ウクライナから将来の軍隊への教訓(第13章)(The Army War College)

MILTERMで、既に紹介しているウクライナから将来の軍隊への教訓(序章から第1章まで)(第2章から第3章まで)(第4章)(第5章)(第6章)(第7章)(第8章)(第9章)(第10章)(第11章)(第12章)に続き、第13章を紹介する。この章は、軍事に関する医療に関する内容である。戦いにおいては、いわゆる第一線で戦傷を受けた場合の処置に焦点があてられる。しかし、戦傷を受けた兵士が傷を治療し再び戦場に復帰して戦力となることを考えるとその国の医療体制そのものが分析検討の対象となる。そして第一線から各部隊階層に設定される医療施設から国家の医療体制の整備状況は、第一線の処置のあり方に影響を与える。軍事組織の医療体制を考える一助になると思う。(軍治)

行動喚起:ウクライナから将来の軍隊への教訓

Call to Action: Lessons from Ukraine for the Future Force

まえがき

序章:ウクライナから将来の軍隊への教訓

エグゼクティブ・サマリー

第1章 ウクライナの歴史と展望

第2章 1991年から現在までの米国とウクライナの安全保障協力:さまざまな記録

第3章 ウクライナの場合:復元性による抑止

第4章 2022年のロシア・ウクライナ戦争における作戦術

第5章 インテリジェンス

第6章 火力

第7章 ミッション・コマンド

第8章 効果的な戦闘リーダーシップの維持

第9章 後方支援:兵站

第10章 大国間競争の時代における戦略的人的予備役

第11章 ロシア・ウクライナ戦争の機動についての教訓

第12章 防護:電子、航空、民間人、インフラ

第13章 ロシア・ウクライナ戦争での軍事医療適応:Military Medical Adaptation in the Russia-Ukraine War

Dennis M. Sarmiento

キーワード:軍事医学(military medicine)、戦場適応(battlefield adaptation)、精神的外傷(trauma)、安定化(stabilization)、可搬式病院(portable hospital)

「すべての戦争は人間の弱さを前提とし、それを利用しようとする」[1]。カール・フォン・クラウゼヴィッツ(Carl von Clausewitz)のこの言葉は、戦争による肉体的・心理的影響についてしばしば引用されるが、最も単純なことを困難にし、個人の死亡を早め、集団の有効性を蝕む容赦ない摩擦(friction)について述べている。2022年2月24日のロシアの侵攻以来、ウクライナの軍隊も民間人も、クラウゼヴィッツ(Clausewitz)の言う摩擦(friction)の中で闘ってきた。ウクライナの軍事および民間の医療システムは、各階層での決意と復元性を示し、人命を救い、大規模に戦闘力を維持するために適応してきた。2世紀以上にわたる武力紛争からの観察によれば、軍事医学は軍事的効果を可能にし続けている[2]

ロシア・ウクライナ戦争が始まって1年が経過した今、軍事医学が軍事効果を高めるという主張が実証された。歴史的証言やオープン・ソースは、大規模戦闘作戦(LSCO)におけるロシアの失敗と、文書化されたウクライナの成功の対照を明らかにしてきた。ロシアとウクライナの医療部隊の組織化、医療システムの管理、訓練、治療、負傷者の避難などのアプローチを比較すると、大きな違いがあることがわかる[3]。医療支援におけるロシアとウクライナの違いは、一夜にして生まれたわけではない。また、ウクライナの能力と能力容量の優位性は、援助なしには現れなかった。戦闘力を温存し、部隊の結束力を維持し、部隊の士気に貢献するウクライナの医療支援における戦場適応は、ハイブリッド戦から大規模戦闘作戦(LSCO)への移行において相対的な優位性をもたらした。

ウクライナの医療部隊は、能力の組織化、能力容量の管理、規模に応じた訓練という文脈において、効果的な適応が、悪い場所での良い医療を挫折させる大規模戦闘作戦(LSCO)に関連した摩擦を相殺できることを実証した。したがって、本章では、ウクライナの軍事医療の各階層における改革、変革、適応の取組みを説明し、医療用兵機能(medical warfighting functions)の中で学んだ大規模戦闘作戦(LSCO)の教訓を抽出し、ウクライナの適応を、現在進行中の米陸軍の軍医の適応、革新、近代化の取り組みと調和させることを意図している。

改革

ウクライナの医療構造と政策のコンセプト上の基盤を理解することは、変革への課題と適応の機会を特徴づけ、文脈づけるのに役立つ。ウクライナの医療構造、機能、ドクトリンはソ連に起源を持ち、1918年以来、セマシュコ(Semashko)モデルから比較的変化していない[4]。第一次世界大戦の終結で医療インフラの多くが破壊された中、人民衛生総監だったニコライ・セマシュコ(Nikolai Semashko)はソ連の国民皆保険制度を導入した。このコンセプトは、医療保険、質の高い医療、疾病予防に対する国家の責任を宣言したものである。モスクワは、ウクライナの民間および新興の軍事医療システムを厳しく統制した。これらの制度の特徴は、資源と人員の高度に中央集権的な計画と、地方政府の自治権の否定であった[5]。第二次世界大戦中、ウクライナは戦闘によるインフラ被害のため、医療能力と能力の多くを失った。ソ連の指導者たちは、第二次世界大戦後の医療制度の再建と拡大を、国民皆保険(universal health care)の再確立を意図していた。

