米海兵隊の「遠征前進基地作戦(EABO)に関する暫定マニュアル」 第6章

「序文」および「第1章 はじめに」「第2章 作戦上の思考態度」、「第3章 計画策定と組織へのアプローチ」、「第4章 インテリジェンス作戦」「第5章 情報環境での作戦」に引き続き、「第6章 航空作戦」を紹介する。

米海兵隊の組織は、海兵空地タスク部隊(Marine Air-Ground Task Force :MAGTF)といわれる構造が特徴で、例えば海兵遠征部隊(Marine Expeditionary Force)は地上戦を行う部隊、航空戦を行う部隊、後方支援を行う兵站部隊から構成されているように、航空戦が欠かせないと言われる。

第6章では「遠征前進基地作戦(EABO)における航空作戦は、競争の連続体(competition continuum)全体におけるさまざまな脅威のもとで、幅広い任務分野にまたがっている。海兵隊航空の6つの機能(攻撃的航空支援、対空戦、突撃支援、航空偵察、電子戦、航空機・ミサイルの統制)は、依然として広く有効である」とし、「遠征前進基地作戦(EABO)における航空の役割は、沿岸部隊指揮官(littoral force commander :LFC)の任務である海上拒否作戦(sea denial operations)と海上統制作戦(sea control operations)を支援すること」という観点から網羅的に記述されている。(軍治)

第6章 航空作戦:CHAPTER 6 Aviation Operations

6.1 全般:GENERAL

6.2 目的と範囲:PURPOSE AND SCOPE

6.3 遠征前進基地作戦における航空の役割:ROLE OF AVIATION IN EXPEDITIONARY ADVANCED BASE OPERATIONS

6.4 航空指示、航空統制、空域管理:AIR DIRECTION, AIR CONTROL, AND AIRSPACE MANAGEMENT

6.5 遠征前進基地作戦の支援における航空の機能:FUNCTIONS OF AVIATION IN SUPPORT OF EXPEDITIONARY ADVANCED BASE OPERATIONS

6.6 沿岸部隊航空戦闘要素の支援関係:LITTORAL FORCE AVIATION COMBAT ELEMENT SUPPORTING RELATIONSHIPS

6.6.1 全般支援:General Support

6.6.2 直接支援:Direct Support

6.6.3 近接支援と相互支援:Close Support and Mutual Support

6.7 沿岸部隊航空戦闘要素と統合部隊との関係:LITTORAL FORCE AVIATION COMBAT ELEMENT RELATIONSHIPS WITH THE JOINT FORCE

6.8 沿岸部の航空指揮・統制(C2)機関:LITTORAL AIR COMMAND AND CONTROL AGENCIES

6.9 航空の計画策定:AVIATION PLANNING

6.9.1 統合作戦の支援における沿岸部隊航空戦闘要素:Littoral force Aviation Combat Element in Support of Joint operations

6.9.2 沿岸部隊航空戦闘要素の統合実体/連合実体:Littoral force Aviation Combat Element Liaison with Joint/Combined Entities

6.10 航空兵站:AVIATION LOGISTICS

第6章 挿話:Vignette

第6章 航空作戦:CHAPTER 6 Aviation Operations

6.1 全般:GENERAL

海軍の作戦を成功させるためには、特に沿岸部において、航空ドメインにおける統合および海軍のアセットを活用することが必要である。沿岸部隊(littoral forces)を支援することにより、海上航空は作戦範囲を拡大し、火力と効果、突撃支援と移動性、偵察と監視を提供し、航空機とミサイルを統制し、部隊防護(force protection)と航空優越(air superiority)を提供することができる。

航空部隊は航空機に限定されない。航空部隊には、海上、地上、海上防空・対空戦部隊、航空指揮・統制機関、沿岸作戦地域とその周辺の基地、航空地上支援能力、および統合航空能力などが含まれる。航空部隊と能力の柔軟な組み合わせにより、航空は一体化した海軍部隊に殺傷力、柔軟性、速度、作戦範囲を提供する。

航空の計画策定と作戦に関する統合および軍種のドクトリンは不変であるが、空域と資源の効果的な調整を確保しながら 遠征前進基地作戦(EABO)を支援するためには、さらに考慮すべきことがある。特に、遠征前進基地作戦(EABO)への航空支援には、新しいタイプの航空タスク編成と、海兵隊航空のドクトリン上の機能以外の海上航空機能の追加が要求される。これらの適応は沿岸部隊(littoral forces)に必要であり、また統合戦役(joint campaign)にも貢献する。

6.2 目的と範囲:PURPOSE AND SCOPE

本章では、遠征前進基地作戦(EABO)を実施する沿岸部隊(littoral forces)に関連する航空の役割、機能、任務について論じるが、遠征前進基地作戦(EABO)の実施に使用する特定の航空機、兵器、システムには焦点を当てない。

海軍の作戦は本質的に航空集約的であるため、沿岸作戦は本質的に航空集約的である。陸上・海上部隊の防護、打撃戦、海上哨戒・偵察、強襲支援、対空戦は、いずれも現代において航空集約的であることが証明されている。このような作戦を沿岸地域(littoral area)の紛争地域で行う場合、同様に多大な労力を要することになる。

したがって、遠征前進基地作戦(EABO)を実施する沿岸部隊(littoral forces)の支援を任務とする航空部隊と、これらの部隊に所属する航空部隊は、沿岸作戦に固有の要件を認識していなければならない。

6.3 遠征前進基地作戦における航空の役割:ROLE OF AVIATION IN EXPEDITIONARY ADVANCED BASE OPERATIONS

遠征前進基地作戦(EABO)における航空作戦は、競争の連続体(competition continuum)全体におけるさまざまな脅威のもとで、幅広い任務分野にまたがっている。海兵隊航空の6つの機能(攻撃的航空支援、対空戦、突撃支援、航空偵察、電子戦、航空機・ミサイルの統制)は、依然として広く有効である。

しかし、武力紛争以下の競争の間は、海兵隊の航空支援は連隊に配置された航空支援部隊が巡回する航空機に状況報告を行う程度にとどまることがある。武力紛争時には、航空部隊と航空戦闘部隊は、統合部隊指揮官(JFC)の戦役(campaign)に航空支援を提供しながら、海兵隊航空の6つの機能すべてと、海上統制(sea control)と海上拒否(sea denial)を支援する追加機能を同時に実施することができる。

遠征前進基地作戦(EABO)における航空の役割は、沿岸部隊指揮官(LFC)の任務である海上拒否作戦(sea denial operations)と海上統制作戦(sea control operations)を支援することである。航空資源は限られているため、通常、航空アセットは沿岸部隊(littoral force)内の集権化した指揮(centralized command)の下に置かれるべきである。

他のタイプの作戦と同様、沿岸部隊(littoral force)のこれらの航空アセットは、通常、航空戦闘要素(aviation combat element :ACEとして編成され、航空アセットの優勢と沿岸部隊(littoral force)の全航空アセットを指揮・統制(C2)する能力を持つ海軍または海兵隊の上級飛行士の指揮下に置かれる。

