(Joan Curran)博士にちなんで名付けられた。このシリーズが、電子戦(EW)と電磁スペクトラム作戦(EMSO)に関連する革新的な視点を紹介することで、彼女の記憶に敬意を表することを願っている。

このCurran Paperで、パスクアーレ・イオリロ(Pasquale Iorillo)は、軍事作戦支援における人工知能(AI)ベースのアプローチの導入に伴う課題を検証している。イオリロ(Iorillo)は、古典的な軍事理論と政治哲学を援用し、軍事思考における情報優越(information superiority)の重要性を論じている。特に、紛争を嫌う「ポスト英雄主義(post-heroism)」の政治体制が台頭する中で、AIが武力行使にどのように影響するかについて論じている。人工知能はいわゆる「非常に精密な戦い(surgical warfare)」の精度を高める可能性がある一方で、避けられない道徳的・倫理的問題も提起している。さらに、イオリロ(Iorillo)は、有名なOODA(観察、方向づけ、決定、行動)ループとキル・チェーンにおけるAIの位置づけについても検証している。この検証では、人工知能がこれらのサイクルのどこに位置づけられるかについて詳細に議論している。同様に、戦術(tactics)、技法(techniques)、手順(procedures)も、AIが意思決定サイクルに浸透するにつれて、再考または再定義される必要があるかもしれない。著者が特に強調しているのは、AIはあくまで人間の判断を補完するものであり、置き換えるものではないということである。究極的には、軍事作戦におけるAIの位置づけは、主人ではなく、従者でなければならない。

人工知能(AI)は、計画策定と実行のスピードと効率性を向上させることで、軍事作戦を劇的に変革する。比類のないデータ処理能力は意思決定と作戦遂行を加速させ、AIを将来の軍事的成功における極めて重要な要素と位置付けている。AIは、対応時間の改善と戦略精度の向上を通じて、敵対者の動向を予測し、それを凌駕することを可能にし、戦いにおける情報的優越(informational superiority)の追求をさらに強化する。

しかし、軍事システムへのAIの統合は、特にセキュリティ、信頼性、そして人間による監視において、大きな課題を伴う。自律システムへの依存度が高まるにつれ、特に生死に関わる意思決定の場面において倫理的な懸念が生じる。一方、戦闘、監視、作戦的統制におけるAIの役割は拡大しており、慎重な監視が求められるため、脆弱性を防ぎ、説明責任を維持するための堅牢な規制を策定することが不可欠となっている。

AIの潜在能力を最大限に活用し、倫理的誠実性と作戦上の安全性を確保するには、革新と責任ある導入のバランスを取ることが不可欠である。さらに、人工知能と軍事戦略の複雑な関係を探求することで、この技術をどのように活用して戦略的優位性を獲得し、同時に倫理的意味合いと作戦的意味合いを効果的に管理できるかについて、より深い分析的視点が得られる。

古代の英知からAIへ:戦いにおける情報優越(information superiority)の進化

情報優越(information superiority)の追求は軍事史を形作り、古典的な戦略から現代のAI革新へと進化してきた。この進化の鍵は、情報を戦略的に活用して優位性を得ることである。これは『兵法(The Art of War』で孫子が強調したように、軍事作戦における欺瞞と戦略的奇襲を提唱した人物によっても強調されている。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」[1]

この基礎を基に、イタリアのルネサンス政治思想家ニッコロ・マキャヴェッリ(Niccolò Machiavelli)は『戦争の術について(Dell’arte della guerra』(兵法:The Art of War)の中で先見性と知性の有用性を強調し、指導者は統制を維持するために情報と知覚(perception)の両方を習得するよう促した。

「自分の戦略と敵対者の戦略の両方を理解している者はめったに打ち負かされない」[2]

この系譜を受け継ぎ、プロイセンの理論家カール・フォン・クラウゼヴィッツ(Carl von Clausewitz)は「戦場の霧(fog of war)」というコンセプトを提唱し、紛争における不確実性の持続と、直感的で適応力のあるリーダーシップの必要性を説いた[3]。これらの基本的な考え方は、現代において人工知能の出現によって融合し、状況認識の向上、リアルタイムのデータ分析の実現、予測能力の拡張によって情報優越(information superiority)の追求を再構築している。