ウクライナが1991年にソビエト連邦から独立したとき、経済再編と社会的不安定が資源の制約を招き、医療能力容量が著しく制限された[6]。2000年代初頭、ウクライナ保健省が再編され、ウクライナのすべての永住権保持者に医療を提供するという、最近批准された憲法上の要件を満たすために、社会化医療サービスが拡大された。分権化された経営はアクセスを拡大し、保健省は、臨床品質基準を満たすために、地域(州)レベルの並行する民間セクターと公的保健システムにおいて、権限、財源、標準化を要求し始めた。地域社会のニーズをより効果的に把握し、それに対処することを意図した地方分権は、地域の医療サービスをより効率的かつ効果的に提供することを可能にする[7]。注目すべきは、セマシュコ(Semashko)の影響が、初期治療(primary care)、予防、保健監視に重点を置いた、各州に併設された民間部門と公的保健システムにも残っていることである[8]

軍事医療システム

ウクライナ国防省内の並列システムは、中央集権的な資源調達と地方分権的な執行の両方を反映していた。さらに、NATOのベスト・プラクティスを観察し、適用し、統合(一体化)するための軍事医療の取組みは、1991年のソビエト連邦崩壊直後から始まっており、ウクライナは軍事医療支援の組織構造と管理を評価するために意図的に取り組んだ。2017年以前、ウクライナの医療制度は基本的にロシアの模造品にとどまっていた。

2016年の大統領令は改革を促し、戦略的国防速報は国防能力と能力容量の持続的な格差、特に2014年以降のハイブリッド紛争でさらに露呈した格差を文書化した[9]。構造とプロセスを変革するためのギャップ主導の取組みは、標準化、持続性、指揮・統制(C2)、そして「国防軍の医療支援システムの効率性」に関する課題を浮き彫りにした[10]。長年にわたるロシアとのハイブリッド戦の後、ウクライナは医療用兵機能(medical warfighting functions)を改革した。戦略的防衛速報に後押しされ、NATOの基準に基づいたこれらの改革は、軍事的効果を高めてきた。

包括的な防衛改革のロード・マップとして、医療要件は、欧州大西洋の経験に基づく医療支援システムの規制と確立を記述している。医療要件には、効果的で適格な医療の導入、医療避難、軍人の医療リハビリテーションと回復、軍隊のすべての構成部隊を支援できる統合(一体型)医療兵站支援システムなどが含まれる[11]。さらに、改革はNATOの基準に従って展開され、NATOとの統合作戦中の相互運用可能な医療能力に貢献し、共通の医療枠組みの中で負傷者に医療援助、治療、リハビリテーションを提供する上で、国の医療制度の能力の範囲内に収まらなければならない[12]。現在のウクライナ軍の医療活動、特にキーウとウクライナ東部では、地域間の相互運用性を向上させるための初期の取組みが続けられている。

2016年の戦略防衛速報では、歴史的に初期医療(primary care)を大規模に支援することに重点を置いてきたセマシュコ(Semashko)システムにおいて、医療の専門分科の縦深を確立するための要件が述べられている。ウクライナには医療リハビリテーション・システムがあるが、規模で大きく能力容量が不足している。戦闘心的外傷(combat trauma)の後遺症を認識するこのシステムは、身体的、心理的、社会的な回復を支援する。しかし、このシステムには十分な資源がない。同様に、ウクライナにはウクライナ国軍医療要員のための訓練・再訓練システムがあるが、キーウにあるウクライナ軍医療アカデミーを除けば、このシステムには軍隊特有の要件や戦闘関連の負傷の予想件数を支援する能力はほとんどない。

過去20年間、ウクライナは民間と軍の医療制度改革に取り組み、国の法律で義務づけられている国民皆保険の提供、州をまたがる標準化によって可能になった医療提供の質の向上、質の高い医療へのアクセスの改善という変革の条件を整えてきた。2014年以降、ウクライナは改革を加速させ、特に腐敗と非効率への対処を進めている。ロシアのクリミア併合以降、ドネツ盆地でのハイブリッド紛争が一因となっている。透明性と説明責任を高めることを狙いとしたウクライナの法律と規制は、特に医療機器と医薬品の調達において、改革の取組みの加速を支えた[13]。もうひとつの重要な改革は、2017年に導入された新たな医療財政制度である。この制度により、医療財政の水準が向上し、予防と初期医療に重点が移された[14]。保健省主導の取り組みにより、救急救命士の訓練を含む医学教育と訓練に関する新たな基準が確立され、質の監視・評価システムを含む医療機関の認定が行われた[15]。最後に、世界保健機関(WHO)、米国国際開発庁(US Agency for International Development)、EU、NATOなどの国際機関や医療機関とのウクライナのパートナーシップが、継続的な改革の取組みを可能にしている。

2000年以降の改革の取組みの中で、ウクライナの軍医制度はロシアとの紛争によって大きな変貌を遂げ、近代化と開発の緊急の必要性が浮き彫りになった。国防省と保健省は、軍事医学の急速な開発と永続的な変化に不可欠な組織、システム、パートナーシップの改革に相当な取組みを行ってきた。ウクライナ軍は、米陸軍州兵の国家パートナーシップ・プログラムや多国籍統合訓練グループ・ウクライナに代表される米国とのパートナーシップや、NATOとのパートナーシップによって、ドクトリン、組織、訓練、インフラの変革を加速させている。

2015年に起草され、2021年に改訂されたウクライナ軍事医療ドクトリン(MMD)は、「国家における戦略的保健計画の主要文書のひとつであり、紛争への「準備」と紛争「中」における国家の公衆衛生と軍隊の医療支援に関する公式に認められた見解の体系である」[16]。軍事医療ドクトリン(MMD)の草案では、「ウクライナ軍の医療サービスと市民医療は、医療に関する統一された州法、国家医療基準への準拠、臨床プロトコル、医療提供の軍医療基準を通じて、単一の医療空間で運営されている」と記されている[17]。ドクトリンは、組織原則、組織構造と機能、民間部門との関係、即応性要件、開発への期待などを規定している。そうすることで、軍事医療ドクトリン(MMD)は協力、協調、適応を促進する枠組みも提供する。

