米海兵隊のドクトリンを読む③ MDCP 1-3 Tactics その7

第1章 戦術の理解

第2章 決心を達成する

第3章 優位性の獲得

第4章 迅速であること

第5章 適応すること

第6章 協調

第7章 成功を活用し仕上げる

第8章 それを起こすために

第7章 成功を活用し仕上げる:Chapter 7 Exploiting Success and Finishing

優位性の構築:BUILDING ON ADVANTAGE

強化、戦果拡張と追撃:CONSOLIDATION, EXPLOITATION, AND PURSUIT

敵を仕留める:FINISHING THE ENEMY

戦闘での予備の使用:USE OF THE RESERVE IN COMBAT

結論:CONCLUSION

「攻撃において遅れをとってはいけない。敵が分断されて、削減されたとき、惜しまず・・・・・すぐに敵を追撃して、敵に整理するか、態勢を立て直す時間を与えてはいけない。困難をはばからず、彼が全滅するまで昼夜をおかず敵を追撃せよ[i]

陸軍元帥アレクサンドル・V・スヴォーロフ皇太子

「最後の人間をアッダに追撃して、残敵を川に撃退せよ[ii]

陸軍元帥アレクサンドル・V・スヴォーロフ皇太子

「我々が会戦のリスクを負ったとき、我々は勝利で優勢を得る方法を知っていなければならず、習慣によって単に戦場の所有に満足するだけではない[iii]

-モーリス・ド・ザクセン

私は単に優位性(advantage)を獲得するだけでは不十分である。敵は不利な立場で置かれても単純に降伏しない。成功するリーダーは、機会が最後の一撃となるまで、いかなる優位性(advantage)も積極的に冷酷に一度でなく何度も活用する。我々はこのような機会-我々が我々自身それらを生み出す、あるいは、それらが行動の流れで生じるかどうかに関係なく-に、常に目を光らせていなければならない、そして、我々が決定的な機会を察知した時、我々はそれを手にしなければならない。

米海兵隊戦術の適用は、我々は、たやすく、または、血を流さずに勝つことを期待したり、あるいは、我々は、敵は我々が敵の裏をかくことで崩壊することを期待することを意味しない。それは我々が求めて、すべての優位性(advantage)を最大限作り、そして、機会が現れた時には、決定的な一撃を適用することを意味する。

優位性の構築:BUILDING ON ADVANTAGE

一旦、我々は優位性(advantage)を獲得したら、それを活用する。我々は、新たな機会を生み出すためにそれを使う。我々はその時他のものを生み出すためにそれらの機会を活用し、そして、行動の流れを我々の優位性(advantage)に成形する。優位性は、必ずしも大きい必要はない。さらに何度も、そして、積極的に活用される小さな好ましい周囲の事情(circumstances)は、決定的な優位性(decisive advantages)へと急激に増やすことができる。チェスの名人のように、我々は我々の次の動きとその先を考えなければならない。どのようにして私は別のものを生み出すためにこの優位性(advantage)を使い続けるか?たとえば、侵入による攻撃において、一旦、敵の場所を叩いて、彼の後方に入ることによって、我々は生み出された一つの優位性(advantage)を持つ、我々は、ギャップに部隊を投入することによってもう一つの優位性(advantage)を作り出す。リデル・ハートはこれを「奔流の拡大」の生成と述べている[iv]

ロンメルは、第一次世界大戦におけるカルパティア山のククの会戦(battle for Kuk)において、それぞれの優位性(advantage)を活用することがもう一つの機会に導いた方法を述べている。彼の分遣隊がそれぞれの状況を活用して、敵の線列の後方深く動いたことで、それは、より奇襲(surprise)と優位性(advantage)を作り出した。この行動においてロンメルの分遣隊は、主に勢い(momentum)を喪失した敵の不本意(his unwillingness)によって、ほとんど闘わないで何千もの敵兵を捕獲した。一つの成功は直接もう一つの機会に導き、彼はすぐに手にした[v]

1943年11月のタラワの会戦の後で、ヘンリー・クロウ少佐-第8海兵連隊第2大隊の部隊指揮官-は、なぜ日本軍は一旦海兵隊が上陸したら非常に早く崩壊したかを考えた。彼はそれが艦砲射撃、爆弾と迫撃砲の不断の圧迫によると気付いた。海兵隊は、成功の機会を生み出すためにそれらの支援兵器の優位性(advantage)を活用した[vi]

