賢く闘う -21世紀の競争、抑止、戦いにおける情報- (Marine Corps Gazette)

MILTERMでは2022年4月1日の投稿「米海兵隊ドクトリン刊行物-8「情報」 – MCDP 8 Information - (Marine Corps Gazette)」の冒頭で

『「Information」に関して言えば、米国防総省は、2015年の米国家安全保障戦略の劇的な戦略的環境の変化の認識を受けて、2016年6月に「情報環境における作戦のための戦略」を策定、米統合参謀は、米統合ドクトリンとして2017年7月にJP 1 「米国の軍隊のためのドクトリン」で、「情報」を統合機能の第7番目の機能として明文化し、2018年7月に統合コンセプト文書「情報環境における作戦の統合コンセプト」を発出している。2020年4月に「21世紀の戦場における情報の意義~米陸軍の7番目の機能としての地位を提案~」を紹介し、その後の掲載においても「Information」に関わる記事等を紹介してきた。』

と、米軍の「Information」に関する取組みを紹介してきたところである。

そして、米海兵隊は「Information」についてのドクトリン文書「MCDP8 Information」を2022年6月1日に発出している。このドクトリンについては「米海兵隊のドクトリンを読む⑥ MCDP8 Information その1」から「米海兵隊のドクトリンを読む⑥ MCDP8 Information その4」でご覧いただける。

また、米陸軍も2023年11月27日に、ドクトリン文書「ADP 3-13 INFORMATION」を発出している。

ここで紹介するのは、米海兵隊内に2018年8月までに立ち上がった、米海兵隊司令部情報担当副司令官(DC I)のマシュー・G・グレイビー米海兵隊中将が米海兵隊機関誌Marine Corps Gazetteの2024年4月号に投稿された記事である。

米海兵隊が「戦力デザイン2030」で組織づくりを進める中で「Information」の機能をどのように行使していくのかなどについての考えを窺い知ることが出来ると考える。記事のテーマにあるように、“21世紀の競争、抑止、戦いにおいて「賢く闘う」ために情報”をどう位置付けているのか、大変興味深いところである。(軍治)

賢く闘う

21世紀の競争、抑止、戦いにおける情報

Fighting Smart

Information in 21st-century competition, deterrence, and warfare

マシュー・G・グレイビー米海兵隊中将とエリック・X・シャナー

マシュー・G・グレイビーグレイビー(Matthew G. Glavy)米海兵隊中将は米海兵隊司令部の情報担当の副司令官

シャナー(Schaner)氏は退役したインテリジェンス将校で、現在は情報担当副司令官の計画・戦略課の副部長を務めている。

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「戦いの性質(character of warfare)」は、10年前には想像もできなかったほど急速に変化している。このわずか4年の間に、ロシアはウクライナに侵攻し、アゼルバイジャンはアルメニアと紛争を再開し、ハマスがイスラエルを攻撃し、フーシ派が紅海を妨害し、中国は南シナ海でフィリピンの船舶に突撃した。

これらの出来事や、中国が台湾海峡の中央線を頻繁に通過するようになったことは、ここ数年で世界がどれほど変化したかを浮き彫りにしている。我々はこれらの出来事から、「戦いの性質(character of warfare)」がかつてないほど速く、より密接につながっていることを観察している[1]

戦争は依然として人間の究極の意志のぶつかり合いであり、長く続くかもしれないが、センサーからシューターまでの戦場での交戦はかつてないほど速く発生し、収束するマルチドメインの効果によって迅速に決定される[2]。キル・チェーンは複雑だが回復力のあるキル・ウェブへと進化している。

国家主体および非国家主体は、成熟しつつある精密攻撃体制を改善するために、容易に入手可能な能力を組み合わせることによって、キル・ウェブを構築している。国家主体にとっては、広く利用可能な低コストのセンサー、一般に入手可能な情報、商業的に利用可能なセンサーデータ、ソーシャルメディア、国家所有のセンサーデータなどを利用し、低コストの無人航空機システムや滞空弾から長射程の極超音速ミサイルや弾道ミサイルに至るまで、精密なスタンドオフ兵器を幅広く採用している。

ソーシャルメディアのような高度に接続された技術もまた、物語をめぐる戦いを根本的に変えている。すでに述べた紛争から東アジアのその他多くの潜在的な火種に至るまで、競争や紛争における敵対勢力とそれを支持する一般市民は、絶え間なく流れるビデオや画像、その他のコミュニケーション手段を通じて、絶えずメッセージを浴びせかけられている。

このメッセージングは、敵が辞めるように、あるいはライバルである国民が納得するように、あるいはその両方に影響を与えることを狙いとしている。この変化の中心には何があるのか?