軍事医療ドクトリン(MMD)は、その範囲、規模、役割、権限を前もって説明することで、規模での標準化のための基盤を確立するとともに、「武力行使や武力による威嚇、抵抗能力を伴う内外の軍事的脅威が発生した場合の個人、社会、国家の健康保護」において、即応性(readiness)を可能にし、取組みの統一(unity of effort)を促進するための軍と民間の医療機関間の関係を発展させる[18]。特筆すべきは、軍事医療ドクトリン(MMD)が、平時、人道的対応活動、災害時、戦時における部隊の編成、能力、支援について、軍事的側面から独自に文書化していることである。軍事医療ドクトリン(MMD)のコンセプトは、フィールド・マニュアル4-02「米陸軍衛生システム(Army Health System」に含まれる米陸軍のドクトリンを反映したものである。この2つの政策文書には、医療指揮・統制(C2)、4つの医療サービス支援機能(治療、入院、避難、後方支援)、5つの部隊健康保護機能(検査サービス、獣医サービス、戦闘・作戦ストレス管理、予防医療サービス、歯科サービス)など、同じ医療用兵機能(medical warfighting functions)が多く含まれている。

入院前処置(prehospital care)と治療、避難、予防と防護、兵站に絶えず重点を置くことで、ウクライナ国軍の医療支援システムは、順応性と能力を備えたものとなっている。軍人と民間人の間の調整が、地域に根ざした医療支援を提供する。ウクライナ国軍、その他の国家安全保障機関、市民医療システムの医療施設および医療サービスは、法律で定められた税制上の優遇措置やその他の特典を享受できる。

軍事医療ドクトリン(MMD)を導入することで、全国共通の医療圏を作り、平時の軍事医療支援体制を効率化することが可能になる。戦時中、軍事医療ドクトリン(MMD)は国民が医療を受けられるようにし、戦闘準備態勢の医療部門を支援し、後方支援を可能にし、ウクライナ軍医療サービスやその他の安全保障構造の動員ニーズを援助する。軍事医療ドクトリン(MMD)の規定は、国家安全保障と国防の分野における国家政策の立案と実施の際に、修正および補足されることがある。敵対行為中は、以下の原則が医療サービスの指針となる。

・ 傷病者の病態の出現と経過について共通の理解を深める。

・ 合併症の治療と予防、避難を伴う段階的治療について共通の見解が得られるようにする。

・ 医療避難段階における治療と避難措置の適時性、継続性、順序、厳格な規制を標準化する。

・ 単一の、規制された、明確で、簡潔な、有益な医療文書システムを維持する。

・ 医療従事者の法的・物理的保護を可能にする。

・ 民間人に対する強制的な医療支援を支援する用意があること[19]

ウクライナの軍医制度における2つの重要な組織的発展の1つは、中央軍事医療局の導入である。2015年にウクライナ軍の新医学ドクトリンに従って設立された医療コマンドは、ウクライナ軍の医療支援を調整する責任を負う。中央集権的医療コマンドは、ウクライナの軍事医療システムの効率性と有効性が向上し、医療資源の調整と管理が改善された[20]

もうひとつの重要な組織的発展は、将校と下士官間の上下関係や人員配置を軍全体で改革したことで、その恩恵は軍事医療部隊にも及んだ。ウクライナ軍のルーツがソ連であるため、中間層は指導力に欠けており、この専門知識と主体性のギャップが2014年のクリミアでの軍のパフォーマンスにつながったと思われる。2022年、ウクライナは「ウクライナ国軍の専門軍曹団育成のコンセプト(Concept of Developing a Professional Sergeant Corps the Armed Forces of Ukraine」を改訂し、2016年版の方針を置き換えた[21]

ウクライナ国軍の医療サービスおよび民間医療従事者の十分な訓練と能力を確保するため、ウクライナは医師、看護師、衛生兵、そして過去8年間は救急救命士を含む医療従事者の訓練プログラムに投資してきた。訓練は、グローバル・ヘルスの関与と安全保障協力への投資を通じて、戦術レベルでの主題専門家の交流を通じて行われた。作戦レベルでは、ウクライナは国際的なパートナーとも協力し、軍事医療システムを改善してきた。2016年以来、複数の包括的支援パッケージにより、統合訓練や主題専門家の交換を通じた医療リハビリテーション・ケアとサービスの改善の取組みなど、ウクライナへのNATO支援の継続が促進されている。同様に、2015年に多国籍統合訓練グループ・ウクライナが設立されたことで、永続的な訓練支援が可能になり、2019年以降、米国欧州軍(EUCOM)が支援する軍事医療訓練と資材(資本とクラスVII)投資を通じて、米・ウクライナの協力体制は、戦術的戦闘傷病者救護(TC3)、外傷手術、救急医療、リハビリテーション・ケアの改善に重点を置いている[22]

民間と軍両方の医療インフラに影響を与えたもうひとつの重要な開発は、新しい病院や診療所の建設、新しい医療技術の統合(一体化)など、医療施設の拡大である。特にウクライナ軍は、米国防総省(DoD)が改修、近代的な設備の導入、戦闘傷害の治療能力の向上を支援したキーウの主要軍事臨床病院など、施設の改修と近代化に取り組んできた[23]。遠隔医療と電子カルテは、医療データへのアクセスを改善した[24]。新興の軍事医療ドクトリンに基づく標準化の取組みによって可能となった医療施設の拡張は、医療サービス、国家安全保障部門の他の機関、および民間の医療機関の間で、戦時におけるより効率的な医療支援を可能にした。その恩恵は、医療サービスの能力と民間の医療能力を統合(一体化)することで実現した[25]

全体として、ウクライナの軍事医療システムの変革は、ウクライナ軍に対する医療支援の効率と効果を改善することに焦点を当てた、複雑で進行中のプロセスである。ウクライナはドクトリン開発、インフラ整備、訓練で前進を遂げたが、戦闘被害(battle damage)により使用できなくなった能力や能力を補うため、近代化とインフラ投資を継続するには多くの課題が残っている。2022年2月以降、ウクライナの医療勢力は、暴力的に課せられてきたこうした課題に対して、改革と変革の取組みによって可能となった機会を利用してきた。