強化、戦果拡張と追撃:CONSOLIDATION, EXPLOITATION, AND PURSUIT

一旦我々が生み出された効力(leverage)を有したならば、どのように、我々はその優位性(advantage)を活用するか?決定的な結果または勝利は、どんなに成功していても最初の行動から滅多に起こらない。より多くの場合、勝利はひとつのことが決定的になり、そして、行動が総崩れに変わるまで、積極的にいくつかの相対的な優位性(relative advantage)を活用した結果である。歴史的に、負傷者率は一方又は他方が逃げ出そうとするまで比較的一定でたびたび公正のままである傾向がある。時には、非常に非対称の負傷者率が一般に生ずる。敵の悪い状況の戦果拡張(exploitation)は、驚くほど大きい結果を生ずることができる。

我々は、我々が生み出し発見した機会を活用するいくつかの特別な行動のタイプを取ることが出来る。我々が成功を活用することができる最初の方法は、強化(consolidation-我々が敵を捕獲することを意図した位置を確保した後で我々の部隊を強化する-による[vii]。ここでは、我々の狙い(aim)は、我々がすでに獲得したものを防護することに限定される。私たちは、強化するのではなく、むしろ、問題を無理強いし続けることが我々の主導性を放棄することになると認識する必要がある。この方針を選ぶための多くの理由が、そこにある。おそらく、我々は前進を続行する強さ(strength)が不足している。我々の新たな獲得は決定的に重要であり、そして、それを失うリスクはそれ以上の獲得の優位性(advantage)を上回る。おそらく、それ自体による新たな獲得は、重大な優位性(significant advantage)を与える。たとえば、優れた火力を提供するか、敵の後方連絡線(lines of communications)を脅す場所は、敵を持ちこたえられない場所に置く。おそらく、新たな獲得は敵に我々の条件に合うよう強要する-たとえば、我々は強固な守備の特性のある決定的な地形の一画を占領し、敵に不利な条件での攻撃を強要する。

優位性(advantage)を追求する二番目の方法は、敵を敵陣深く崩壊させるように企図する攻撃の戦術の戦果拡張(exploitationである[viii]。戦果拡張(exploitation)は、通常、いくつかの敵の脆弱性を生み出したか、暴露した成功した攻撃に続く。たとえば、敵の防御の間隙を引き裂く攻撃は、我々に敵の致命的な後方地域を攻撃することを可能にする。戦果拡張(exploitation)の目標はたとえそれらが弱められるだろうとしても直接に我々に対峙している戦闘部隊を破壊しないことである。その代わりに、目標は重要な活動と機能を攻撃することによって全ての敵のシステム(enemy system)を崩壊させることである。

たとえば、1991年の「砂漠の嵐」作戦において、陸軍のタイガー旅団は、師団の最終的な攻撃における戦果拡張(exploitation)部隊として、第2海兵隊師団によって用いられた。旅団は、スピード、火力と夜間の戦闘能力(combat capabilities)でイラク軍より優位性(advantage)を有していた。これらの優位性(advantage)で、タイガー旅団はイラクIII軍団の後方の中に深く切って、アル・ジャフラの北の極めて重要なハイウェイの交差点を閉鎖した。結果は、イラク軍の組織的防御の全体の崩壊であった[ix]

優位性(advantage)を活用する第三の方法は、最後まで追撃(pursuit)することである。追撃は、結束力を失い、破壊するために逃げようとする敵の部隊を捕獲し遮断しようとする攻撃の戦術である[x]。意図が最終的な破壊をもたらすことになっているか、敵の部隊の捕獲することになっているならば、その時、追撃は最大の力で推進されなければならない。作戦が総崩れに変化するのはここである、そして、圧倒的な勝利が多くの場合生ずる。1865年4月のリー将軍の南部同盟北ヴァージニア軍に対するグラント将軍のペテルスバーグからアポマトックスまでの追撃は、追撃の古典的な例である。ここでは、グラント将軍はリー将軍の脱出を阻止するために彼の部隊を彼らの限界に推進した。これは、最終的にリー将軍の部隊の捕獲と降伏に導いた[xi]

南部同盟陸軍のトーマス・J・”ストーンウォール”ジャクソン中将は、追撃について、「敵を攻撃し、敵に打ち勝て、あなたの兵が強さ(strength)を続く限り長く追撃を決して断念するな。敗走する敵にとって、もしも熱く追撃すれば、恐怖に満ち、半分の数で破壊することができる」と要約した。

