米海兵隊の「遠征前進基地作戦(EABO)に関する暫定マニュアル」 第8章
「序文」および「第1章 はじめに」、「第2章 作戦上の思考態度」、「第3章 計画策定と組織へのアプローチ」、「第4章 インテリジェンス作戦」、「第5章 情報環境での作戦」、「第6章 航空作戦」、「第7章 後方支援と沿岸部の機動」に引き続き、最終章である「第8章 沿岸部の作戦」を紹介する。
第8章の冒頭で「本章は、沿岸部の作戦を計画策定し、実動部隊の実験(live-force experimentation)とウォーゲーム(wargaming)を実施するための戦術・作戦構成として機能し、作戦計画を作成するための検討事項を概説している」とあるように、遠征前進基地作戦(EABO)をイメージできるように第7章までの内容を、時間経過を念頭に段階的に記述している。米海兵隊の新たな作戦のコンセプトを理解する上で参考になれば幸いである。(軍治)
第8章 沿岸部の作戦:CHAPTER 8 Littoral operations
8.2 作戦のコンセプト:CONCEPT OF OPERATIONS
8.3.1 後方支援のための計画:Plan for Sustainment
8.3.2 航空のための計画:Plan for Aviation
8.4 共通の段階的検討事項:COMMON PHASING CONSIDERATIONS
8.4.1 形成と偵察:Shaping and Reconnaissance
8.4.2 場所の選択と改善:Position Selection and Improvement
8.4.3 遠征前進基地への積込み:Loading the Expeditionary Advanced Base
8.4.4 部隊防護と遠征前進基地の保全:Force protection and Expeditionary Advanced Base Security
8.4.5 シグネチャ管理:Signature Management
8.4.6 防勢的火力計画:Defensive Fires Plan
8.5 運用の任務コンセプト:MISSION CONCEPTS OF EMPLOYMENT
8.5.1 水上戦の支援における火力:Fires in Support of Surface Warfare
8.5.2 打撃戦の支援における火力:Fires in Support of Strike Warfare
8.5.3 航空・ミサイル防衛の支援における火力:Fires in Support of Air and Missile Defense
8.5.4 対潜水艦の支援における作戦:Operations in Support of Antisubmarine Warfare
8.5.5 情報戦の支援:Support to Information Warfare
8.5.6 前方武装地点と給油地点:Forward Arming and Refueling Points
8.6 艦隊の相互運用性:FLEET INTEROPERABILITY
第8章 沿岸部の作戦:CHAPTER 8 Littoral operations
8.1 全般:GENERAL
本章は、沿岸部の作戦を計画策定し、実動部隊の実験(live-force experimentation)とウォーゲーム(wargaming)を実施するための戦術・作戦構成として機能し、作戦計画を作成するための検討事項を概説している。また、沿岸部隊(littoral force)が実施する任務セットと作戦に特有の要因も取り上げている。作戦計画の作成に不可欠なのは、活動を海上ドメイン内の一体化された全体としてとらえる作戦コンセプト(concept of operations)である。
重要な計画策定上の考慮事項には、各戦いの指揮官(warfare commanders)を重要な能力で支援できるタスク編成要素への用兵機能(warfighting functions)の適用が含まれる。沿岸作戦は、単に危機に対応するものではなく、むしろ、日常的な競争における統合部隊の活動の基本水準を確認し、敵対者の侵略がエスカレートするのを抑制する鈍化能力(blunting capability)を提供するものである。
8.2 作戦のコンセプト:CONCEPT OF OPERATIONS
作戦コンセプト(concept of operations)の開発は、反復プロセスである。詳細な計画策定によって初期のコンセプトが洗練され、作戦地域での日々の活動の延長線上にある。遠征前進基地作戦(EABO)を実施する部隊の成功に不可欠なのは、競争の連続体(competition continuum)全体におけるすべての活動を考慮し、作戦環境を意図的に管理する作戦コンセプトである。
作戦コンセプト(concept of operations)には、第3章で検討したとおり、米国務省、ホスト国機関、軍事パートナーとの調整による意図的な条件設定が含まれる。いくつかの要因から、コンセプトの修正が必要になる場合がある。
その中には、沿岸部隊(littoral force)の作戦要件、作戦環境の変化、敵対者の態勢の変化などが含まれる。コンセプトは、その策定を通じて、詳細かつ同時進行の計画策定の基礎となり、指揮官の目的を明確にするために作戦計画に盛り込まれる。
詳細な作戦コンセプト(concept of operations)は、指揮官の行動方針決心(course of action decisions)の概要を示し、作戦を視覚化する。実行計画の大枠を示すものである。最低限、作戦の目的と範囲、主要なタスクまたは必要不可欠なタスク、そして、競争の連続体(competition continuum)全体における事象を形成し評価するための行動の段階的または順序を含むべきである。
8.3 実行の計画:PLAN OF EXECUTION
実行計画は、沿岸部隊(littoral force)の諸要素の運用(employment)を規定するものである。それは3つの部分から構成される。
機動の計画(scheme of maneuver)。編成された部隊がどのように指揮官の意図を達成するかを記述したもの。作戦コンセプトの中心的な表現であり、支援計画や附属書のデザインを支配する。機動の計画(scheme of maneuver)の下位文書には、沿岸部の機動計画および支援作戦計画が含まれる。
沿岸部の機動計画(Littoral maneuver Plan)。この計画は、沿岸作戦地域(LOA)への、および沿岸作戦地域(LOA)内の部隊の海域および陸域の作戦を対象とする。機動の方法は、Lクラス船舶、次世代兵站船、軽水陸両用戦艦、水上連結船および艦船(有人・無人の両方)、ならびに地上および航空アセットの任意の組み合わせを含むことができる。沿岸部の機動計画では、各ドメイン間の移行と複合輸送手段を徹底的に検討しなければならない。タスク編成された沿岸部隊(littoral forces)に割り当てられる様々な輸送手段からなる沿岸機動艦隊の編成は、第3章で論じたように、初期の計画策定中に策定されることになる。
支援作戦の計画(Plan of Supporting Operations)。支援作戦計画の要素は、機動の計画(scheme of maneuver)を実行し、任務を達成するための条件を整え、確立するものである。支援作戦の要素は、用兵機能(warfighting function)、ドメイン、および/または、民軍(civil-military)の考慮事項に従って区分されることがある。以下の段落は、すべてを網羅するものではないが、支援作戦を計画策定するための基本的なものとなっている。
- 情報環境における作戦(OIE)のための計画(Plan for OIE)。戦闘システムや人員の物理的な動きや活動などの作戦環境(OE)における行動は、作戦環境(OE)と情報環境(IE)の両方に影響を与える。従って、情報環境における作戦(OIE)は沿岸部隊(littoral force)の機動の計画(scheme of maneuver)を可能にし、情報環境(IE)に影響を与える機動活動を活用するために計画・実行されなければならない。作戦環境(OE)における行動は、特にターゲットとする聴衆に情報を与え、影響を与え、欺くことを意図した情報環境における作戦(OIE)の取組みと整合性がとれていなければならない。これらの取組みを計画し、整合させることができなければ、「言うは易く行うは難し」のギャップ(“say-do” gap)が生じ、敵対者に潜在的な脆弱性を突かれたり、パートナーや同盟国との信頼が失われたりするおそれがある。