事実上、これは海軍と海兵隊の一体化された航空タスク部隊またはタスク群を作り、沿岸部での広範な海上戦役(maritime campaign)を支援するものである。さらに、沿岸戦闘部隊(LCF)が 統合タスク部隊(JTF)に指定された場合、航空戦闘要素(ACE)は 統合タスク部隊(JTF)の統合部隊航空構成部隊指揮官(JFACC)として機能することになる。沿岸部隊(littoral force)の航空戦闘要素(ACE)は、海軍と海兵隊の統合航空部門として、沿岸部隊(littoral force)の海上拒否(sea denial)と海上統制(sea control)の任務を支援する航空機能を実行する。

これらの任務を支援する上で、沿岸部隊(littoral force)航空戦闘要素(ACE)指揮官は、以下のタスクの達成または調整に責任を負う。

  •  航空作戦(aviation operations)と空域(airspace)の利用を計画する
  •  航空機、乗組員、兵器(ordnance)、燃料、施設、船舶の飛行作戦が可能なように計画・調整する。
  •   エア・タスキング・オーダー(air tasking order :ATO)や航空計画の作成など、沿岸部隊(littoral force)の航空アセットのタスキングを行う。
  •  沿岸部隊(littoral force)の航空アセットの使用を指示し、その使用を統合、連合、およびホスト国の航空アセット、能力、および資源と調整すること。
  •  航空戦術図(air tactical picture)の生成
  •  複合戦下でのタスク時には打撃戦指揮官(STWC)として従事する
  •  複合戦下での任務の場合、防空ミサイル防衛指揮官(AMDC)として従事する。
  •  複合戦下でのタスクの場合、遠征戦指揮官(EXWC)として従事する。
  •  複合戦時には、沿岸作戦地域内の空域統制機関(ACA)として従事する。
  •  複合戦下で任務を遂行する場合、航空資源要素調整官(AREC)として従事する。
  •  複合戦時の任務では、ヘリコプター・エレメント・調整官ー(HEC)に従事する。
  •  複合戦下において、複合戦指揮官(CWC)、戦いの指揮官(warfare commanders)、機能群指揮官、調整官を支援する航空能力を創出する。

複合戦の第 3 章から第 5 章および付録 A を参照されたい。航空作戦に関連する様々な戦いの指揮官(warfare commanders)、機能群指揮官、および調整官の機能と責任に関する詳細な議論については、NWP 3-56 の「複合戦:戦争の戦術レベルにおける海上作戦(Composite warfare: Maritime Operations at the Tactical Level of War」を参照されたい。

沿岸部隊(littoral force)の航空戦闘要素(ACE)指揮官は、海、空、陸にある施設、機関、能力を組み合わせて、航空戦闘要素(ACE)航空および沿岸部隊(littoral force)を支援する統合航空を分散的に統制することができる。これには以下が含まれる。

  •  航空作戦の遂行
  •   沿岸作戦地域(LOA)内の沿岸部隊(littoral force)と友軍部隊に防空・ミサイル防衛を提供する。
  •   沿岸作戦地域(LOA)内の空域の管理・統制
  •  統合、連合、多国籍、ホスト国の航空統制機関との調整
  •  沿岸部隊(littoral force)のエア・タスキング・オーダー(ATO)と航空計画の実行
  •  複合戦下で作戦する指揮官を含む下位および隣接指揮官に対して、戦術的な決定を支援するためにタイムリーで正確な情報を提供すること。

6.4 航空指示、航空統制、空域管理:AIR DIRECTION, AIR CONTROL, AND AIRSPACE MANAGEMENT

航空指示(air direction)、航空統制(air control)、および空域管理(airspace management)については、MCWP 3-20 「航空作戦(Aviation Operations」の第 4 章を参照されたい。これらの航空統制及び領空管理の方法は、沿岸部隊指揮官(LFC)及び沿岸部隊(littoral force)航空戦闘要素(ACE)が、海軍及び海兵隊の航空アセットの集権化した指揮と分散統制(centralized command and decentralized control)を確保するために使用される。

6.5 遠征前進基地作戦の支援における航空の機能:FUNCTIONS OF AVIATION IN SUPPORT OF EXPEDITIONARY ADVANCED BASE OPERATIONS

遠征前進基地作戦(EABO)を支援する航空は、他のタイプの作戦と同様、多機能であり、図6-1に示すように、海兵隊航空のドクトリン上の6つの機能を含んでいる。遠征前進基地作戦(EABO)は、航空機が長距離、高耐久性で作戦することが多く、航空集約的である。敵の兵器交戦ゾーン(WEZ)が存在するだけでは、海上戦役(maritime campaign)において艦隊の目標を支援するための航空作戦の必要性はなくならない。

遠征前進基地作戦(EABO)を支援するための航空作戦は、現代の多くの航空作戦と次の点で異なっている。

  •  無人航空機は現在の作戦よりもさらに重視される
  •  敵対者は、最近の作戦で経験したことがないほど、質的にも量的にも危険な脅威を呈している。
  •  人工知能、機械学習、センサー技術の進化と戦術的データ・リンクの利用拡大により、ターゲティング・サイクルを高速化し、意思決定を分散化することが予想される。
  •  航空機、指揮・統制(C2)機関、航空機搭載艦船、支援基地などのシグネチャは、敵対者のターゲティングを複雑にするため、常に管理する必要がある。

図6-1. 海兵隊航空の6つの機能

海上航空の6つの機能については、MCWP 3-20の「航空作戦(Aviation Operations」を参照されたい。

対潜水艦戦(Antisubmarine Warfare :ASW。複合戦指揮官(CWC)は、対潜水艦戦争を支援または実施するために、沿岸部隊(littoral force)に常駐する航空機および能力を含む様々な航空プラッ トフォームを利用することができる。作戦環境(OE)の本質、対象地域の広さ、敵潜水艦の発見、固定、追跡、ターゲット、交戦、評価の必要性から、持続的なインテリジェンス・監視・偵察(ISR)は対潜水艦戦(ASW)任務にとって不可欠である。

水上戦(Surface Warfare :SUW。複合戦指揮官(CWC)は、沿岸部隊(littoral force)の航空機および能力を含む様々な航空プラットフォームを利用し、水上戦を促進または実施することができる。より詳細な議論については、NTTP 3.20.8 「海上軍種戦を支援する航空作戦のための複数軍種の戦術、技術、および手順(Multi-Service Tactics, Techniques, and Procedures for Air Operations in Support of Maritime Service Warfare」を参照されたい。海兵隊の攻勢的航空支援(OAS)技法は水上戦(SUW)の技術と大まかに似ているが、海洋環境、敵艦の能力、および特殊な兵器のため、水上戦(SUW)は海上航空とは異なる分野および機能であると見なす必要がある。