戦争への適応

「私たちは現在、困難な状況の中で最善を尽くし、人間性を守り、すべての人命を大切にしています」とドニプロの血管外科医オレクサンドル・ソコロフ(Oleksandr Sokolov)医師は2022年10月に述べた。ソコロフ(Sokolov)はすぐにこの地を離れるつもりはない:私は今、ここで必要とされていると感じています」と強調した[26]。ソコロフ(Sokolov)のコメントは、ウクライナ全土で臨床的、戦術的問題に取り組んでいる医療専門家の精神を象徴している。『変化を恐れる戦争における軍事的適応(Military Adaptation in War with Fear of Change』のウィリアムソン・マーレイ(Williamson Murray)の言葉を借りれば、効果的な適応とは、摩擦によって資源と時間が制約される中で、正しい問題に答えることである[27]。死傷者数、戦闘による負傷者数、非戦闘による疾病による負傷者数に関するデータは、適応努力の客観的利益を評価する上で最も有効な尺度の一つであるが、主に作戦上の安全保障上の必要性から、データはほとんど存在しない。オープン・ソースをスクレイピング1し、最近のカンファレンスのプレゼンテーションにアクセスしたところ、いくつかのデータが得られた。

※1 スクレイピングとは、Webサイトのコンテンツの中から特定の情報だけを抽出・取集する技術・行為(参考:https://www.f5.com/ja_jp/glossary/scraping)

多くのウクライナ軍医療部隊は、砲撃、重要インフラへの攻撃、困難な天候(特に冬季)に直面し、移民を含む民間人を支援し、このような大規模な活動を支援するなど、大規模戦闘作戦(LSCO)環境での作戦の課題に適応してきた[28]。ウクライナの医療部隊コマンドは、保健省、ウクライナ国軍の医療施設、その他の民間・公的部門の医療施設、ウクライナ国立医学アカデミーの取組みを結集し、適応的な解決策を推進・公布してきた。競争、危機、紛争における適応を検討することは、一般化可能性のために、関連する知見や教訓を分離するのに役立つ。

競争では、受傷発生地点(Point of Injury:POI)から最終的な治療、そして規模に応じた訓練に至るまで、救護の階層を組織化する改善が、軍事的有効性に貢献している。2014年から2022年にかけて、医療訓練へのアクセスを拡大し、利用可能な治療と避難能力を行使するための取組みが客観的に検討された。具体的には、2014年から2016年にかけて国防省のNATO基準との整合性を評価し、戦闘に関連した活動から得られた質的・量的な罹患率と死亡率のデータを検討した。これらの評価では、避難チェーン(evacuation chain)は改善されたものの、タイムリーな避難を妨げるハイブリッド戦の状況は、長時間の野戦救護(PFC)2と戦術的戦闘傷病者救護(TC3)のギャップを明らかにしたと結論づけている[29]。2018年以降、米国欧州軍(EUCOM)、米国陸軍ヨーロッパ(現米国陸軍ヨーロッパ・アフリカ(USAREUR-AF)、地域衛生コマンド・ヨーロッパ(現医療即応コマンド・欧州)、カリフォルニア米陸軍州兵の州パートナーシップ・プログラム、NATOの軍医療サービス最高責任者委員会との協力により、戦術的戦闘傷病者救護(TC3)および長時間の野戦救護(PFC)訓練を支援し、ウクライナの役割13能力に関する評価を実施した。

※2 長時間の野戦救護(PFC)とは72時間以上の戦場での生命維持

※3 米陸軍の「ATP 4-02.55 Army Health System Support Planning」などによると軍事医療の役割は以下の通り

役割1(Roles 1)は兵士が最初に受ける医療で応急処置、緊急救命措置、トリアージを提供する能力を含む。

役割2(Roles 2)は、通常、旅団以上の規模の大部隊レベル(医療中隊の地域支援分隊、医療小隊の医療施設)で行われるが、作戦上の必要性に応じて、より前方で行われることもある。

役割3(Roles 3)は、患者は、蘇生、初期創傷手術、損傷制御手術、術後治療を含む、すべてのカテゴリーの患者に救護を提供する人員と設備を備えた医療施設で治療される。通常師団以上で行われる。

役割4(Roles 3)は、米国本土(CONUS)を拠点とする国防省保健局が運営する病院やその他の安全な避難所で受けられる。

出血管理(hemorrhage control)に関する訓練は、軍の衛生兵や救急隊員に限定されるのではなく、領土防衛軍やウクライナの一般市民にも拡大された[30]。米国外科学会外傷委員会が運営する「STOP THE BLEED(止血)キャンペーン」は、出血を止める基本的な方法について、オンラインおよび対面式の訓練を市民に提供している。特に包帯、手当(dressings)、テープ、止血帯などの消耗品であるクラスVIIIの医療品が訓練に利用できることは、戦術的戦闘傷病者救護(TC3)と長時間の野戦救護(PFC)の訓練の質を向上させる。現在、ウクライナに多国籍の非致死的援助物資が配給される以前、米陸軍のヨーロッパ・アフリカ地域は、一貫したグローバル・ヘルス活動を通じて医薬品と訓練を提供していた。特筆すべきは、積層造形(additive manufacturing)の出現と3次元印刷へのアクセスの向上により、ウクライナのために何千もの止血帯が自国内および国際的な取組みによって生み出されたことである[31]。これらの能力が集約されれば、集団の生存にスケール・メリットが生まれる。