- ホスト国との調整(Host Nation Coordination)。任務の要件は、計画担当者が利用できるホスト国側の調整の選択肢の範囲に影響を与える。選択肢には、有事における契約とホスト国支援(HNS)が含まれる。ホスト国支援(HNS)には、紛争時に有効な事前計画的契約も含まれ、これは戦時ホスト国支援(WHNS)として知られている。計画は、沿岸部隊(littoral force)を支援するために、事前に取り決めた協定や契約を実行するために必要な権限を明らかにしなければならない。沿岸部隊(littoral force)の適切な前方部隊に非常時契約担当官を配置することは、契約支援の不可欠な要素である。
- 偵察(Reconnaissance)。偵察は、敵および特定地域の気象、水路、地理的特性に関する情報を得るために実施される任務である。さらに、潜在的敵対者、地元住民、その他の関連集団の活動や資源に関する情報を得ることで、沿岸部隊(littoral force)は任務遂行に先立ち、基本的な状況認識(situational awareness)を身につけることができる。偵察は、遠征前進基地作戦(EABO)において継続的に行われるマルチドメイン行動である。分散した機動性の高い沿岸部隊(littoral forces)は頻繁に転置するため、転置経路と転置先の最新かつ正確な情報を維持するために、作戦環境(OE)の継続的な評価は指揮官の計画策定にとって不可欠である。
8.3.1 後方支援のための計画:Plan for Sustainment
支援のコンセプトは、沿岸部隊(littoral force)の出港から沿岸作戦の終了までの兵站および後方支援のための計画を確立するものである。この計画は、沿岸部隊(littoral force)の兵站部門、浮遊艦隊の兵站タスク部隊、および各部門と戦域レベルの兵站司令部の運用(employment)、同期(synchronization)、調整(coordination)を説明する。
8.3.2 航空のための計画:Plan for Aviation
沿岸部隊(littoral force)への航空支援計画は、指揮官との関係、および統合部隊(joint force)指揮官による航空配分と配置の決定によって導かれる。この計画は、沿岸部隊(littoral force)の航空部隊の活動を連合および一体化されたアセットと調整するものである。海軍遠征部隊航空部隊およびその他の統合航空アセットによって実行される航空作戦は、互いに補完し合い、沿岸作戦のコンセプトを支える集成能力(collective capability)を構成する。
沿岸部隊(littoral force)の航空部隊は、比較的安全な場所から戦闘システムを構成し、作戦位置に移動し、限られた時間の任務のために設定・作戦し、敵のターゲッティング・サイクル内で逆行し、その後必要に応じてこれを繰り返すことができなければならない。より長時間の任務を達成するためには、分割されたサイトからの連続的な作戦が必要となる場合がある。
沿岸部隊(littoral force)航空戦闘要素(ACE)の部隊を採用する際の留意点は以下のとおりである。
- 航空統制機関、コール・サイン、周波数
- タスク編成された沿岸部隊(littoral forces)を支援する航空任務(攻勢的航空支援(OAS)、突撃支援、航空偵察、電子戦(EW)など)。
- 有機対空能力の運用
- 統合ターゲティング・プロセスと統合エア・タスキング・オーダー(ATO)の活用
- 制空対策、火力支援調整対策
- 航空地上支援
- 航空支援、強襲支援、医療搬送の要求プロセス
8.4 共通の段階的検討事項:COMMON PHASING CONSIDERATIONS
沿岸作戦は多くの形態をとり、沿岸部隊(littoral force)のさまざまなタスク編成を必要とする場合がある。指定された作戦地域や沿岸作戦地域(LOA)内の活動は、与えられた任務や作業によって大きく異なる場合がある。しかし、遠征前進基地(EAB)の指定地域に対する移動と占領には、利用可能な任務の範囲に共通する段階的考察事項がある。以下の段落では、沿岸作戦の実施に必要な任務の計画策定を扱う共通の検討事項について述べる。
8.4.1 形成と偵察:Shaping and Reconnaissance
第3章で述べたように、沿岸部隊(littoral force)は沿岸作戦の条件を設定するために、部隊階層で継続的な形成活動を実施する。これらの行動は、展開された遠征前進基地(EAB)内の様々なタスク要素が、割り当てられた位置でアクセスし、占拠し、能力を発揮するための条件を設定するものである。最終的な部隊の閉鎖に先立ち、偵察活動は既存の情報とのギャップを検証し、計画策定に反映させる。
沿岸部隊指揮官(LFC)は、遠征前進基地(EAB)の占拠前および占拠中に以下のことを考慮することができる。
- 担当する戦闘空間(battlespace)の詳細な戦闘空間のインテリジェンス準備(intelligence preparation of the battlespace :IPB)を実施する。
- 敵対者の態勢と活動レベル
- 適合性を決定するための飛行場、滑走路、着陸地点、上陸地点などの沿岸移行地点の調査
- 電磁波スペクトラムのベースラインを確立する
- 対「指揮、統制、通信、コンピュータ、戦闘システム、インテリジェンス・監視・偵察・ターゲッティング(C5ISRT)」の実施
- 部隊が効果を発揮する海上の緊要地形(key maritime terrain)に近接していること
- 沿岸作戦地域(LOA)、陣地、隠れたサイトへの移動性(mobility)
- 地形に合わせた自然な隠蔽が可能
- 生活パターン・地域活動の確立
- パートナー部隊/ホスト国の訓練到達目標の検証
3.4節で述べたように、沿岸部隊指揮官(LFC)は、海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)や他の特殊作戦部隊(SOF)要素、および作戦地域内の関係、能力、権限からの支援を活用しなければならない。詳細な計画策定中に特殊作戦部隊(SOF)部隊と連絡を取り、連携を確立することは、機関パートナー、連合パートナー、地元の国家や非国家のパートナーとの事前に確立された成熟した関係へのアクセスを拡大することを容易にする。
8.4.2 場所の選択と改善:Position Selection and Improvement
沿岸部隊指揮官(LFC)は、どのような作戦においても、その能力を発揮するためのいくつかの主要な場所と、複数の代替的な場所を選択する必要がある。沿岸部隊指揮官(LFC)は、システム範囲、死活的地域や海上の緊要地形(key maritime terrain)への近接性、脅威レベルなどの競争要因を考慮しながら、任務達成に最適な位置を選択する必要がある。
沿岸部隊(littoral force)が到着する前に、戦域安全保障協力構想(theater security cooperation initiatives)、先遣隊、または海兵隊特殊作戦コマンド(MARFORSOC)要素が作戦上の位置と場所を準備・改善する活動は、重要である。物理的位置の準備は、沿岸部隊(littoral force)が沿岸部の機動の実施中に移行する際に、相対的なテンポを生み出すのに役立つ。沿岸部隊(littoral force)は、変化する作戦環境(OE)と敵対者の脅威の態勢に相対して、絶えず位置を再評価し、改善しなければならない。
場所の選択の主な検討事項は以下の通りである。
- インフラ調査の検証
- 適切なレベルの政府当局との連絡調整
- 現地の契約担当者との連絡調整
- 地域住民の雰囲気の評価
- ホスト国部隊と民間人への近接性
- 滑走路や港湾施設など、主要なインフラの近接性
- デコイ部隊の設置
- 貯蔵所の事前準備
- 補足・代替陣地の有無
8.4.3 遠征前進基地への積込み:Loading the Expeditionary Advanced Base
本節は、沿岸部隊(littoral force)の指揮官に対して、機動の計画(scheme of maneuver)および沿岸部の機動計画に示された、割り当てられた沿岸作戦地域(LOA)への移動と遠征前進基地(EAB)の占拠の組織、統制、および実行に関する情報を提供するものである。
計画策定の考慮事項(Planning Considerations)。能力の確立を順序立てて行い、安全保障のレベルを評価することは、占領される個々の場所に望ましいものを配置する際の重要な考慮事項である。遠征前進基地作戦(EABO)は、強行侵入に似ているが、防御陣地の迅速な占領に頼るにせよ、侵入のための技術に頼るにせよ、戦闘力(探知、待機、部隊防護(force protection)、ネットワーク一体化を含む)の迅速な増強からなることが実験により判明する場合がある。計画策定とは、兵力、装備、物資が海・空から所定の時間・場所に上陸し、機動の計画(scheme of maneuver)で要求される作戦態勢に入ることを確実にすることが狙いである。
