誰が獲得したものを強固なものにするのか?陸軍の編成における人的資源の永続的な要件 (Small Wars Journal)

ロシア・ウクライナ戦争を取り扱った記事にはドローンをはじめとする新しいと云われる技術を適用した事例が多く取り上げられているのは周知のことと思う。これらの技術が戦争の性質を変えているとのフレーズもよく聞くところである。

このような記事を多く目にし、また、様々なセミナーなどで耳にすると、どうしても早急な導入に心が急かされてしまう。

ここで紹介するのは、米陸軍を中佐で退役し、現在はアリゾナ州立大学のFuture Security Initiativeで教授を務め、Small Wars Journalの編集長としても活動しているAmos C. Fox氏の論稿「Who Consolidates Gains? The Enduring Requirement for Manpower in Army Formations」である。Amos氏は、現役のころから多くの論稿を執筆しているが、「Critical Thinking の徹底した実践者」と云われるほどの人物で、MILTERMでは、米陸軍の現状を厳しく論じている「西側の軍事的思考と近代軍事的思考の四原型からの脱却」を紹介している。

「クリティカル・シンキング」といえば、昨年公表された海上自衛隊基本ドクトリンのかなの「4 全ての海上自衛隊員に求められる資質 (6)思考力」で以下のように述べられている。

海上において近代装備や最新の科学技術を結集した艦艇や航空機を駆使して任務遂行するためには、世界の動向を把握し、冷静かつ緻密な分析に基づく柔軟で論理的かつ合理的な思考力が求められる。このため、海上自衛隊員は、観念的にならず、長期的・多面的・根本的な視点のもと、作戦の目的・方法・手段・リスクを判断し、合理的に任務を遂行するための思考力を身につけなければならない。

そのような思考力を支える思考方法の一つに、「クリティカル・シンキング」がある。クリティカル・シンキングは「批判的思考」とも訳されるが、その意味するところは必ずしも否定的なニュアンスではなく、「過去の慣習や権威、先入観から脱却し、適切な基準や根拠に基づく論理的かつ客観的な思考力」であるとされる。物事を考える際には、思い込み、主観といったものが思考の前提として含まれることで論理的かつ合理的な思考が阻害されてしまうことがある。クリティカル・シンキングは、このような傾向を自覚し、排除することで物事を客観的に理解し、論理的に結論を導くものである。

紹介する記事は、単純に技術の礼賛に陥ることなく、事象を分析する際に因果構造が大事であると述べている。(軍治)

誰が獲得したものを強固なものにするのか?陸軍の編成における人的資源の永続的な要件

Who Consolidates Gains? The Enduring Requirement for Manpower in Army Formations

by Amos Fox

02.06.2026

故コリン・グレイ(Colin Gray)は、革新性、技術、そして戦争の将来について考える人々に、予言的な助言を与えている。グレイ(Gray)の混沌の戦略(Strategy for Chaosの中で、彼の研究は「戦略的効果の源泉としての先進技術の価値が限られていることを明確に示している。・・・・軍事的優位性と不利性は、ある期間を経て均衡し、戦いの行方は質ではなく量の問題に委ねられるようになるだろう」と述べている。

ロバート・シティノ(Robert Citino)も、用兵コンセプト(warfighting concepts)と軍事ドクトリン(military doctrine)の構築において、慎重な助言を行っている。シティノ(Citino)は、「小規模で機動力の高い戦力と航空戦力の衝撃力に頼り、迅速な勝利を重視し、征服した国を再建するのに苦労するような戦争方法には、どこか不完全なところがある」と断言する。グレイ(Gray)とシティノ(Citino)の慎重な見解を踏まえると、歩兵旅団戦闘団(IBCT:Infantry Brigade Combat Teams)の大部分を移動型旅団戦闘団(MBCT:Mobile Brigade Combat Teams)に転換するという米陸軍の動きを検証することは重要である。

移動型旅団戦闘団(MBCT)は、国防総省の技術中心のイノベーション構想(innovation narrative)を猛烈な勢いで加速」させ、同省が「平時の科学博覧会(peacetime science fair)」と呼ぶものを超えることを目指す米陸軍の思いから生まれたものである。この「平時の科学博覧会(peacetime science fair)」とは、多くの人が厳密に検証され、経験に基づいたコンセプトと能力の開発と呼ぶものである。

量と質の明確なトレードオフの結果、移動型旅団戦闘団(MBCT)は技術更新のために相当数の人的資源を削減している。確かに、歩兵旅団戦闘団(IBCT)は約4,500人で構成されるのに対し、移動型旅団戦闘団(MBCT)はわずか1,900人にまで縮小される。これは、転換された旅団戦闘団1個あたりの人的資源が58%減少したことを意味する。ドローンやセンサーといった技術がその差を埋めている。しかし、現代の紛争や現代の戦争の勝敗は、技術の優位性ではなく、人的資源によって決まる場合が多い。移動型旅団戦闘団(MBCT)は、戦争における勝敗の誤った解釈を反映しており、領土の支配や脅威勢力の撃退といった機能要件ではなく、物(ドローン、センサー、人工知能など)が成功と失敗の決め手となるとしている。

本稿では、移動型旅団戦闘団(MBCT)はポチョムキンの軍隊であると主張する。それは紙の上では素晴らしく、同じ考えを持つ制度主義者、テクノクラート、そして将来学者の間で議論された際にも壮大に響き、紛争や戦争における地上部隊の最小化を目指す政府関係者にとって魅力的である。しかし、移動型旅団戦闘団(MBCT)、そして既存のマルチドメイン作戦ドクトリンと将来の軍事戦略におけるその位置づけは、戦争の継続性から見て、戦闘の厳しさを乗り越え勝利するために必要な人的資源の数を欠いている。

