米海兵隊のドクトリンを読む③ MDCP 1-3 Tactics その3
第3章 優位性の獲得:Chapter 3 Gaining Advantage
環境の活用:EXPLOITING THE ENVIRONMENT
暗闇または減少した視程の期間:Periods of Darkness or Reduced Visibility
待伏せの考え方の開発:DEVELOPING AN AMBUSH MENTALITY
「戦争では、二つの拳を用いる力は計り知れない資産である。一方の拳によって陽動し、そして、他で攻撃する優位性(advantage)を生ずるが、しかし、相手が暴露するならば陽動を現実の打撃に変えることができるという、より大きな優位性(advantage)がある[i]」
-B. H.リデル・ハート
「挑戦は、我々が戦争の性質と理論と現代の戦場の現実の理解することで矛盾がない用兵(warfighting)のコンセプトを特定して、採用することである。これは、厳密に何を必要とするか?それは、不確実で、混沌として、流動的な環境で有効に機能する-実際に優位性(advantage)に、これらの状況を活用する-用兵(warfighting)のコンセプトを必要とする[ii]」
-FMFM 1、用兵(warfighting)
武道(martial arts)の基礎的な原則は、自分自身の筋肉だけで作り出すよりより効力(leverage)を獲得するために相手に対して相手の強さ(strength)と勢い(momentum)を用いることであり、それによって優位性(advantage)を獲得する。同じコンセプトは、戦術に適用される。我々は、我々自身の強さ(strength)で敵を打ち破るのではなく、勝利を得るために我々の役に立つ状況のすべての側面を活用することによって、我々の敵対者(adversary)に対し優位性(advantage)を獲得するよう努める。この章は、敵に対する優位性(advantage)を獲得するための効力(leverage)を作り出す手段のいくつかの異なる方法を議論する。
アメリカインディアンの待伏せ技法(ambush technique)を考える。少数の戦士で、追跡してくる騎兵の有力な部隊を峡谷または同様な錯雑地に引き入れるだろう。そこで、潜伏している戦士のより大きな部隊は、交代する敵を追跡しようと考えた兵士を急速に取り巻き、待伏攻撃をする。強さ(strength)と勢い(momentum)のある騎兵の最初の優位性(advantage)を活用することによって、アメリカインディアンはこの古典的な待伏せ方法(classic ambush method)を用いることにより、主導性を得て、優位性(advantage)を獲得することができた。
諸兵種連合:COMBINED ARMS
諸兵種連合の使用は、優位性(advantage)を獲得する鍵となる手段である。それは、敵を単なる問題ではなく、ジレンマ(dilemma)-勝てない状況-にするというアイデアを基礎に置く。我々は、敵がある脅威を避けるために取る行動がもう一つの脆弱性を生むように、支援火器、組織的火力、機動を組み合わせる[iii]。たとえば、塹壕にいる敵(entrenched enemy)に、掩体(fighting holes)にしゃがめば海兵隊の砲兵と航空機で吹き飛ばすということを分からせる。敵が攻撃に出れば、海兵隊歩兵が敵を叩く。敵が後退しようとするならば、海兵隊の機甲部隊と空軍力で敵の破壊を追求する。それが、諸兵種連合である。
分隊レベルで諸兵種連合の使用のよい例は、小銃を持った歩兵が突撃する際に火力で支援する分隊長の分隊自動火器と擲弾発射機である。自動火器の射撃を敵の掩体(fighting holes)に向け続け、擲弾で掩体(fighting holes)を持ちこたえられないようにする。これらの支援射撃は、我々の機動する歩兵部隊に効果的に反応しようとする敵に指向し続ける。敵軍は、勝てない状況に置かれる。
現代戦術(modern tactics)は、諸兵種連合戦術である。つまり、それは、敵に対して最も大きな可能な限りの効果を達成する、いろいろな部隊-歩兵、機甲部隊、砲兵と航空機-を、効果的に組み合わせる。たとえば、砲兵と歩兵は、相互に増援する能力(capability)のため、通常一緒に用いられる。歩兵は砲兵に近接支援を提供し、下車時の脅威から防護し、一方で、砲兵が歩兵を適時に、近くに、正確に、連続火力を提供し支援する。武力の強さ(strength of arms)は、互いを完全にして、増援する。同時に、各々の武器の弱点と脆弱性は、防護されるか、他の能力(capability)で相殺される。