情報、そして情報による支配をめぐる戦いは、「戦いの性質(character of warfare)」を根本的に変えつつある。情報をめぐる技術的な戦いと認知的な戦いの両方に勝利した側が、戦闘で成功し、戦争で勝利する可能性が高い。同業者はこのことをよく理解している。

彼らは、センサー、豊富なデータ、事実上無制限のコンピューティング能力、人工知能、ソーシャルメディア、ハイパーコネクティビティの世界的な普及を活用し、適応、進化、そして場合によっては、米軍の歴史的な優位性を相殺するためにその能力を変革しようとしている[3]

米海兵隊は、高度に接続された世界における今日の技術主導の課題に対応するため、適応し続けなければならない。米海兵隊は、情報を活用して意思決定を優位に進め、複数の領域にわたる効果を組み合わせ、敵よりも早くキル・ウェブを閉じ、物語に影響を与えることで、現在および将来の戦争で優位に立つことができる。米海兵隊の適応は、時事問題から学び、データと情報提供へのアクセスがもたらす機会を活用することで継続する。

米艦隊海兵部隊(FMF)は今日、米海兵遠征部隊(MEF)情報グループや米海兵隊沿岸連隊(Marine littoral regiment)などの編成を通じて、これを実践している。われわれはもっと努力しなければならない。

米海兵隊司令部の情報担当の副司令官への英海兵隊総司令官のタスク:The Commandant’s Task to DC I

こうした課題を見越して、米海兵隊は2017年に情報担当副司令官(DC I)という役職とそれを支える組織を創設した。情報担当副司令官(DC I)組織は、インテリジェンスの用兵機能(intelligence warfighting function)と情報の用兵機能(information warfighting function)に加え、データと通信の機能を1つの組織にまとめるなどの変更を加えた[4]

設立当初から今日まで、情報担当副司令官(DC I)チームは以下のことに懸命に取り組んできた。

  • MCDP 8「情報」、MCWP 8-10「米海兵隊の作戦における情報」を含む新しい教義を策定し、情報の用兵機能(information warfighting function)の制度化を支援する。
  • 米海兵隊情報司令部を設立して、スタンド・イン・フォース(SIF)が作戦に必要な当局や権限とつながり、インテリジェンス・コミュニティ(IC)の能力を活用できるようにする。
  • 米海兵遠征部隊(MEF)情報グループが、駆け出しの作戦部隊から、全世界の部隊を指揮・統制できる完全に機能する司令部へと成長するのを促進する。
  • 米海兵隊エンタープライズ・ネットワークを確保、運用、防衛するネットワーク大隊を設立し、米海兵遠征部隊(MEF)と米海兵隊部隊にグローバルな支援を提供する。
  • サイバースペース、宇宙、および従来の情報作戦分野を1つのまとまった専門化されたシリーズに統合することにより、新たな17XX情報機動職業分野を創設する。
  • ネットワークの近代化を通じてハイブリッド・クラウドを導入し、人工知能(AI)を活用したデータ中心の作戦に備える。
  • 情報開発研究所を設立し、情報技術、サイバースペース、データとAIの民間労働力のための質の高い訓練、教育、経験を提供する。

上記はすべて、次に起こることのために必要な土台である。2023年8月、スミス米海兵隊大将は、米海兵隊の継続的な進化のビジョンを支える上で、情報が重要な役割を果たすことを断言する指針を示した。

さらに、スミス米海兵隊総司令官の指針は、「戦いの性質(character of warfare)」が根本的に変化していること、そして何よりも米海兵隊が中心であり続けることを認識している。ジョン・ボイド(John Boyd)大佐の「人、アイデア、物、この順番で」というシンプルだが、長い間培われた知恵を反映し、米海兵隊は我々の究極の強さと優位性の源泉であり続ける。