さらに、移動型旅団戦闘団(MBCT)は陸軍の確証バイアスの適用を反映しており、ロシア・ウクライナ戦争やその他の紛争における反証となる証拠を体系的に排除して「接触による変革(transform in contact)」を推し進めている。その結果、移動型旅団戦闘団(MBCT)は戦争における勝敗に関わる因果関係の課題を真に反映していない。むしろ、移動型旅団戦闘団(MBCT)、継続的な変革、そして「地獄のような(like hell)」革新の加速は、革新そのものを到達目標として位置付けている。

継続的な変革と革新の詳細な検討は本稿の範囲を超えている。しかし、革新のための革新は決して到達目標であってはならないことを指摘しておかなければならない。革新とは、「なぜ革新を行うのか?」そして「その到達目標は何を達成するのか?」という問いに答えるものでなければならない。したがって、革新は戦力デザイン(force design)と戦力構造(force structure)の発展の基盤であってはならない。むしろ、戦力デザイン(force design)と戦力構造(force structure)は、戦争における勝敗の因果関係に関する厳密に検証された経験的証拠という「科学の博覧会(science fair)」に基づくべきである。

同様に、戦力デザイン(force design)や戦力構造(force structure)も「取り残される恐怖(fear of missing out :FOMO)」1に基づくべきではない。例えば米陸軍は、ウクライナロシア中国イスラエルなどの行動を指摘するたびに、「取り残される恐怖(FOMO)」を変革の必須事項として受け入れ、その後、文脈的な自己反省なしに自らを指摘し、米軍は他の国々と十分に似ていない、他の行為主体と同じ軍事力を有していない、彼らの作戦や戦術と一致していないと熱心に主張する。つまり、陸軍は選択的にその外見と認識に焦点を当ててきたが、戦争で肯定的な結果を生み出すための要件や因果関係には焦点を当てていない。派手さ、華やかさ、物語だけに焦点を当てている。

※1 fear of missing out :FOMO(取り残される恐怖)とは、パトリック・J・マクギニス(Patrick J. McGinnis)が、ハーバード・ビジネス・スクールの学生当時(2004年)の論文で使用したことが始まりとされ、「自分の人生をより良くするかもしれない情報、出来事、経験、人生の決断について知らない、あるいは見逃しているのではないかという不安のこと」を意味するとされる。ここでは、軍事分野における最先端技術に対する懸念を意味することとして引用されていると類推できる。

これらの点を考慮すると、移動型旅団戦闘団(MBCT)は21世紀の紛争や戦争に闘い勝利する能力と能力容量を欠いている。これは、移動型旅団戦闘団(MBCT)が3つの致命的な欠陥を抱えているためである。第一に、移動型旅団戦闘団(MBCT)の人的資源の基盤が小さいため、近接戦闘に巻き込まれたり、遠距離から特定されて標的にされたりすると、特に集中攻撃を受けやすい。第二に、移動型旅団戦闘団(MBCT)の限られた人的資源は、形成および支援作戦によって生み出される機会を活用する編成の潜在能力に悪影響を及ぼす。移動型旅団戦闘団(MBCT)自体は、形成支援部隊に過ぎない。第三に、活用が成功した場合、そして移動型旅団戦闘団(MBCT)が集中攻撃を受けていないと仮定すると、作戦の形成支援および活用の部分で獲得した成果を強化する能力と能力容量を欠いている。したがって、移動型旅団戦闘団(MBCT)は陸軍に、(1)集中攻撃に対して非常に敏感、(2)形成支援活動の利点を活用できず、(3)獲得した成果を強化できない基盤編成を残すことになる。

陸軍の統合タスク部隊または陸上構成部隊コマンドへの貢献に関して言えば、移動型旅団戦闘団(MBCT)は陸軍を統合軍種における最も弱い部分としている。他の軍種は引き続き中核機能を遂行する一方で、移動型旅団戦闘団(MBCT)に重きを置かれた陸軍は、統合形成支援作戦によって創出される機会を活用することも、戦場での獲得した成果を意義ある成果に結びつけることもできないだろう。

本稿では、移動型旅団戦闘団(MBCT)が将来、米陸軍、あるいは同様の志を持つ軍隊が直面するであろう戦いの問題に対する適切な解決策ではない理由を説明するために、基本的な作戦論理を提示する。第一に、移動型旅団戦闘団(MBCT)は陸軍と統合部隊に、戦場の状況やそれに伴う状況の好転を活かす能力を提供しない。第二に、ケース・スタディが示すように、移動型旅団戦闘団(MBCT)は戦場における不利な状況や状況を克服するために必要な人的資源を陸軍に提供しない。第三に、移動型旅団戦闘団(MBCT)はほとんどの従来の歩兵大隊よりもわずかに人的資源が多いため、地上戦闘に投入されたり、戦場で特定されたりするやいなや、急速な結集と断片的な破壊に対して非常に敏感になる。第四に、移動型旅団戦闘団(MBCT)が活路を見出す作戦を生き延びたとしても、その編成はそれ以前の作戦段階で獲得した成果を強化するのに十分な人的資源を有していない。したがって、陸軍はこれまで獲得できた好転を統合するために、より多くの旅団を投入しなければならないだろう。さらに、最近の事例が示唆するように、陸軍は地上の状況を掌握するために追加の旅団を投入せざるを得なくなるだろう。いずれの場合も、移動型旅団戦闘団(MBCT)の限られた人的資源を補う必要があるため、この部隊は到着前に戦闘を準備し、戦闘を遂行することしかできず、到着後も有意義な行動を起こすだけの力を持たないことになる。

グレイ(Gray)とシティノ(Citino)の警告を念頭に置き、 21世紀の紛争と戦争に関する一連のケース・スタディを検証する。その結果、紛争と戦争の帰結において、革新的な軍事技術よりも陸上部隊における人的資源の必要性の方が重要であることがわかった。