情報作戦戦(Information operations Warfare。複合戦下の情報作戦戦指揮官(IWC)は、沿岸部隊(littoral force)の航空アセットを利用して情報作戦を支援することができ、これは海兵航空の電子戦(EW)機能および沿岸部隊(littoral force)の情報環境における作戦(OIE)と重複する可能性がある。

インテリジェンス、監視、偵察(Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance:ISR。航空偵察は海上航空の機能であるが、海上インテリジェンス・監視・偵察(ISR)の機能は、海上ドメイン認識(maritime domain awareness)を支援する海上監視を含むより広範なものである。従って、海上インテリジェンス・監視・偵察(ISR)は海上航空の別個の機能である。

3.6 節で述べたように、遠征前進基地作戦(EABO)の指揮・統制(C2)手法は 海兵空地タスク部隊(MAGTF)指揮・統制(C2)、複合戦、またはその両方の下で実行されることがある。「複合戦(Composite warfare」(NWP 3-56)は、防空・ミサイル防衛、打撃戦、海上制空、攻撃的対空(OCA)、防御的対空(DCA)、電子攻撃支援、移動作戦(空中給油を含む)を列挙している。海軍航空のこれらの任務分野は、海兵隊航空の6つの機能とほぼ同じである。

しかし、これらの任務分野だけでは、海上戦役(maritime campaign)を支援する一体化した海軍航空作戦の機能の計画策定を促進することはできない。従って、追加の海上航空機能が必要である。以下の機能は、海上航空の機能と合わせると海上航空の機能となり、機能的な航空計画策定、エア・タスキング・オーダー(ATO)の策定、および同様のプロセスを促進するものである。

図6-2. 海上作戦を支援するその他の航空機能

最終的に、遠征前進基地作戦(EABO)を支援する海軍と海兵隊の航空は、航空アセットに対する高い需要、利用可能なアセットの比較的短い供給、結果として航空アセットの優先順位の必要性、および航空の運用における柔軟性の必要性から、複合的かつ一体化したアプローチが要求されることになる。

6.6 沿岸部隊航空戦闘要素の支援関係:LITTORAL FORCE AVIATION COMBAT ELEMENT SUPPORTING RELATIONSHIPS

6.6.1 全般支援:General Support

航空戦闘要素(ACE)と沿岸部隊(littoral force)の支援関係は、ほとんどの場合、全般的な支援の関係である。この関係は、沿岸作戦地域(LOA)で望まれる海軍作戦の中央集権的、分散的統制的アプローチを支えるものであ る。航空支援に対する需要は、ほとんど常に航空能力の供給を上回っているため、沿岸部隊(littoral force)指揮官は 航空戦闘要素(ACE)を部隊の全般的支援にとどめる。

これにより、急速に変化する状況に効果的に対応しながら、最も効率的かつ効果的な航空能力の配分に寄与している。航空任務サイクルは、任務とタスクに航空機を割り当てる。航空戦闘要素(ACE)指揮官は、航空任務サイクルを用いて、限りある航空アセットを沿岸部隊(littoral force)や複合戦指揮官(CWC)のニーズに基づき、正しい優先順位で最大限の効果を発揮するように配分する。

6.6.2 直接支援:Direct Support

この支援関係は、沿岸部隊(littoral force)指揮官が設定した場合、航空戦闘要素(ACE)が支援部隊の支援要求に直接応じることを要求する。この種の関係は、航空アセットの不足と、航空戦闘要素(ACE)が沿岸部隊(littoral force)を支援するために遂行しうる広範な潜在的任務のために、沿岸部隊(littoral force)指揮官によってまれにしか確立されないはずである。

直接支援関係の指定により、支援部隊と被支援部隊の間には、直接の連絡、調整、そして一般的には被支援部隊が提供する現地の安全保障と後方支援を含む、直接的なコミュニケーションが必要とされる。

個々の出撃(sorties)は、特定の任務の文脈で、部隊を直接支援するために配置されることがある。これらの出撃(sorties)は、特定の部隊を代表するものではないので、既存の一般支援関係には影響を与えない。

直接支援する沿岸部隊(littoral force)航空戦闘要素(ACE)部隊は、支援される部隊の必要性に対応する。その部隊とその機動の計画(scheme of maneuver)に対して継続的な支援を行う。直接支援の役割は、支援部隊と被支援部隊の間に 1 対 1 の関係を作り出す。

支援部隊と被支援部隊の上級司令部は、「例外的に」しか関与しない。しかし、各部隊はその作戦と計画について上位司令部に情報を提供しなければならない。例えば、地上戦闘部隊の下位部隊を直接支援する攻撃飛行隊、機動大隊(maneuver battalion)を直接支援するヘリコプター部署(helicopter section)、沿岸陸上部隊を直接支援する低空防空(LAAD)砲列などである。

6.6.3 近接支援と相互支援:Close Support and Mutual Support

通常、航空部隊は、有人・無人を問わず、近接支援や相互支援を行うことはない。陸上および海上ミサイル・航空監視部隊は、沿岸部隊(littoral force)内の他の部隊や、統合・多国籍作戦において、近接支援または相互支援の役割を果たすことがある。さらに、航空地上支援および航空整備を行う海兵隊および海軍の要員は、前線地域にいる間、効果的に近接支援することができる。

6.7 沿岸部隊航空戦闘要素と統合部隊との関係:LITTORAL FORCE AVIATION COMBAT ELEMENT RELATIONSHIPS WITH THE JOINT FORCE

統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)は、特定の機能の達成のために統合部隊(joint force)に貢献し、これに依存する。航空作戦は、沿岸部隊(littoral force)内の航空部隊の作戦を含め、統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)および 統合部隊指揮官(JFC)の戦役(campaign)に対する貢献の一部を占める。統合部隊(joint force)との関係における沿岸部隊(littoral force)の具体的な 航空戦闘要素(ACE)機能には、次のようなものがある。

航空・ミサイル防衛(Air and Missile Defense。 統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)は通常、地域防空指揮官(AADC)に対応するセクター防空指揮官(SADC)または地域防空指揮官(RADC)としても機能する防空・ミサイル指揮官で外洋および沿岸域を防衛する。

防空ミサイル防衛指揮官(AMDC)は海軍将校であってもよく、通常は巡洋艦の指揮官がこの役割を果たす。この場合、防空ミサイル防衛指揮官(AMDC)は防空・ミサイル防衛の実施のために航空アセット、指揮・統制(C2)機関、防御的対空(DCA)出撃の使用を調整する。

あるいは、沿岸部隊(littoral force)航空戦闘要素(ACE)指揮官が 防空ミサイル防衛指揮官(AMDC)に指名されることもある。複合戦下のこのような戦いの指揮官(warfare commander)は、防空・ミサイル防衛の実施に必要な施設と能力を有していなければならない。防空ミサイル防衛指揮官(AMDC)はまた、沿岸部での防空・ミサイル防衛の実施のために、米陸軍パトリオット旅団および米空軍の能力・出撃手段を使用する用意がなければならない。