戦いが人間の意志の争いであり続ける限り、ボイド(Boyd)がMCDP1用兵(Warfighting」で論じた米海兵隊の用兵哲学(warfighting philosophy)に与えた影響は、米海兵隊の創造性と創意工夫を受け入れ、力を与え、信頼する原動力となっている。米海兵隊総司令官と情報担当副司令官(DC I)はこのことを認識しており、常に米海兵隊を第一に考えている。

我々は米海兵隊員に焦点を当て、今日利用可能なデータ、情報、最先端技術を与えることで、彼らの創造性を発揮できるようにする。米海兵隊員に権限を与え、信頼させることが、あらゆる敵対者との差別化につながる。それこそが、我々に競争力を与えてくれるのです。我々の責務(duty)は、21世紀の能力を米海兵隊員に与え、信頼させることであり、それによって我々は21世紀の会戦を闘い、勝利することができる。

この方向により早く動くため、米海兵隊総司令官は情報担当副司令官(DC I)チームに、米海兵隊における情報のトップレベル・ビジョンを策定するよう命じた。このタスクは、データ、情報、通信、インテリジェンス、サイバースペース、宇宙、電磁スペクトラム、など、情報担当副司令官(DC I)ポートフォリオに含まれるすべての情報を基盤とする能力と機能がいかに米海兵隊員に権限を与え、統合(一体化)された全体として統合の用兵(joint warfighting)に貢献するかについて、統一されたビジョンを示すことが求められる。これは決して小さなタスクではない。このビジョンを構築するために、我々は過去数年間の戦力デザインで学んだことを応用し、次の段階である戦力開発を推進しなければならない。

これまで我々は何を学んできたのか?:What Have We Learned So Far?

米海兵隊は、物理的機動と支援兵器を中心に組織されたより戦闘空間の単純な見方から、全ドメインの諸兵科連合を中心としたより洗練された見方へと移行しつつある。ここ数年、この移行は大きく進展しているが、米海兵空地タスク部隊(MAGTF)の用兵演習(Warfighting Exercises)から得られた傾向報告によれば、まだまだやるべきことがある[5]

我々が直面する核心的な課題は、複雑なキル・ウェブを閉じる能力をいかに生み出し、維持しながら、敵対者が我々にキル・ウェブを閉じるのをいかに防ぐかということである。この課題を達成するためには、米海兵隊に情報の役割と、その取組みを可能にし、支援するためのデータの活用法を理解してもらわなければならない。

もう一つの主要な課題は、米海兵隊員が常にナラティブの会戦の中にいることを理解し、その会戦を成功裏に闘うために必要なツールを与えることである。これらは、我々が解決できる情報問題であり、我々が解決していく。

上記を達成するためには、米海兵隊はいくつかの人的資本の問題を解決しなければならない。ボイドの哲学(Boyd’s philosophy)である「人、アイデア、モノの順」を実践するためには、まず米海兵隊全体の教育と訓練の問題に取り組まなければならない。すべての米海兵隊員、特に各指揮官は、データ中心作戦における自らの役割と、各用兵機能(warfighting functions)全体にわたって情報を統合(一体化)し活用する方法をよりよく理解しなければならない。

次に米海兵隊は、情報関連分野に従事する米海兵隊員や軍属の育成と定着に関する問題を解決しなければならない。これらの問題は、必要不可欠な高い需要、低密度のスキルにおける専門性の欠如から、キャリアの停滞や非効率的な活用まで、多岐にわたる。さらに、米海兵隊は、情報職業分野で十分な人材を輩出し、維持する上で、同様の問題を克服しなければならない。

米海兵隊は、人々に権限を与え、意思決定を支援するためにデータを最大限に活用していない。データは米海兵隊のすべての機能、任務、活動の根底にあるが、米海兵隊のデータは現在、効果的な利用や意思決定を可能にするような方法で組織化、構造化、管理、処理、提示されていない。

米海兵隊は、データ、情報、通信の必要性の間で常にトレードオフを繰り返しながら、情報に基づく優位性を求める状況に置かれている。最終的に「情報(information)」を、サイバーや宇宙とともに、これらの分野を統合(一体化)する単一の統一したコンセプトに同期させるまでは、米海兵隊は不足し続けるだろう。

インテリジェンスに関しては、戦力デザインに関連した分析、ウォーゲーム、演習で得られた知見は、現代の作戦環境に関する観察と一致している。偵察と対偵察(RXR)の闘いに勝つことが重要だ。