そのため、 21世紀の紛争のほとんどにおいて勝者と敗者は、技術的な優位性だけでなく、人的資源の非対称性によって決定されたと私は考えている。これは、人的資源の非対称性によって、軍隊が状況に応じた地上戦闘の不均衡を作り出し、戦場の状況を有利に変える能力が得られるためである。例えば、ドローン、長距離精密打撃、サイバー攻撃、そして陸上部隊は、いずれも脅威を破壊し、無力化することができる。しかし、( 1)地形を奪取、奪還、維持、そして統制し、(2)住民を保護し、(3)国境や境界を封鎖し、(4)安全保障作戦や小規模戦争でしばしば必要とされる人間同士のインターフェースを提供できるのは、陸上部隊の人的資源だけである。つまり、戦争の継続性を考慮すると、移動型旅団戦闘団(MBCT)はアップグレードではなく、負債である。移動型旅団戦闘団(MBCT)は、陸軍が戦術的、作戦的、そして戦略的に重要な戦場の成果を生み出す能力を低下させ、むしろ戦場を無益に混乱させる原因となっている。

ケース・スタディを踏まえ、本稿をいくつかの提言で締めくくる。第一に、戦争の将来を見据えた革新においては、望ましい将来像や未検証の技術よりも、近年の歴史と陸上戦(land warfare)の継続性を重視する必要がある。第二に、将来を見据えた革新においては、開発において、獲得した成果を活用し強化する段階を最優先に据える必要がある。第三に、認知的麻痺(cognitive paralysis)、斬首(decapitation)、その他の希望的な到達目標といった空想的な考えよりも、競争、生存、そして自己利益の追求という構造的なダイナミクスを重視する必要がある。

ケース・スタディ

陸軍の確証バイアスと反証証拠の排除は、実に明白である(表1参照)。第二次ナゴルノ・カラバフ戦争は小規模戦域の例外的な事例であり、2025年のイラン・イスラエル紛争は陸上戦域ではなかったため、これを除外すれば、21世紀の中規模から大規模戦域の紛争において、最も技術的に進歩した側であることは、必ずしも戦略的勝利とは同義ではないことは明らかである。実際、人的資源の優位性は、戦争において好ましい戦略的成果を生み出す主要な要因であることを、証拠は示している。

本研究では、人的資源の優位性を2つの方法で分類する。1つ目は最も基本的な方法で、量的非対称性、つまり地上に敵よりも多くの兵士や戦闘員を配置することである。2つ目はファビアン戦略を採用し、陣地戦(positional warfare)を通じて対抗する部隊の人的資源の非対称性を克服することである。3つ目は、2つ目の方法と密接に関連し、戦闘地域外の聖域から作戦を行い、不必要な損失を防ぐことである。これら3つのカテゴリーは相互に排他的ではない。戦闘員は、これらの方法のいずれか、または組み合わせて使用​​する場合がある。例えば、ウクライナでは、ロシアは地上における戦力の量的優位性を有しているが、自軍を守り戦闘力を生成するために、ロシア国内の比較的安全な場所から作戦を行っている。

表1:21世紀における中規模から大規模な戦域の紛争

紛争 技術的優位性 人的資源の優位性 勝利者/勝利 支援理論
アフガニスタン戦争 2001 -2021年 米国 タリバン タリバン
イラク戦争

(イラクの自由作戦:OIF)

2003-2011年 米国 イラン + シーア派民兵 イラン
シリア内戦 2011 -2024年 米国 複数 HTS
ドンバス戦役 2014-2015年 ロシア ロシア ロシア ✓✓
イラク戦争

(固有の決意作戦:OIR)

2014-2018年 米国+有志連合 米国+有志連合 米国+有志連合 ✓✓
ロシア・ウクライナ戦争 2022年-現在 ウクライナ ロシア ロシア
ガザ戦争 2023年-現在 イスラエル イスラエル イスラエル ✓✓
注記:

1. シリア内戦は戦闘主体が多すぎ、主従関係が複雑すぎて正確な評価が困難である。「支持理論」欄の✓は明確な評価が得られないことを示す。

2. HTSは「ハヤト・タハリール・アッシャーム」の略称。

3. 「支持理論」欄の✓ ✓は、勝利側または優勢側が人的資源と技術の両面で優位性を有する状況を示す。

4. 米国が主要な役割を果たした4つの紛争のうち、勝利を収めたのはイラク(2014-2018年)のみである。

この成功は、イラク治安部隊、人民動員戦線、シーア派民兵組織を通じて提供された陸上部隊の多大な貢献に大きく起因している。

表1に挙げた米国の紛争において、米国の戦略は人的資源の代替として技術を優先的に用いる傾向があった。これらの事例において、陸上部隊の不足は米国の軍事戦略を崩壊させる決定的な脆弱性となった。選定されたケース・スタディが示すように、この脆弱性により、米軍司令官は、ドローン、長距離精密打撃、サイバー能力の及ばない未解決の安全保障問題に対処するために、陸上部隊の増強を絶えず切望することになった。

その他の紛争では、成功は主に二つの主要な行為主体によって決定された。第一に、戦略的成功は領土を支配できた側、あるいは少なくとも敵対者による係争地の支配を阻止できた側によって決定された。第二に、戦略的成功は、敵対者が勝利に必要な兵力と兵力密度を必要な時に展開できないよう、安全保障状況を混乱させることができた側によって決定された。

以下のケース・スタディは、簡潔にするために簡略化されているが、この点をより詳細に説明している。ケース・スタディの選択に関して、アフガニスタンとイラクは21世紀における米国の大規模軍事作戦の好例であるため採用した。ロシアのウクライナ侵攻における両段階が採用されているのは、陸軍が移動型旅団戦闘団(MBCT)を遂行する上での重要な局面であるためである。

アフガニスタン戦争(2001-2021年)