基本的な考慮事項(Basic Considerations)。 遠征前進基地(EAB)初期搭載支援の要件は、(1)沿岸部隊(littoral force)の戦術的完全性の維持、(2)沿岸部の機動計画で使用する部隊とアセットの最適分散の達成である。
- 戦術的完全性(Tactical Integrity)。遠征前進基地(EAB)への搭載組織は、遠征前進基地(EAB)内の下位指揮官による全体的な戦術統制を維持しつつ、分散した沿岸部隊(littoral forces)の適切な統制を保証しなければならない。部隊は、沿岸機動艦隊の輸送および沿岸部隊(littoral force)の航空アセットの適切な搭載により、戦術的完全性を保持する。沿岸部隊(littoral force)の戦術的完全性(tactical integrity)は、部隊全体が単一の輸送手段で上陸することを必要としない。例えば、水上戦(SUW)を実施するために割り当てられた行動部隊(unit of action)は、いくつかの軽水陸両用艦艇(LAW)で乗り込むことができ、一方、沿岸部隊(littoral force)の警戒要素(security elements)は突撃支援で上陸することができる。
- アセットの分散(Dispersion of Assets)。必要な分散の程度は、沿岸作戦地域(LOA)のデザインおよび遠征前進基地(EAB)内の戦力の配列計画に反映される。沿岸部の機動計画の準備と実施は、所期の効果を達成するために必要な重要能力の順序を考慮しなければならない。
沿岸機動艦隊(LMS)のタスク編成(Task organization of Littoral maneuver Squadron)。7.4節と付録Aで述べたように、沿岸機動艦隊(LMS)は沿岸部隊(littoral force)の沿岸作戦地域(LOA)への移動と沿岸作戦地域(LOA)内での移動を可能にする、軽水陸両用艦艇(LAW)、次席兵站艦、その他の連結船(connectors)のタスク編成された集合体である。沿岸機動艦隊(LMS)を構成する船舶の種類と利用可能性は、作戦コンセプト(concept of operations)によって知らされる。
時には、特定の遠征前進基地(EAB)を支援する沿岸機動艦隊(LMS)の要素は、作戦レベルの兵站を支援しながら、戦術レベルの機動を支援することもある。沿岸部隊(littoral force)の指揮官と沿岸機動艦隊(LMS)の指揮官は、後方支援兵站活動と連動した機動の計画(scheme of maneuver:SOM)の達成を確保するために調整しなければならない。
搭乗のための組織(Organization for Embarkation)。搭乗のための組織は、沿岸部の機動計画と機動の計画(scheme of maneuver:SOM)の双方を支援しなければならない。また、陸上と海上の両方で複数の積み込み場所を支援するために、最大限の柔軟性を提供しなければならない。戦闘搭載の信条は、予想される戦術的作戦を容易にするために、人員の配置と装備の収納を指導する。
海域作戦と陸域作戦の統制(Control of Seaward and Landward Operations)。海域および陸域の作戦を統制する方法は複数存在する。考えられる方法は、現行の水陸両用ドクトリンを適用するものから、沿岸部隊(littoral force)と他の陸上部隊との想定される関係に基づいて調整されるものまで、さまざまである。これらすべての関係において、指揮当局と責任、計画策定の考慮事項、および指揮関係は共通である。
海域の作戦を統制する陸上部隊は、艦隊の作戦や海上での機動と完全に一体化されなければならない。遠征前進基地作戦(EABO)の実験では、沿岸部隊(littoral force)の指揮官が海域の部隊を一体化し、陸域の作戦に移行する能力をテストする必要がある。このような移行は、作戦期間中、継続的に発生する可能性がある。
8.4.4 部隊防護と遠征前進基地の保全:Force protection and Expeditionary Advanced Base Security
部隊防護(force protection)とは、沿岸部隊(littoral force)が主要な任務を遂行する能力を保持しながら、敵対者の行動や環境条件を回避したり、耐えたりする能力のことである。シグネチャ管理、偽装、隠蔽、欺瞞の各作業により、沿岸部隊(littoral force)は敵対者の行動を回避し、その影響を軽減することができる。
遠征前進基地(EAB)を構成する様々なサイトとその中での保全は重要である。敵の攻撃は、空爆やミサイル攻撃、艦砲火力、特殊部隊の襲撃、電磁波スペクトラムでの攻撃、情報環境(IE)内での活動などの形をとることがある。沿岸部隊(littoral force)は、能動的および受動的な手段を組み合わせて、能力と総合的な戦闘力を維持することを確保する。
現地の保全(Local Site Security)。 沿岸部隊(littoral force)の各タスク編成された要素は、機動の計画(SOM)を達成するために選択された能力を有している。沿岸部隊指揮官(LFC)は、所定の要素が作戦する地域の基本活動と脅威レベルを評価する。タスク編成された要素の構成と規模は、評価された脅威レベル、防護を必要とするアセット、および隣接部隊との近接性に基づいて、各遠征前進基地(EAB)に合わせて調整される。沿岸部隊指揮官(LFC)は、安全保障部隊の規模拡大と追加されるシグネチャ、移動要件、および後方支援の必要性との間のトレードオフを検討しなければならない。
8.4.5 シグネチャ管理:Signature Management
沿岸部隊(littoral force)は、目標捕捉(target acquisition)、追尾(tracking)、終末誘導(terminal guidance)を妨害するために、シグネチャ管理技術を使用することができる。これらの技術には、攻勢的行動と防勢的行動の両方が含まれる。遠征前進基地作戦(EABO)の特性として、これらは主に受動的な手段であり、沿岸部隊(littoral force)のすべての要素で検討されなければならない。
部隊防護(force protection)の観点から、シグネチャ管理(SIGMAG)は作戦保全(OPSEC)の一要素であり、沿岸部隊(littoral force)は2つの基本的な理由からシグネチャを管理しなければならない。
- 部隊防護(force protection)の支援(残存性)
- 奇襲の達成(欺瞞)
この節では、沿岸部隊(littoral force)の残存性を支援するためにシグネチャ管理(SIGMAN)を実行するのに必要な要件と計画策定に関する考慮事項に焦点を当てる。多くの考慮事項は同じであるが、欺瞞を支援するシグネチャ管理(SIGMAN)については、第4章「情報環境における作戦(Operations in the Information Environment)」及び第5章「インテリジェンス作戦(Intelligence operations)」で説明する。
シグネチャ管理(SIGMAG)の要件(SIGMAN Requirements)。 シグネチャ管理(SIGMAG)は、敵対者が解釈し、沿岸部隊(littoral force)に関する重要な情報を導き出すことができる、検知可能な友軍の行動やオープン・ソースの情報である指標(indicators)の知識に依存している。
指標には以下のような特性がある。
- シグネチャ:敵対者のインテリジェンス収集にとって重要な情報を明らかにする、観察可能な活動や作戦の傾向。
- プロファイル:機能的な活動によって生成された固有のシグネチャと関連性の総和を意味する
- 関連付け:指標を識別できるようにしたり、目立たせたりする
- コントラスト:活動の標準的なプロファイルと、最新または現在の行動の間に観察される差異を意味する。
- 露出度:指標をいつ、どれだけの期間観察するかを示す
また、指標は物理的、技術的、管理的に分類されることもある[1]。物理的シグネチャとは、敵対者が直接観測や地理空間インテリジェンス・アセットによって収集できるものである。技術的なシグネチャの検出には、通常、敵対者のシギントや測定・信号情報(MASINT)アセットなどの特殊な装置が必要である。
個人と部隊は、計画策定、機動、支援のための契約、その他の管理的行動を行う際に行政シグネチャを作成する。敵対者はヒューマン・インテリジェンス(HUMINT)、シギント(SIGINT)、オシント(OSINT)、および攻勢的サイバースペース作戦(OCO)を介して管理シグネチャを観察または検出する。