敵を仕留める:FINISHING THE ENEMY

最終的に、我々は決定的な優位性(decisive advantage)に機会を育むことを望む。一旦我々がそうするならば、我々はそれを最大限に活用する。米海兵隊戦術は、「力強い仕留め屋」のリーダーを求める。我々は「急所に当たる」強固な願望を持たなければならない。我々は、決定的な打撃を達成するための機会を見つけるか、生み出そうと絶えず努力していなければならない。同時に、我々は我々の行動において早まってはならない。我々は、状況が正しくなる前に決定的な動きをしてはならない。

この一度限りで敵を仕留める実力(ability)は、最初に積極的な精神力を具備することから導き出される。二番目に、それは指揮官の意図(commander’s intent)の理解から起こる。第三に、それは我々が自らの存在の機会を認識し、状況が行動するのに正しいと理解する鋭い状況認識(situational awareness)から起こる[xii]

戦闘での予備の使用:USE OF THE RESERVE IN COMBAT

予備は、成功を活かすための重要な道具である。予備は、将来の行動を左右するために、最初のうちは行動を差し控える指揮官の戦闘力の部分である[xiii]。予備を生み出し維持する理由は、戦争の不確実性(uncertainty)、偶然(chance)と無秩序(disorder)に取り扱うために柔軟性を提供することである。予備は、したがって適応性を維持するための貴重な道具である。一般には、状況は、より不確実であれば、予備はより大きくなければならない。ナポレオンは、「戦争は不測の事態だけで成り立っている、そして、・・・・将軍はそれらの不測の事態から優位性を可能にするすべてを決して見失ってはならない」と述べている[xiv]。これらの不測の事態は、機会と危機の形をとる。予備は、両者とも取り扱うための鍵となる戦術的道具である。

指揮官は予備の使用のための心の中に目的を持たなければならず、その目的を成し遂げるために、それを計画しなければならない。本当に成功を活用することは、予備に指揮官の最高の隷下部隊の割当てまたは戦闘力または移動性資産の優位性を保証する。彼らの予備を適切に組織化し、仕事を課し、備えるそれらの指揮官は、通常機会が生じるとき敵を仕留めるための能力(capability)がある 。

予備の価値を認識したウィンストン・チャーチルは、「予備の使用や抑制において偉大な指揮官は一般に優れる。結局、一度最後の予備が撃退されるなら、指揮官は役割を終える・・・。その時、更迭され、戦闘部隊(fighting troops)から離れなければならない」と書き残している[xv]

強力な予備は、主導性を維持する方法でもある。前進が減速すれば、予備は勢い(momentum)を増大することができる。前進がスピードを増せば、予備の関与は敵の敗走を生み出す。我々は、間隙または侵入を拡大するか、活用するために予備を使う。我々は異なる方向への攻撃に予備を関与させ、それで失敗に増援する代わりに成功の機会を活用する。強力な予備なしでは、さらに最も多く、有望な機会は失われることになる。

予備の使用の古典的な例は、タラワの会戦である。第2、第8海兵隊連隊の海岸への突撃で、ジュリアン・スミス将軍は膠着状態をこわすために第6海兵隊連隊-師団予備-を上陸させることに決めた。第6海兵連隊第1大隊-師団予備の一部としてタスク編成された-は、島の西端に上陸して、第2海兵連隊第3大隊を通り過ぎ、そして、翼側から日本軍の守備に対して迅速で激しい突撃を実行した。48時間以内に、日本軍の部隊は全滅した、そして、島が確保された。スミス将軍の彼の予備の使用は、成功を活用して、敵を仕留めためのタラワの勝利の鍵となるものであった[xvi]。(図を参照)

 

時には、どこかほかの関与のために一時的にそれを履行することができないいくつかの危機を取り扱うために、我々は予備を用いなければならない。このような場合には、予備はできるだけ可能な限り迅速に再構成されなければならない。我々は成功を増援するために予備を用いる機会を探さなければならない。とはいえ、我々は予備を用いる、我々は予備を、勝利をおさめるための道具として常に考えなければならない。この点で、「予備は、決定的な攻撃を期待した会戦の一行動として実施される目的を持つ準備され、組織化され、慎重に維持された棍棒(clubである[xvii]」と、フォッシュ元師が手紙に書いている。それは、一般に我々が決定的な結果を成し遂げる攻撃的行動-防御においてさえ-を介するものである。予備が好ましい決心を成し遂げ、あるいは好ましくない決心を阻止する試みを示すことから、それは多くの場合一旦関与する主たる努力(main effort)になり、部隊の全ての他の構成部隊によって支援されなければならない。