しかし、膨大な量のデータは意思決定者を圧倒する恐れがあり、重要な知見を選別し、それに基づいて行動するための自動化システムが必要になる。この変化は、従来のドクトリンから「AI対応の戦い(AI-enabled warfare)」への極めて重要な転換を意味し、技術効率は戦略的優位性をもたらす一方で、倫理的および作戦上の課題も生み出す。

現代の紛争における技術的統合と戦略的適応

戦いにおける技術の戦略的・文化的動機は、イグナティエフ(Ignatieff)などの理論家によって研究されており、彼は仮想戦(Virtual Warfare)を、人間の関与(human involvement)が減少し、紛争の技術化が進むことと表現している[4]。この変化は、道徳的・政治的な乖離を招き、戦いと社会の溝を広げ、潜在的に政策立案者や国民の感覚を麻痺させ(desensitising)、重大な倫理的懸念を引き起こす可能性がある。

この文脈において、ルトワック(Luttwak)のポスト英雄主義理論(post-heroism theory)は、西洋社会における人的犠牲に対する寛容性の低下を浮き彫りにし、技術的進歩がリスクと損失を最小限に抑えるために不可欠であると位置づけている[5]。高度なシステムを統合することで、軍事作戦は個人の生命を優先する社会的な価値観と整合し、最小限の人的犠牲で目標を達成するというポスト英雄的理想(post-heroic ideal)を堅持しながら、関与に対する国民の支持を強化することができる。

このポスト英雄的パラダイム(post-heroic paradigm)において、AIは極めて重要な役割を果たす可能性がある。AIの精度と効率性は、「非常に精密な戦い(surgical warfare)」のナラティブ(narrative)に貢献し、論争を緩和し、軍事行動の正当性を高める可能性がある。

逆に、マーシャル(Marshall)は技術革新と軍事ドクトリンの重要な関係性を強調し、ツールの優位性だけでは戦略的優位性は保証されないことを強調している。真の優位性は、柔軟で適応性の高いフレームワークに新たな能力を統合することにかかっており、それがなければ敵対者は硬直的または時代遅れの作戦モデルを悪用する可能性がある[6]。AIと軍事戦略の進化する関係は、社会的な価値観と整合し、倫理的および戦略的な一貫性を確保する必要がある。戦いが進化するにつれて、焦点は人的犠牲を最小限に抑え、AIを活用して安全保障上のニーズと道徳的責務のバランスをとることへと移行する。技術とドクトリンを組み合わせるには、急速に変化する状況において軍事力を維持するために継続的な適応が求められる。

戦いにおけるAI:技術、戦略、倫理の交差点をナビゲートする

AIを戦いに統合することは、技術、戦略、倫理の交差点を再構築し、革新と慎重なガバナンスが求められる極めて重要な時代を告げるものである。AIを軍事的フレームワークに組み込むことは、比類のない機会をもたらす一方で、複雑な倫理的、作戦的、そして戦略的な課題を乗り越える必要もある。これらの要素を包括的に理解することは、伝統的な戦いのアプローチと現代的な戦いのアプローチを橋渡しし、責任ある人工知能の統合を確実にするために不可欠である。

高度なアルゴリズムとネットワーク化されたセンサーを活用した自動化は、軍事能力に革命をもたらし、効率性の向上、人的ミスの最小化、脅威への対応の迅速化を実現する。

しかし、自律型兵器システム(autonomous weapon systems)のコンセプトは依然として激しい議論の的となっており、自律性の解釈は多岐にわたる。自律システムは、脆弱な通信への依存度を低減し、干渉や傍受のリスクを低減することで戦略的優位性をもたらす。クリーグ(Krieg)とリックリ(Rickli)[7]が説明するように、これらのシステムは一般的に3つのレベルに分類される。