打撃戦(Strike Warfare。 攻撃戦には、作戦地域内の目標を攻撃するための統合火力支援、阻止戦、戦略攻撃、攻撃的航空支援、弾道ミサイルおよび巡航ミサイル、航空機、沿岸部隊(littoral forces)、特殊作戦部隊(SOF)が含まれる。統合部隊指揮官(JFC)は、統合部隊航空構成部隊指揮官(JFACC)または統合部隊特殊作戦部隊指揮官(JFSOCC)に、統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)または沿岸部隊指揮官(LFC)を支援するよう命じることができる。この場合、沿岸部隊指揮官(LFC)は沿岸部隊(littoral force)の航空戦闘要素(ACE)に、統合部隊特殊作戦部隊指揮官(JFSOCC)または統合部隊航空構成部隊指揮官(JFACC)のアセットの制空権を支援し、打撃戦を促進させる任務を与えることができる。

さらに、沿岸部隊(littoral force)の航空戦闘要素(ACE)指揮官は、沿岸部隊指揮官(LFC)が 統合タスク部隊(JTF)の指揮官に指名された場合、統合部隊航空構成部隊指揮官(JFACC)として機能することができる。そのため、航空戦闘要素(ACE)指揮官は、自らを 統合タスク部隊(JTF)の統合航空のインテグレータとみなすべきであり、その結果、戦域統合部隊航空構成部隊指揮官(JFACC)と連携し、空域統制機関(ACA)と防空指揮官(ADC)の責務を担い、統合タスク部隊(JTF)の航空戦術映像を生成し、JP 3-30 「統合航空作戦(Joint Air Operations」に概説されている同様の責務を果たすことが要求されることになる。

6.8 沿岸部の航空指揮・統制(C2)機関:LITTORAL AIR COMMAND AND CONTROL AGENCIES

海軍および海兵隊の航空指揮・統制機関は、沿岸部隊(littoral force)航空戦闘要素(ACE)指揮官が、沿岸部隊指揮官(LFC)の目標を支援する航空作戦および関連す る複合戦作戦の計画策定・実行のために採用することができる。指揮官は、以下の既存機関の役割と能力を考慮しなければならない。

海兵隊戦術航空指揮センター(Marine Tactical Air Command Center :TACC。海兵隊戦術航空指揮センター(Marine TACC)は海兵隊の上級航空指揮・統制(C2)機関であり、航空部隊の指揮権、統制、指示を提供する。海兵隊戦術航空指揮センター(Marine TACC)はリンク16に対応している。米海軍の航空部隊と人員の増強により、海兵隊海兵隊戦術航空指揮センター(Marine TACC)は航空作戦を計画、指揮するための拡張性のある施設として機能することができる。

しかし、戦術航空指揮センター(TACC)は通常、移動可能な機関ではないため、規模を拡大しない場合、大きな電磁シグネチャと兵站の足跡(logistic footprint)を生じ、これは 遠征前進基地作戦(EABO)で対処しなければならない課題である。「戦術航空指揮所ハンドブック(Tactical Air Command Center Handbook」MCWP 3-25F.2には戦術航空指揮センター(TACC)を採用する際の詳細な情報が記載されている。

戦術航空指揮センター(TACC)の役割は、上級 航空戦闘要素(ACE)指揮機関として、航空戦闘要素(ACE)指揮官が陸上でその機能を実行できるように、施設、人員、設備、プロセ スを提供することである。戦術航空指揮センター(TACC)は海兵隊の能力であり、海兵航空統制群、海兵航空団司令部、および補強部隊の要素で構成される。

しかし、遠征前進基地作戦(EABO)の文脈では、戦術航空指揮センター(TACC)は純粋に海兵隊航空部隊のみを指揮する海兵隊機関と見なすべきではない。上級 航空戦闘要素(ACE)指揮・統制(C2)機関として作戦する場合、戦術航空指揮センター(TACC)は海軍と海兵隊の混成機関であり、海兵隊と海軍の航空部隊の統一指揮を行う。

海兵隊戦術航空指揮センター(Marine TACC)には大きな限界がある。現在、戦術的に移動的な機関ではないし、大きな行政、電磁波、サイバーシグネチャを持っている。海兵隊戦術航空指揮センター(Marine TACC)は、現在の構成と採用では、対等な敵対者の兵器交戦ゾーン(WEZ)内で残存できない可能性が高い。

戦術航空指揮センター(TACC)の機能を物理的に 兵器交戦ゾーン(WEZ)内に分散させること、また戦術航空指揮センター(TACC)の機能の一部を完全に 兵器交戦ゾーン(WEZ)の外に配置することを考慮すべきである。代替的な戦術航空指揮センター(TACC)の使用に関する実験が必要であり、艦隊の実験に含まれる必要がある。

海軍戦術航空統制センター(Navy Tactical Air Control Center)(TACC、または海上TACC。海軍戦術航空指揮センター(Navy TACC)は水陸両用艦に設置され、戦術航空統制飛行隊(TACRON)の水兵が配置されている。戦術航空指揮センター(TACC)は、水陸両用艦船周辺の航空統制を行い、旅客機の統制、航空支援統制、防空統制などを行う。

海兵隊の飛行士や航空指揮・統制(C2)海兵隊員が戦術航空指揮センター(TACC)のリエゾンを務めることがよくある。戦術航空指揮センター(TACC)は積極的な統制機関であり、リンク16が可能であり、航空作戦を統制する効果的な場所となることができる。

ヘリコプター指示センター(Helicopter Direction Center :HDC。水陸両用艦に搭載され、水陸両用艦の周辺を飛行するヘリコプターの統制を行う。

海兵隊戦術航空指示センター(Marine Tactical Air Direction Center :TADC。戦術航空指示センター(TADC)は、海兵隊戦術航空指揮センター(Marine TACC)の任務のすべてまたは大部分を提供するタスク編成機関であるが、上級航空 指揮・統制(C2)機関に従属する役割で採用される。この能力において、戦術航空指示センター(TADC)は海兵隊戦術航空指揮センター(Marine TACC)または海軍の戦術航空指揮センター(Navy TACC)に従属する役割を果たすことができる。

戦術航空指示センター(TADC)は、本質的にタスク編成され、一般にシグネチャが小さいため、海兵隊戦術航空指揮センター(Marine TACC)の陸上指揮・統制機関としてより最適であろう。戦術航空指示センター(TADC)は、リンク16の機能を与えられている場合がある。戦術航空指示センター(TADC)に関する詳細な情報は、「戦術航空指揮センター・ハンドブック(Tactical Air Command Center Handbook」、MCWP 3-25F.2 に記載されている。

海兵隊戦術航空指揮センター(Marine TACC)と同様に、戦術航空指示センター(TADC)はそのシグネチャを綿密に管理する必要がある。戦術航空指示センター(TADC)は、戦術航空指揮センター(TACC)(海上または陸上)と連携し、シグネチャを管理し、敵対者の兵器交戦ゾーン(WEZ)に指揮能力を分散させ、ターゲッティングを複雑化する選択肢を提供することが可能である。