20年にわたる米国のアフガニスタン戦争の失敗原因は一つではない。しかしながら、2001年の侵攻計画から2021年のカブール陥落に至るまで、米国の兵力不足は紛れもない傾向であり、アフガニスタンにおける米国の戦略的敗北の一因となった。

アフガニスタン戦争は、20年にわたるアメリカの政治的・軍事的苦戦の後、タリバンがアフガニスタンの支配権を奪還することで終結した。ドナルド・ラムズフェルド(Donald Rumsfeld)国防長官のリーダーシップの下、アメリカは変革的な技術がアフガニスタンにおける人的資源の必要性の因果関係や歴史的前例を覆すと素朴に判断した。

ラムズフェルド(Rumsfeld)は、アルカイダとタリバンの掃討に重点を置いた小規模で軽微な部隊を選択した。ラムズフェルド(Rumsfeld)は、地形を制圧し、住民の安全を確保し、統治機関や安全保障機関と連携するという潜在的な必要性を無視した。米中央軍司令官トミー・フランクス(Tommy Franks)将軍の過剰なまでの敬意を払う指揮官としての権限に承認されたアメリカは、兵力不足で、陸上戦争で日常的に発生する戦いの継続に対する準備が決定的に不足している状態でアフガニスタンに侵攻した。

ラムズフェルド(Rumsfeld)とフランクス(Franks)による誤った判断が、任務遂行と必要兵力に及ぼした真の影響は、初期の成功ゆえにすぐには現れなかった。米軍は速やかにアルカイダとタリバンによる政府および主要人口密集地の支配を覆した。その結果、アルカイダとタリバンの多くの政治・軍事指導者が、アメリカ軍の攻撃を待つためパキスタンへ逃亡した。タリバンの政治指導者に代わり、抵抗力あり十分な装備を備えた反乱勢力が急速に勢力を拡大した。

米軍は、自らの優位性に関する誇大宣伝を信じ込んだり、十分な戦略を練らなかったり、あるいは不要な情報を信用せず破棄したりしたため、アフガニスタンの反乱に対し、占領と治安維持任務を遂行するには兵力が不十分であることが判明した際、奇襲と不意打ちを食らったように見えた。さらに、地上に展開する米軍(およびパートナー)部隊の数が不十分だったため、タリバン戦闘員は水面下で活動し、住民を恐怖に陥れ、徐々に国土の大部分を奪還することができた。

圧倒的な量のハイテク・センサーと殺傷兵器にもかかわらず、デビッド・マッカーナン(David McKernan)将軍、スタンレー・マクリスタル(Stanley McChrystal)将軍、そしてデビッド・ペトレイアス(David Petraeus)将軍に至るまで、米軍司令官たちは皆、彼らが従事している戦争の因果関係に対処するため、ホワイトハウスに兵力増強を嘆願した。領土を奪還し、維持するために陸上部隊が必要だったのだ。山岳地帯や市街地といった困難な地形から敵の脅威を排除するために陸上部隊が必要だった。国境を封鎖し、地域住民を守るために陸上部隊が必要だった。ドローン、長距離精密打撃、そしてハイテク・サイバー能力は、これらの要件の継続性を否定するものではなく、これらの任務を遂行する能力を微塵も持ち合わせていなかった。

ホワイトハウスは長年にわたりアフガニスタンへの度重なる増派を承認したが、いずれも戦略的に意義のある効果は得られなかった。タリバンは隠れんぼ(hide-and-seek)を繰り返す一方で、米軍はハイテクを駆使したモグラ叩き戦略を駆使したが、それは目の前の戦略的、作戦的、戦術的問題の重圧に対して、ほとんどピンポイントの作用にしかならなかった。こうした誤った戦略と戦術の組み合わせの結果、アフガニスタンの大部分は米国とアフガニスタン政府の統制下にないままとなった。

さらに、米国とその戦略的安全保障パートナーは、20年の歳月と880億ドルを費やしてアフガニスタン治安部隊の訓練、助言、装備を提供したが、アフガニスタンは信頼できる治安部隊へと成長することはなかった。議会調査局の報告書が指摘するように、2018年までにタリバンはアフガニスタンの40%を支配下に置いた。米連合軍の人的資源の不足に加え、アフガニスタン治安部隊による治安と統制の空白が、タリバンによるアフガニスタンにおける政治的権力と物理的な支配の段階的な回復を促した。

米軍の技術的非対称性は、諸兵科連合や統合作戦の枠組みの中で人的資源を活用することで得られる相補的かつ複合的な効果を欠いていた。その結果、米軍は最も戦術的な状況を超えて成功を活かすことも、獲得した成果を強化することもできなかった。地形を制圧し、安全保障上の脅威を打破し、機会を活用し、軍事的に獲得した成果を戦略的に意義のある成果に強化するための十分な地上部隊の不足が、米国がアフガニスタン戦争に敗れた原因となった。この戦争におけるその他の戦略的失敗はすべて、人間よりも技術を重視するという決断から生じた。首尾一貫した対反乱戦略の欠如でも、よりハイテクなセンサーや運動エネルギー攻撃能力の欠如でもなく、この欠陥こそが、米軍戦略とホワイトハウスのアフガニスタン政策を崩壊させたのである。

イラク(2003-2011年)

アフガニスタンと同様、イラクにおける米国の失速の原因は一つではないが、十分な人的資源がないことが失敗の主因の一つであることは間違いない。さらに、アフガニスタン侵攻の場合と同様、ラムズフェルド(Rumsfeld)が長年にわたる陸上戦争の継続のために米軍に資源を供給することを犠牲にして変革(transformation)を選んだことが、計画の初期の段階から米国の侵攻を失敗に終わらせた。ラムズフェルド(Rumsfeld)は大規模な部隊派遣を含む計画を拒否した。例えば、陸軍参謀総長(CSA)のエリック・シンセキ(Eric Shinseki)が、イラク軍を効果的に打倒し、サダム・フセイン政権に取って代わり、イラク新政府が立ち上がるまでの移行期間中に占領および治安維持活動を行うためには米軍は数十万人の兵士を必要とすると述べたとき、シンセキ(Shinseki)は引退に追い込まれた。