敵が友軍の指標をどのように認識しているかを理解することは、5章「インテリジェンス作戦(Intelligence operations)」で説明した導管分析(conduit analysis)とキル・チェーン分析というインテリジェンス・プロセスから得られる、重要な第2段である。これらのプロセスから得られた洞察は、シグネチャ管理(SIGMAN)の第3段である、指揮官の意図を達成するために指標を減少、修正、または表示するための対策を講じることにつながる。
自部隊のシグネチャ評価(Own-Force Signature Assessment :OFSA)。沿岸部隊(littoral force)は、シグネチャ管理(SIGMAN)手順を洗練し、作戦に組み込むために、自部隊のシグネチャ評価(OFSA)プロセスを訓練と演習に継続的に組み込む必要がある。自軍のシグネチャを理解する能力は、機能的なシグネチャ管理プロセスを支援し、対策の有効性を評価し、将来のシグネチャ防護能力を決定するための重要な要件である。
沿岸部隊(littoral force)は、計画策定プロセスに作戦保全(OPSEC)への配慮を盛り込み、作戦中に指標を評価しなければならない。自部隊のシグネチャ評価(OFSA)は、様々な収集方法を用いて、意図しないまたは予期しない指標を捕捉するために、ベースライン・データを検証する。
自部隊のシグネチャ評価(OFSA)の要件は、作戦のテンポや規模とのバランスを考慮しなければならない。演習や実験的な戦術、技術、手続き(TTP)の開発では、あからさまな自部隊のシグネチャ評価(OFSA)の使用を増やすことが適切であるが、戦闘作戦では、自部隊のシグネチャ評価(OFSA)は高価値の指揮・統制・通信・コンピュータ(C4)ノードの放出統制(EMCON)監視、個人や小規模部隊のリーダーの行動、または付随的な収集に限定される場合がある。自己認識と指揮官の意図を組み合わせることで、海兵隊のあらゆるレベルの指導者が、敵対者の能力との関連において、選択した指標を管理し、露出したプロファイルを操作することができる。
電子シグネチャの統制(Electronic Signature Control)。電子シグネチャの脆弱性に対抗するためのいくつかの技術は、高度な指向性または低阻害性伝送のような高度な技術の範囲にある。しかし、電子的な防護を強化するための多くの効果的な対策は、電子シグネチャ管理に採用されている従来の作戦保全(OPSEC)の分野に由来するものである。
これらには、以下のようなものがある。
- 自力電子システムの使用を特定の期間または条件に制限する放出統制条件の設定
- 指揮・統制(C2)または通信ノードからある程度離れた場所に送信機やアンテナの遠隔配置
- 指向性の高いアンテナを使用し、敵対者の搾取に利用できる信号強度を減少させる(現場対応のアンテナ技術については、「アンテナ・ハンドブック(Antenna Handbook)」MCRP 8-10B.11を参照)。
- 通信に有線・光ファイバー経路を使用すること。
- 周波数ホッピング/スペクトラム拡散無線の使用
- 友軍の送信機と敵対者の迎撃基地との間に地形を挟み込むような機動の計画(scheme of maneuver)や接近経路(avenues of approach)を採用すること。
- 必要最小限の電力を使用するなど、健全な無線規律を守ること。
- 簡略化コードとデジタル通信の使用。
- 報告義務や不要なトラフィック(定期的な通信チェックなど)の削減
- レーダーによる適切な地形遮蔽紋(terrain-screening crest)を採用すること。
- より小さな技術的占有領域(footprint)と、その結果として減少する情報で効果的に作戦する。
センサー/導管の断線(Sensor/Conduit Disruption)。付録Aの「秘密区分有り」の部分を参照されたい。
シグネチャ管理(SIGMAG)を支援するためのインテリジェンス(Intelligence in Support of SIGMAN)。シグネチャ管理(SIGMAN)のインテリジェンス要件については、第4章「インテリジェンス作戦(Intelligence operations)」の議論を参照。
対偵察(Counter-Reconnaissance)。偵察対策活動は、敵対者が遠征前進基地(EAB)の構成、配置、および強度を決定する能力を低下させ、あるいは否定するものである。ベースラインのインテリジェンス収集と偵察活動は、対偵察活動のための初期条件を設定する。対偵察活動は、評価された脅威のレベルと要求に応じて、受動的または能動的に行われる。
対偵察活動には、以下のようなものがある。
- 現地保全パトロール
- サイトの非表示
- 地域住民の方からの情報収集
- 無人航空機
- 固定翼または回転翼の航空アセット
対偵察の取組みは、他のすべてのドメインを横断して、ベースラインの異常を探知し、指揮官の状況認識と沿岸部隊(littoral force)の活動を妨害する敵対者の取組みを検知する能力に貢献する。
受動的防衛手段(Passive Defensive Measures)。偽装と隠蔽は、軍事目標および/またはその背景を隠す、混ぜる、変装する、または外観を崩すための材料と技術を使用する。これらの材料や技術を効果的に使用することで、敵対者のインテリジェンス、監視、偵察、ターゲッティング能力の有効性を低下させる。戦場における部隊の目印となるシグネチャを隠したり変えたりすれば、熟練した観察者と高性能センサーの両方を打ち負かすことができる。
偽装、隠蔽、およびシグネチャの変更は、センサーやシーカーの性能を十分に低下させ、ターゲッティングや兵器誘導を拒否または遅延させる周波数帯域で機能する必要があるため、効果的であることが求められる。その結果、敵対者の戦場センサーや弾道シーカーの可能性のある範囲を打ち負かすために、様々なシステムと技術が必要となる。
偽装、隠蔽、およびシグネチャの変更行動は、戦術的な作戦の不可欠な部分である。沿岸部隊(littoral forces)は、これらを規律正しく実践し、任務の計画策定や戦闘空間のインテリジェンス準備(IPB)プロセスに継続的に組み込んでいかなければならない。
移動と分散(Movement and Dispersion)。移動は、敵対者のネットワークが効果的に意思決定サイクルを完了できる速度よりも速い速度で友軍を再配置することにより、敵対者のターゲッティングを拒否することを支援する。分散は、個々の弾丸の潜在的な殺傷力を低下させる一方で、潜在的なターゲットの数を大幅に増加させることにより、敵対者のキル・チェーンにストレスを与える。
分散が大きいと、同じ数の目標を見つけるために、より多くのインテリジェンス・監視・偵察(ISR)アセットが必要になるため、敵対者のターゲット捕捉の効率が低下する。対策として、効果的な移動と分散は、慎重な計画策定と敵対者の意思決定サイクルの明確な理解の両方が必要である。しかし、あまりに頻繁な移動は、敵対者の収集の機会を増やすことになる。
8.4.6 防勢的火力計画:Defensive Fires Plan
防空・ミサイル防御火力(Air and Missile Defense Fires)。 沿岸部隊(littoral force)は、地域防空指揮官(RADC)、セクター防空指揮官(SADC)、防空ミサイル防衛指揮官(AMDC)と連携して、死活的地域(vital areas)の防護と重要アセット(critical assets)の防衛のため、防空・ミサイル防衛作戦を実施する。航空ドメインにおける防御火力は、キル・チェーンを構築する基本的な訓練である。
航空・ミサイル防衛の主要な要素は以下の通りである。
- 重要アセット(critical assets)と死活的地域(vital areas)の決定
- 重要アセットに防空・ミサイル防衛アセットを適用し、防衛アセットリストの作成
- 航空統制機関に、重要地域の防衛を管理する権限の付与
- 統制機関によるミサイル交戦地域、戦闘機交戦地域、統合交戦地域の採用
- 防空アセットとミサイル防衛のアセット(センサー、火力部隊、指揮・統制(C2)機関を含む)間でタイムリーな情報交換
- 戦術的なデータ・リンクと音声通信の採用
- より広い海軍と統合部隊(joint force)でのミサイル防衛の計画策定
航空・ミサイル防衛に関する詳細な統合ドクトリンは JP 3-01「航空・ミサイルの脅威への対処(Countering Air and Missile Threats)」、同等の海軍のドクトリン「複合戦(Composite warfare)」NWP 3-56を参照すること。
その他の火力の計画策定(Other Fires Planning)。沿岸部隊(littoral force)は、与えられた任務および目標を支援するために火力を提供するが、戦闘力を維持するために火力の運用(employment of fires)を計画しなければならない。沿岸部隊(littoral force)は、火力支援調整センター(FSCC)を保有する部隊階層間に境界線または管理手段を設け、即応的な火力の運用(employment of fires)を促進することができる。