競争、ハイブリッド戦、紛争を通じて、生存可能な傷害の量が増加しているため、NATOの4階層(役割1から役割4)の医療システムの中で、より効率的な管理が必要とされている。この管理は、ウクライナの役割2(第一レベルの病院)の能力と能力容量を、ウクライナの内線や前線、受傷発生地点(POI)付近の民間医療インフラに統合(一体化)するために必要なものである[32]。典型的な役割2の運用は、移動式軍事病院の出動と配置であるが、米国とNATOの経験が示すように、役割2の運用は重要な後方支援活動である。移動型の役割2の能力は、民間の病院でフルタイムで働く医療専門家が配置されている可能性が高いが、物理的に大きなフットプリントを持ち、崩壊、移動、再確立に少なくとも10日かかる。蘇生能力と手術能力を前倒しすることで、より効果的な規模でのダメージ・コントロールが可能になり、役割3および4の病院は、役割1および2の安定化拠点から、より多くの手術患者を受け入れる準備が必要である。手術に関する文献によると、ウクライナは、キーウの主要軍事臨床病院において、役割2を前方に統合し、役割3と4を統合した結果、四肢銃創患者の罹患率と死亡率が減少した[33]。ロシア・ウクライナ戦争2年目のこれまでのところ、ウクライナは利用可能な役割2-4の能力を適応させることで、努力の経済性と有効性のバランスをとる柔軟性を示している。

避難チェーン(evacuation chain)と地域の保護活動の改善は、それぞれ患者と4層の医療システムの生存率に貢献している。強固な航空医療避難能力がないため、米中央軍(USCENTCOM)の作戦で実施されたいわゆる「ゴールデン・アワー(golden hour)」基準は、ウクライナのすべての戦場をカバーするためには適用できなかった。トラックや車輪付きの地上救急車は、役割1から役割4まで患者を移動させる主要な手段であるが、大規模な支援を提供するための整備可能な台数は存在しなかった。あるいは、適切な改造を施した車輪式、軌道式、鉄道式の搬送手段であれば、どのようなものでも負傷者避難プラットフォームとすることができる。ウクライナは、患者の安全な移動を支援するため、車輪や鉄道を使った移動手段を改良した。オープン・ソースの記述には、ウクライナを支援するために2,000マイルを移動したスペインのタクシー、モニター、人工呼吸器、酸素ボンベをストックした救急バス、開戦以来2,000人以上の患者を移動させた国境なき医師団の医療列車などがある[34]

4層構造の中で医療能力と能力容量を守ることも、生存の必要性から顕在化したものである。これまでの大規模戦闘作戦(LSCO)環境と同様、既存の民間および軍の医療インフラを土嚢、スクラップ、合板、その他利用可能なあらゆる障壁資材で強化することで、特に都市環境では生存性が向上した。発電、暖房、水道、下水の冗長性を高めることで、安定化現場の信頼性と衛生状態を向上させた。間接火力で大きな打撃を受けた地域では、地上から地下に患者を移動させるのが普通であり、教会、学校、体育館、寮、ホテルなど、安定した都市構造物であれば、ある程度の患者収容能力を持つ安定化サイトまたは役割1サイトとして機能することができた[35]。民間病院スタッフ、軍医、ホスピタリスト、救急隊員、ボランティア(訓練を受けた者、受けていない者)は、建造物、標識、制服から赤十字や赤新月の記章を取り除くなど、医療現場を固め、隠す努力に貢献した。ロシアとワグネル・グループのターゲッティング戦術を考えれば、赤十字や赤新月社のマークが目立たない安定化サイトや役割1、2の施設に患者を車両で移動させることは、防護につながったかもしれない[36]

紛争中、臨床的アプローチの改善により、ダメージ・コントロール手術、クリティカルケア医療、役割2以上の治療へのアクセスが向上した。臨床的アプローチの改善は、多発外傷へのアクセスを向上させ、罹患率と死亡率を減少させたが、この恩恵は、負傷パターンとケア消費データが最もニーズの高い地域を特定し始めた紛争後2~3ヵ月が経過するまで現れなかった。現場での行動に関する一般的な観察によると、受傷発生地点(POI)の近くでダメージ・コントロール手術を行い、最終的な治療をより高いレベルの医療に委ねること、可能な場合は、蘇生とダメージ・コントロールに全血を早期に使用すること、低体温症、アシドーシス、凝固障害を予防するための積極的なアプローチが有効であることが強調された。

ウクライナでは、ほとんどの臨床医と大学医学部の協力者が団結して、ロシアの侵攻が引き起こした緊急事態に立ち向かった。これまで外傷や軍事医療の経験が乏しかった市民病院の多くが、最前線の病院となった。専門知識を共有し、実際的な支援を提供するために、戦地から遠く離れた大学病院に勤務していた多くの医師たちは、市民病院や軍の最前線病院に勤務先を移し、さらに焦点を移した。軍事医療知識のギャップを埋め、臨床専門知識の到達範囲を広げるため、YouTube、ソーシャル・メディア、学術に特化したプラットフォームによる教育が、仮想視聴覚手段(virtual audiovisual means)による専門家の遠隔相談を補完した。3月初旬、多くの国際的な医学学会の中で、ウクライナの集中治療専門医にオンライン・ウェビナーやその他の教育リソースへのアクセスをいち早く許可したのは、欧州集中治療医学会であった[37]

戦争が続けば続くほど、最適な組織、効率的な管理、効果的な現場工作、最良の臨床慣行が強調されるだろう。しかし、本章の意図は、ウクライナの大規模戦闘作戦(LSCO)経験から、米軍の適応の取組みに役立つ初期の教訓を明らかにすることである。以下の5つの教訓は、推奨される活動や投資の網羅的なリストを示すものではないが、複数の戦域に一般化できる潜在的な利益を考えると、上位5つの教訓が最も高い収穫をもたらす可能性がある。特筆すべきは、これらの上位5つの教訓は、「米陸軍将来コマンドの医療のためのコンセプト2028Army Futures Command Concept for Medical 2028」で提示された医療用兵機能(medical warfighting functions)に関するコンセプトや内容と一致していることである。