米海兵隊インテリジェンス・監視・偵察事業体(MCISR-E)は、米海兵隊が統合の競争(joint competing)や統合の用兵(joint warfighting)の一環として偵察と対偵察(RXR)の闘いに勝利できるよう、環境の変化を予測し、先手を打つために近代化を続けなければならない。

米海兵隊インテリジェンス・監視・偵察事業体(MCISR-E)は、米海兵隊全体および統合部隊とインテリジェンス・コミュニティ(IC)との双方向接続をソフトウェア定義だけでなく、大規模で多分野にまたがるデータセットとインテリジェンス・フィードの迅速なセンスメイキングを可能にするデータと情報技術の使用を組み込まなければならない。

高度に接続された双方向データ中心の環境では、インテリジェンス・コミュニティ(IC)の精緻な能力が即座にグローバルに利用可能である。知見は、スタンド・イン・フォース(SIF)が統合部隊だけでなくインテリジェンス・コミュニティ(IC)の目と耳となることを可能にするために、この接続性を活用する必要性を示している。

この必要性に応えて、米海兵隊は米海兵隊情報コマンドを設立し、スタンド・イン・フォース(SIF) をインテリジェンス・コミュニティ(IC)やサイバー・コマンド(CYBERCOM)や宇宙コマンド(SPACECOM)のようなグローバルな各戦闘軍指揮官と緊密に結び付けた。この結びつきは、スタンド・イン・フォース(SIF)と各戦闘軍指揮官との間の相互支援関係、すなわちデータ、権限、許可の交換を可能にし、また配置とアクセスを使って効果を生み出すことを決定的に可能にする。我々は、時事問題や米海兵隊の集団学習戦役から多くのことを学んだ。我々は今、学んだことを生かして改善を続けなければならない。

情報に対する統一されたビジョンに向けて:Toward a Unified Vision for Information

情報担当副司令官(DC I) ポートフォリオに含まれる多様な機能と能力は、米海兵隊員と米海兵隊が何らかの情報を基盤とする優位性や効果を獲得・活用するために存在する。情報に対する統一的なビジョンを作るという米海兵隊総司令官のタスクは、情報に基づく優位性や効果を獲得・活用する目的で、情報と技術の力を活用するために米海兵隊を組織し、訓練し、装備することを支援するためのタスクである。

これは、MCDP1用兵(Warfighting」の最後の文章にある、統一されたビジョンとしての「賢く闘う(fighting smart)」の基礎である。「機動戦(maneuver warfare)とは、戦争における考え方であり、戦争についての考え方である。……機動戦(maneuver warfare)とは、我々自身の犠牲を可能な限り少なくして、敵に対して最大の決定的効果を生み出すための哲学であり、「賢く闘う(fighting smart)」ための哲学である」と述べている[6]

21世紀、米海兵隊はいかにして賢く闘うのか?米海兵隊員はどのようにして洞察力を養い、想像力を活用し、破壊的な環境に適応するために革新するのか。データや情報を戦術的な優位性や戦闘力に変えるために、この機関はどのように最先端技術を提供するのか。

米海兵隊員はこれらの利点をどのように活用し、敵対者を出し抜き(out-think)、敵対者の競り勝ち(out-compete)、闘い抜く(out-fight)のか。これらは、「賢く闘う(Fighting Smart)」が答える基本的な質問の一部である。このビジョンに向かって構築し、これらの基本的な問いに答えるために、米海兵隊は総司令官の優先事項である人材(people即応性(readiness近代化(modernizationに関連するギャップを埋めなければならない。

人材と即応性に関しては、米海兵隊員一人ひとりが情報をどのように扱うべきかを知り、また情報を効果的に活用するための自分の役割を理解できるように教育・訓練し、そのうえで、米海兵隊の技能と利用可能な技術を最大限に活用できるように、人材を職に一致させなければならない。これには、個人の才能を現実的でやりがいのある部隊訓練に統合(一体化)することも含まれる。

この組み合わせは、データ中心の作戦アプローチを可能にする。あらゆるレベルの指揮官と米海兵隊員は、敵対者よりもより良い迅速な決心ができ、用兵の優位性(warfighting advantages)を維持または増大させる方法で敵対者に情報を操作または拒否できる能力から利益を得ることができる。