  • 自動システム(Automatic systems:事前に定義された手順に基づいて感覚入力に機械的に反応するが、予期しない状況への適応性がない。
  • 自動化システム(Automated systems:論理的にプログラムされたルール・セットを通じて動作し、確立されたパラメータに基づいて予測可能な結果を​​保証する。
  • 完全自律システム(Fully autonomous systems:状況認識能力を備え、高レベルの指示を解釈し、環境認識と任務目標に基づいて自律的に意思決定を行う。これらのシステムは、人間の介入なしに自律的に行​​動し、係争環境(contested environments)における作戦的継続性を確保する。

完全自律型AIシステムへの移行は、無人監視、偵察、そして戦闘作戦を可能にするなど、大きな戦略的優位性をもたらす。しかしながら、こうした進歩は倫理的な懸念も引き起こし、国際人道法と責任ある交戦規則(rules of engagement)の厳格な遵守が求められる。

AIが軍事ドクトリンに与える影響は、戦術的優位性や倫理的懸念を超えて、作戦的戦略を技術的進歩と整合させる必要性を浮き彫りにしている。AIは革新的な能力をもたらすが、真の変革は、適応型作戦コンセプト、指揮構造、そして組織改革の構築にかかっている。戦力増強装置(a force multiplier)としてのAIの有効性は、継続的な学習、戦略の洗練、そして進化する軍事ドクトリンへの統合によって、長期的な成功を確実にすることにかかっている。

軍事意思決定におけるAI:人間のリーダーシップを維持しながら戦略を強化する

AIを意思決定プロセスに統合することで、軍事戦略と作戦における情報の処理、解釈、そして行動のあり方が変革された。OODAループやキル・チェーンといった、作戦的思考と戦術的実行を導く確立されたコンセプト上のフレームワークを通して検証すると、AIの影響は特に顕著である。

OODAループ(観察、方向づけ、決定、行動)は、米空軍大佐ジョン・ボイド(John Boyd)によって開発された意思決定モデルである[8]。これは、動的な環境における機敏性(agility)と適応性(adaptability)を重視しており、敵対者よりも速くこれらのフェーズを循環させる能力が優位性をもたらす。AIは、リアルタイム・データ収集による観察の加速、予測分析による方向づけの支援、迅速な行動の促進によって、このサイクルを強化する[9]。しかし、AIは複数のフェーズを迅速化できるが、意思決定フェーズでは、倫理的な判断と予期せぬ展開への対応を確保するために、人間の監督が必要である。これは、「AI強化戦(AI-enhanced warfare)」における人間のリーダーシップの永続的な重要性を浮き彫りにしている[10]

もう一つの影響力のあるフレームワークは、ターゲットの特定から交戦までの一連のプロセスを概説するキル・チェーンである[11]。OODAループの反復的かつ適応的な性質とは異なり、キル・チェーンは自動化と精度向上によってターゲティング運用を効率化することを狙いとした線形論理(a linear logic)に従う。AIは、検知から対応までのタイムラインを短縮することで大きく貢献する。これは、特に高強度または時間的制約のあるシナリオにおいて重要である。

この文脈において、「ネットワーク中心の戦い(network-centric warfare)」、すなわち相互接続された情報ネットワークを通じて作戦の有効性を高めることに重点を置いたドクトリンの遺産を想起することは有益である。AIはこれらの基盤から恩恵を受けているが、その変革の可能性の真髄は、「データ中心の戦い(data-centric warfare)」という新たなパラダイムにおいてより正確に捉えられている。このモデルは、接続性からデータの戦略的活用へと重点を移す。AI駆動型システムは、膨大なセンサー入力ストリームを処理し、実用的な情報を統合し、ドメインを横断した協調行動を支援する。この進化は、キネティックな能力とノン・キネティックな能力の両方を強化する。しかしながら、これらの優位性は、指揮と意思決定の過度な集中化に対する懸念も引き起こし、戦術的主導性を制約し、ミッション・コマンド(Auftragstaktik:訓令戦術)などの分散型指揮哲学(decentralised command philosophies)を損なう可能性がある[12]