沿岸部隊指揮官(LFC)は脅威のレベルを評価し、火力能力の戦闘力を維持するために必要な警戒要素(security elements)の規模を決定する。
外部機関(External Agencies)。沿岸部隊(littoral force)の防衛に外部火力支援機関を活用するためには、沿岸作戦地域(LOA)内の上級火力支援調整センター(FSCC)は、沿岸作戦地域(LOA)内および潜在的に友軍の至近距離での火力を承認するために十分な戦闘空間認識(battlespace awareness)を維持する必要がある。
8.5 運用の任務コンセプト:MISSION CONCEPTS OF EMPLOYMENT
以下の項目は、遠征前進基地作戦(EABO)の任務とタスクを遂行する部隊が使用する運用のコンセプト(CONEMP)を示している。これらの運用のコンセプト(CONEMP)は、将来の戦力デザインに関連する開発中の能力を反映したものである。また、システム別、沿岸部隊(littoral force)別に、それぞれの主要な要件と採用上の留意点を示している。
これらのシステムをタスク編成された沿岸部隊(littoral force)の部隊が組み合わせると、遠征前進基地(EAB)を構成する行動部隊(units of action)ができあがる。8-9ページの図8-1は、遠征前進基地作戦(EABO)を実施する沿岸部隊(littoral forces)の連合した行動(combined actions)を示している。
8.5.1 水上戦の支援における火力:Fires in Support of Surface Warfare
沿岸部隊(littoral force)は、海上の目標に対して火力を適用し、海域を拒否または統制することで、海軍の大きな力の中で死活的役割(vital role)を果たす(8-10ページの下の図8-2を参照)。海上ドメインでの火力には、敵対者部隊を危険にさらし、重要な地域や部隊を守るための効果的、効率的な海上火力のキル・チェーンを構築することが基本的に必要である。
これらの火力は、陸上、海上、および空中から発射されるミサイルと、有人および無人プラットフォームから発射される滞空弾から構成される。沿岸部隊(littoral force)は、海兵空地タスク部隊(MAGTF)の火力フレームワークまたは複合戦構成物のいずれかの方法論を使用して、火力を統制することができる。任務工学スレッド(mission-engineering threads)は、有効な指揮・統制(C2)手法と機動の計画(SOM)を達成するために採用されるアセットに基づいて変化する。
図 8-1. 海上火力の運用の概念上のコンセプト |
主な要件は以下の通りである。
- ネットワーク(Network)。 沿岸部隊(littoral force)の火力部隊は、前方監視員、偵察機、航空機、隣接部隊、戦術本部、あるいは海上作戦センター(MOC)から直接、射撃データを受信できるようにしなければならない。どのような情報源であっても、火力部隊は、任務組織のいくつかの部隊階層を経由するのではなく、直接ターゲッティング・データを受け取る。このように直接的に発射データを受信することは、任務の事前調整、空域のデコンフリクト、および送信の本質上、承認を意味する。沿岸部隊(littoral force)の指揮官は、速度、軌道、弾薬の効果、数量が大きく異なる陸上および海上の有人・無人のプラットフォームから大量に発射するために、十分な通信能力を必要とする。
- 探知(Sensing)。 探知に関する要件は、複雑さによって異なる。複合戦の場合、沿岸部隊(littoral force)は水上戦指揮官(SUWC)または海上戦闘指揮官(SCC)との通信を維持し、複合部隊に探知能力を提供しなければならない。しかし、沿岸部隊(littoral forces)は、水上戦指揮官(SUWC)/海上戦闘指揮官(SCC)と同レベルの海上ドメイン認識(MDA)能力を必要としない場合がある。適切な戦術的指揮官が火力部隊に直接ターゲッティング情報を提供する状況は、海上ドメイン認識(MDA)の必要性を減少させる。
- 海上の物体の分類と識別(Classification and Identification of Maritime Objects)。沿岸部隊(littoral force)は、海上散乱物の中から脅威と良性物とを区別する能力を有するか、または他の情報源からこの明確な情報を得なければならない。
- 意思決定(Decision Making)。 沿岸部隊(littoral forces)は、脅威との交戦を適時に、正しく、合法的に決定し、適切な射撃部隊と兵器システムを決定し、射撃命令を出し、効果を観察し、損害評価を行うための適切な権限と能力を有していなければならない。
- 事前計画された対応(Preplanned Responses)。 沿岸部隊(littoral force)は、海軍部隊の事前計画された対応策の開発に参加し、その内容を熟知していなければならない。これらは通常、「秘密区分有り」の作戦上のタスク・メッセージ(OPTASK)に含まれる。
- 場所の選択(Site Selection)。砲兵隊は、その弾薬の使用に適した地形に配置され、残存性のために多くの代替地点を利用でき、沿岸部隊(littoral force)の後方支援能力の限界まで機動し分散できるものでなければならない。
敵対者の艦船のミサイル防衛能力を考慮すると、砲兵隊は地理的に離れた小隊や分隊を、必要な効果を達成するために集結させることができなければならない。また、指揮官は、隣接する地形や非戦闘員の上空を飛行することも考慮しなければならない。
図8-2. 概念上の水上戦の行動部隊(unit of action)が火力発揮 |
運用に関する考察が続く。
- 選択できる有人長距離水上艦と長距離無人水上艦(LRUSV)を装備した部隊は、小隊に編成することができるが、その任務はこの編成を反映する必要はない。長距離無人水上艦(LRUSV)部隊は、陸と海からの敵対者の脅威を緩和するのに十分な沿岸地形と、悪天候から防護するための聖域を必要とする。長距離無人水上艦(LRUSV)小隊は、これらの点を考慮した戦術的ローテーションを考えなければならない。
- 長距離無人水上艦(LRUSV)小隊は、保守、再武装、および自律システムの燃料補給に関連する独自の要件を評価し、考慮する必要がある。
- 長距離無人水上艦(LRUSV)小隊は、整備、再武装、燃料補給を支援するため、1対1の艦船ローテーションを検討する必要がある。
- 長距離無人水上艦(LRUSV)は探知能力と火力能力を併せ持つが、指揮官はこれらの能力をバランスよく活用することを考えなければならない。前方配置は、有機的な精密火力のタイムリーな実行を容易にするが、敵対者の交戦に艦艇をさらすことになる。指揮官は、長距離無人水上艦(LRUSV)の偵察能力と火力プラットフォームの価値を比較検討しなければならない。
8.5.2 打撃戦の支援における火力:Fires in Support of Strike Warfare
沿岸部隊(littoral force)は、戦略的任務を支援するため、打撃戦能力を使用することができる。この能力に関する計画の考察は、付録Aの「秘密区分有り」事項の中に記載されている。
8.5.3 航空・ミサイル防衛の支援における火力:Fires in Support of Air and Missile Defense
沿岸部隊(littoral force)は、友軍の部隊やアセットに対する敵対的な空とミサイルの脅威を破壊、無効化、またはその効果を低減するために防勢的行動を行う(下図8-3参照)。防空・ミサイル防衛(AMD)は、主に統合・有機の短・中・長距離地対空兵器を用い、外部からの指示・警告と、現地の受動センサーを用いて実施される。また、能動的センサーを使用することもある。
図8-3.想定される対空戦行動部隊(unit of action)の迎撃 |
主な要件は以下の通りである。
- 防空・ミサイル防衛(AMD)の場合、沿岸部隊(littoral force)は有機的に探知するか、外部のネットワークと一体化して統合追跡(joint tracks)を受ける能力が必要である。
- 沿岸部隊(littoral force)は、事前に計画された対応を実行するために、共通作戦図(COP)、戦術ネットワーク、データ・システムを利用するための海軍および統合システムでの指揮・統制が可能でなければならない。
運用に関する考察が続く。
- 指揮官は、防空・ミサイル防衛(AMD)の継続的または変動的な監視範囲の要件を理解する必要がある。脅威の分析に基づき、必要保障範囲は持続的または一時的の間で変化することがある。