予備として使われる有形のアセットに加えて、賢明な指揮官は戦闘力に影響を与える無形の要因とその維持に配慮し、計画もしなければならない。無形の要因は、疲労、リーダーシップの質、熟練度(proficiency)、士気(morale)、チームワークと装備の維持を含む。我々はまた、航空出撃率または出撃数を確保し、特別又は低充足の軍需品を差し控え、重要な必需品、例えば特定の到達目標のための燃料、石油、オイル、潤滑油を保有することによっても予備を確立する。我々は、我々が全部でタスクの割当てを行って予備に生み出して、仕事を課すときこれらの無形の要因を考慮する。

これらの考えは、あらゆる部隊でも転換でき、予備として再び委ねられることができるので、予備として当初は示される部隊だけでなくあらゆる部隊にも適用される。したがって、部隊の役割を再指名して、状況が要求すれば予備を生み出すために、指揮官は常に精神的に用意ができている必要がある[xviii]

結論:CONCLUSION

ほとんどの決定的な勝利は、最初の行動から起こらないが、速く、積極的にその行動によって生み出される機会を活用することの結果である。我々は戦術的機会を活用する多くの方法を見つけるだろうが、それらは全て同じ目標-最終的に我々に有利なように問題を決定するために我々が最終的な機会を持つまで効力(leverage)を増加させる-を持つ。米海兵隊戦術の到達目標は、単に優位性(advantage)を獲得することにはなく、最終的な勝利を成し遂げるために、その優位性(advantage)を大胆に、そして、冷酷にも活用する。

ノート

[i] ピーター・G・ツォラス著「戦士の言葉:引用本:セソストリス3世からシュワルツコフまで、紀元前1871年から1991年まで」349ページ

[ii] ピーター・G・ツォラス著「戦士の言葉:引用本:セソストリス3世からシュワルツコフまで、紀元前1871年から1991年まで」349ページ

[iii] ロバート・デブス・ハインル・ジュニア退役米海兵隊大佐「軍事および海軍引用辞典」109ページ

[iv] B.H.リデル・ハート大尉、「歩兵戦術の『暗闇の中の人間』理論と『拡大する急流』攻撃システム」13ページ

[v] アーウィン・ロンメル著「攻撃」(Vienna, VA: Athena Press, 1979) 235–250ページ

[vi] FMFRP 12-90「ギルバート諸島に関する第2海兵師団報告書—タラワ作戦」(September 1991) 51ページ

[vii] 配置の強化:新しく捕獲された場所を敵に使用されることのないように組織化し強化すること。” (Joint Pub 1-02)

[viii] 戦果拡張:通常成功した攻撃を適用して、敵が縦深に再構成できないようにデザインされた攻勢作戦。” (Joint Pub 1-02)

[ix] チャールズ・J・キルター2世大佐「ペルシャ湾の米海兵隊、1990-1991:砂漠の盾と砂漠の嵐の中のI海兵隊遠征軍と」(Washington, D.C.: Headquarters, U.S. Marine Corps, History and Museums Division, 1993) 99ページ

[x] 追撃:破壊する狙い(aim)をもって、逃げようとしている敵の部隊を捕獲するか、遮断するように設計された攻勢作戦。” (Joint Pub 1-02)

[xi] ブルース・キャットン著「この許された地面:南北戦争の連合側の物語」(Garden City, NY: Doubleday & Company, Inc., 1956) 384ページ

[xii] ロバート・デブス・ハインル・ジュニア退役米海兵隊大佐「軍事および海軍引用辞典」259ページ

[xiii] 予備:「決定的な瞬間で利用可能なように後方に置くか、交戦の当初からの行動を控えた全部隊の一部」、戦術予備:「将来の行動に影響を与えるために機動に任ずる部隊として指揮官の統制下に置かれる一部の部隊」 (Joint Pub 1-02)

[xiv] トーマス・R・フィリップス米陸軍准将著「戦略のルーツにおける『ナポレオンの軍事的格言:軍事古典のコレクション』」(Harrisburg, PA: Military Service Publishing Co., 1940) 436ページ

[xv] ロバート・デブス・ハインル・ジュニア退役米海兵隊大佐「軍事および海軍引用辞典」275ページ

[xvi] この例はマーティン・ラス著「出発線: タラワ」から引用(Garden City, NY: Doubleday & Company, Inc., 1975)

[xvii] ロバート・デブス・ハインル・ジュニア退役米海兵隊大佐「軍事および海軍引用辞典」274ページ

[xviii] この節の資料の多くは、ジョン・F・シュミット大尉のMarine Corps Gazetteの1990年3月号の記事63–69ページ「戦闘における予備軍の使用」に基づいている