これらのフレームワークを基盤として、AIは現代戦において、脅威検知、資源配分、そして作戦調整の強化といった幅広い影響を及ぼし、特にハイブリッド紛争や高強度紛争のシナリオにおいてその効果を発揮する。機械学習と信号処理は、より迅速でデータに基づいた意思決定を支援し、シミュレーションと確率分析は戦略的計画策定を支援する。しかしながら、OODAループの圧縮といった意思決定サイクルの急速な加速は、人間の認知能力を凌駕し、潜在的な脆弱性を生み出す可能性がある。したがって、人工知能は人間の判断を置き換えるのではなく、補完するものとして機能する必要がある。

究極的には、これらの技術は戦力増強装置として機能し、OODAループやキル・チェーンといったフレームワークにおける即応性と作戦効率を向上させる。しかし、その真の有効性は、機械知能(machine intelligence)と人間のリーダーシップの間の相乗効果にかかっている。適応性、倫理的責任、そして戦略的先見性を維持するためには、これらのシステムは人間の指揮下にあるツールであり続け、それ自体が自律的な行為主体であってはならない。

指揮・統制(C2)におけるAI:戦略的意思決定と作戦的復元性の強化

AIを指揮・統制(C2)システムに統合することは、軍事戦略における極めて重要な進化であり、意思決定能力の向上と作戦的復元性(operational resilience)の強化につながる。AIは大規模なデータセットを処理し、迅速かつ分散的な意思決定を促進する能力に優れており、従来の指揮・統制パラダイムを再定義し、部隊が複雑な環境に迅速に適応することを可能にする。AIが提供するリアルタイム分析は、驚くべき速度で実用的なインテリジェンスを提供し、作戦効率を最適化し、情報収集から対応までの遅延を最小限に抑える。しかし、指揮・統制(C2)へのAIの効果的な統合には、包括的な訓練、テスト、検証を基盤とした厳格な信頼構築プロセスが求められ、多様な作戦状況下におけるAIの信頼性と予測可能性を確保する必要がある。

分散型・自律型システム(decentralised and autonomous systems)は軍事作戦的復元性(military operational resilience)を大幅に強化し、意思決定を自律ノードに分散させることで、柔軟かつ即応性の高い戦いのアプローチを可能にする。この構造は、通信障害時の継続性を確保し、従来の指揮系統に内在する脆弱性を軽減する。しかしながら、これらのシステムは戦略目標の達成を阻害しないよう、明確に定義されたパラメータの範囲内で機能する必要がある。これは、人間による継続的な監視を必要とする。マーシャル(Marshall)の適応型指揮ドクトリンは新たな重要性を帯びており、現代戦の課題に対応するためにデザインされた指揮構造(command structures)における柔軟性と適応性を提唱している。AIが指揮・統制(C2)システムに組み込まれるにつれて、従来の指揮系統と戦術は、人間の意思決定に取って代わるのではなく、それを強化することで、機械の運用(machine operations)に対する人間の監視を強化する、より動的なフレームワークへと進化する必要がある。

しかし、AI強化指揮・統制(C2)システムの成功は、基盤となるデジタル・インフラの堅牢性に大きく左右される。AIがリアルタイム・データを処理し、それに基づいて行動する能力は、安定性、回復力、そして安全な接続性に依存する。しかしながら、将来の作戦シナリオは、蔓延する電磁波の脅威、サイバー攻撃、そして係争の通信環境によって特徴づけられる可能性が高い[13]。これらの現実は、適応性と生存性を確保するために、デジタル・アーキテクチャの根本的な再デザインを必要としている。軍隊は、メッシュ通信システムや、通信が遮断された環境や劣化した環境でも局所的な処理と意思決定を可能にするエッジ・コンピューティング機能など、冗長性​​、分散性、自己修復性を備えたネットワークに投資する必要がある。このように進化する戦場において、デジタル復元性(digital resilience)はアルゴリズムの洗練度と同様に重要となり、係争状況下における作戦的一貫性を確保する。

AIで拡張された指揮構造(AI-augmented command structures)への適応には、既存のプロトコルの見直しも必要であり、硬直した階層的な意思決定から、スピード、柔軟性、そして復元性(resilience)を重視するシステムへと移行する必要がある。この変革には、人間の監督とAIの自律性を調和させるための技術的統合、そして文化と手続きの変革が不可欠である。訓練プログラムでは、AIの能力と限界を考慮し、作戦効率を損なう可能性のある過度な依存を防ぐ必要がある。人間の説明責任は依然として不可欠である。指揮官は、強力なガバナンスのフレームワークの中で、AI支援による行動に対する全責任を負わなければならない。AIには変革をもたらす可能性を秘めているが、自動化によるバイアスや状況認識の喪失といったリスクは大きく、積極的に軽減する必要がある。