- 防空・ミサイル防衛(AMD)の能力の幅を考えると、指揮官は戦場指揮官が指定した重要地域だけでなく、防護を必要とするアセットを慎重に配置することを考慮する必要がある。これらの能力を位置づけるには、これらの潜在的に競争する要件のバランスをとる必要があるかもしれない。
- 連合軍の様々な要素を維持することが相対的に困難であることを考慮し、指揮官は、大量の効果を得るために防空・ミサイル防衛(AMD)兵器の適切な採用を推奨する準備を整えておかなければならない。最終的に、指揮官は有限な資源を節約するために、利用可能な軍需品を効率的に使用しなければならない。
- 水上戦の能力と同様に、防空・ミサイル防衛(AMD)のアセットも残存性を確保するために頻繁に移動しなければならない。沿岸部隊(littoral force)は、部隊と死活的地域内を防護しながら、能力のギャップを緩和するために、部隊階層単位で変位を検討しなければならない。
- 防空・ミサイル防衛(AMD)部隊は、水上または陸上の大規模なタスク編成されたグループの要素として採用される可能性が高い。
8.5.4 対潜水艦の支援における作戦:Operations in Support of Antisubmarine Warfare
沿岸指揮官は、対潜水艦戦(ASW)を支援するために遠征前進基地(EAB)または複数の遠征前進基地(EAB)をタスク編成し、複合戦の下で作戦する場合、対潜水艦戦指揮官(ASWC)に対応することができる。対潜水艦戦(ASW)能力の採用は、持続的な戦域レベルの水中戦戦役(undersea warfare campaigns)における偵察と反偵察の強化につながる。対潜水艦戦(ASW)を支援するために作戦する遠征前進基地(EAB)は、海上共通作戦図(COP)に探知とデータ収集を提供し、同時に前方兵站スと支援を可能にする。
8.5.5 情報戦の支援:Support to Information Warfare
情報作戦戦指揮官(IWC)の計画策定に関する考察と運用については、5.5節と5.6節を参照のこと。
8.5.6 前方武装地点と給油地点:Forward Arming and Refueling Points
海兵隊航空部には、遠征飛行場および前方武装・給油地点(FARP)の作戦に関する確立されたドクトリンと手順があり、これは遠征前進基地作戦(EABO)にも適用される。海軍航空訓練・作戦手順・標準化(NATOPS)マニュアルには、厳しい環境下での安全な航空作戦を可能にし、出撃生成能力を維持するための必須手順が含まれている。
関連する海軍航空訓練・作戦手順・標準化(NATOPS)マニュアルには、遠征飛行場海軍航空訓練・作戦手順・標準化(NATOPS)、航空統制海軍航空訓練・作戦手順・標準化(NATOPS)、前方武装・給油地点(FARP)を使用する航空機タイプ、モデル、シリーズ別の海軍航空訓練・作戦手順・標準化(NATOPS)マニュアルが含まれる。遠征前進基地作戦(EABO)で想定されている柔軟性を考慮すると、航空機以外のプラットフォームの支援に前方武装・給油地点(FARP)を採用することも検討されるべきである。最後に、前方武装・給油地点(FARP)作戦のための追加的な考慮事項として、ホスト国との調整、技術・安全指示に含まれる最低人員レベルの遵守が挙げられる。
以下、主な要件と計画策定上の考慮事項を説明する。
- 給油作戦(Refueling Operations)。作戦上の要求と影響は、ホット前方武装・給油地点(FARP)とコールド前方武装・給油地点(FARP)のどちらを実行するかの決定に影響する。この選択は、航空機の即応性と迅速性に影響するが、計画担当者は、航空機の給油量、乗組員の休息、次の任務のための計画策定時間などの制限に対して、ホット前方武装・給油地点(FARP)の利点を評価(evaluate)する必要がある。
- 兵器(Ordnance)。兵器乗組員、特に特定の弾薬を扱うための要件は、前方武装・給油地点(FARP)を支援する兵器乗組員の数と種類を決定する。
- 遠征飛行場(Expeditionary Airfield :EAF)。遠征飛行場(EAF)の設立と作戦に関連するタスクには、航空機の作戦のための適切な間隔、マーキング、照明など、サイトのレイアウトとセットアップが含まれる。
- 遠征消防救助(Expeditionary Firefighting and Rescue :EFR)。有事の際の前方武装・給油地点(FARP)作戦では、遠征消防救助(EFR)の支援は必要ない。しかし、安全上の懸念から、利用可能な場合は、1台の遠征消防救助(EFR)装置と救助車両で前方武装・給油地点(FARP)を支援する必要がある。
- 機関の統制(Controlling Agencies)。海上統制機動部隊のような統制機関の要件は、前方武装・給油地点(FARP)が支援する航空機の種類、モデル、シリーズ、前方武装・給油地点(FARP)で予想される航空機の量、着陸帯の迅速な調査の要件、空域管理の考慮事項に基づいている。
- 部隊防護(Force protection)。前方武装・給油地点(FARP)近辺の空中機と地上機は、空と地上の両方の火力の影響を受けやすい。出撃発生を防護するために防空・ミサイル防衛(AMD)と地上の警備に配慮しなければならない。
8.5.6.1 前方武装地点と給油地点の計画策定:Forward Arming and Refueling Point Planning
遠征前進基地作戦(EABO)では、前方武装・給油地点(FARP)は迅速な展開と効果的なシグネチャ管理能力を備えた、小型で機動性の高い部隊で作戦する必要がある。脅威が中程度または高い環境では、前方武装・給油地点(FARP)は発見されないように頻繁に移動しなければならない。前線が静止し、敵の航空活動が少ない脅威の少ない環境では、前方武装・給油地点(FARP)はそれほど頻繁に移動しないかもしれない。複数の前方武装・給油地点(FARP)を使用するか、1つの前方武装・給油地点(FARP)を複数のサイト間で迅速に移動させるかは、状況によって決定される。
複数の前方武装・給油地点(FARP)サイトを設置する場合、あるいは一つの前方武装・給油地点(FARP)を移転する場合、稼働中の前方武装・給油地点(FARP)が停止する前に新しい前方武装・給油地点(FARP)を稼働させなければならない。前方武装・給油地点(FARP)設置のための移動速度は最重要であり、計画担当者は機器の設置に十分な時間を割かなければならない。
前方武装・給油地点(FARP)には主に3つの方式があり、それぞれの特性を組み合わせて使用することができる。
- 地上輸送(Ground Transported)。地上車両を使った前方武装・給油地点(FARP)の確立は、最も一般的な運用手段である。
- 空輸(Air Delivered)。強襲揚陸艦の使用は、前方武装・給油地点(FARP)を設置するための代替手段である。運用者は、迅速な配置を必要とする戦術的作戦や、不十分なアセットや人を寄せ付けない地形により地上輸送が不可能な場合、空輸された前方武装・給油地点(FARP)を使用する。
- 水上輸送(Surface Transported)。作戦状況により、水上連結船(surface connectors)で前方武装・給油地点(FARP)を設置することも可能である。前方武装・給油地点(FARP)は上陸後、地上輸送型前方武装・給油地点(FARP)と同じように運用される。これらの前方武装・給油地点(FARP)は兵站に柔軟性があり、セットアップや補給のために航空アセットを使用する必要がない。戦術的な状況、地形、時間によって、地上アセットを目的の場所に移動させることができない場合、地上輸送型前方武装・給油地点(FARP)が好まれる。
前方武装・給油地点(FARP)法を選択する上で重要な考慮点は以下の通りである。
- 調整要件と潜在的な兵站後方支援。
- 水上連結船(surface connectors)(有人・無人の両方)、航空機、または上陸用舟艇の有無と種類。
- 戦闘戦務支援地域の位置
- 上陸位置と障害物
- 主な補給路
- 前方武装・給油地点(FARP)までの距離。
- タイミング
- 脅威と警戒要件
8.5.6.2 前方武装地点と給油地点のデザイン:Forward Arming and Refueling Point Designs
任務の要件、重量や機動可能性(maneuverability)などの航空機の制約、環境の制約などの要因によって、作戦を可能にするために必要な前方武装・給油地点(FARP)のタイプが決まる。前方武装・給油地点(FARP)の種類によって、サイズ、人員、装備、技術的準備、維持に関わる要件が異なるため、沿岸部隊指揮官(LFC)と参謀はこの点を理解しておかなければならない。