直接航空支援センター(Direct Air Support Center :DASC。直接航空支援センター(DASC)は、地上軍を直接支援する航空作戦の指揮に主に責任を負う海兵隊航空統制機関である。直接航空支援センター(DASC)は通常、戦術航空統制隊、戦術航空調整官(空中)(FAC(A))、戦術航空指揮(空中)(TAC(A))、前方航空統制官(空中)、強襲支援調整官(空中)、航空支援センター(空中)(ASC(A))、ヘリコプター支援チーム、航空支援部隊、航空支援連絡チーム(ASLT)などの直接航空支援センター(DASC)拡張機能を使用して運用される。

有機的なセンサーを持たないため、直接航空支援センター(DASC)は手続き的な統制機関である。しかし、リンク16の機能または統合範囲拡張(JRE)で運用する場合、直接航空支援センター(DASC)は他のレーダー対応機関から提供される航空画像を見ることができ、それによってより積極的に航空統制を行うことができる。水陸両用作戦では、最初に上陸する航空統制機関であることが多い。「直接航空支援センター(Direct Air Support Center」、MCWP 3-25.5には、直接航空支援センター(DASC)とその拡張機能に関する詳細な情報が記載されている。

戦術航空作戦センター(Tactical Air Operations Center :TAOC)と早期警戒・統制(Early Warning/Control :EW/C)センター。戦術航空作戦センター(TAOC)と早期警戒・統制(EW/C)は、空域の統制と空域の管理を行う。これらの機関は、割り当てられた空域をリアルタイムで監視し、敵対する航空機やミサイルを探知、分類、識別、迎撃し、友軍航空機に指示、統制、航行支援を提供する。

戦術航空作戦センター(TAOC)と早期警戒・統制(EW/C)は、設備と人員を増強すれば、セクター防空指揮官(SADC)、地域防空指揮官(RADC)、または防空ミサイル防衛指揮官(AMDC)が作戦するための施設を提供することができる。戦術航空作戦センター(TAOC)と早期警戒・統制(EW/C)はまた、航空戦術画像に貢献し、他のミサイル部隊と航空統制機関にトラックとレーダー・プロットの両方を提供する。戦術航空作戦センター(TAOC)と早期警戒・統制(EW/C)は、レーダー(将来的にはパッシブ・センサー)を使用して、割り当てられた空域を監視し、航空写真を作成する。

さらに、戦術航空作戦センター(TAOC)と早期警戒・統制(EW/C)のレーダーは、イージス艦を搭載した巡洋艦や駆逐艦、E-2D航空機など、艦隊で協力交戦が可能なプラットフォームへ直接レーダー・プロットを提供するために使用することができる。これにより、艦載レーダー・システムのみでは通常不可能な、陸上でのレーダー監視範囲を拡大することができる。

戦術航空作戦センター(TAOC)と早期警戒・統制(EW/C)はリンク16が可能であり、重要な協力交戦能力を有している。戦術航空作戦センター(TAOC)と早期警戒・統制(EW/C)はかなりの電磁シグネチャを提示し、不用意な放出統制(EMCON)は部隊を危険にさらすことになる。「海兵隊セクター対空戦指揮官ハンドブック(Marine Sector Antiair Warfare Commander Handbook」、MCWP 3-25.6 および「戦術航空作戦センター・ハンドブック(Tactical Air Operations Center Handbook」、MCWP 3.25.7 には、海兵隊 セクター防空指揮官(SADC)、戦術航空作戦センター(TAOC)、および 早期警戒・統制(EW/C)の採用に関する追加情報が記載されている。

戦術航空作戦センター(TAOC)と早期警戒・統制(EW/C)は、大きな行政的・サイバー的シグネチャと、(レーダーの使用による)非常に大きな電磁気的シグネチャを有している。将来的には、戦術航空作戦センター(TAOC)と早期警戒・統制(EW/C)は可能な限りパッシブ・センサーを利用し、ターゲッティングを複雑化するために戦術的に 移動可能な機関として組織されなければならない。アクティブ・レーダーはシグネチャの懸念に対処するため、厳密に管理されなければならない。パッシブ・センサーを最大限に活用することが必須である。

海上のレーダー、陸上のレーダー、パッシブ・センサーを効果的に一体化し、単一の航空写真を作成するための新しい戦術が開発されなければならない。戦術航空作戦センター(TAOC)と早期警戒・統制(EW/C)クルーが作戦する施設は、センサーから分離され、より移動的になり、現在よく行われているよりも少ない人員で効果的に作戦できるようにならなければならない。

海兵航空通航統制分遣隊(Marine Air Traffic Control Detachment :MATCD。MATCDは海兵隊の主要な航空交通統制(ATC)機関であり、飛行場、飛行場、エア地点においてATC能力を提供することができる。また、低高度航空防衛(LAAD)と連携し、飛行場近辺の基地防衛帯を作戦することもある。

さらに、海兵航空通航統制分遣隊(MATCD)は、海軍および海兵隊の航空と、空軍基地およびその周辺のホスト国の軍事および民間航空とを効率的かつ安全に一体化するために、ホスト国の航空交通統制(ATC)機関と調整することが可能である。「海兵航空通航統制分遣隊ハンドブック(Marine Air Traffic Control Detachment Handbook」、MCWP 3-25.8は、海兵航空通航統制分遣隊(MATCD)の能力と制限に関連する情報を提供している。

遠征前進基地作戦(EABO)に関連して、海兵航空通航統制分遣隊(MATCD)は、厳格な着陸帯、前方武装・給油地点(FARP)、一時的または恒久的なホスト国の飛行場の管理、および航空交通統制(ATC)連絡官タスクの実施に対する要件の増加を予期しておくべきである。

低高度航空防衛(Low-Altitude Air Defense :LAAD。 低高度航空防衛(LAAD)大隊は、近接、低空、地対空兵器の支援を行う。低高度航空防衛(LAAD)は通常、セクター防空指揮官(SADC)および/または防空ミサイル防衛指揮官(AMDC)と連携し、キューイングを受け取り、状況認識を向上させる。低高度航空防衛(LAAD)部隊は、リンク16対応機関から統合範囲拡張(JRE)を使用して、航空写真を受信することができる。「低高度防空ハンドブック(Low Altitude Air Defense Handbook」、MCWP 3.25.10に追加情報がある。

沿岸対空大隊(Littoral Antiair Battalion :LAAB。沿岸対空大隊(LAAB)は、海兵隊沿岸連隊内の航空部隊で、沿岸部隊指揮官(LFC)を支援するための航空・ミサイル防衛、対空戦、航空支援統制、航空地上支援が可能な部隊を含んでいる。これらの部隊は、上級航空指揮・統制(C2)機関の下で、適切な権限を持って作戦し、航空作戦を統制・指示できるようにしなければならない。