ドローンやロボット・スウォームなど、人間の介入を最小限に抑えて協調的なタスクを実行できる自律機能が進化するにつれ、新たな作戦上の可能性が生まれると同時に、新たな課題も生まれている。こうしたスウォーミング・システムには、意図しないエスカレーションや倫理的逸脱を回避するために、堅牢な通信プロトコルと明確な交戦規則が必要である。こうしたシステムは戦術的有効性を高める一方で、道徳的・戦略的な誠実性を維持するために、ヒューマン・イン・ザ・ループ(human-in-the-loop)の監視の必要性を改めて認識させている。

AIの優位性を最大限に活用しつつ、リスクを最小限に抑えるには、復元性と説明責任を備えた指揮系統(chain of command)を維持することが不可欠である。このバランスをとるためには、人間の意思決定を代替するのではなく、強化する包括的な訓練を通じて、AIを軍事ドクトリンに統合する必要がある[14]。軍の指導者は、ますます複雑化する環境において効果的な意思決定者であり続けるために、AIシステムの戦略的可能性と限界を理解しなければならない[15]。人間の専門知識とAIの計算能力の相乗効果は、現代の戦い(contemporary warfare)における動的な課題に対処できる、復元性ある指揮構造(a resilient command structure)を構築する。

究極的には、AIによる指揮・統制(C2)システムの変革は、より広範な技術的変化を反映し、世界規模で軍事作戦を再構築することになる。AIを組み込むことで、指揮・統制(C2)フレームワークはより適応性が高く、データ中心となり、現代の戦場の複雑な状況にも対応できるようになる[16]。しかし、この変革は慎重な監視によって導かれ、伝統的な軍事的判断に基づいていなければならない。AI統合型指揮システム(AI-integrated command systems)の長期的な成功と復元性(resilience)は、技術の高度化と、人間の責任を見失うことなく革新を統合する戦略的英知(the strategic wisdom)にかかっている。

結論

技術革新(technological innovation)、軍事ドクトリン、そして人的要因の交差点を検証すると、これらの要素のバランスを維持することが、現代戦(modern warfare)の多面的な課題に対処する上で極めて重要であることが明らかになる。技術は大きな優位性をもたらすが、戦争に勝利するのは、ドクトリン、組織、そしてリーダーシップを統合し、技術革新を効果的に活用する適応性の高い戦略を策定することを通してである。

技術革新への戦略的適応には、新たな能力に応じて軍事ドクトリンを進化させる必要がある。AIは効率性向上の機会を提供する一方で、脆弱性も生み出す。そのため、中核的価値を損なうことなく優位性を確保するためには、戦術的、作戦的、倫理的、そして戦略的な影響を考慮した適応型ドクトリンの策定が必要となる。

これは特に非対称戦(asymmetric warfare)やハイブリッド戦(hybrid warfare)において顕著であり、AIは不確実性を低減し、作戦状況図(the operational picture)を明確化することでISR作戦を強化する。しかし、その有効性はデータの信頼性と文脈解釈に依存しており、重要な意思決定においては依然として人間の監視が求められる。

自動化が進む一方で、人間の要素は依然として不可欠である。AIは状況認識力を向上させることができるが、シャノンの理論(Shannon’s theory)のように人間の判断、直感、倫理的推論を再現することはできない。正確な解読なしにデータ伝送は無意味だが、AIが生成する洞察は、人間による解釈によって初めて意味を持ち、任務に関連性を持つもの(mission-relevant)となる。信頼、結束、そして説明責任は、根本的に人間の責任であり続ける。

したがって、AI統合には慎重かつバランスの取れたアプローチが不可欠である。自動化への過度の依存は、戦略の硬直化や倫理上の盲点につながるリスクがある。意図しない結果を防ぎ、人道法(humanitarian law)および戦いの原則(warfare principles)の遵守を確保するためには、堅牢な訓練、適応的なドクトリンの策定、そして強力な倫理的ガバナンスが不可欠である。