教訓

教訓その1:大規模な戦闘作戦には、前方での医療能力と能力容量の向上が必要である。

治療能力と病院の収容能力は、受傷発生地点(POI)またはその近辺、負傷者避難の途中、あるいは従来の役割 1施設での救急・重症患者蘇生を可能にする。前方に分散された能力と能力容量は、罹患率と死亡率を低下させ、任務(duty)への復帰を早めることができる。前方ダメージ・コントロール能力は、役割1と役割2の能力を橋渡しし、役割2の能力を向上させるため、複雑な傷害の転帰を改善する。

第二次世界大戦と最近の作戦は、類似した例を示している。1942年初頭、極東米陸軍で確認された個別のニーズに対応するため、同作戦地域の外科医長であったパーシー・J・キャロル(Percy J. Carroll)大佐(当時)は、確立された避難チェーン(evacuation chain)にギャップがある場合に、即時の医療・外科的ニーズに対応できる外科能力と野戦病院の能力を実験的に導入した。キャロル(Carroll)の解決策は、軽くて可搬性が高く、自己完結型の医療部隊で、部隊とともに戦闘に投入できる小型のステーション病院として機能するものだった[38]。米陸軍医療部隊の大尉または少佐が指揮を執る可搬式病院(portable hospitals)には25のベッドがあり、3人の一般外科医と1人の一般外科医兼麻酔医を含む4人の医療将校と、2人の外科技師と11人の医療技師を含む25人の下士官が勤務していた。キャロル(Carroll)の可搬式病院とそれ以前の病院との決定的な違いは、すべての設備、医療品、手術用品、食糧が、29人の兵士が輸送できる量に制限されていたことだ。米国軍医総長の迅速な承認後、歩兵連隊ごとに1つ、師団ごとに3つの可搬式外科病院が割り当てられた。病院の有用性を実証するため、戦域の至る所で可搬式病院が使用された。

より最近では、米特殊作戦コマンドのゴールデン・アワー・オフセット外科治療チーム(Golden Hour Offset Surgical Treatment Teams)の開発も、同様に個別のニーズつまり、避難チェーン(evacuation chain)における特定されたギャップを、有能だが軽量な前方外科手術能力で埋めることから生まれたものである。標準的な陸軍20人の前方外科チームのフットプリントが大きいため、「自由の番人作戦(Operation Freedom’s Sentinel)」4中に米国特殊作戦部隊のゴールデン・アワー(golden hour)を維持するには、前方外科チームの訓練、構成、人員、装備、雇用に適応する必要があった[39]。これを受けて、配備された前方外科チームは、ゴールデン・アワー・オフセット外科治療チームを2つの構成で実験した。すなわち、6人編成の軽装チームと7人編成の重装チームである。この2つの編成は、2つの手術を同時に実施する能力、補給前に5つの手術を実施する能力、電源を含むすべての装備を1台または2台の実用車両に搭載する能力、すべての人員と装備をボーイングCH-47チヌーク1台に搭載する能力を備えている[40]

※4 自由の番人作戦(Operation Freedom’s Sentinel)は、世界規模の対テロ戦争の一部であるアフガニスタン紛争における不朽の自由作戦に続く作戦である。NATO主導の確固たる支援任務の一部として2015年1月1日に始まり、テロ対策と任務の一環としての同盟国との協力という2つの構成要素があった。(参考:https://ja.wikipedia.org/自由の番人作戦)

分析された戦力デザインにかかわらず、個別のニーズを特定し、大規模戦闘作戦(LSCO)解決策を生み出し、実験を通じて適切な規模を検証するプロセスは、師団階層以上における将来の戦力デザインに反映されるべきである。

教訓その2:規模に応じた特定の医療訓練が、過酷な大規模戦闘作戦での生存率を向上させる

20年にわたる米中央軍(USCENTCOM)の作戦における米国の経験と同様、戦術的戦闘傷病者救護(TC3)、長時間の野戦救護(PFC)、全血の早期使用は、ウクライナ人負傷者の生存率を向上させた。戦術的戦闘傷病者救護(TC3)と長時間の野戦救護(PFC)を支援するための訓練と装備は、特に出血管理(hemorrhage control)と低体温療法について、最前線のプレホスピタル・ベネフィットを広く行き渡らせる。役割2と3では、ウクライナはダメージ・コントロール手術、早期の大量輸血、積極的な加温に重点を置いており、役割4の施設に搬送する患者を安定させる効果が実証されている。

病院での治療と避難技術の進歩、および統合外傷システムの開発により、米軍とその連合パートナーは、戦闘外傷を管理するための史上最高の最終治療と避難能力を有するようになった。戦術的戦闘傷病者救護(TC3)の有効かつ継続的な役割は、負傷者が確実に生きて病院に到着し、確実な治療を受けられるようにすることである。

戦術的戦闘傷病者救護(TC3)は、戦闘部隊が受傷発生地点(POI)での救護を最適化するために、すべての戦闘要員に戦術的戦闘傷病者救護(TC3)技法を訓練することで、戦闘部隊が前例のない死傷者生存率を達成するのに役立っている。ひいては、ウクライナのこれまでの経験が、そのスケール・メリットをさらに実証している。戦術的戦闘傷病者救護(TC3)を全兵科の共通タスク訓練に一体化すれば、大規模戦闘作戦(LSCO)の死傷者予測を相殺できるかもしれない。

安全な接続性を備えた遠隔医療セットやキットを充実させれば、専門医や専門分科による診察で長時間の野戦救護(PFC)を補強することができる。また、オペレーターの標準化訓練や、携帯可能で耐久性のある機器の配備に投資することで、大規模戦闘作戦(LSCO)における負傷者の量や複雑さに備えることができる。