1941年の師団長、パットン将軍は諸兵種連合を以下のように見ている。
まだ、片手のパンチャーのような・・・・各々の別々の部隊の傾向がある。このことは、ライフル銃兵が撃つことを望み・・・・突進するのは戦車兵、火力は砲兵・・・・ということを意味する。つまり、会戦に勝つ方法でない。楽団がピッコロで最初の部分を奏でたならば、ブラスホーンが、クラリネットが、それから、トランペットがとなり、音楽以外のとんでもない雑音はそこにはない。音楽の中で調和を得るために、それぞれの楽器は、他を支援しなければならない。会戦において調和を得るために、各々の兵器は、他を支援しなければならない。チームプレーが勝つ[iv]。
海兵隊空地任務部隊(MAGTF)は、バランスのよい諸兵種連合チーム(combined arms team)の完璧な例である。諸兵種連合戦術は、全ての海兵隊のための標準的な実践と第二の本質である。
機動:MANEUVER
機動(maneuver)は、我々に敵に対する優位性(advantage)を獲得するための手段を提供する。あまりに多くの会戦において、一方または両方の側で、火力(firepower)と消耗(attrition)を通して戦闘における優位性(advantage)を獲得しようと求めた。第一次世界大戦では、一つの側は全域に残虐な火力の下で無人地帯を推し進め、相手を欲する地形から追い出した。攻撃が成功しほとんど攻撃がされなかった場合、追い出された部隊は同様に反撃し、通常は、彼らが以前に有した同じ地形を再占領した。これらの会戦は火力(firepower)と消耗(attrition)の争いであり、最も兵員と装備を消費した側に優位性(advantage)がもたらされた。負傷者と装備のコストは、高くて、多くの場合決定的な成果を生み出さなかった。我々は、このタイプの交戦を避けることを望む。
伝統的に、機動(maneuver)はそれが位置上の優位性(advantage)を獲得する方法で移動することを意味する。たとえば、我々は暴露された敵の翼を包囲するように、または、敵に対し敵の到達目標となる決定的な地形を拒否するように機動する。我々は敵の後方連絡線(lines of communications)に脅威を与え、引き下がることを敵に強要するように機動する。我々は、敵に効果的な火力をもたらし、我々が敵の火力に対して防護できる位置を奪取するように機動する。我々は、他の局面で同様に機動する。たとえば、我々は時間的に敵に相対的なスピードを増し、敵よりも早いテンポで作戦出来るよう機動する。通常、我々は時間的にも空間的にも、最少の可能な限りのコストで優位性(advantage)と、最終的に、勝利を獲得するために機動する。
環境の活用:EXPLOITING THE ENVIRONMENT
環境の使用は、敵に対して優位性(advantage)を獲得するために途方もなく大きい機会を与える。我々は、我々が作戦しなければならないどのような環境-ジャングル、砂漠、山岳地帯、北極、河川、市街地-でも、その特色を理解しなければならない。より重大なことには、我々は、地形・気象の効果、暗さの段階、減少した可視性が、闘うための我々自身や敵対者の実力(adversary’s ability)に対する影響はいかなるものかを理解する必要がある。
地形:Terrain
我々の目標は、我々への優位性(advantage)をもたらし、そして、敵を不利(disadvantage)にする地形を戦術的に用いることである。地形は、我々の機動に影響を与え、そして、我々の戦術的処置を左右する。我々は地形をよく知っていなければならず、その効果-我々の移動を制限するか、我々の可視性を減らすか、我々の火力を制限するか-を理解しなければならない。我々は、それが敵にどのような影響を与え、私たちを検知または関与させる敵の実力(ability)にどのような影響を与えるかを理解しなければならない。我々は敵も地形から優位性(advantage)を求めることに気づいていなければならない。我々は地形が我々と同様に敵の機動と処置を成形すると理解しなければならない。