ラムズフェルド(Rumsfeld)は、サダム政権を打倒し交代させるには、米軍が一定期間、イラクの領土、政治構造、住民、国境を掌握しなければならないという現実を避けた。紛争の現実を受け入れる代わりに、彼はイラク軍を速やかに撃破し、サダム・フセインを打倒し、フセイン率いるバース党政権を親米政権に交代させた後、イラク当局に速やかに制圧し米軍を帰還させるという望ましい将来像(preferred future)を好んだ。こうして彼は、マイケル・オハンロンが皮肉を込めて「賢明な計画(smart plan)」と呼んだ、19万人規模の貧弱な計画(meager plan)を承認した。しかし、イラク軍を打ち破るという大きな成功を収めた後、ラムズフェルド(Rumsfeld)の「賢明な計画(smart plan)」はすぐに崩壊した。

2003年春、反乱ネットワークが勃興し、イランの代理勢力が活動を開始して西側諸国に浸透し、多数の外部勢力がイラクに完全な混乱を引き起こした。2004年までに、本格的な反乱が勃発した。米国の陸上部隊とそのパートナーは、地上で発生した問題に比べて規模が比較的小さかったため、多くの安全保障上の課題にすぐに圧倒されてしまった。結果として、これらの課題は要件となった。

RANDの報告が強調しているように、米国の陸上部隊は反乱軍や代理勢力の脅威から領土を奪取、奪還、保持する必要があった。さらに、米国の陸上部隊はファルージャラマディタル・アファルサドル・シティなどの困難な地形からの脅威を排除する必要があった。同様に、米国の陸上部隊はタル・アファルやサドル・シティのような宗派主義が強い地域の境界を封鎖する必要もあった。さらに、米国の陸上部隊はアル・カイムアル・ファウなどの場所で国境を管理する必要もあった。そしておそらく最も重要なこととして、米国の陸上部隊はイラク国民、つまり民間人、政治指導者、法執行機関、民間施設を保護する必要があった。それに加えて、米国の陸上部隊は、基地を守り、戦域全体で連絡官を務める必要があり、常に多数の人員が負傷、休暇、その他の理由で不在の状態にあった。

人的資源の需要は高かったものの、供給は依然として低かった。そのため、米軍は多くの非戦闘任務を縮小し、ストップ・ロス(Stop Loss)2を施行し、予備役に過度の負担をかけ、イラク(またはアフガニスタン)への派遣の間に兵士に国内で過ごす時間をほとんど与えなかった。ラムズフェルド(Rumsfeld)の「賢明な計画」は、当時の状況に最も不適切な戦略だったと言えるだろう。米国の陸上部隊は過剰な負担を強いられ、人員不足に陥り、時間も限られていたのだ。さらに事態を悪化させたのは、ラムズフェルド(Rumsfeld)の「賢明な計画」に反対する意見が多かったにもかかわらず、彼らの警告は却下され、変革と技術の預言者たちはラムズフェルド(Rumsfeld)の変革戦略を承認したことだ。

※2 ストップ・ロス(Stop Loss)とは、ストップ・ロスは、現役兵の定められた除隊日を越えて、強制的に現役勤務を延長または継続させる兵力管理プログラムで、イラク自由作戦(OIF)または不朽の自由作戦(OEF)支援のため現役勤務に召集された予備役部隊要員の場合、ストップ・ロスはこれらの要員を予定された動員期間を通じて強制的に現役勤務に継続させた。ストップ・ロス(Stop Loss)は合衆国法典第10編12305条によって法的に認められており、ベトナム戦争後に整備され、湾岸戦争、イラク戦争、アフガン戦争で使用され、現在は使用されていない。

2005年から2006年にかけて、治安状況は完全に崩壊した。ベン・コナブル(Ben Connable)が指摘するように、反乱勢力は米国の陸上部隊を圧倒し、戦略レベルから最も戦術的な要素に至るまで、戦争の条件と状況をほぼ決定した。良くても、安全保障と領土、政治、住民の支配が争点となった。最悪の場合、それは反乱勢力の手に委ねられた。多くの場所で、米国の陸上部隊と機能不全に陥ったイラク治安部隊(ISF)は、効果的に支配権を獲得し、安全保障を提供するための数と関連する足跡を欠いていた。その代わり、米国の陸上部隊とイラク治安部隊(ISF)はともに、初期の反乱鎮圧活動をうまくやり遂げた。デビッド・ペトレイアス(David Petraeus)将軍、続いてレイ・オディエルノ(Ray Odierno)将軍の指揮下で、米軍は「増派」、つまり地上の状況を統制し、国全体の治安を改善するために陸上部隊の数を増強した。

この増派により、米軍は8個旅団戦闘団とその他の追加能力を増強し、さらに多数の競合する戦略的行為主体との交渉も進められた結果、最終的に事態は沈静化し、米国はイラク政府とイラク治安部隊(ISF)に統制と治安を委譲するに至った。これにより、2011年12月に米国が謙虚に紛争から撤退するために必要な条件が整い始めた。

後から考えると、シンセキ(Shinseki)の考えは正しかった。米軍が大規模な陸上部隊を必要としていたのは侵攻のためではなく、イラクに対する政策の到達目標と米国の初期軍事行動を繋ぐ、戦争の中盤の重要な局面のためだった。コリン・グレイ(Colin Gray)が述べているように、戦略は戦術行動と政治の到達目標を繋ぐ橋渡しの役割を果たす。同様に、陸上部隊は陸上戦争において、初期介入と望ましい政治的成果の創出との間の橋渡しの役割を果たす。