近代化に関しては、高度な技術を駆使して利用可能なすべてのデータを組み合わせ、関連性のある信頼できる情報を適時な方法で移動させる能力を向上させなければならない。これは、近代化された米海兵隊インテリジェンス・監視・偵察事業体(MCISR-E)を通じて、すべてのドメインの偵察と対偵察(RXR)と同様に、分散化した作戦(distributed operations)を可能にする。

さらに、利用可能なすべてのデータを組み合わせることで、同盟国、パートナー、統合部隊を全ドメインの諸兵科連合に統合(一体化)し、統合および組合されたキル・ウェブを閉じることができる、これにより、海兵隊員が敵対者にもたらす潜在的なジレンマを大幅に増大させる。

これを達成するため、米海兵隊は信号インテリジェンス(SIGINT)、電磁スペクトラム作戦、サイバースペース作戦を統合(一体化)する組織コンセプトと編成を開発しなければならない。米海兵隊は、戦場での優位性のためにデータを活用するため、必要な時点でソフトウェア・アプリケーションやデータ・ソリューションを迅速に設計することで適応性が有利であることが証明された現在の出来事から学ばなければならない。

第18空挺団はその代表的な例で、進化する任務と指揮官の情報ニーズを支援するデータ・ソリューションを動的に作成するために、熟練したソフトウェア・コーダーとエンジニアのチームを配備することの有効性を実証している。米海兵遠征部隊(MEF)司令官も同様の能力を持つべきである。

賢く闘う機関を目指して:Toward a Fighting Smart Institution

軍種の指導者と参謀は、機関の作戦を支援するために近代化することで、賢く闘うこともできる。あらゆるレベルの指導者と参謀は、効果的な利用と意思決定を可能にする方法でデータを組織化、構造化、管理、処理する能力から利益を得ることができる。

組織レベルでのデータ中心作戦の近代化は、機関の計画策定、戦力デザインと戦力開発、取得、予算編成、募集と維持、配置、訓練と教育、戦力創出と戦力運用、態勢決定、戦略的コミュニケーション、施設と兵站計画策定を大幅に改善する。

「賢く闘う(Fighting Smart)」はすべての米海兵隊員に適用され、情報環境の即時性と相互接続されたグローバルな本質を強調する。それは、文官の米海兵隊員や支援請負業者を含む、すべての人の行動や言葉が可視化され、潜在的な結果をもたらすことを強調する。

統一された情報ビジョンを達成するためには、情報規律を実践することが必要であり、プロ意識(professionalism)を維持し、すべての言葉と行動が世界的に可視化されることを認識する必要がある。このような認識は、米海兵隊の評判のナラティブを強化することも妨げることも可能であり、国内外の人々の知覚(perceptions)に影響を与える[7]

米海兵隊の進化を継続させるためには、国防取得の方法にも変化を導入しなければならない。米海兵隊は、作戦指揮官が作戦と維持(O&M)経費を使って能力を獲得することで、より迅速化を図る必要性を認識している。外部の指導者や議会は、長い間変化を求めてきた。米海兵隊システム・コマンドは最近、取得を強化するために再編成されたが、まだ多くの課題が残っている。

国防革新・導入委員会は2024年1月に発表した報告書の中で、商業部門と国防部門の最先端技術を迅速に導入する緊急の必要性を強調している。そうすることで、戦闘員(warfighter)にとってインパクトの大きいソリューションをより迅速に提供することが可能になる[8]

このため、ハードウエアよりもソフトウエアの要件を重視するよう、予算化された事業(programs of record)の焦点を根本的に転換する必要がある。このシフトはまた、決心、行動、結果を促進するためにデータを融合し、関連付けることによって、戦闘員(warfighters)が競争上の優位性を維持できるようにするために、ソフトウェアの迅速な修正と更新を可能にすることを我々の事業に要求している。

米海兵隊ソフトウェア工場(Software Factory)のような組織は、迅速なソフトウェア開発を支援し、可能にするようにデザインされている。「賢く闘う(Fighting Smart)」は、米艦隊海兵部隊(FMF)へのソフトウェア開発支援の提供だけでなく、要求開発および取得における重要な改革に向けて米海兵隊を導くために必要な行動を特定する。

我々はどこへ向かうのか?:Where Are We Headed?