「ハイブリッド型」航空指揮・統制(C2)機関(“Hybrid” Air C2 Agencies。遠征前進基地作戦(EABO)の実験と演習は、航空戦闘要素(ACE)と沿岸部隊指揮官(LFC)を支援するさまざまな航空指揮・統制(C2)配置を試す機会を提供する。戦術映像装置、無線機、センサー、その他の指揮・統制(C2)装置(Small Form Factor Common Aviation Command and Control System、SFF CAC2Sなど)を装備した、航空支援、防空、航空交通統制(ATC)、通信の海兵隊員や水兵隊の小チームは、遠征前進基地作戦(EABO)の支援で航空作戦を行う新しい方法をテストすることができる。

その他の海軍のプラットフォーム(Other Navy Platforms。 米海軍の空母、巡洋艦、駆逐艦、E-2D航空機は、航空統制や航空誘導を行うためのプラットフォームとして機能することができる。

新機関の提案:海上戦闘航空作戦センター(Sea Combat Air Operations Center、SCAOC。海上戦闘航空作戦センター(SCAOC)は、戦術航空指揮センター(TACC)または戦術航空指示センター(TADC)の指揮下で、海上空間と沿岸地域での航空作戦を促進する陸上航空指揮・統制(C2)機関として構想されている。複合戦指揮官(CWC)の水上戦指揮官(SUWC)、対潜水艦戦指揮官(ASWC)、または海上戦闘指揮官(SCC)を支援することになる。リンク16に対応することが想定されている。

直接航空支援センター(DASC)は主に攻勢的航空支援(OAS)と突撃支援機能に重点を置き、戦術航空作戦センター(TAOC)は主に対空戦(AAW)に関係しているので、海上戦闘航空作戦センター(SCAOC)は主に 水上戦(SUW)と対潜水艦戦(ASW)の海上航空機能に重点を置くことになる。海上および陸上のセンサーとの接続性により、セクター防空指揮官(SADC)、防空ミサイル防衛指揮官(AMDC)、戦術航空作戦センター(TAOC)、および 早期警戒・統制(EW/C)機能を実行する代替地として機能することが可能である。また、陸上の対艦砲列と十分な接続性を持ち、そのような火力と航空を効果的に一体化できるようにする必要がある。

さらに、複合戦の下で支援戦指揮官との接続性を持たなければならない。海上戦闘航空作戦センター(SCAOC)の任務は以下の通りである。

  •  海上空域、航空機、ミサイルの管理(特に沿岸作戦海域)。
  •   エア・タスキング・オーダー(ATO)の実行
  •  海上戦闘機能に対する航空支援要求の即時処理
  •  沿岸部隊(littoral force)の航空戦闘要素(ACE)と統合・連合空軍からの航空出撃で水上戦指揮官(SUWC)、対潜水艦戦指揮官(ASWC)、海上戦闘指揮官(SCC)を支援する
  •  海上空域とその周辺の任務地域へ向かう航空機へのブリーフィング。

6.9 航空の計画策定:AVIATION PLANNING

海兵空地タスク部隊(MAGTF)指揮・統制(C2)の下で作戦しようが、複合戦の下で作戦しようが、海兵隊の航空計画策定の基本的な方法は依然として有効である。航空計画策定の実施方法の詳細については、MCWP 3-20「航空作戦(Aviation Operations」、海兵空地タスク部隊(MAGTF)の航空計画策定(MAGTF Aviation Planning、MCTP 5-10A、およびNWP 3-56「複合戦(Composite warfare」を参照すること。海兵隊の計画策定プロセスのより一般的な扱いについては、「海兵隊計画策定プロセス(Marine Corps Planning Process」、MCWP 5-10 を参照すること。

航空作戦計画策定の全体的な目標は、希少な航空アセットの需要が供給を上回った場合に、効率性、有効性、柔軟性の最適なバランスを実現することである。遠征前進基地作戦(EABO)の文脈では、このような計画策定の取組みは、復元性を発揮する航空作戦を目指すべきである。このような取組みの結果、航空計画、エア・タスキング・オーダー(ATO)、および航空関連文書(空域統制命令、防空計画、特別指示など)が作成される。

大まかに言えば、沿岸部隊(littoral force)の航空戦闘要素(ACE)が沿岸部隊(littoral force)の指揮官を全般的に支援するために作戦している場合である。

  •   沿岸部隊指揮官(LFC)、または指定された場合は 複合戦指揮官(CWC)は、航空計画策定における 海兵空地タスク部隊(MAGTF)指揮官の役割を果たす。
  •  沿岸部隊(littoral force)の航空戦闘要素(ACE)指揮官は、同様に、従来の海兵空地タスク部隊(MAGTF)作戦における 航空戦闘要素(ACE)指揮官の役割を果たす。
  •  沿岸部隊(littoral force)航空戦闘要素(ACE)指揮官がこの役割を担う場合、ARECとHEC の責任は、通常、将来計画課と将来作戦課が、エア・タスキング・オーダー(ATO)開発セルと連携して行うことになる。

6.9.1 統合作戦の支援における沿岸部隊航空戦闘要素:Littoral force Aviation Combat Element in Support of Joint operations

米国武装部隊のドクトリン(Doctrine for the Armed Forces of the United States」、JP1 によれば、余剰の戦術航空出撃は、統合部隊指揮官(JFC)が望む目的および効果を達成するために、統合部隊航空構成部隊指揮官(JFACC)の調整により 統合部隊指揮官(JFC)に提供されるものとする。海兵隊は、「余剰出撃」に加えて、3種類の出撃を提供する責任も有する。

  •  長距離阻止
  •  長距離偵察
  •  防空(例えば防御的対空(DCA))

これらの出撃は、従来、海兵隊が軍種構成部隊司令部(砂漠の嵐作戦(Operation DESERT STORM)など)や統合部隊陸上構成部隊指揮官(JFLCC)(イラクの自由作戦(Operation IRAQI FREEDOM)など)の下で闘う陸上戦役(land campaign)の文脈で行われていたことを考えると、長距離阻止、偵察、防空出撃の提供というこの取り決めは、再交渉の価値があるかもしれない。

遠征前進基地作戦(EABO)の期間中、沿岸部隊(littoral force)航空戦闘要素(ACE)は 統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)の作戦に不可欠であり、その結果、より広い海軍航空部隊に包含されるから、このような再交渉が望まれよう。

6.9.2 沿岸部隊航空戦闘要素の統合実体/連合実体:Littoral force Aviation Combat Element Liaison with Joint/Combined Entities

沿岸部隊(littoral force)航空戦闘要素(ACE)は、統合航空作戦センター(JAOC)/統合航空作戦センター(CAOC)に連絡部隊を提供す るべきである。この連絡部隊は、統合航空作戦センター(JAOC)/統合航空作戦センター(CAOC) のすべての部門に代表を派遣し、航空戦闘要素(ACE)と統合/連合エンティティの間で連絡・調整し、統合部隊航空構成部隊指揮官(JFACC)、地域防空指揮官(AADC)、および戦域 空域統制機関(ACA)が沿岸部隊(littoral force)の航空とどのように連携すれば最も良いかに関する技術および主題に関する専門知識を提供する必要があ る。