前方武装・給油地点(FARP)のデザインは、支援する航空機の種類に依存する。(1)ティルトローター機、回転翼機、固定翼機で前方発射兵器を持たない強襲前方武装・給油地点(assault FARP)(下図8-4参照)(2)回転翼機、固定翼機で前方発射兵器を持つ攻撃型前方武装・給油地点(attack FARP)(下図8-5参照)の2種類の主要支援レイアウトが存在する。
固定翼機を支援する攻撃型前方武装・給油地点(attack FARP)の場合、アーム/デアームヘッディングからのタキシング能力が必要である。強襲前方武装・給油地点(assault FARP)では、対応する航空機の種類、モデル、シリーズに基づいて、兵器作戦を行うことができる。強襲前方武装・給油地点(assault FARP)は通常、安全距離が必要なため、より大きい作戦地域を必要とする。
図8-4. 概念上の強襲前方武装・給油地点(assault FARP)(回転翼機とティルトローター機) |
図8-5. 概念上の前方武装・給油地点(FARP)(HOT) |
8.6 艦隊の相互運用性:FLEET INTEROPERABILITY
1.5節で述べたように、遠征前進基地作戦(EABO)は大規模な海軍戦役(naval campaign)の中で行われる。そのため、遠征前進基地作戦(EABO)は艦隊の水上部隊を補完するようにデザインされている。空母打撃群(CSG)、遠征打撃群(ESG)、水上行動群(SAG)、水陸両用即応群(ARG)/海兵遠征隊(MEU)、戦闘兵站部隊(CLF)は沿岸部隊(littoral force)の一部として遠征前進基地作戦(EABO)を可能にする、あるいは支援する任務を遂行することがある。
今後の実験として、以下のような任務が考えられる。
- 艦隊の作戦地域(AO)と沿岸作戦地域(LOA)への沿岸部隊(littoral forces)の移動を支援する。
- 海上地形の確保を支援する。
- 遠征前進基地(EAB)の設立を支援
- 遠征前進基地(EAB)の防衛を支援
- 沿岸部隊(littoral forces)の後方支援の支援
第8章 挿話:Vignette
203X年のセントラリア民主共和国(DRC)との紛争のスペクトラム SPECTRUM OF CONFLICT WITH DRC IN 203X セントラリア民主共和国(DRC)はセントラリア共和国(Republic of Centralia)(通称「ROC」)を吸収することでセントラリアの「統一(unify)」を図ろうとした。物理的には島を挟む海域と小島を段階的に占領し、外交的にはセントラリア共和国(ROC)政府を承認した国に罰則を与え、軍事的には島をセントラリア民主共和国(DRC)本土から延びる兵器交戦ゾーン(WEZ)内に悠々と収めるという戦略で、セントラリア共和国(ROC)を包囲しようとしたのである。 これに加えて、セントラリア共和国(ROC)軍は空、陸、海で圧倒的に有利な状況にあった。理想を言えば、セントラリア共和国(ROC)は発砲せずに威嚇して「統一(unifying)」させたかったのである。 セントラリア民主共和国(DRC)の経済規模が拡大するにつれて、国力を左右する他の手段も拡大した。203X年、セントラリア民主共和国(DRC)は威嚇戦役(intimidation campaign)を強化する自信を持った。数ヶ月にわたる外交的、経済的いじめ(diplomatic and economic bullying)は地域を混乱させ、セントラリア共和国(ROC)の近隣諸国にも疑念を抱かせることになった。競争的なナラティブを通して、艦隊の部隊は作戦環境に対する基本的な理解を維持した。 米国はセントラリア共和国(ROC)との外交・軍事協力を拡大しており、沿岸警備隊による領海の海上主権行使能力の向上や、ダコタ(Dakota)領土の陸上から作戦する艦隊海兵部隊(FMF)行動部隊(units of action)によるインテリジェンス・監視・偵察-ターゲッティング(ISR-T)支援などを実施していた。このような軍事的支援に加え、米国は、セントラリア民主共和国(DRC)のいじめ戦術(bullying tactics)を公に非難しつつ、すべての当事者間の平和的な話し合いを支持する声明を出すなど、外交的な行動も行っている。 このような米国のセントラリア共和国(ROC)支援にもかかわらず、セントラリア民主共和国(DRC)は結局、特に中央アジア本土とセントラリア共和国(ROC)との非公式な境界線に沿って、警戒レベルを上げ、航空・海上パトロールを強化することでエスカレートしていった。セントラリア民主共和国(DRC)とセントラリア共和国(ROC)のあらゆる種類の船舶(海軍、沿岸警備隊、監視、漁業など)が相互に影響を及ぼした。 攻撃的な行動がより頻繁に起こるようになった。セントラリア共和国(ROC)沿岸警備隊船はセントラリア共和国(ROC)漁船の船首を横切る習慣がある。セントラリア共和国(ROC)沿岸警備隊はこれに対し、セントラリア民主共和国(DRC)漁船をセントラリア共和国(ROC)の12カイリ排他的水域から「体当たり(shouldering)」して排除した。セントラリア共和国(ROC)漁船がセントラリア民主共和国(DRC)漁船に衝突され、数隻を曳航して港に戻さねばならなかった。また、幸いにも空中で衝突することはなかったが、両国の空軍の間でも同様の対立が発生した。 緊張が高まる中、戦闘軍指揮官(CCDR)は、米国と国際社会の対応を支援するための選択肢を検討した。その結果、セントラリア民主共和国(DRC)が武力紛争を利用してセントラリア共和国(ROC)を奪取することを阻止することが主な到達目標となり、次いでセントラリア民主共和国(DRC)がいかなる暴力を行使してセントラリア共和国(ROC)政府をいじめ、セントラリア民主共和国(DRC)の要求を呑ませることを阻止することが目標とされた。 戦闘軍指揮官(CCDR)が指導部と話し合った後、艦隊指揮官は、自分の指揮官と部隊指揮官レベルまでセキュアなビデオ電話会議(SVTC)を行うという慣行に従った。そして、戦闘軍指揮官(CCDR)の会議の内容を簡潔に説明し、自分の考えを述べる。そして、主要な部下から質問を受ける。 セキュアなビデオ電話会議(SVTC)が終了した後、下位の機動部隊とタスク群は下位の指揮官と同様の議論を行った。海兵遠征部隊(MEF)の司令官(CG)は海兵隊のフォローアップ・議論を主導し、第25海兵沿岸連隊(MLR)のロビンソン大佐は指揮官と参謀を集めてバック・ブリーフィングを行い、以下に述べるような計画策定の指針を提供した。 提督の報告会では、幅広い聴衆が参加するのがうれしいですね。提督の指導により、戦域レベルでの計画策定の方向性がかなり見えてきました。すでに決まっているのは、この作戦のために連合統合タスク部隊(CJTF)を編成し、提督は第8艦隊と連合部隊海兵構成部隊指揮官(CFMCC)を兼任することである。提督は連合の参加を期待しているから。戦闘軍指揮官(CCDR)はその実現に向け、懸命に取り組んでいる。 連合統合タスク部隊(CJTF)の主な到達目標は、セントラリア共和国(ROC)を統一に従わせるために武力を行使することを抑止することである。連合統合タスク部隊(CJTF)の作戦は、外交的、情報的な方法・手段とともに、より大きな戦略の一部である。 海上の観点から、提督はセントラリア民主共和国(DRC)の海峡横断を阻止する能力を確保し、この能力を利用してセントラリア民主共和国(DRC)の意思決定者に自国の海軍やその他の海上アセットを危険にさらすことを躊躇させたいと考えている。セントラリア民主共和国(DRC)が我々からその能力を奪うことがないようにしたい。 そのためには、セントラリア民主共和国(DRC)の海峡通過を阻止できることを証明し、意思決定者の考えを変えなければならない。連合部隊海兵構成部隊指揮官(CFMCC)の参謀は、その方法について詳細を詰めているところである。 当初、艦隊は北にタスク部隊81(TF 81)、南にタスク部隊80(TF 80)を配置する。両機動部隊は、セントラリア共和国(ROC)周辺の海上ドメインの一部をセントラリア民主共和国(DRC)に対して拒否する準備をすることになる。ダコタ(Dakota)周辺ではすでにコンタクト層部隊が作戦しているので、タスク部隊80(TF 80)のために働くタスク群を編成する。オニキス(Onyx)周辺で活動する第24次海兵沿岸連隊(MLR)は、北のタスク部隊81(TF 81)のために同じようなことをする。 どちらの海兵沿岸連隊(MLR)もスタートは同じ任務で、それぞれのタスク部隊が監視/対抗監視コンテストで勝利するのを助けることである。これは2つの部分に分かれる。第一は、タスク部隊80(TF 80)の偵察/反偵察戦とそれが意味するものすべてに対する直接的な支援である。これには、機動部隊の戦闘計画と指揮官の意図を理解することが必要である。 