「賢く闘う(Fighting Smart)」とは、米海兵隊が敵対者よりも速いペースでより良い決心を下せるようにする一方で、全ドメインの指揮・統制と諸兵科連合をより効果的にするアセットとしてデータを活用することで、データと情報を戦闘力に変える作戦方法(way of operating)である。

この作戦方法(operating method)を最大限に活用するためには、米海兵隊はこの作戦方法を生み出し、維持する方法を教育し、訓練する必要がある。あらゆる作戦アプローチ(operating approach)は、それを機能させるために熟練した人材に依存している。「賢く闘う(Fighting Smart)」も同じである。米海兵隊員は、この方法を効果的なものにするために、データを最大限に活用する方法を知っていなければならない。

「賢く闘う(Fighting Smart)」は、ほとんどの米海兵隊員にとって見慣れたものだろう。それは、ここ数年の間に策定された他の主要な軍種レベルのイニシアティブ(例えば、人材管理)と同じように読めるだろう。しかし、重要な違いは、「賢く闘う(Fighting Smart)」が他のイニシアチブ、特に上記の総司令官の3大優先事項に関連し、それを可能にすることである。

さらに、「賢く闘う(Fighting Smart)」では、特定の重点分野において、指示された行動やさらなる研究が必要な分野を設定する。現在の草案では、これらの分野には、人材の動員、データ中心主義の達成、米海兵隊インテリジェンス・監視・偵察事業体(MCISR-E)の近代化、21世紀型諸兵科連合の実現などが含まれている。「賢く闘う(Fighting Smart)」は2024年6月に公表される予定である。

結論:Conclusion

「賢く闘う(Fighting Smart)」は、21世紀の諸兵科連合の機会を拡大するのであり、伝統的なドメインを超えて、宇宙、サイバースペース、電磁スペクトラム、情報環境をも含む。それは、複数のドメインから効果を収束させ(converging)、優位性と成果をもたらすことを体現している。ボイドの哲学(Boyd’s philosophy)を心に刻み、データと技術によって権限を得た人々と彼らの考えが、「賢く闘う(Fighting Smart)」の中心にある。

最終的に米海兵隊の競争力(competitive edge)を維持するのは、技術ではなく米海兵隊員である。将来の成功には、米海兵隊の該当分野における人工知能/機械学習(AI/ML)訓練を含む、データ・リテラシー訓練が必要である。米艦隊海兵隊とそれを支援する施設は、意思決定を改善するための専門スキルセットを持つ労働力を必要としている。

データによって権限を与えられた人々もまた、米海兵隊インテリジェンス・監視・偵察事業体(MCISR-E)の近代化の中心である。近代化と統合部隊の関連性は、米海兵隊が競争と紛争の両方で偵察と対偵察(RXR)部隊として機能し、情報と影響力のための毎日の闘いに従事することを必要とする。

米海兵隊インテリジェンス・監視・偵察事業体(MCISR-E)の近代化は、21世紀の諸兵科連合を可能にするキル・ウェブを閉じるために不可欠である。近代化された米海兵隊インテリジェンス・監視・偵察事業体(MCISR-E)はまた、決心の優位性と統合部隊の復元性を生み出すのに役立つだけでなく、「ナラティブの会戦(battle for narratives)」の理解と競争を支援している。

上記を達成するには、データによって人々に権限を与え、必要な教育と訓練を提供し、データ中心の能力を提供する機関のスピードを強化することが鍵となる。「賢く闘う(Fighting Smart)」は、技術主導で高度に接続された世界における米海兵隊の進化の青写真となり、現代の課題に対応し、戦闘員の作戦リスクを軽減するための組織適応性の必要性に対処する。

米海兵隊司令部 情報担当副司令官からのメッセージ

A MESSAGE FROM THE DEPUTY COMMANDANT FOR INFORMATION

Marine Corps Gazette • April 2024

私が2021年7月に情報担当副司令官に就任したとき、ロシアはまだウクライナに侵攻しておらず、ハマスもまだイスラエルを攻撃しておらず、紅海は無防備で、中国はまだ南シナ海でフィリピンの艦船に突撃していなかった。これらの出来事や、中国が台湾海峡の中央線を頻繁に通過するようになったことは、ここ数年で世界がどれほど変化したかを浮き彫りにしている。