第7海兵隊連隊第1大隊のハロール・キザー中尉は、優位性(advantage)を獲得するために地形を使用する方法を知っていた。1950年11月に、中隊は長津湖地域(Chosin Reservoir area)からの進軍において、トクトン小路(Toktong Pass)の地形の鍵となる一画を奪取するよう命令された。キザー中尉は彼の小隊を離なれた20人の海兵隊員を有し、そして、小路は中国軍によって稠密に防御されていた。彼のアプローチを隠すために側面に位置している稜線を使用して、キザー中尉は巧みに後方から敵を包囲し、彼らのよく守備を固められた位置からすばやく中国軍を追い出した[v]。今日では、韓国の場合のように、地形の知的な使用は、海兵隊の標準的な実践となった。
気象:Weather
悪い気象-寒さ、熱さ、雨-は、戦闘作戦を妨げる。これらの状況で作戦するための最良の準備をした軍隊は、相手に対して優位性(advantage)を獲得する。1950年11月の長津湖(Chosin Reservoir)から包囲突破において、海兵隊は再三再四、強靭な敵に対して彼らの優位性(advantage)である厳しい気象を利用した実力(ability)を示した。激しい吹雪の中での、第1海兵隊連隊第1大隊エイブル中隊の1081高地への突撃はその例である。わずか25ヤードの視程にもかかわらず、中隊は、諸兵種連合攻撃を調整して、第1海兵隊連隊の包囲突破を妨げる地形の鍵となる一画を包囲することができた。吹雪をその移動を覆い隠すために利用して、エイブル中隊は防御する中国軍を奇襲して、絶滅させた。そして、それによって師団の残余のためのルートを開いた[vi]。
我々の優位性(advantage)のために気象を利用するのであれば、我々は全ての気象状況で作戦するために厳しく訓練し、準備をしなければならない。我々は、熱く、冷え、湿った環境-文字通り全ての気候と場所-で、効果的に装備を使い、兵器を用いることが出来なければならない。
暗闇または減少した視程の期間:Periods of Darkness or Reduced Visibility
効果的に何時間もの暗闇または減少した視程の期間の間に作戦することができる部隊は、彼らの相手に対して多くの場合かなりの優位性(advantage)を獲得する。減少した視程は、最も単純な仕事も達成することを難しくする。この明らかな不利(disadvantage)な立場を頭の中で転換し、部隊を夜に作戦するために訓練し、装備し、能力を持ち、意志を持てるようにした指揮官によって我々の優位性として活用することができる。夜間の作戦は、夜に作戦できないか、作戦しない部隊に対して、大きな優位性(advantage)を生み出すことができる。減少した可視性の段階の間に作戦することは、闘うために更に10~12時間を一日に加えることによってテンポを生み出すことになる。夜間に闘うことの精神的な影響は、大きくもあり、重大な利得を生み出すこともできる。
夜間攻撃(night attacks)の戦術的影響のよい例は、第二次世界大戦における沖縄の会戦に見いだされる。海兵隊は、強固な南沖縄の珊瑚隆起で日本の防御線の存在によって、基本的に行き詰まった。第7海兵隊連隊による数日間の無効な攻撃の後、連隊の指揮官は暗闇に乗じての攻撃を選択した。1945年6月12日03:30に、侵攻している第7海兵隊の第1大隊と第2大隊は、目印として隆起線と交差した道を利用した。その時の第7海兵隊の指揮将校エドワード・W・スネデッカー大佐は、次のように語った。
・・・・二つ中隊-第1大隊と第2大隊からそれぞれ1コ中隊-は夜間のうちに谷を越えて[稜線の]位置についた。朝早く、日本軍が朝食を料理するために出たとき、彼らは・・・僅かな驚きを覚えた。これらの位置から、海兵隊は彼らの守備を固められた位置から敵を追い払って、防御する日本軍が全滅させるまで前進した[vii]。
防御する日本軍は、米軍の夜間の攻撃に慣れてなかった。暗闇の使用は、海兵隊が、国志稜線(Kunishi Ridge)の頂上に沿って、文字通り発砲することなく場所を占領することを可能にした。
補完的な部隊:COMPLEMENTARY FORCES
補完的な部隊-一方で正面に拘束し、もう一方が脇に回るアイデア-は、優位性(advantage)を獲得することの重要な方法である。補完的な部隊の背後のアイデアは、クルミ割りのように我々の部隊を使用することである。我々は、二つ以上の行動の間で敵を壊滅させようと求める。木の背後から敵のライフル銃兵への射撃のケースを考える。正面からの海兵隊の火力だけならば、敵のライフル銃兵は木によって防護される。海兵隊が機動し、背後から火力を試みたならば、彼の防護を維持するために敵のライフル銃兵は単に木の向こう側へ移動するだけである。しかしながら、二人の海兵隊員は、我々の相手をジレンマに置くことができる。一人は正面から射撃でき、一方で他の者が忍び寄って敵の横腹または後方から射撃する。相手は、その時、二人の海兵隊のどちらか一方に脆弱となる。相手は、両方ともからの防護のために、木を使用することができるというわけでない。