したがって、イラク戦争(2003~2011年)から得られる重要な教訓は、政策立案者は、軽量で、迅速に移動し、ハイテクな軍隊が敵の軍隊を迅速かつ決定的に打ち負かす可能性があることを理解する必要があるということである。しかしながら、武力紛争における脅威と地形主導の要件は、敵対者の変革イニシアチブや技術駆動の用兵ドクトリン(technology-driven warfighting doctrine)を考慮に入れない傾向がある。より適切なのは、イラクにおける脅威勢力が、侵略者の行動様式を一旦特定すると、それらの好みを相殺し、戦略的勝利への自己利益の道筋を追求するために、ほぼあらゆる手段を講じるだろうということである。豊富な人的資源を備えた陸上部隊は、戦略指導者や作戦・戦術指揮官にとって、「未知の未知(unknown unknowns)」や戦争の長期にわたる継続に対する緩衝材となり、これは変革的技術では不可能な方法である。

ロシア・ウクライナ戦争(2014-2015年)

グドレン・ペルソン(Gudren Persson)をはじめとする多くの人々は、2014年から2015年にかけてロシアがウクライナ東部で陸上部隊に大きく依存していたという事実は、モスクワによる「リトル・グリーン・メン(little green men)」の活用、偵察攻撃複合体戦場の透明性、そしてハイブリッド戦(hybrid warfare)といった騒ぎの中で忘れ去られていると述べている。確かに、華やかさと輝きにもかかわらず、ロシアは屈強な陸上部隊を基盤とした消耗の戦争を闘った。これらの屈強な陸軍には、ロシアの機械化大隊をある程度模倣した代理部隊も含まれていた

2014年4月から8月の間に、ロシアとその代理部隊は、ウクライナの国家および地方の治安部隊からルハンシク州とドネツク州の大部分の支配権を巧みに奪い取った。2014年8月から9月の間に、キーウの軍は、ドンバスの多くの係争地域でロシアとその代理部隊の領土支配に効果的に対抗した。しかしながら、イロヴァイスクドネツク空港デバルツェボなどの場所でウクライナの治安部隊が優位に立つと、ロシアは顧問団と代理部隊への当初の投資を倍増させた。追加の顧問団と代理部隊の代わりに、クレムリンは従来型の陸上部隊の展開を選択した。その結果、代理部隊、機械化部隊、砲兵、多連装ロケットシステム(MLRS)、ドローン、サイバー効果がドンバスに集結し、この地域の多くの場所で物理的、政治的、国内的支配を再主張しようとするキーウの取り組みを阻止した。

2014年11月から2015年2月にかけて、ウクライナにおけるロシアの陸上部隊の兵力は増加した。その結果、占領地を支配し、屈服したウクライナ治安部隊を打ち破り、この地域におけるクレムリンの政策の狙いを強化するロシアの能力は飛躍的に向上した。イロヴァイスクドネツク空港デバルツェボでのロシアの反撃は、ドンバスとクリミアにおけるロシアの領土獲得に対する支配権を再び主張しようとするキーウの軍事力と政治的意思を徐々に砕いた。イロヴァイスクでのウクライナの敗北は、ミンスク議定書の直接的な推進力となったが、これは実際には実現しなかった失敗した停戦であった。同様に、ロシアはドネツク空港(2015年1月)とデバルツェボ(2015年2月)での重要な戦術的勝利を連続してもたらすことにより、イロヴァイスクでの勝利の運用上および戦略的影響をさらに増幅させた。こうした一連の勝利により、 2022年2月までの停戦協定における多くの違反にもかかわらず、2015年3月のミンスク第2合意が促進され、紛争は正式に終結した。

政策立案者は、ドンバス作戦が、新たな技術や新しい戦いの方法(new ways of warfare)が存在するにもかかわらず、陸上部隊の重要性を浮き彫りにしていることを認識しなければならない。ロシアにとって、陸上部隊は、たとえ最大限の到達目標には達しなかったとしても、クレムリンをウクライナにおける政策の狙いへと徐々に前進させる中間目標の達成において、極めて重要な役割を担っていた。同様に、ロシアの代理勢力とその顧問がこの地域に継続的に存在していたことは、2022年2月のロシアによる侵攻の足掛かりとなった。

一方で、政策立案者は、ウクライナ陸上部隊の人的資源の不足が、ドンバス作戦におけるキーウの戦略的敗北に繋がった 決定的な脆弱性であったことを理解しなければならない。キーウは、差し迫った軍事状況に対処するために必要な兵力を欠いており、ましてや他地域で発生した安全保障上の事態に、形ばかりの兵力で対応するなど到底不可能だった。議論の的となっている攻撃対防御3対1のヒューリスティックを別にすれば、ウクライナの軍事力構成は、領土を奪還・維持し、同時に困難な地形からの脅威を排除し、住民を守り、国境を封鎖するために必要な縦深性と冗長性を欠いていた。

結論として、政策立案者は、2014年から2015年にかけてのウクライナ戦争の勝敗を、新興技術の華やかさが決定づけたわけではないことを理解する必要がある。ロシアがドンバス作戦に勝利したのは、陸上部隊を用いて同地域の支配権を獲得・維持したためである。同様に、ロシアは人的資源によってその獲得した成果を強固たるものにした。占領したドンバス地域を相当な兵力と能力で増強し、ウクライナによる将来の奪還の試みを抑止する能力を有していたのだ。一方、ウクライナが敗北したのは、領土支配を前提とした消耗戦に耐えられるだけの十分な人的資源の縦深性を陸上部隊が備えていなかったためである。イロヴァイスク、ドネツク空港、デバルツェボでの戦闘初期など、実際に成功を収めた時期もあったが、ロシアは獲得した獲得した成果を強固たるものにし、その成功を活かす能力を欠いていた。