これまで、海軍と海兵隊は、それぞれ別の連絡部隊(海軍・水陸両用連絡部隊(NALE)と海兵隊連絡部隊(MARLE))を提供してきた。沿岸部隊(littoral force)航空戦闘要素(ACE)は、統合部隊海上構成部隊指揮官(JFMCC)を支援する沿岸部隊(littoral force)の下で作戦する一体化した海軍航空編成であるため、海兵隊連絡部隊(MARLE)は海軍・水陸両用連絡部隊(NALE)に包含され、海軍・水陸両用連絡部隊(NALE)は海軍・海兵隊一体化連絡部隊となるべきである。

この一体化した連絡要素は、海兵隊または海軍の将校または旗手が指揮し、統合ターゲッティング会議、統合部隊航空構成部隊指揮官(JFACC)の配分決定、地域防空指揮官(AADC)との調整・強調において、適切なウェイトを占めるようにすべきである。

6.10 航空兵站:AVIATION LOGISTICS

遠征前進基地作戦(EABO)を支援する航空兵站は、基本的に海兵隊の航空兵站と同じ考慮事項で運用される。これらの検討事項の詳細については、MCWP 3-20「航空作戦(Aviation Operations」の6章と7章を参照されたい。それにもかかわらず、遠征前進基地作戦(EABO)のために特に懸念されるいくつかの分野を強調することは価値がある。

  •  前方兵器補給基地は、航空部隊の作戦範囲を広げ、航空兵站に復元性を与え、作戦地域での出撃率を高め、航空利用の柔軟性を高めるため、遠征前進基地作戦(EABO)では特に重要な意味を持つ。

海兵隊翼支援飛行隊(MWSS)と沿岸対空大隊(LAAB)は、海兵隊航空を支援する前方武装・給油地点(FARP)を採用するためのアセットを有している。海兵隊の航空地上支援全般および前方武装・給油地点(FARP)に関する詳細な情報については、MCTP 3-20B「航空地上支援(Aviation Ground Supportを参照。

  •  海兵隊の前方武装・給油地点(FARP)は、現在、米海軍の全航空機を支援していない。航空地上支援計画担当者は、海軍遠征戦闘軍(NECC)のカウンターパート、支援飛行隊、および海軍固有の航空機の主題専門家と連携して、詳細な計画策定をする必要がある。
  •   前方武装・給油地点(FARP)は過去数十年にわたり、兵器の再装填よりも航空機への給油に重点を置いてきた。対反乱(COIN)を支援する航空作戦では、すべての兵器を使い切る前に駐留時間を使い果たす可能性が高いからである。特に競争が激化している海軍戦役(naval campaign)では、航空機は燃料が切れる前に兵器を必要とする。

その結果、前線基地で兵器を提供するためには、航空地上支援部隊(AGS)と海兵隊航空兵站飛行隊との新たな連携が必要となる。さらに、前方地域に兵器と燃料を事前に配置し、港や飛行場から前方武装・給油地点(FARP)に補給することも必要になりそうである。飛行中隊は、海兵隊員や船員を追加して前方武装・給油地点(FARP)を増強することが期待される。

  •  爆発物処理、攻撃後の基地復旧、飛行場損傷・修復など、航空地上支援部隊(AGS)の特定の機能はより重視されなければならない。
  •  今後、あまり重視されないであろう機能は、食事サービス支援、一般工学支援(特にユーティリティ支援と重機器支援)、基地内自動車輸送支援などである。これらの支援の多くは、ホスト国との提携や有事における契約を通じて調達されることが予想される。
  •  燃料を入手するための代替手段が必要となる。航空地上支援部隊(AGS)計画担当者は、ホスト国、携帯用燃料ブラッ ダー、および事前に配置された備蓄を含む、多くの供給源から 燃料を使用することを想定すべきである。燃料を移動させるために自動車輸送アセットを使用することは、あまり重視されないはずである。
  •  海兵隊の航空整備・補給機能は、陸上と水上の航空整備・補給能力の補完的側面を十分に活用するため、海軍航空兵站事業との一体化をさらに追求する必要がある。

敵対者のターゲッティングを複雑にするため、航空整備能力を兵器交戦ゾーン(WEZ)全体に分散できるよう、整備機器、スペアパーツ、技術者を届ける新しい方法を検討する必要がある。一時的な航空整備拠点は、特定の整備機能を実施するために短期間設置される必要がある。その他の整備機能は、敵対者の兵器交戦ゾーン(WEZ)の外に配置する必要がある。

第6章 挿話:Vignette

ノースランディアにおける対潜水艦戦(ASW)

ASW IN NORTHLANDIA

203X年初頭、レッドランド共和国は大統領選挙に直面し、経済がうまくいっていない状態であった。レッドランド共和国では、この数十年の間に出生率が低下したため、労働力の高齢化が顕著になっていた。

高齢者の離職が若者の新規就労を上回り、労働人口が減少しているのだ。そこで、レッドランド共和国の老いた大統領は、人口抑制の観点から、過去に成功した手法に立ち返った。

国内での団結を維持するために、海外に敵を作る方法を模索したのだ。

レッドランド共和国の「近隣」での米軍作戦を担当する戦闘軍(combatant command)の計画担当者は、レッドランド共和国がより攻撃的になっている兆候を認識していた。彼らは、レッドランド共和国が隣人との議論を誘発し、その議論を自国民に向けたメッセージング戦役(messaging campaign)の一環として利用しようとするだろうと推測していた。計画担当者たちは、その例として2014年の出来事を挙げた。

レッドランド共和国航空機は旅客機や軍の訓練飛行に危険なほど接近して飛行していた。レッドランド共和国の潜水艦は監視を逃れ、いくつかの国の沿岸海域に現れ、船舶への脅威を与え、この地域の意思決定者に混乱を招いた。

特に厄介なのは、潜水艦の脅威である。一度、監視の目を逃れてしまうと、再獲得が非常に困難なのだ。

この困難は、レッドランド共和国にいくつかの利点をもたらした。このような侵略について不満を持つ近隣諸国は、明確な証拠を提示するのに苦労した。そのため、レッドランド共和国政府は非難を否定し、自分たちは中傷戦役(smear campaign)の犠牲者であると主張することができたのだ。レッドランド共和国は、このような否定を他の侮辱と結びつけて、自国民に向けられた「我々対彼ら」のナラティブを強化することになる。

艦隊指揮官は、対潜水艦作戦をより大きな海軍戦役(naval campaign)の中で考えていた。彼女は、短期間の増強でレッドランド共和国の潜水艦を獲得しても、増強が終わるとまた失ってしまうのでは意味がないと考えていた。レッドランド共和国は、短期決戦の末に潜水艦を手に入れ、また失うのでは意味がない。

しかし、レッドランド共和国の潜水艦にとって、地理的な弱点は潜在的なものであった。潜水艦は、港から作戦地域へ移動するために、いくつかの海上チョーク地点のいずれかを通過しなければならなかった。彼らは2014年にこれを成功させており、再び挑戦すると考えられていた。