同じアイデアは、空対空の戦術に適用される。敵機を探知すると、即座に、戦闘機の飛行を、空対空ミサイルのレンジ内の二つ以上の小編隊に分かれる。彼らは、複数の方向と異なる高度から敵機に接近する。たとえ敵機がどのように-ダイビング、上昇、回る、またはツィスト-動いても暴露される[viii]。
孫子は、「正(cheng)」と「奇(ch’i)」としてこのコンセプトを述べた[ix]、[x]。「正(cheng)」は、より直接の、明白な行動である。それは、敵を拘束する。「奇(ch’i)」は、意外であるか驚くべき行動である。それは、決心への努力であり、または、我々がそれを今日、主たる努力(main effort)と呼ぶものである。これらの二つの行動は、共に敵に対して作用する。二つの行動は会戦において分離できなく取り替えることができる。「正(cheng)」は、「奇(ch’i)」になる。このコンセプトは基本的なものであり、しかし、それは我々の想像力によってだけ制限される様々な組合せによって実行できる。
奇襲:SURPRISE
奇襲(surprise)を達成することは、効力(leverage)を大いに増大することができる。実際のところ、奇襲(surprise)は多くの場合決定的であることを証明する。我々は、欺瞞(deception)、隠密(stealth)と曖昧性(ambiguity)によって奇襲(surprise)を達成しようと努力する。
「戦争は、欺瞞に基礎をおく[xi]」と、孫子が述べた。我々は、我々の実際の意図(real intentions)と能力(capability)に関して我々の相手を誤解させるために欺瞞を使用する。欺瞞を用いることによって、我々はそれが最終的には相手が不利になるように行動するように努力する。我々は、我々の、さし迫った攻撃の時間と場所に関して敵を誤解させるために欺瞞を利用する。我々は、我々の部隊が実際より大きいという彼らの印象を生み出すために欺瞞を使用する。我々は彼らが反応するにはあまりに遅いときだけ敵がこの欺瞞を認識することを望む。
海兵隊は、水陸両用上陸の場所に関して、敵を誤解させるためにたびたび欺瞞に依存した。海兵隊員は、「砂漠の嵐」作戦でそこには部隊はいないという錯覚を生み出すため欺瞞を利用した。ブーマー中将は、広範囲にわたる欺瞞作戦を必要とした状況について述べた。「我々は、2個の海兵隊師団で11個のイラク師団を相手にした。我々の部隊の比率はぞっとするほどだった。我々は、それを知っている相手を望まない[xii]。・・・・」この海兵隊員は、任務部隊トロイを生み出した。460人の海兵隊員は、拡声器、ダミーの戦車と砲兵とヘリコプター、模擬された再供給の実施を使用して16,000人の師団の行動を模倣した。
奇襲(surprise)は、隠密(stealth)によって作り出されることができる。秘匿性は敵に対して機動するとき優位性(advantage)に使用される。それは敵による探知の偶然(chance)を、より小さくし敵が準備できていないことで奇襲(surprise)に対して脆弱なままにしておける。海兵隊は、接近している敵を横たわって待つ-待伏せ(ambush)-ことによる隠密(stealth)も用いる。この待伏せは、おそらく相手を奇襲(surprise)する最も効果的な手段である。特に下層の戦術的次元では、隠密(stealth)によっての奇襲(surprise)が達成するのが最も容易である。
我々は、曖昧性によって奇襲(surprise)を達成することもできる。通常、全て我々の移動を敵から隠すことは難しいが、我々は時には敵が見るものの意味に関して敵を混乱させることができる。孫子は云う。
我方が戦おうとする場所を敵は知ることが出来ず、知ることが出来なければ、 敵は多くの場所に兵士を割いて備えなければならず、備えなければならない場所が多ければ多いほど、我方と直接戦う敵は少数となる[xiii]。
曖昧性(ambiguity)は、第二次世界大戦ドイツ軍の電撃戦の戦術の中心だった。電撃戦の攻撃は、いずれの推進軸でも最も成功したところに増援するという複数の推進軸を包んでいた。多数の推進軸は、相手が実際の攻撃を決めきれなかったので不確実性(uncertainty)による麻痺を生み出した。ドイツ軍の攻撃には秘密も何もなかったが、大規模に不明瞭だった。
敵を罠にかける:TRAPPING THE ENEMY