その結果、ウクライナの陸上部隊の不足は政策立案者を不利な戦略的状況に追い込んだ。これは、戦場の状況を有利に変える戦術的・作戦的選択肢が欠如していたためである。ウクライナ軍はロシア陸上部隊をこの地域から排除することができなかったため、ロシアは2022年の再侵攻の序章において優位に立った。

ロシア・ウクライナ戦争(2022年~現在)

多くの論評者は 、ロシア・ウクライナ戦争の現在進行中の展開を、21世紀の技術が戦争をいかに変革したかを示す典型的な例として挙げてしかし、ドローン、長距離精密打撃、サイバー、センサー技術といった技術は、どちらの側にも戦略的勝利をもたらしていない。なぜだろうか?それは、ロシアが人的資源と要塞化によってウクライナにおける領土獲得を固め、ウクライナの状況を覆したからである。

ロシアは、北はルハンシクから南はクリミアまで、ドネツィク州、ザポリージャ州、ヘルソン州の大部分を貫く防衛線を築き、その背後のすべてをロシア化する ことで、ウクライナのやり方や手段を超えた問題を作り出した。その結果、クレムリンは、たとえそれがウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領のウクライナに対する広範な政策野心の最小限の範囲であったとしても、自らの政策の狙いを達成した。しかしながら、ウクライナがウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領の政策の到達目標を達成するためには、キーウ軍は係争地域からロシア軍を排除する方法を見つけなければならない。しかしながら、紛争終結に向けた進行中の交渉を考慮すると、その答えはまだ分からない。

領土の物理的支配が国際情勢における法の9割を占める状況では、国際法はほとんど役に立たない。ロシアには陸軍師団が存在しないからだ。陸軍師団は、国際政治の規範や法を遵守しようとしない国家や非国家主体に対する変革の重要な推進力となる傾向がある。結果として、偵察拠点、歩兵陣地、その他の伝統的な陸上部隊の能力と、センサー、サイバー、ドローン、長距離精密打撃を融合させた相互接続された防衛線を塹壕に築き上げ、ウクライナ領土を支配するロシアは、ウクライナの転覆能力を上回る戦略的選択肢をクレムリンに提供している。このように、ロシアは政策の狙いとキーウとの戦争終結交渉において、非常に有利な立場にある。

一方、ウクライナは、ロシア軍が占領する地域の領土、政治、そして人口の支配を取り戻さなければならない。ウクライナの戦略的課題は、派手な技術と革新的な戦術を豊富に有しているにもかかわらず、陸上部隊には地上の戦術的・作戦的状況を好転させるだけの戦略的縦深性みが欠けていることである。さらに悪いことに、最前線部隊の士気は極めて低い状態である。報告書は、特に歩兵部隊において深刻な士気低下の問題を浮き彫りにしている。確かに、ウクライナの検察は2022年2月以降、無断欠勤(AWOL)と脱走に関する事件を25万件も開始したと報告されている。士気低下の問題は、キーウにとって既に困難な人的資源の課題をさらに複雑化させている。

その結果、ウクライナ軍の作戦は、軍の上級指導者や政策立案者に戦略的に意義のある戦場の成果をもたらすことができていない。例えば、ザポリージャ州とヘルソン州を解放・保持する攻勢作戦は、モスクワに大きな懸念を引き起こす一方で、キーウの戦略状況を好転させるだろう。さらに、こうした作戦はウクライナの戦争遂行に対する国際的な支持をさらに高め、国内の支持と最前線部隊の士気を高める可能性もある。しかしながら、ウクライナにはこうした前向きな戦略的変化をもたらすだけの人的資源と陸上部隊が不足している。

ドローン、長距離精密打撃、サイバー、センシング技術はウクライナが戦争に敗北しないよう貢献したが、これらの要素はいずれも作戦上または戦略上の勝利には繋がっていない。ウクライナ陸上部隊の人的資源の不足は、欠落している要素、すなわち決定的な脆弱性を露呈した。この状況は、キーウが戦場における作戦・戦術状況を一変させ、ひいては政策立案者に戦略的選択肢を提示する能力を阻害している。言い換えれば、キーウの陸上部隊における人的資源の不足は、同国軍が(1)ドローンや長距離精密打撃任務のごく小さな戦術的成功(micro-tactical success)3を活用する能力、および(2)作戦におけるスタンドオフ段階および地上で実際の成果として拡大・確保する(exploitation)段階で獲得した成果を強化する能力の両方を阻害している。

※3 ごく小さな戦術的成功(micro-tactical success)とは、ドローンや長距離精密打撃だけでは、作戦・戦略的な成果に結びつかず、せいぜい戦術レベルの小さな成功にとどまるという趣旨で使用されている。

紛争勃発当初、キーウは軽量で小規模、かつ分散配置された陸上部隊に頼り、明確な技術的優位性と革新的優位性を発揮することで、ロシア陸上部隊による迅速かつ完全な制圧を回避した。つまり、ウクライナの技術力と革新力の優位性が、ウクライナが戦争に敗北しないための鍵となった。

しかし、これらの手段は作戦上および戦略上の勝利をもたらさなかった。その間、いくつかの制約がウクライナの戦いの方法(Ukrainian way of warfare)を阻害した。第一に、キーウは十分な陸上部隊を編成できなかった。第二に、人員と戦力構成の不足により、ウクライナ軍は革新的な戦術と高度な技術力によって獲得した成果を強化することができなかった。第三に、ウクライナ軍は革新的な戦術と技術の成功を活用できない、つまり獲得した成果を強化できないため、戦略的に重要な戦場の成果を生み出すことができなかった。第四に、驚異的な技術的創意工夫にもかかわらず、戦場での戦略的進展の欠如は、ロシアとの戦争終結に関するウクライナの交渉姿勢を阻害した。