艦隊は、提督が計画策定の指針を示すために、安全なビデオ・テレビ会議(VTC)を召集した。また、部下である指揮官たちから意見を聞くことも楽しみにしていた。インテリジェンス部長(N2)、作戦部長(N3)が自己紹介と状況説明を行った後、提督は最初の指針を伝えた。

対潜水艦戦戦役(ASW campaign)の全体的な到達目標は、レッドランド共和国からこのツールを将来にわたって取り上げる方法を見つけることだ。潜水艦を利用して同盟国やパートナーを威嚇、挑発、混乱させるようなことはさせたくない。そのためには、潜水艦を入手し、出港後もその位置を追跡する。つまり、潜水艦が北の隙間から外洋に出る前に発見しなければならない。

最初から長期的な取組みとして考える必要がある。この点について戦闘軍指揮官(CCDR)と話しましたが、彼も同意見である。戦役(campaign)全体の大部分は、同盟国やパートナーをどのように取り込むかを考えることだろう。

この責任地域(AOR)では今後、対潜水艦戦(ASW)のパートナーとの演習が増えるが、戦闘軍指揮官(CCDR)は議会への証言や次回のプログラム目標メモの提出で、我々の不足分を明らかにするつもりだ。また、国務省と協力して、米国からの持続的な支援を受けながら、この地域でこれを実施できる多国間チームを作ろうとしている。我々はこの能力を構築し、コンタクト層で安定した状態で行えるようにするつもりである。しかし、これをまとめるには数年かかるだろう。準備が整うまで、このギャップを埋める必要がある。

作戦部長(N3)が言ったように、海軍には、このような時間軸でそのような範囲を維持し、かつ他のグローバルなコミッ トメントを果たすのに十分なアセットがない。対潜水艦戦(ASW)任務だけなら可能だろうが、レッドランド共和国が投げかける嫌がらせからこれらのアセットを守る必要がある。インテリジェンス部長(N2)は、そのような状況をうまく描き出してくれた。

私は、残りの議論のフレームワークを作るために、これらすべてを強調している。昨夜、第5海兵遠征部隊(V MEF)のトレベック中将とじっくりと話をした。遠征前進基地作戦(EABO)の使用は非常に有用な可能性を持っている。将軍、我々が議論したことの概要を教えてください。

「はい、奥様」とトレベック将軍は言った。「我々はこの問題を数年前から考えていた」

トレベックは続けた…

艦隊との多くの議論から、海上哨戒偵察機(MPRA)の航空機、水上艦など、これらのギャップをカバーするには海軍が十分でないことがわかりました。特に、海上哨戒偵察機(MPRA)の飛行の一部が嫌がらせを受けたり、争奪戦になったりした場合は、それが予想される。防御的対空(DCA)と呼ばれる戦闘航空パトロール(combat air patrols:CAP)はどこから来るのだろうか?定期的な空母の航空取材はあるが、戦役(campaign)の予測される2、3年のタイムラインをカバーするには十分ではない。

そのギャップをカバーするためのコンセプトを考えている。それは、遠征前進基地作戦(EABO)の航空版とでもいうべきものである。ノースランディアを中心に、必要に応じて遠隔地にも手を伸ばして、十分なカバー範囲を確保する。具体的には、以下のようなことである。

まず、MV-22やKC-130Jでソノブイを投入することで、海上哨戒偵察機(MPRA)の負担を軽減することができる。海兵航空団(Marine aircraft wing :MAW)は過去数年間、これらの作業について相互訓練を行ってきたので、中隊の熟練度のベースラインはできており、配備の準備が整えば、それを基にした作業を行うことができる。また、ブイから海上ネットワークに必要な通信経路を確立するために、長期間滞空している無人航空機(UAV)を使用して空中通信層を確立することも可能である。海上哨戒偵察機(MPRA)の稼働率に応じて、この取組みを拡大・縮小することができる。

同時に、ノースランディアなどの遠征飛行場から防御的対空(DCA)を確立することも可能である。これらの飛行場へのアクセスを維持できれば、かなり長い間、これを維持することができる。忠実なウイングマン・プログラムが完全に稼働している今、これを実現するために多くのF-35Bを必要とすることはない。

戦闘航空パトロール(CAP)を維持するためには、一度に数機のF-35が必要である。彼らが任務を指揮し、多くの忠実な仲間たちが必要な数を提供してくれるだろう。MV-22、KC-130、P-8のどれを使ってソノブイを投下するかは問題ではなく、この組み合わせでカバーすることができる。

レッドランド共和国は水上艦と潜水艦の動きを組み合わせるのが好きだ。特に友軍の対潜水艦戦(ASW)の取組みを脅かそうとするときにね。海兵遠征部隊(MEF)は水上艦を提供することはできないが、監視は十分にできる。また、レッドランド共和国にその存在を知らせることで、攻撃的になりすぎることを考えさせることができる。

陸上にあるSM-6砲列に加え、航空アセットで水上艦を危険にさらすこともできる。例えば、長距離対艦ミサイル(LRASM)を搭載した忠実な僚機が何機いるかは分からない。また、同じ海岸の位置で、滞空弾を発射させることもできる。さらに良いのは、敵の大群である。敵の大群は、船や乗り物に乗っている人を常に恐怖に陥れる。水平線上にあるものを見るだけで、人々は恐怖を感じる。

最後に、これらすべてを一体化するために必要な指揮・統制(C2)を提供することができる。遠征前進基地作戦(EABO)の暫定マニュアルが発表されて以来、我々は戦術航空指揮センター(TACC)と戦術航空作戦センター(TAOC)の占有領域(footprint)とシグネチャを縮小することに力を注いできた。適切な増強とリーチバックがあれば、2つ星の司令部まで規模を拡大し、地域内や水上艦艇からこの全体を運営することができる(過去数年の演習で行いた)。

ここからは提督が引き継いだ。

「トレベック将軍、ありがとうございます」「ここでの可能性にとても期待している」 彼女は作戦部長(N3)を見渡し、クロージング計画策定指針..。

我々の戦役(campaign)では、3年間のカバレッジギャップを埋める必要があると仮定する。連合部隊の対潜水艦戦(ASW)は2年以内に完成する予定ですが、最悪のケースを想定しておく必要がある。この3年間で、空母打撃群と海上哨戒偵察機(MPRA)飛行隊がいつ配備されるかは分かっている。

基本計画では、そのスケジュールの穴を埋めるために第5海兵遠征部隊(V MEF)を使用する必要がある。私の意図は、常に2つ星のタスク部隊がこの取組みをリードすることである。打撃群指揮官が率いるときは海上で、海兵遠征部隊(MEF)が率いるときは陸上でということになる。

戦役計画(campaign plan)は、ある本部から別の本部への移行にしっかりと焦点を当てる必要がある。海軍の言葉や海兵隊の言葉をそのまま使うのではなく、全員が同じ言葉を使うようにする必要がある。連合軍を最初から参加させ、全員が同じページに立つ必要がある。何か質問は?