現代戦術(modern tactics)は、敵を押し進むことでなく、彼を罠にかけること-優位性(advantage)を獲得するもう一つの優れた方法-に基礎をおく。罠にかけることは、諸兵種連合、射撃と運動との連係または補完的な部隊の戦術の適用の望ましい成果である。
なぜ、我々はまさに敵を押し進む代わりに、敵を罠にかけることを望むか?争いを押し進めることは滅多に決め手とならない。押し込まれた側は、その翌日にはまた、闘いに戻る。我々は、何度も何度も彼と戦わなければならない。残念なことに、ヴェトナムで、我々の会戦の多くは、押し進む会戦(pushing battles)だった。我々は、常に敵を敵が占拠した場所から押し進み、敵に負傷を負わせることができた。敵はまさに撤退して、再編成して、敵の損耗した分を入れ替えて、再び我々と戦うために戻って来た。結果は、一連の決定的でない行動と一見終りのない戦争であった。
しかしながら、我々が敵を罠にかけることができるならば、我々は決定的に勝つためのより良い機会を有する。歴史上の決定的な会戦の多くは、罠にかける行動であった。どのようにローマ軍部隊がカンナエで、ドイツ軍の師団がスターリングラードで罠にかけられたか?を思い出せばよい。罠にかけることは、敵をジレンマに陥れることで敵の考えようとする精神的なプロセスを中断させることによって優位性(advantage)を獲得する。罠にかけることは敵が我々の行動に対応することを強いるような主導性を獲得し維持することを可能にする。それは一時的に、敵が弱点を現した時に、我の攻撃と主導性をかけ続けながら、抵抗する敵の意志を蝕むこともできる。
ヴェトナム紛争の罠にかけた良い例は、デューイ・キャニオン作戦(Operation Dewey Canyon)において生じた。(図を参照)ラオス-南部ヴェトナムの境界-沿いの北ヴェトナムの活動は、1969年1月の初めに劇的に増大した。大きな敵の輸送隊(装甲車両を含む)はラオスから南ヴェトナムに定期的に移動し、友軍の部隊を脅した。ロバート・H・バロー大佐と彼の第9海兵隊は、デューイ・キャニオン作戦によって応えた。
第9連隊の3個大隊は、2月の11日と12日にダ・クロン河を渡った。第3と第1大隊は、山岳地形の中を南南東にラオスの方へ移動した。第2大隊は-西に-南南西に向きを変え、南部ヴェトナム-ラオス境界にまたがって東に進路を変えた。ラオスからア・シャウ渓谷へ向かうルート922に沿って移動していた北ヴェトナムの部隊は、三つの大隊の間で罠にかけられた。この北ヴェトナム軍は、結果として傷つけられた。彼らの装備の損失は圧倒的であった。より重大なことには、デューイ・キャニオン作戦は北ヴェトナム軍基地の地域を破壊して、第1軍団地域で計画していた春の攻勢を捨てることを強いるように、兵站を崩壊させた[xiv]。
待伏せの考え方の開発:DEVELOPING AN AMBUSH MENTALITY
おそらく、優位性(advantage)を獲得するための最も一般的な戦術的ツールは待伏せである。全ての海兵隊員は、戦闘斥候の型として、待伏せをよく知っている[xv]。機動戦(maneuver warfare)には、待伏せは大いに、より幅広い意味を持つ、そして、待伏せの考え方(ambush mentality)の開発は機動戦(maneuver warfare)戦術に必要不可欠である。
この待伏せの考え方(ambush mentality)は、おそらく我々には新しくもない。我々は、スポーツにおいて待伏せの考え方(ambush mentality)を用いた。フットボールにおいて、罠のブロックは、待伏せである。プレーヤーは攻撃的なラインマンを戦線に引き寄せる。そして、ホールを残す。防御者がホールを切り抜けるとき、もう一つのラインマンは側面から突然相手をブロックする。そして、通常相手をはねのける。プレーヤーは、相手に不意討ちをくわした。それは、待伏せの考え方(ambush mentality)である。
バスケットボールにおいて、スクリーンを準備するは待伏せである。一人のチームメイトがバスケットゴールに向かうと、背後から守備側のパスに入り込む、パスをブロックして、守備を押さえて、バスケットゴールへの他のチームメイトのために一時的に通路をあける。また、それは待伏せの考え方(ambush mentality)である。