結論

戦いの混沌とし​​たダイナミクスを過度に単純化するリスクを冒してでも、上記のケース・スタディは、革新的な技術と戦術は、特に行為主体の陸上部隊に十分な人的資源がない場合は、効果がないことを明らかにしている。戦争の勝敗には多くの変数が影響する。しかし、国力の軍事的側面において、戦争の歴史的連続性にうまく対処するために陸上部隊に十分な人的資源を確保すること以上に重要な考慮事項はほとんどない。ロバート・シティノ(Robert Citino)が読者に指摘するように、技術力のために人的資源を犠牲にする、軽量で小規模な技術志向の陸上部隊は、初期の成功を活かし、その成果を永続的で実質的な成功に結びつけることができないため、長期的には不十分になる傾向がある。これは、ここで検討したケース・スタディが裏付けるコンセプトである。

移動型旅団戦闘団(MBCT)はまさにこの要件を満たしており、もし歴史と現代紛争の現実が将来の戦争への備えについて真の洞察を与えるならば、米陸軍の部隊と指揮官は、国家の戦争における戦略的成果に信頼できる軍事的成果をもたらすために、再び苦闘することになるだろう。その理由は、単純な論理で説明できる。

A×B = Cにおいて、Aは独立変数、Bは介在変数(および因果メカニズム)、Cは従属変数、つまり望ましい結果である。Aが形成活動と促進活動、Bが獲得したものの活用と強化、Cが望ましい戦場の結果である場合形成活動と促進活動に獲得したものの活用と強化を乗じると、望ましい戦場の結果となる。方程式を目標に置き換えると、望ましい戦場の結果( C)は、行為主体の形成活動と促進活動(A)と、その活用と強化する能力容量( B )との乗法的相互作用から実現される。

また、この式で表される論理は理論的なものであり、Aで創出された機会がBで作用することでC生み出すような、経験的に特定された活性化閾値(すなわち「魔法の」力の比率)がまだ存在しないことにも留意する必要がある。同様に、この理論モデルは戦争や戦いにおける成功と勝利に寄与するすべての変数を考慮しているわけではない。この理論は、陸戦における勝利と失敗の(多くの)原因の一つを理解しやすくするための経験的手法である。

考察を続けると、簡単に言えば、ドローン、長距離精密打撃、サイバーおよびセンシング作戦は、21世紀の紛争の形成と促進活動を担っている。A×B = Cにおいて、これらのツールと活動はAである。

移動性の高い陸上部隊(歩兵、戦車、工兵、砲兵など)は、形成・支援部隊および活動によって創出された状況的に適切な条件を活用する。彼らは機動性と柔軟性を駆使し、形成・支援活動によって創出された摂理的な状況(すなわち活用)を活用し、その後、機動性と柔軟性を用いて地上における有利な条件を強化する。A×B = Cにおいて、これらのツールと活動はBで表される。人的資源は、 B内の活動を促進する重要な要素である(図1参照)。

Cは、 AB相互に関連する能力と活動の増幅要因によって生み出される効果と結果である。効果はC物理的要素である。つまり、効果は、部隊の壊滅、領土の占領、地元住民の保護、または軍事作戦のその他の測定可能な影響のいずれかである。結果はC認知的要素である。つまり、州の奪還などの成功した効果、状況に対する政策立案者の認識の再構築である。そうすることで、成功した効果は、物理的条件と状況の変化により、政策立案者に新しい範囲の選択肢を提供する。線形プロセスではなく、説明したほど単純ではないが、戦争の各主体は、(1Cを生成するか、(2)Cの追求で敗北するか、(3)継続するためのリソースと意志がないためプロセスから撤退しなければならないまで、ABを繰り返

図1:陸上戦の論理。出典:著者(著者注:画像はChatGPTを使用して作成した。縮尺は正確ではない。コンセプトを視覚的に表現するためだけに使用している)。

人的資源が不足している移動型旅団戦闘団(MBCT)は、陸上部隊が形成活動と有効化活動を活用し、A× Bの反復プロセス全体を通じて関連する成果を強化する能力を促進する重要な変数を持っていない。さまざまな編成を使用している各ケース・スタディでは、この状況が強調されている。陸上部隊の人的資源が不足しているため、住民の保護、領土の取得または奪還、地形の保持、国境や境界の封鎖など、関連する軍隊が必要なタスクを達成できなかった。また、ウクライナにおけるロシアのケースでは、紛争地域全体にわたる陸上部隊の人的資源の優位性により、モスクワは革新的で技術的に洗練されたウクライナ軍をかわすことができた。

今後、米陸軍は移動型旅団戦闘団(MBCT)の採用を見直す必要がある。経験に基づいた戦争の継続性よりも望ましい結果を優先するような、空想的な将来像を捨て去るべきである。さらに、陸上部隊の人的資源が勝敗の要因となる陸上戦争の永続的な性質を強調すべきである。陸軍の部隊は、近接戦闘で力を発揮できるように構築されるべきである。

結論として、移動型旅団戦闘団(MBCT)はポチョムキンのような力である。歩兵旅団戦闘団(IBCT)に比べて58%少ない人的資源を有する移動型旅団戦闘団(MBCT)は、陸軍のスタンドオフ打撃力を強化する。これにより陸軍は戦力形成と支援を行う部隊となるが、近接戦闘に勝利するための人的資源は確保できない。人的資源がなければ、移動型旅団戦闘団(MBCT)は獲得した成果を強化することができない。陸軍が人的資源と歩兵旅団戦闘団(IBCT)を移動型旅団戦闘団(MBCT)に売却することは、戦場における戦術的・作戦的機会を統合する米軍の能力を放棄することになる。歴史的には多くの事例があるが、米陸軍にとっての差し迫った教訓は、現代の軍事技術は人的資源を置き換えるのではなく、強化するものであるということである。