技術的熟練度とリーダーシップ育成を重視した包括的な訓練への投資は不可欠である。将来の軍事指導者は、ますます複雑化する作戦環境を乗り切るために、技術的技能(technical skills)、批判的思考力(critical thinking)、道徳的識別力(moral discernment)、そして適応力(adaptability)を備えていなければならない。

現代戦における成功は、究極的には技術の優位性だけでなく、機械の精度(machine precision)と人間の英知(human wisdom)の永続的な相互作用にかかっている。軍事作戦へのAIの統合は、人間の判断に取って代わるものではなく、人間の判断を支援するものでなければならない。自動化が加速する中で、人間の知性は最終的な解釈者、倫理の守護者、そして戦略アーキテクトとしての役割を果たし続けなければならない。

著者について

パスクアーレ・イオリロ(Pasquale Iorillo)は、電子戦インテリジェンス、監視・偵察、そして電磁スペクトラム作戦(EMSO)を専門とする研究者であり、電磁スペクトラム作戦(EMSO)のサイバー空間における視点も研究している。彼の研究は、軍事史から得られた教訓に特に着目しながら、安全保障のフレームワークや戦略的計画策定と作戦的計画策定における先進技術の統合に重点を置いている。北大西洋条約機構(NATO)を含む国際的なプロジェクトや協力において豊富な経験を有し、防衛・安全保障分野における様々な取り組みに貢献している。本稿で提供される情報は、学術的および情報提供のみを意図している。ここに表明された意見はすべて著者の見解である。

ノート

[1] 孫子『兵法(The Art of Wa)』マイケル・ナイラン著、新訳(ニューヨーク:WWノートン・アンド・カンパニー、2020年)

[2] マキャヴェッリ、N.、「兵法(Art of War(クリストファー・リンチ訳)、(シカゴ:シカゴ大学出版局、2003年)。

[3] クラウゼヴィッツ、C.、「戦争論(On War)」(マイケル・ハワードとピーター・パレット共著)、(プリンストン:プリンストン大学出版局、1984年)。

[4] イグナティエフ、M、「仮想戦争:コソボとその先」(ロンドン:チャット&ウィンダス、2000年)。

[5] ルトワック、EN、「ポスト英雄的戦いに向けて」、Foreign Affairs Vol.74No.3、(ニューヨーク:外交問題評議会、1995年)。

[6] マーシャル、A、 「軍事革命に関するいくつかの考察」(ワシントンD.C.:国防総省総合評価局、1993年)。

[7] クリーグ、A、リックリ、JM、「代理戦争:21世紀における戦争の変容」(ワシントンD.C.:ジョージタウン大学出版局、2019年)。

[8] Zarou, P、「OODAループの習得:ダイナミック・リーダーシップのための戦略ガイド」、2024年2月29日、@ https://www.linkedin.com/pulse/mastering-ooda-loop-strategic-guide-dynamic-leadership-paul-zarou-ccwge/、2025年7月7日にアクセス。

[9] Gruszczak, A, Kaempf, S, (編)、『乱暴な戦いの将来のハンドブック(Routledge Handbook of the Future of Warfare)』(アビンドン、イギリス:Routledge、2024年)。

[10] Foss, J、「戦争でのAI – 軍事意思決定における革命」、2024年6月20日、https://www.linkedin.com/pulse/ai-wara-revolution-military-decision-making-part-i-jamie-foss-jfklf/、2025年7月7日アクセス。

[11] Brose, C.、「キルチェーン:ハイテク戦争の未来におけるアメリカの防衛」(ニューヨーク:Hachette Books、2020年)。

[12] Simonetti, RM、Tripodi, P、「自動化と指揮統制の未来:訓令戦術(Auftragstaktik)の終焉?」Journal of Advanced Military Studies Vol. 11No. 1(バージニア州クアンティコ:米国海兵隊大学、2020年春)。

[13] Foss, J.

[14] Brose, C.

[15] 同上

[16] Gruszczak, A, Kaempf, S.