戦闘において、我々は良く通った経路に沿って我々の増援された分隊を位置に移動する。我々は、我々自身を防護して、識別と経路上の敵の移動を警告するために翼側部隊を配置する。我々は「キル・ゾーン」に我々の火力を集中できるように火器を配置し、そして、敵に我々の火力を強いることができるよう出口を塞ぐ。この分隊は、キル・ゾーンで罠にかかった敵軍に対して火力を集中し継続するために、分隊がすぐに反応する信号を送るまでその場所で待つ。敵は、何を行うべきかどこに移動するべきか分からないという無策に驚き、全滅する。火力は全ての敵が殺され、あるいは、止めるための信号を送られるまで維持される。それは、待伏せの考え方(ambush mentality)である。
待伏せの考え方(ambush mentality)は、すべての状況を待伏せに変えようと努力する。このより幅広い文脈では、待伏せはいくつかの異なった特徴を有する。
第一に、待伏せにおいて、我々は敵を奇襲(surprise)しようと努力する。我々が巡回を待伏せることについて考える。敵が森を通り抜けて進んでいると突然、どこからともなく、彼らは複数の方向から攻撃を受ける。彼らは、多数の負傷者を出す。奇襲(surprise)の精神的な影響は彼らの考えと行動を麻痺させ、効果的に反応出来ないようにする。待伏せの考え方(ambush mentality)の手段を持つために、我々は常に敵を奇襲(surprise)し、そして、予想外のものを行おう努力する。奇襲(surprise)は、例外よりむしろ法則である。
第二に、我々は我々の敵を罠に気づかれずに引き入れることを望む。これは、敵をだますことをたいてい包む。我々は、誘引するような一つの行動方針をとる。敵がその行動方針をとる時、我々は敵を待つ。
第三に、待伏せは目に見えない。待伏せが目に見えるようであれば、それは待伏せである代わりに、敵にとってのターゲットになる。我々が防御するか、攻撃するかに関係なく、敵の反応があまりに遅くても我々は探知されてはならない。奇襲(surprise)は、多くの場合不可視性に依存する。その不可視性は、敵に探知されることなく我々の部隊が機動することを可能にするために、どこか他の場所に敵の注意を向けさせるか、又は隠密(stealth)な移動を通じて得られる。
反斜面防御(reverse slope defense)は、待伏せを出現するために不可視性を使用する例である。敵は、丘の頂上に到着し、我々の火力によって叩かれるまで我々がそこにいるということ知らない。敵の車両は、軟らかい急所を打たれる。敵の部隊は、我々の兵器に完全に暴露される。敵が最後の瞬間まで我々を見ることができなかったので、敵は我々の位置に砲兵火力を要求することができなかった。この反射面は敵の直接照準射撃から我々を防護するだけでなく、我々を敵の観測による間接照準射撃から防護する。それは、待伏せの考え方(ambush mentality)の部分である。我々自身が見られてはいけない。
第四に、待伏せにおいて、我々は敵に衝撃を与えること(shock the enemy)を望む。長射程からの少ない火器によって敵を少しずつ火力下に置く代わりに、すべての火器の射程内に敵が入るまで待つ。我々は、我々が有する火器のすべてを一斉に突然浴びせる。敵は、ショックにより、麻痺する。敵は反応することができない。すべてはうまく進み、そして、突然、敵は周辺の兵員と共に猛火の中にいることになる。たいてい敵はパニックを起こし、自ら行動するというよりは反応せざるを得ない悪い状況に陥る。
諸兵種連合は敵を待ち伏せるために利用される。敵が予想する、より深く、敵の縦深の核心の地域に達する砲兵急襲は、地上の待ち伏せと同様な望ましい衝撃効果を生み出すことができる。我々は、敵を砲兵の効果と空からの攻撃から逃れようとするジレンマに陥れる。
最後に、待伏せの考え方(ambush mentality)では我々は常に敵に焦点を置く。待ち伏せの目的は、地形の一部を保持することではない。それは、敵を破壊することである。我々は待ち伏せを効果的にするのに地形を利用するが、闘うのは地形自体ではない。
非対称性:ASYMMETRY
非対称に闘うこと(fighting asymmetrically)は、不均衡-敵の弱点に対して強さ(strength)を適用する-を通して優位性(advantage)を獲得することを意味する。非対称に闘うこと(fighting asymmetrically)は、敵の弱点を活用しながら、我々自身の強さ(strength)を最大にするために異なる手法と能力(capability)を利用することを意味する。非対称に闘うこと(fighting asymmetrically)は、敵の条件よりむしろ我々の条件で敵と闘うことを意味する。非対称に闘うこと(fighting asymmetrically)によって、我々は敵を破るために数値的に優れている必要はない。我々は、ただ敵の脆弱性を活用することが出来るだけである。