この変化の中心にあるものは何か?情報、そして情報による支配をめぐる会戦が、「戦いの性質(character of warfare)」を変えつつある。情報をめぐる闘いに勝利した側が、会戦で成功し、戦争で勝利する可能性が高い。

アップガンのハイラックス・ピックアップ・トラック、アンドロイド6のスマートフォン、商用VSATを持つ「ゴロツキ(rag tag)」の暴力的過激派が、2つの国で手ごわい難題を提供するのを見た前の10年間と同じように、我々は再び、非対称的な方法で戦いを遂行する上でのデータと情報の力を目の当たりにしている。

対等と非対等の敵対者はセンサー、データ、コンピューティング・パワー、人工知能、自律システム、ソーシャル・メディアをますます活用し、米軍の歴史的優位性を相殺しようとしている。米海兵隊は、このような課題に対応するため、情報の力を最大限に活用する態勢を整えている。

昨年8月、米海兵隊総司令官スミス大将は私に、米海兵隊の継続的な進化のためのビジョンを支える上で、情報が重要な役割を果たすことを断言する指針を与えてくれた。スミス総司令官は、「戦いの性質(character of warfare)」が根本的に変化していること、そして何よりも人が米海兵隊の軍事的優位性の究極の源泉であり続けることを認識している。

データ、情報、最先端技術によって強化された米海兵隊員は、敵が同じものを使用した場合にも対抗することができ、米海兵隊を統合用兵(joint warfighting)における主要な貢献者として前進させることができる。

この指針を実現し、急速に変化する世界において米海兵隊の進化を継続させるため、スミス大将は情報担当副司令官(DC I)チームに、米海兵隊における情報のトップレベル・ビジョンを策定するよう具体的なタスクを課した。このタスクは、データ、情報、通信、インテリジェンス、サイバースペース、宇宙、電磁スペクトラム、その他すべての情報を基盤とする能力と機能が、統合(一体化)された全体として、各ドメインを超えて、統合の競争と統合の用兵にどのように貢献するかを明確な説明を開発することを求めている。

これは決して小さなタスクではない。このビジョンに向かって構築するためには、過去数年間の戦力デザインから学んだことを応用して、その説明を作り上げる必要がある。そして、現在の段階である戦力開発の継続的な進展を推進するために、ビジョンを活用しなければならない。

このガゼット誌では、海兵隊総司令官の指示によるビジョンのタイトルとして「賢く闘う(Fighting Smart)」を紹介することで、情報のトップレベル・ビジョンへの一歩を踏み出す。「賢く闘う(Fighting Smart)」とは、現代のハイパーコネクテッドな世界において、我々が長年培ってきた機動戦の原則(maneuver warfare principles)を適用することである。

それは、米海兵隊が敵対者よりも速いペースでより良い決断を下せるようにすることで、データと情報を戦闘力に変える作戦方法であり、同時に、全ドメインの指揮・統制と諸兵科連合(combined arms)をより迅速かつ効果的にするアセットとしてデータを活用することである。

マシュー・G・グラヴィ

米国海兵隊中将

情報担当副司令官

拙訳ファイルをご希望の方はkawazu.rv@gmail.com にメールをいただければ送付します。

ノート

[1] John Antal, “The First War Won Primarily with Unmanned Systems, Ten Lessons from the Ngorno-Krabakh War,” Madscriblog, April 1, 2021, https://madsciblog.tradoc.army.mil/317-top-attack-lessons-learned-from-the-second-nagorno-karabakh-war.

[2] Ibid.

[3] National Security Commission on Artificial Intelligence, Final Report: National Security Commission on Artificial Intelligence, (Washington, DC: 2021).

[4] Headquarters Marine Corps, Marine Corps Bulletin 5400, Establishment of the Deputy Commandant for Information, (Washington, DC: 2017).

[5] Marine Air Ground Task Force Training Command, Marine Air Ground Combat Center, Final Exercise Report for MAGTF Warfighting Exercise 2-23, (Twentynine Palms: 2023).

[6] Headquarters Marine Corps, MCDP 1, Warfighting, (Washington, DC: 1997).

[7] Headquarters Marine Corps, MCDP 8, Information, (Washington, DC: 2022).

[8] Atlantic Council, Scowcroft Center for Strategy and Security, Commission on Defense Innovation and Adoption, Final Report, (Washington, DC: 2024).