教訓その3:大規模戦闘作戦における負傷者搬送には、利用可能な輸送手段の適応が必要である。

軍隊は、自動車、バン、バス、ヘリコプター、鉄道車両を負傷者輸送用に改造することで、負傷者を受傷発生地点(POI)から最も近い最小限の能力を持つ医療施設に移動させることができる。多数の死傷者が出る状況で可能かつ適切である場合、いかなるプラットフォームも死傷者を出さずに後退すべきではない。負傷者の避難には、利用可能なあらゆる輸送手段を適応させる必要があるかもしれず、野戦用舟艇の開発と訓練に投資することで、戦術的編成をよりよく整えることができる。注目すべきは、有人および自律型の死傷者救助プラットフォームが、各地理的戦闘軍(geographic combatant commands)の統合(一体化された)優先リストに掲載されていることである。負傷者避難プラットフォームが開発されれば、避難やクラスVIIIの配給にとどまらず、複数の持続的な目的を果たすことができる。

教訓その4:医療能力と能力容量の保護は大規模戦闘作戦(LSCO)の優先事項でなければならない

先に述べたように、赤十字と赤新月社はソフト・ターゲットである。固定された医療施設や医療インフラは、キネティックな攻撃やノン・キネティックな攻撃に脆弱である。役割1と2の施設を隠蔽、硬化、動員、分散させる効率的かつ意図的な取組みによって、前方の能力と能力容量を維持する。

教訓その5:大規模戦闘作戦(LSCO)関連医療には、役割 4の専門医療が深く必要

米中央軍(USCENTCOM)の責任範囲から学んだ米国の教訓を強化し、ロシア・ウクライナ戦争初期のウクライナの経験に従って、第4の役割の能力容量と能力をさらに開発・強化する取組みは、依然として最優先事項である。傷害(複雑な爆風、多臓器、切断、熱傷、精神的傷害)や疾病の増加には、エビデンスに基づく専門医療と、最適な転帰を得るための一次医療と専門医療の経路の確保が必要であり、医療部隊の規模を拡大する必要がある。

ウクライナは、過去8年間のハイブリッド戦と直近の1年間の大規模戦闘作戦(LSCO)を考慮し、戦闘関連の負傷からの長期的な回復を支援するために、理学医療とリハビリテーション、行動衛生、その他の需要の高い専門分野を含む、より大きな役割4の救護と救護経路の要件を開発し始めた。2022年3月の時点で、ウクライナの軍医療担当窓口は、キーウに卓越したリハビリテーション医療センターを設立するための支援を正式に要請していた。ロシアの侵略を抑止し、打ち負かすためには、ウクライナを支援するための強固な支援と協調的な準備が引き続き必要である。

今後の方向性

医療制度を改革し、軍事医療を変革し、大規模戦闘作戦(LSCO)の状況に適応しようとするウクライナの取組みは、比較的成功を収めている。本章では、オープン・ソースの内容を抽出し、改革を支える背景、変革を可能にした原動力、戦場での適応を必要とした状況の一部を説明した。ウクライナの適応をより詳細に検討することで、上位5つの教訓が導き出され、この紛争における軍事医学の重要性が強調された。「ウクライナの軍事医療は決定的な優位性」と題された最近のフォーリン・ポリシーの記事で、タニーシャ・ファザル(Tanisha Fazal)はこう結論付けている[41]

ロシア・ウクライナ戦争が始まって1年、ウクライナの経験は、軍事医療が戦力を温存し、闘う意志(will to fight)を安心させ、軍事的効果を可能にすることを確認したにすぎない。ウクライナの改革と変革の合流点は、2013年から14年にかけてのウクライナ危機とぶつかった。軍事医学の観点から見ると、ウクライナはドクトリンの策定、構造の変更、訓練への投資という形で準備を進め、適応を加速させる好機と条件を整えた。米国が現在の一連のペースの課題と脅威に直面する中、米国防総省の準備、特に陸軍の大規模戦闘作戦(LSCO)戦への準備は、現在の即応性、将来の兵力構成、進行中の近代化の取組みのバランスを取る上で、重要な変曲点にある。これまでのところ、ウクライナの経験は、上層部における決意と復元性を示すと同時に、能力の組織化、能力の管理、規模に応じた訓練の文脈で、危険な場所での良質の医療を可能にしてきた。このように、ウクライナの戦場への適応は、大規模戦闘作戦(LSCO)に向けた米陸軍医療の変革、前進、適応の取組みに反映させることができ、またそうすべきである。

ノート

[1] Carl von Clausewitz, On War (Princeton, NJ: Princeton University Press, 1984), 256.

[2] Tanisha M. Fazal, “Ukraine’s Military Medicine Is a Critical Advantage,” Foreign Policy (website), October 31, 2022, https://foreignpolicy.com/2022/10/31/ukraine-military-medicine-russia-war/.

[3] Fazal, “Ukraine’s Military Medicine.”

[4] Igor Sheiman, Sergey Shishkin, and Vladimir Shevsky, “The Evolving Semashko Model of Primary Health Care: The Case of the Russian Federation,” Risk Management and Healthcare Policy 2018, no. 11 (November 2018): 209–20.

[5] Sheiman, Shishkin, and Shevsky, “Evolving Semashko Model.”

[6] “Ukraine: Summary,” Columbia University Mailman School of Public Health (website), n.d., accessed on April 4, 2023, https://www.publichealth.columbia.edu/research/others/comparative-health-policy-library/ukraine-summary.

[7] “Ukraine: Summary.”

[8] “Ukraine: Summary.”

[9] “Ukraine: Summary.”

[10] O. O. Mykyta, “The System of Territorial Defense Forces Medical Support of the Armed Forces of Ukraine,” Ukrainian Journal of Military Medicine 3, no. 3 (2022): 64–70.