たとえば、敵の戦車と戦うために戦車、敵の歩兵と戦うために歩兵と、敵の航空と戦うために航空を利用することは、対称である。敵の戦車と戦うための攻撃ヘリコプターと敵の歩兵に対する近接航空支援の利用は、非対称に闘うこと(fighting asymmetrically)の例である。これらの例では、我々は敵と比較して航空機の、より大きなスピードと移動性の優位性(advantage)を獲得する。戦車機動を妨げる地形で、攻撃ヘリコプターで戦車を待伏せることは、より多くの効果を与えて、より多くの優位性(advantage)を作り出す。
結論:CONCLUSION
戦闘は、勝つことを目標とする意志のテスト(test of wills)である。勝つための一つの方法は、すべての可能な限りの優位性(advantage)を獲得して、活用することである。これは可能な限り何時でも機動と奇襲(surprise)を利用することを意味する。それは、補完的な部隊と諸兵種連合を用いることを意味する。それは、我々の優位性(advantage)に暗闇の地形、気象と時間を活用することを意味する。それは、我々が待伏せ、または、いくつかの他の手段によって敵を罠にかけることを意味する。それは、付加された優位性(advantage)を獲得するために非対称に闘うこと(fighting asymmetrically)を意味する。これは、孫子が「したがって、熟達した指揮官は状況に勝利を求めて、部下に勝利を求めない」と書いたことを意味する[xvi]。
ノート
[i] ロバート・デブス・ハインル・ジュニア退役米海兵隊大佐「軍事および海軍引用辞典」(Annapolis, MD: United States Naval Institute, 1966)321ページ
[ii] FMFM 1「用兵(warfighting)」57ページ
[iii] 諸兵種連合:敵に所期の効果を引き起こす火力と移動性を一体化する部隊によって用いられる戦術、技術と手続き” FMFRP 0-14, Marine Corps Supplement to the DOD Dictionary of Military and Associated Terms (January 1994).
[iv] マーティン・ブルーメンソン著「パットン・ペーパーズ vol. 2」(Boston, MA: Houghton Mifflin Company, 1974) 39–40ページ
[v] アンドリュー・ギア著「新しい品種」(NY: Harper & Brothers, 1952) 339ページ
[vi] アンドリュー・ギア著「新しい品種」365₋366ページ
[vii] ジョー・ダグラス・ドッド著「国志稜線(Kunishi Ridge)への夜の攻撃」Marine Corps Gazette (April 1985)43ページ
[viii] ジョー・ダグラス・ドッド著「国志稜線(Kunishi Ridge)への夜の攻撃」42₋44ページ
[ix] 孫子「兵法」サミュエル・B・グリフィス訳(NY: Oxford University Press, 1963) 91ページ
[x] 戦いは、正を以て合し、奇を以て勝つ(兵勢篇)「戦いは正を以って合し、奇を以って勝つ」。正と奇は相反する語とされる。正は一般的で正常、奇は特殊で変化するもの。いざ敵を攻撃するというときは奇策を用いよということ。正面突破が正なら裏から攻めるのは奇、正攻法が正なら奇襲作戦は奇。相手の裏をかけ。http://powerfulcb.fc2web.com/sonsiheihou.htm
[xi] 孫子「兵法」106ページ
[xii] ロバート・R・パーカー・ジュニア中佐著「欺瞞:行方不明の道具」Marine Corps Gazette (May 1992) 97ページ
[xiii] 孫子「兵法」98ページ
[xiv] 「ベトナムの海兵隊、1954-1973年:選集と注釈付きの文献目録」(Washington, D.C.: Headquarters, U.S. Marine Corps, History and Museums Division, 1985) 173–181ページ
[xv] FMFM 6-7「歩兵部隊の偵察とパトロール」(January 1989) p. 2-1.
[xvi] 孫子「兵法」93ページ
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