もう1つは、偵察・反偵察の闘いで、沿岸部で作戦する海軍遠征部隊の残存性に重点を置いている。艦隊の一員としての我々の重要な役割は、作戦上の効果を維持することである。つまり、敵がどのように我々を狙おうとしているのかを理解し、その取組みを阻止することである。この2つは、すべてのドメインで行う必要がある。 艦隊指揮官は、海兵沿岸連隊(MLR)がコンタクト層で行っている作業について言及した。彼女は、我々が共通作戦図(COP)に情報を提供し、海上ドメイン認識(MDA)を高め、同盟国やパートナーと協力するために、常にスカウティング画像に取り組んでいることを知っている。彼女は、そのすべてを確実に活用することを熱望している。タスク部隊の指揮官たちは、海兵沿岸連隊(MLR)が一連の島々を出入りする際に、いかにして自分たちを遮蔽してくれるかを語ってくれました。過去半世紀にわたって艦隊と行ってきた演習が実を結んでいることは明らかなようである。 「ロビンソン大佐?」と、クラークソン中尉は言った。「大佐、邪魔してすみませんが、パートナーがどのように共通作戦図(COP)に貢献しているのか、少し不明である。少し説明していただけませんか?」 ロビンソン大佐は、こう続けた。 その質問に対する技術的な答えは、もちろんこの部屋で支援できる範囲を超えて分類されるが、コンセプト的な答えは分類されません。それは本当に2つの部分に分かれる。1つ目は、人間関係である。我々は、どの同盟国やパートナーを取り込みたいかを特定し、競争の計画策定に戦役(campaign)の到達目標として共有された共通作戦図(COP)を盛り込む必要があった。共通作戦図(common operating picture)のような有意義な情報を共有するために必要な信頼関係を築くには、何年もかかる。 戦闘軍指揮官(CCDR)の参謀、そして省庁間、特に国務省との調整には多大な労力を要した。2つ目は、技術的な課題を解決することである。海外の友人たちと協力して、彼らがどのようなセンサーを持ち、どのような画像のどの部分を構築できるかを判断しなければならないだった。ダコタ(Dakota)に参加してもらうことが最優先だったが、ご存知のように、彼らはもう10年近くこのプロジェクトに参加している。 また、艦隊や統合部隊(joint force)と並行して、API(Application Programming Interface)のようなものを使って統合共通作戦図(COP)を生成することも必要だった。幸いなことに、これは彼らにとっても到達目標だった。それでも多くの作業が必要だったが、多くの組織がこの方向に進むことに貢献した。同盟国やパートナーが共通作戦図(COP)にプラグインできる方法を考え出したのは、国防高等研究計画局(DARPA)のプロジェクトだったと思う。 基本的に、ユーザーは共通作戦図(COP)にプッシュされる全てのセンサーデータの顧客となることができるが、顧客側のAPIではデータの出所に関する属性はない;その出所は海軍、統合、連合などである。 それはセントラリア民主共和国(DRC)に対しての競争優位性だった。彼らはアメリカの同盟構造を決して好きではないし、我々が共通作戦図(COP)を持つことを本当に、本当に嫌がる。 このような競争的な活動や他の活動によって、我々が現在計画策定している作戦の条件が整えられた。我々が長年にわたって意図的に注力してきたことが、すでにセントラリア民主共和国(DRC)の行動の自由を制約してきた。過去6年間、当部門がタスク群として主導し、丹念に同盟共通作戦図(COP)を作り上げてきた多地点・二国間演習のような取組みである。 つまり、作戦環境(OE)ベースラインを維持することは、艦隊が偵察/反偵察の戦いに勝つために必要な目標の多くをすでに確保していることを意味する。言うまでもなく、ベースラインを理解することは、欺瞞とデコイで我々のシグネチャを隠すという我々の部隊防護(force protection)に役立つ。 簡単にまとめると、第一段階(コンタクト層)は、連合部隊海兵構成部隊指揮官(CFMCC)の指揮下にある2つのタスク部隊がセントラリア民主共和国(DRC)を抑止することである。我々は、タスク部隊80(TF 80)の下でタスク部隊を編成し、必要であればセントラリア共和国(ROC)周辺の海上ドメインを抑止できるよう、監視・対抗監視の競争に勝たせることを第一の目的とする。 また、タスク部隊80(TF 80)を遮蔽する準備も必要であるし、海上ドメインでの拒否を支援する準備も必要である。この段階では、遠征戦指揮官としてタスク部隊80(TF 80)の複合戦指揮官(CWC)アーキテクチャに適合することになると思う。 次に提督は、抑止が失敗した場合、あるいは失敗しそうだという強い「兆候と警告(I&W)」を得た場合、どうなると考えているのかを持ち出した。彼女は、今の時点では、沿岸部の闘いとそれに付随するすべてを担当する単一の機動部隊の指揮官がいれば安心だと言っている。 抑止力が機能しなくなった場合、連合部隊海兵構成部隊指揮官(CFMCC)としては、遠征前進基地作戦(EABO)を行う海軍部隊である沿岸部隊(littoral force)を遮蔽部隊と見なすことになる、と説明した。そこで、N3にいくつかの行動方針(COA)を提案させた。その1つが、師団や海兵遠征部隊(MEF)の指揮官が沿岸部隊(littoral force)の指揮官となり、タスク部隊82(TF82)として連合部隊海兵構成部隊指揮官(CFMCC)のために活動することである。これは、本会議の後、海兵遠征部隊(MEF)司令官(CG)と議論した内容の一部である。 抑止が失敗し「兆候と警告(I&W)」を得た場合、重要な機動が実施される。前回のショルダー・トゥ・ショルダー演習で実践したように、海兵遠征部隊(MEF)は航空アセットの再配置を行い、一般的には無人システムを脅威に近づけ、より高価な有人プラットフォームは兵器交戦ゾーン(WEZ)の外で待機することになる。この時点で、わが軍の砲兵隊はダコタ(Dakota)海峡をセントラリア民主共和国(DRC)から切り離す位置にある。どの程度の期間、防衛する必要があるかなど、詳細な計画策定については現在検討中である。 連合部隊海兵構成部隊指揮官(CFMCC)/第8艦隊も全体的な欺瞞計画を策定している。我々は、地上車両や軽水陸両用艦艇(LAW)など、地上のプラットフォームごとに複数のデコイを使用し、各陣地にいくつかのダミーサイトを設置する予定である。さらに重要なのは、できる限り現地の雑音に紛れることだ。作戦参謀、ダコタ(Dakota)に配備された隊員から最新のベースライン・データを取り寄せよう…それと、去年の夏の「ショルダー・ツぅ・ショルダー(S2S)演習」の行動後のスライドも取り出そう。 セントラリア民主共和国(DRC)は欺瞞やデコイなどあらゆる手段を講じてくるはずです。セントラリア民主共和国(DRC)軍が行うであろう変化に対応できるようセンサーの再プログラムの準備をしておく必要がある。スプーフィング、ジャミング、その他のトリックを克服するため、我々の機材のフィルターを調整する必要があるかもしれない。 この移行期が終わるころには、沿岸部隊(littoral force)としてのタスク部隊82(TF82)が立ち上がることを期待している。先ほど申し上げたように、もっと早い時期になるかもしれないが、遅くとも移行期間終了までには設置されるだろう。そうなれば、特に航空と兵站について、肩の荷が下りるだろう。海兵沿岸連隊(MLR)は、艦隊を支援するためのすべての監視と対監視の任務、および我々自身の沿岸偵察戦に集中することになる。次に優先されるのは、ダコタ(Dakota)海峡をセントラリア民主共和国(DRC)に渡さないようにすることである。 提督は、武力紛争に発展した場合の対応について、概略を説明した。基本的に、タスク部隊82は、他の艦隊に機動の自由(freedom to maneuver)を与えるために、前方で遮蔽を行う。それを実現するために、監視の闘いに勝つだけでなく、チョーク地点を拒否することになるだろう。彼女はタスク部隊82(TF82)が目と耳になると思っている。他のタスク部隊が放出統制(EMCON)で蒸し返す間ね。彼女はできるだけ予測不可能なことをしたいので、セントラリア民主共和国(DRC)を見えなくすることができれば、他のタスク部隊は予想外の方法で攻撃することができる。 さて、何か質問はある?始めよう。 |
ノート
[1] Joint Chiefs of Staff, Operations Security, JP 3-13.3 (Washington, DC: US Department of Defense, 2016) and Joint Chiefs of Staff, Military Deception, JP 3-13.4 (Washington, DC: US Department of Defense, 2017).