[11] V. O. Zhakhovsky, V. G. Livinskyi, and S. O. Petruk, “Strategic Defense Bulletin of Ukraine as a Tool of Military Health Care and Forces’ Medical Support Reform and Development (a Literature Review),” Ukrainian Journal of Military Medicine 2, no. 3 (2021): 5–19.

[12] Zhakhovsky, Livinskyi, and Petruk, “Strategic Defense Bulletin.”

[13] Zhakhovsky, Livinskyi, and Petruk, “Strategic Defense Bulletin.”

[14] Zhakhovsky, Livinskyi, and Petruk, “Strategic Defense Bulletin.”

[15] Zhakhovsky, Livinskyi, and Petruk, “Strategic Defense Bulletin.”

[16] Shupyk National Healthcare University (NHU) of Ukraine, Draft of the Military Medical Doctrine of Ukraine (Kyiv: Shupyk NHU of Ukraine, March 2022), 1.

[17] Shupyk NHU of Ukraine, Military Medical Doctrine, 8.

[18] Shupyk NHU of Ukraine, Military Medical Doctrine, 2.

[19] Mykhailo Badiuk et al., “History of the Formation of High Art of Modern Military Medicine of Ukraine,” Current Issues of Social Studies and History of Medicine. Joint Ukrainian-Romanian Scientific Journal 14, no. 2 (2017): 117.

[20] “The Ukrainian Military Medical Service,” Military-Medicine.com (website), February 2, 2014, https://military-medicine.com/article/3099-the-ukrainian-military-medical-service.html.

[21] Hanna Shelest, Defend. Resist. Repeat: Ukraine’s Lessons for European Defence, ECFR/471 (Berlin: European Council on Foreign Relations, November 2022).

[22] Shelest, Defend. Resist. Repeat.

[23] Bily V. Ya, “Medical Support of Armed Forces of Ukraine: New Vision of Organizational Structure and Management” (working paper, Research and Technology Organization Human Factors and Medicine Panel Specialists’ Meeting on the Impact of NATO/Multinational Military Missions on Health Care Management, Kyiv, UA, September 4– 6, 2000).

[24] Ya, “Medical Support.”

[25] Badiuk et al., “History of the Formation.”

[26] Ramin A. Khalili, “ Frontline Exposure: Army Medical Research and Development Command Helps Pave Way to Aid Injured in Ukraine,” U.S. Army (website), October 26, 2022, https://www.army.mil/article/261485/frontline_exposure_army_medical_research_and_development_command_helps_pave_way_to_aid_injured_in_ukrain.

[27] Williamson Murray, Military Adaptation in War with Fear of Change (Cambridge, UK: Cambridge University Press, 2011), 3.

[28] Tetiana Ostashchenko, “The Current Situation and the Challenges Related to Medical Support in the Conditions of Full-Scale Russian Aggression in Ukraine” (presentation, Multinational Military Medical Exchange, Tartu, EE, November 15, 2022).

[29] Ostashchenko, “Current Situation.”

[30] “More Than 2 Million People Prepared to STOP THE BLEED,” American College of Surgeons (website), June 1, 2022, https://www.facs.org/for-medical-professionals/news-publications/news-and-articles/bulletin/june-2022-volume-107-number-6/more-than-2-million-people-prepared-to-stop-the-bleed/.

[31] Amy Feldman, “Putting 3D Printers to Work in Ukraine’s War Zone,” Forbes (website), March 31, 2022, https://www.forbes.com/sites/amyfeldman/2022/03/31/putting-3d-printers-to-work-in-ukraines-war-zone/.

[32] Anatoliy Kazmirchuk et al., “Ukraine’s experiencee with Management of Combat Casualties Using NATO’s Four-Tier ‘Changing as Needed’ Healthcare System,” World Journal of Surgery 46, no. 12 (December 2022): 2858– 62; and Piotr Romaniuk and Tetyana Semigina, “Ukrainian Health Care System and Its Chances for Successful Transition from Soviet Legacies,” Globalization and Health 14, no. 116 (2018).

[33] Kazmirchuk et al., “UexperienceExperience,” 2860.

[34] “Ukraine War: Over 2,000 Patients Have Been Evacuated and Treated on MSF Medical Train,” Doctors without Borders (website), November 7, 2022, https://www.doctorswithoutborders.org/latest/ukraine-war-over-2000-patients-have-been-evacuated-and-treated-msf-medical-train.

[35] “One Hundred Days of War Has Put Ukraine’s Health System under Severe Pressure,” World Health Organization (website), June 3, 2022, https://www.who.int/news/item/03-06-2022-one-hundred-days-of-war-has-put-ukraine-s-health-system-under-severe-pressure.

[36] Elisabeth Mahase, “Ukraine: Over 700 Recorded Attacks on Health Facilities and Workers in Year since Russia Invasion,” BMJ 380 (2023): 451.

[37] “ESICM Mobilises Online Resources to Support Ukraine’s ICU Staff as They Adapt to Conflict,” European Society of Intensive Care Medicine (website), May 6, 2022, https://www.esicm.org/esicm-mobilises-online-resources-to-support-ukraine-icu-stuff-as-they-adapt-to-conflict/.

[38] John T. Greenwood, “Portable Surgical Hospitals,” Army Medical Department Center of History and Heritage (website), n.d., accessed on April 4, 2023, https://achh.army.mil/history/book-wwii-surgicalhosp-portablesurgicalhospitals.

[39] Jerry M. Benavides et al., “The Golden Hour Offset Surgical Treatment Team Operational Concept: Experience of the 102nd Forward Surgical Team in Operation Freedom’s Sentinel 2015–2016,” Journal of Special Operations Medicine 17, no. 3 (2017): 46–50.

[40] Benavides et al., “Golden Hour.”

[41] Fazal, “Ukraine’s Military Medicine.”